戸井田三郎の発言 (本会議)

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○戸井田三郎君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました政府提案にかかる健康保険法等の一部を改正する法律案につきまして、賛成の討論を行なわんとするものであります。(拍手)
 およそ国民の健康と福祉を守るということは、政治の最大の課題であり、福祉国家の基本であることは言うまでもありません。しかし、いまや、わが国の国民医療の現状は、まことに重大なる局面に立ち至っているのであります。
 戦後、わが国の驚異的ともいわれる経済成長は、一面において、われわれの生活の上に幾多のしあわせと豊かさを与え、豊かさを求めればこそ生産性の向上にも励んだのでありますが、また一面、われわれ人間生活を著しく阻害する条件も、遺憾ながら数多く発生いたしておるのであります。
 そこで、われわれは、いまこのきびしい現実と矛盾の上に立って、健康という最大のしあわせの上に人間生活の豊かさを求めるために重大なる岐路に立ち、ここに新たな選択に迫られているのであります。われわれは、かつて経験したことのないこの課題に直面して、いやしくも一党一派の観点にとらわれることなく、総力をあげて、この深刻にして遠大なる課題と国民的要請に真剣にこたえなければならないのであります。(拍手)
 私は、健康保険体制の確立こそは、この国民的課題の重要な一環であると思うのであります。わが国の国民医療体制の確立は、その人口の急激なる老齢化現象と相まって一そう複雑な様相を呈しておる中で、時代に即応した医療の確保が最も緊急を要する課題であると思うのであります。
 医療保険制度の改革問題は、御承知のとおり、長い歴史的な過程の中で互いに利害関係が錯綜し、問題の根本的解決をはかることがきわめて困難なものが多く、これがために、従来急務とされながらも、国民医療体制の確立が一歩も進み得ないという遺憾な状態が続いてまいったのであります。問題が複雑、困難であればあるほど、その改善を行なおうとするならば、常に適正な手段と細心の思慮のもとに、順序を追って国民の福祉を達成するという視点に立って、決断と実行に邁進しなければならないのであります。(拍手)
 今日、政府が提案した健康保険法の改正案は、このような従来の複雑な網の目の中から一歩脱却して、制度創設以来三十年ぶりともいわれる改善に着手したものであり、さらに医療供給体制の整備についても、今回の改善とともに並行して、長期計画的に国民の期待にこたえようとするものであります。特に給付面の改善は、政府が福祉元年の幕明けとして、国民的願望に事実をもってこたえたものであり、空虚な巧言議論よりも、将来に着実に夢開く一歩を進めたものであると信ずるのであります。(拍手)これこそ、責任を持つ政府自民党の堅実にして実効ある当然の措置であり、断じて高く評価すべきものであると信ずるのであります。(拍手)
 さらに、今回の改正では、給付の改善にあわせ、将来の医療保険のより一そうの充実発展をはかるために、健保財政の恒常的安定をはかる国庫補助率の定率化等の諸施策をとっております。これは従来の保険の概念を一歩進め、国の責任体制を社会福祉の領域に大きく前進させたものと評価しなければなりません。(拍手)
 まず、家族医療給付の改善は、制度始まって以来実に三十年ぶりに、五割から六割に引き上げることといたし、今後の七割給付実現への足がかりをつくり、特に近時、ガン、心臓病等、月に数十万円もの費用がかかる医療が増加している現状に対処し、家族高額療養費の制度を創設したことは、まさに国民への一大福音といわなければなりません。(拍手)
 いやしくも、高度に発展した近代社会において、高額な医療費の支払いが負担になって近代医療を受けることが阻害されることがあってはなりません。家族に重病、難病が発生したとき、最も心配なことは、病状はもちろんでありまするけれども、その経済的過重についてであります。そのために家計の危機を招き、家庭が一転悲惨な結果を招いた例は少なくないのであります。今回の月額数十万円の医療費も三万円を限度とする制度が政府の手によって提案されたことは、分べん費、埋葬料の大幅引き上げとともに、各方面からきわめて好感をもって迎えられております。(拍手)
 第二に、標準報酬の上下限の改定についてでありますが、最近の給与の実態と著しく離れており、その結果生ずる保険料負担の不公平を是正するために、今回の改定、すなわち、上限二十万円、下限二万円といたしましたことは、きわめて当然の措置といわなければなりません。
 第三に、保険料の料率〇・三%の引き上げと賞与等に対する一%の特別保険料の徴収については、社会保険のたてまえからするならば、今回の大幅給付の改善による支出増を考え、かつまた、赤字財政に悩む政管健保の実情を考えるときに、勤労者、事業主の方々にも最小限度の負担をお願いすることはやむを得ざる措置と思わなければならないのであります。
 そのために、政府も、従来の定額国庫補助を定率国庫補助に改め、大幅な助成に踏み切っております。画期的な改善といわなければなりません。(拍手)
 第四に、保険料率の調整とこれに連動した国庫補助率の引き上げについてでありますが、単年度収支の均衡を維持していかなければならない短期保険の性格上、機動的に対処して財政の恒常的安定をはかっていくためにはきわめて必要な措置であり、法定料率をこえて変更する場合には、料率〇・一%に国庫補助率を四倍の〇・四%上のせする仕組みになっておりますが、これは国の積極的な援助の姿勢と責任を示したものといわなければなりません。
 最後に、累積赤字をたな上げし、累積損失を一般会計から繰り入れることによって補てんする方法を講じておりますることは、長年赤字財政に悩まされた政管健保の財政を政府の決断によって赤字の苦悩から解放し、再出発させるきわめて適切果断の措置と申さなければなりません。
 今国会の改正案においては、船員保険、国民健康保険、各種共済組合においても、健康保険の改善に準じ改善が行なわれることになっております。したがって、今回の給付の改善が、あまねく国民各層に均てんされるのであります。
 以上が政府案に対する自由民主党の見解でありまするが、われわれといたしましては、政府原案の趣旨を歓迎しながらも、今回の長時間にわたる委員会審議の過程を通じて明らかにされました意見を本法案に取り入れ、より一そう国民の皆さま方の御要望にこたえる真摯な姿勢をもって政府原案を修正いたし、さらに国民各層の健康としあわせな生活を保障することにこたえたものであります。(拍手)
 すなわち、第一に、家族給付率を、国民の強い要望にこたえ、昭和四十九年十月より七割給付を実現することといたし、その旨を法律に明記することとしたのであります。
 第二に、賞与等に対する特別保険料は引き続き検討いたすこととし、本法案から削除いたした次第であります。
 第三に、いわゆる弾力条項につきましては、その発動にあたり、厚生大臣が社会保険審議会の「意見ヲ聴」いて実施するという原案を、社会保険審議会の「議ヲ経テ」実施することに改め、さらに、実施の場合を、保険給付の改善、診療報酬の改定その他緊急の場合のみに限定し、より慎重な運用を期するとともに、料率〇・一%につき〇・四%の国庫補助率のかさ上げを、さらに〇・六%の割合まで増加することとし、国の援助を大幅にふやすこととしております。さらに、政管健保に対する借り入れ制限につきましてもこれを緩和し、船員保険、共済組合法等につきましても、これに準じて修正を行なうことにいたしました。
 これを要するに、今回の健康保険改正案及び修正案は、今日及び将来の医療保険の充実発展をはかるために、ぜひとも成立が望まれるものであります。
 本改正案が提案されるにあたり、一部に本法案があたかも単純なる値上げ法案であるかのように誤伝され、国民の中に十分その趣旨が理解されていないことを心から残念に思うものであります、
 これは本法改正案の画期的な国民への一大福音の一面を見ず、料率改定の一面のみを誇大に見、国民の目を値上げという一点に向けようとする非科学的な発想によるものか、あるいは故意に正直、率直にものごとを見ようとしない、まことに悲しむべき現象といわざるを得ないのであります。(拍手)
 私は、一むしろ今回の改正案が通過成立することによって、いま病床に伏す多くの苦痛に悩める方々に、喜びと希望と闘病の勇気を与えるものとして、大いに歓迎されるものであると信じて疑わないのであります。(拍手)
 これをもちまして、私の賛成の討論を終える次第であります。(拍手)

発言情報

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発言者: 戸井田三郎

speaker_id: 28548

日付: 1973-06-29

院: 衆議院

会議名: 本会議