寺本廣作の発言 (公害対策及び環境保全特別委員会)
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○寺本広作君 実は、昨年の八月、水俣病認定の行政不服審査に当たって、長官が認定基準を緩和して、患者を救えるようにするという通牒をお出しくださった。その際私は、賠償問題が必ずついてくる、それで、損害賠償問題は別だとあの通牒に書かぬほうがよかったということを申し上げておきました。その後、認定を受けた患者の皆さんが、被害者救済の法律の保護を受けられるだけでなく、賠償を求めるという方法に出ておられます。しかも賠償を求めるのに、民事訴訟にいっても、事業主の故意過失を立証することが非常にむずかしい、中央公害審査委員会に聞いても、やはり故意過失というものがある程度立証されないと、なかなかいい調停の結果が出ない。そこで自主交渉ということで、長官と熊本県知事のあっせんということで、長官のところに持ち込まれてたいへん御苦労をかけていると思います。
しかし、せっかく長官がああやって認定基準を広げてやるという措置をとられて、これは損害賠償は別だということで突っ放されたのでは、仏をつくって魂が入らぬということ、竜を描いて目玉が入っておらぬような感じがいたします。そういうことで長官は引き受けてあっせんをおやりくださっているものと、こう思うわけですが、そこでこの法律をそういう目で見てみますと、この法律施行後新たに生ずる損害についてこれを適用すると、こう書いてある。それから水俣病は、いま、長官がおきめいただいた新たな基準で、新たな患者がどんどん出よるわけです。これは、十月一日以降もどんどんそういう患者が出てくるだろうと思う。そうすると、その患者の病気の発生の時点というのは、これはなかなかわからぬです。だから、認定した時点がこの法律の施行後生じた損害になるか。そうすると、いま認定申請しておる者か、十月一日以降に延ばして認定を受けるようになるのです。
ところが、法制局の答弁も局長さんの答弁も、やはり民事と行政は別だ、損害賠償と行政は別だから、その行政認定が十月一日以降になっても、それで新たな、その時点で損害が生じたということにはならぬという、これは非常にむごい答弁だと思います。しかし法律解釈は、そういうことのようです。個々のケースで、いつ病気が発生したということを立証しなければならぬというお話でした。
そこで第二項の、法律施行前に有毒物を出した、原因物質を出したということを事業主が立証したら、これはやっぱりこの法律の保護は受けられぬというふうに、ただし書きでなっておるわけです。ところが、水俣のようにもう製造はやめてしまった、廃液も処分してしまったという事業主にとって、この後段の立証というのは非常に簡単だと思うんです。したがって、それでも患者は助からぬわけです。患者が助かる方法がないわけですね。
そこで第三項の「(検討)」というところの解釈をいま伺ったところです。この第三項によると、「政府は、公害に係る被害者の救済に関し、その損害賠償を保障する制度について検討を加え、その結果に基づき、すみやかに、必要な措置を講ずるものとする。」。これも法制局の答弁は非常に渋いものでしたけれども、企画調整局長さんの答弁が、非常に温情のある答弁でございました。法制局の答弁は、損害賠償を保障する制度は、損害賠償の責任が確定して、支払い能力がない場合の保障をこれは意味するような御答弁でした。しかし企画調整局長さんの答弁は、それだけに限らぬ、損害賠償の責任が確定しない場合でも救済できるような制度を検討します、そしてそのような措置をとりますと、こういうことでした。
そこで、大石長官はストックホルムで、とにかく水俣病、イタイイタイ病をああいう事態までほうっておいたのは政府の責任だ——これは私は政府だけの責任ではなく、地方自治体の責任でもあると、こう痛感するものですからこういうことを質問するわけですが、しかし大石長官は、ああいうふうに世界に向かって言ってこられたわけですから、一項、二項の文言、ただし書き、これはいずれも助からぬ、公害の原点に立つといわれる水俣病患者が、今度の無過失損害賠償責任法では助からぬ、それで、第三項で救っていただけるというなら非常にありがたい。唯一の救いだとこれは思うわけです。それでいま船後局長が、第三項の、政府側が検討してすみやかに必要な措置を講ずるものの中には、いまの事業主の故意過失の立証ができなくて救済の欠くる、そういう患者の救済を含めて検討する、と。その御方針を、まず大臣から確認していただければありがたいのです。