寺本廣作の発言 (公害対策及び環境保全特別委員会)

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○寺本広作君 だんだんと、衆議院の法制局の答弁と政府の環境庁の答弁が歩み寄ってきたように思います。水俣病患者であるという認定と、損害賠償ということは別個のものだ、水俣病の認定というのは公害による健康被害者救済法の認定であって、この民法の特例である損害賠償とは別個の問題だ、こういう答弁のようでございますが、その考え方は、昨年の八月の環境庁次官通牒以来一貫していると思います。しかし、現実には、なかなかそういうふうにはなっておらぬというのが、ほんとうだと思うのです。
 というのは、損害賠償を求めるのには、現在では裁判所に訴え出るか、直接当事者と交渉するか、または中央公害審査委員会に持ち出すか、この三つの方法しかないと思います。当事者同士で交渉する場合には、故意過失の立証というのは、そう大きな要件にならぬで片づくと思います。裁判所に出れば、故意過失の立証、こういうものは絶対な要件になってくる。中央公害審査委員会に持ち出しても、おそらく故意過失ということを相当問われるのではないかと思います。これは厚生省の時代に厚生省に設けられました千種委員会での調停を見ておりましても、故意過失の立証がないまま調停しておられるので、裁判の場合より幾らか手ぬるいと言いますか、非常に不十分だという世間の非難を受けた。ああいう調停が出た原因は、故意過失の立証が非常に不十分であったということに原因があると思います。
 水俣病でも、阿賀野川の事件でいいますと、これはすでに水俣で有機水銀が、無機水銀が有機水銀に変わり、その有機水銀が魚介類を経て人間に入ってくる、その関連、メカニズムが立証されたあとでありますから、裁判所が、事業主にそういうことのないように注意する義務がある、注意義務の推定を裁判所がやって、そして事業主の過失責任が問われて過失賠償がきまったと思うのです。ところが、そのような科学的な事実が立証される前の水俣病、それがいま問題になっている水俣病だと思います。そういう水俣病について、裁判所がそういう事業主の過失責任を推定したという事実がありません。前例がないわけです。この法律で、その病気の発生時期のことも書かなければならぬし、それから会社側にとっては、この法律施行前に製造はやめたのだというようなことで、いとも反証が楽である。裁判所に持ち出すのには、裁判所では、いま申しましたとおり無機水銀が有機水銀に変わり、有機水銀が魚介類のからだを通して人間に入って水俣病が起こるという、そういうメカニズム発見前の事例として、裁判所も事業主の過失責任を推定しにくいということになりますと、どうしてもやはり水俣病患者というのは、どう救っても助からぬなという感じがいたします。そのことをおそらく患者の人たちも知っておられるのじゃなかろうかと思います。そこで直接交渉に持ち込んで、環境庁長官と熊本県知事にあっせんをしてくれと頼んでおられるのだろうと思います。
 さらに、いま企画調整局長御答弁のように、水俣病の、健康被害者を救済するための水俣病であって、賠償は別だぞと、こういう通牒を出されましたけれども、事実としては、結果としてはやはり環境庁長官はその調停を引き受けざるを得ないようになっている。というのは、やはり世間から見ておりますと、環境庁長官は大いに認定基準を緩和して、温情をかけられた、仏もつくられた、しかし魂は入っておらぬじゃないかという、国民感情といいますか、そういうものがあると思うのです。そこで、どうしてもあれは行政機関として、環境庁長官は自分であっせんを引き受けざるを得ないような結果になったのではないかと思います。ただ、これは行政と司法は別だ、損害賠償は司法だから、行政の関知せざるところであると言って逃げられぬようになっているのが、現在の環境庁の立場ではないかと思います。そこいらのところを、大臣の心境はどうかということを聞こうと思ったわけですけれども、おいでになりませんので、これはあとに残させていただきます。
 そこで、そのいまの問題と関連して、この衆議院修正の第三項、「(検討)」というサブタイトルのついたところがございます。これで「政府は、公害に係る被害者の救済に関し、その損害賠償を保障する制度について検討を加え、その結果に基づき、すみやかに、必要な措置を講ずるものとする。」と、こう書いてある。本来ならこれは附帯決議程度のものじゃないかと思いますが、やはり事柄が非常に重要だというので、政府にこういうふうに義務づけられたものだと思います。
 その中で、これは単純に読むと、その損害賠償を保障する制度というのは、おそらく損害賠償の責任は確定した、しかし事業主に支払う能力はない、そういう場合、支払いの方法を確保するための制度を考えろと、こういうふうに読めるわけですけれども、立法府が政府にこういうことを義務づけした。政府は損害賠償を保障する制度をつくって、すみやかに必要な措置を講じろと、こういうわけですから、その責任が確定したというとにかく救いのあるものでなく、公害の原点に立つと言われる水俣病のように、非常にむずかしい、しかも救いのないものをこの「(検討)」の損害賠償を保障するという制度、その中に入れて、政府がすみやかに必要な措置を講ずる用意があるかどうか、この文章をそういうふうに読めぬかということを、ひとつお尋ねしておきたいと思います。

発言情報

speech_id: 106814205X01019720616_013

発言者: 寺本廣作

speaker_id: 29332

日付: 1972-06-16

院: 参議院

会議名: 公害対策及び環境保全特別委員会