三塚博の発言 (本会議)
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○三塚博君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました社会党提案の山中防衛庁長官の不信任案に対し、反対の討論を行なうものでございます。(拍手)
そもそも、国の防衛は国家の最も本源的な任務と機能でありまして、自衛のために有効適切な措置を講じますことは、国民に対する国家の最も重要な義務であり、責任でもあります。
このことは、すでに最高裁判所が砂川判決において、憲法第九条はいわゆる戦争を放棄し、いかなる戦力の保持をも禁止しておるのであるが、しかし、これによりわが国が主権国として持つ固有の自衛権が否定されたものではなく、わが憲法の平和主義も決して無防備、無抵抗を定めたものではないと明言をいたしております。さらに、わが国が自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛のための措置をとり得ることは、国家固有の権能の行使として当然のことといわなければならないといっていることからしても明白であります。
したがって、わが国憲法が自衛権を否定していない以上、万一の急迫不正の侵略に対し自衛権を行使するため、有効適切な手段を持ち得ることは当然でありまして、この自衛の措置として国力、国情に合った必要最小限度の自衛力を保持することは、何ら憲法の禁止するところではないのでありまして、憲法前文の中でいわく、「全世界の國民が、平和のうちに生存する権利を有する」といっていることや、さらに憲法第十三条には「生命、自由及び幸福追求に封ずる國民の権利については、國政の上で、最大の尊重を必要とする。」といっている精神にも合致するわけでございます。(拍手)
しかるに、今回の長沼判決は、最高裁の判例にさからい、さらに、国権の最高機関であり、かつ唯一の立法機関である国会において、慎重審議の結果成立した法律及び予算によって維持管理されておる自衛隊の存在を、単純に憲法第九条二項の戦力に該当するとして否定するなどは、まことに思い上がりもはなはだしく、誤りをおかしているといわなければなりません。(拍手)かりに、今回の一審判決が正しいということで、社会党の諸君の言うとおりに従うといたしましたならば、どういう結果になるでありましょうか。
まず問いたい。憲法の定めるところにより、公明正大な選挙により選出されました四百九十一名の衆議院議員をもって構成する本院の決定した意思と行為はどうなるのでありましょうか。また、二百五十二名の参議院議員で構成する参議院の立法行為は全く無効であるということができるのでありましょうか。
一億国民の厳粛な負託を受けて行なわれた、国権の最高機関たる国会の制定した法律も、地方裁判所の一審判決の前には無効であり、従わざるを得ないということになるのでありましょうか。(「とんでもない話だ」と呼ぶ者あり)とんでもない話であります。私もそう思いません。
議会制民主主義においては、国会の決定は国民全体の決定と同じ結果をもたらすものでございます。
政治的責任を問われない一裁判所の考えや判断で、国会の立法行為が実質的に停止、無効の宣言を受けたものとしてこれに従うということになれば、法律の制定はすべて裁判所にまかせるべきものであり、立法府は何もできないということになるでありましょう。まさに、三権分立を定めた現憲法の精神を否定し、国権の最高機関たる立法府にまっこうから挑戦するものであり、こんな矛盾を許すことになりますと、議会制民主主義は成り立たないのでございます。
ましてや、このような傾向に追随するということになりますと、本院がみずからその使命を放棄し、国民の期待に背を向ける不信行為であると言われても、弁明の余地はなかろうと思うのでございます。(拍手)
特に、国の防衛は国家の基本的な行政でありますので、自衛隊法は内閣総理大臣が内閣を代表して指揮監督を行なうよう定めております。内閣総理大臣が防衛の最高責任者でありますことは、何びとも疑う余地はございません。
にもかかわりませず、今回の提案は、国務大臣たる山中長官をしてその防衛の最高責任者のごとく考え、長沼判決以降における国会の言動をとらえ、その責任を追及するというごときは、本末転倒もはなはだしく、木に登って魚を求める愚挙にひとしいといわなければなりません。(拍手)
さらに、提案者は、重大なミスをおかしております。
防衛二法は、長沼判決が出ました以上これを撤回しろと言明をいたしておるのでありますが、国会法五十九条をお読みになったことがあるのでありましょうか。これによりますと、一院で議決をしたものは、修正、撤回する場合には、その院の承諾を得なければなりません。内閣といえども、国務大臣といえども、それの撤回ができないことは百も承知であり、シャドーキャビネットといわれる野党第一党の社会党がかかる大きなミスをおかしたということは、きわめて遺憾なことでございます。(拍手)
不信任案の理由の第二点は、沖繩県に防衛二法成立前に臨時南西航空混成団を配置したことは、山中長官の不正専断で、許しがたいといたしておるのでありますが、残念ながら、これまた、政治の本質を見ない空論といわざるを得ません。
すなわち、沖繩県は、四半世紀にわたる米国の支配から脱し、わが国の主権下に完全に復帰いたしましたのは、一年半前でございます。国家がその国の平和と独立を守り、かつまた国民の生命と財産を保障することは当然の業務であります以上、名実ともにわが国土に復帰いたしました以上は、沖繩をみずからの責任と使命において守ってまいりますこともまた、理の当然でございます。
提案者は、沖繩県民百万の反自衛隊感情を無視しての配置とも断定いたしております。この見方はまことに皮相的で、かつ、一方的であります。そして、真実を伝えておりません。県民の大部分は自衛隊を静かに迎え、そして見守り、日がたつにしたがいまして今日では、自衛隊員の誠実なその態度、さらに自衛隊の日常献身的な民生活動、さらに災害派遣等については、心から感謝を申し上げ、その実績があらわれるにしたがいましてたいへん好感をもって喜んでおりますことも、偽らない事実でございます。
私は申し上げたいのでありますが、このような偏見をもって、いかにも全県民が自衛隊配置に反対をしているがごとき表現をとられることは、決して沖繩県民のしあわせにつながるものではなく、かえって県民を侮辱することにもなりかねませんので、さようなことはやらぬほうがよろしかろうと存じます。
また、沖繩の臨時混成団の配置は国会の意思を無視して先取り配置であるということでございますが、今日の配置は、防衛庁長官が、法成立までの空白を埋めるために、当然の行政行為として法令上許されておりますところの範囲内で、現行の定員のワク内において行なった当然の行為でございまして、何ら違法不当のそしりを受けるものでないことは言をまたないわけでございます。
かつ、この措置は——ここが大事でございます。現山中長官着任前にすでにとられておったものでございまして、当時の山中長官は、沖繩担当大臣として、県民のため全力を傾注して努力をいたしておるのでありましたから、このような重大な事実の誤認は、きわめて遺憾だといわなければなりません。
以上、要点のみを申し述べてまいりましたが、山中防衛庁長官にはみじんも責任を問われる行動はなく、不信任案の提出は全く理解に苦しむものでございます。
特に、山中長官は、衆議院議員当選八回、国会議員として二十年の政治活動を通じ、剛直、潔白な政治家として、国民より広く親しまれ、信任を集めております政治家でございます。院におきましては、すでに大蔵常任委員長の要職を歴任をされましたが、その厳正公平な委員会運営は、つとに、人柄のなせるところということで好評でございます。
また、沖繩返還の前後における最も困難な時期において、総務長官として日夜を分かたぬ努力をいたしましたことは、ただいま大出君の指摘のとおりであります。その際発揮をいたしました周到綿密な行政手腕と豪胆な行動は、沖繩県民はもとより、議員各位のよく知るところであります。(拍手)
もし、それ、政治家が院における簡明率直な言論のゆえに責任を問われたり、また、その政治家の行動が国家、国民を思う至情の深さのゆえに、一々非難が行なわれるようなことがいつまでも許されますならば、討論の花咲く言論の府ではなくなり、国民は、このような国会に対して大きな失望と不信を抱くことになるでありましょう。
私は、本院の一員として、今日の不信任案の提出を深く悲しむゆえんも、実にここに存するのであります。
また、今回の不信任案が、巷間伝えられますように、参議院において審議中の防衛二法、筑波大学法の二法案の時間切れ廃棄を期するための援護行為だといたしましたならば、まことに救いがたい行為といわなければなりません。(拍手)
以上、きわめて根拠薄弱、なおかつ本院みずからの機能と権威を失墜する不信任案に対し断固反対をするとともに、直ちに取り下げを要求をいたし、反対の討論を終わります。(拍手)