有島重武の発言 (本会議)

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○有島重武君 平和、民主、人権尊重の日本国憲法が、あえて第二十三条に学問の自由の保障規定を明文化したゆえんは、旧帝国憲法のもとで、国家権力が大学における真理探求に干渉を加え、数多くの有能な学者を学園から追放し、やがて国民の目に真実をおおい隠して、無謀なる戦争に突入した過去の苦い経験への深い反省の上に成り立ったがゆえであります。
 しかるに、この学問の自由に関する政府・与党の認識は、かかる憲法の条文は、単に戦勝国から押しつけられ、英語の原稿を日本語に直訳したものにすぎないという憲法軽視の基本的態度を露骨にし、学問の自由をささえる大学の自治を不当かつ巧妙に形骸化して、権力のもとに学問の自由を屈服せしめ、再び危険な道に国民を誘導せんとする策謀を立法化いたしました。すなわち、筑波大学法案の提出がこれであります。
 ここに私は、公明党を代表して、国立学校設置法等の一部を改正する法律案、通称筑波大学法案に対し、特にその第二条以下に関しまして反対討論を行ない、政府・与党に反省を促し、警告を与えんとするものであります。(拍手)
 山紫水明の地に学園を、という総理のうたい文句を待つまでもなく、大学を地方の環境のよい都市へ分散させ、緑と太陽に包まれた広大な敷地を確保して学園都市を建設することは、最も優先されるべき文教施策の一つであります。ただし、本法案の審議に見られましたごとく、今回、東京教育大学の移転、廃学をめぐって、政府は、その本務たる環境整備をはるかに逸脱して、既存の大学制度の変更を急いでいるのであります。
 大学の改革は、世界史的な課題であり、最も英知を集め、人類の未来と人類文化における学問の位置づけをあらためて考え、わが国の諸国に果たすべき使命、役割りを見定めつつ、慎重に行なうべき大事業であります。
 わが党は、昭和四十三年、大学高校問題特別委員会を設置して、この問題に取り組み、学園の自治に関する提言をはじめとし、学生の修学方法について、各大学間の協力による単位の互換性と受講形態を多元化することにより、学生みずからが多様な修学課程を自主的に決定できる方式等を含む提言を発表し、その一部はすでに国公私立の大学によって実現の方向に踏み出されつつあり、なお広く深く、中道革新、人間生命尊重の立場から、調査立案の作業を続けております。
 これに反し、政府は、大学紛争を期として、一部学生の暴力的行為と、大学学部の閉鎖性のみを誇大に宣伝し、大学の管理を強化し、開かれた大学と称して、大学自治の中に行政介入の道を開くための画策を積み重ねてまいりました。すなわち、財界の代弁者的性格をあらわにした自由民主党のあっせんによって、明治以来の富国強兵の道を指向する中央教育審議会を駆使して、時代錯誤の大学改革を美辞麗句に包んで体系化し、心ある大学関係者、教育者のひんしゅくと警戒の念とを強めてきたのであります。
 奥野文部大臣は、去る二十一日、国立大学長会議で大学教授批判を行ない、さらに、本法案に対する批判を根底的に拒絶する姿勢を示し、筑波大に関連して若干の学部教授会が反対の決議やアピールを出しているので読ませてもらったが、他の大学のことにけちをつけるより、自分たちの大学のことをもう少し勉強しては、云々と発言しました。これは重大発言であり、暴言と言うほかございません。(拍手)
 各大学あるいは学部で決議文やアピールを学外に出すことは、筑波大学問題が、大学人共通の大学自治擁護の連帯意識に根ざしているからであります。単に筑波大学新設のために、一つの実験的試みのためにだと政府は説明を繰り返しますけれども、しからば何ゆえに例外措置として発足しないのか、何ゆえに複雑多岐にわたる現行法改正という大げさな措置をしいるのであるか。法律の改正は、明らかに個々の大学、日本の大学制度全般に大小の影響が波及することは当然であります。もし大学関係者がこれに無関心であったならばどうなるでありましょうか。それこそ、大臣の言う大学人総無責任時代となるのであります。
 政府は、大学人の政府批判はけちをつけるなどという表現で一蹴し、その一方、みずからは開かれた大学を宣伝しながら、大学人が他の社会、すなわち他の大学のやることに口を出すなという、こうした独善的な態度こそ、既存の大学のかかえている閉鎖性にも増して、第一に政府みずからが改革しなければならない問題であります。(拍手)
 およそ学園自治に限らず、民主主義的な運営の支柱は人事と財政でありましょう。現在の大学の問題は、かろうじて人事の自決権を保有してはおりますけれども、財政的には政府の巧みな統制下に縛りつけられ、新鮮な学問の発展、学生と教授との連帯、大学間、学部間相互の協力などが阻害され、優秀な学究者がその力を発揮し得ないところに最大の隘路があることは、ひとしくすべての大学人が嘆くところであります。
 当面、政府のなすべき最大の課題は、大学制度に改革の手を伸ばすことではなく、むしろ財政面の量的な増大につとめること、そして、財政的な大学の自治を本来の姿に戻して確保することであります。
 わが党が本法案に反対する理由は、以上述べ来たったごとく、まず第一に、人事権の操作を通じて、学問の自由を根底から崩壊させる危険性を含んでいるがゆえであります。
 学長、副学長に大学の管理運営のすべてを集中し、集中された学長、副学長の大きな権限が、そのまま行政権力によって左右され得るような仕組みになっておる。筑波大学の学長は、参与会、評議会及び人事委員会の構成メンバーをチェックあるいは統率する権限を持っております。さらに、副学長は、学外からの、文部大臣が認める管理能力者を自由自在に任命できる仕組みになっております。
 これらによって、学内教授、教官たちの全く認知しない人物が、教育者的感覚の全くない行政官的あるいは企業主的感覚で、直接、間接を問わず、教育、研究の場に立ち入り、有形無形のコントロールをすることは明らかであります。この仕組みは、やがて政治権力による大学介入につながり、さらに、実質的には学問の統制に通ずるものであると断ぜざるを得ないのであります。
 第二には、教育基本法第十条に定められた教育行政の役割りは、教育の外的事項として必要な諸条件の整備、確立にあります。政府・自民党では、この筑波大学構想は一部の大学人の自主的な計画に発したものであるといっておりますが、筑波大学設立への推移を見まするに、東京教育大学の改組、移転が正当な大学自治の意思とは無関係に、強引な行政主導によって進められた形跡が顕著であり、本法成立後は、大学自治への行政介入が必至であるとともに、基本法に反した教育内容の抑制にまで及ぼうとしていることは、行政の越権行為であり、重大な問題であります。
 第三に、大学改革の主体者は大学人でなければなりません。しかるに、政府は、大学人の改革意欲を独断的に否定しております。
 大学紛争以来、政府・自民党は、大学改革は学者にはできないと宣伝し、各大学の自主的な改革案が提出されたにもかわわらず、政府は、予算や教職員の増員をはかろうともしない。改革案に積極的に取り組もうとしなかったのであります。このことは、政府が独断的に大学人の改革意欲を否定してきたことにほかなりません。
 第四に、筑波大学法案は、廃案となった大学管理法案の実質的な再現であり、政治権力による学園改悪の第一歩であるということであります。
 第五に、筑波研究学園都市建設法を悪用した法案であります。
 筑波研究学園都市建設は、教育、研究に適したよい環境を準備し、学問の健全な発展に寄与する、すなわち、よい環境に学園都市をつくりたいという国民の期待を逆手にとって……

発言情報

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発言者: 有島重武

speaker_id: 12672

日付: 1973-06-29

院: 衆議院

会議名: 本会議