村山富市の発言 (社会労働委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○村山(富)議員 私は、提案者を代表いたしまして、ただいま議題となりました最低賃金法案につきまして、提案理由並びに内容について御説明申し上げます。
 申すまでもなく、最低賃金制は、制度ができた初めのころは、欧米資本主義諸国で、極度に窮乏化した一部の極貧層の労働者救済のための社会政策として、また資本家の側からは、産業平和や社会緊張緩和のための手段として採用されてきたのであります。しかし第二次大戦後においては、最低賃金制は労働者の最低生活保障のための統一要求として掲げられるようになっております。
 本来、最低賃金制の目的は労働者の最低生活水準を保障することであります。現在労働者の最低生活費はほぼ全国同水準となっております。また学卒労働者の初任給水準も労働市場の需給状況を反映して格差は縮小しつつあります。
 また最低賃金水準については、産業別、規模別の格差も縮小しつつあり、このような現状のもとでは原則的には全国全産業一律の最低賃金が設定されなければなりません。
 今日わが国の経済情勢を見ますとき、工業生産は躍進し、社会主義諸国を別として、国民総生産は実に世界第二位の地位を占めるに至っています。
 しかるに、わが国の労働者一人当たりの所得は、世界の中で依然として低位であります。すなわち、今日なお月五万円以下の低賃金労働者が膨大に存在し、このほか低い工賃のまま放置されている家内労働者は二百万世帯にも及んでいるのであります。一方、インフレの激化、独占価格のつり上げによって、低賃金労働者の生活はきわめて不安定となり、危機に瀕しています。こうした著しい生産と所得の不均衡を是正し、インフレ下に健康で文化的な労働者の生活を維持するに足る賃金を法的に保障することこそ最低賃金法の使命でなければなりません。
 すでに現行法実施以来十年余になりますが、現在、中小企業労働者千三百万人のうち、圧倒的多数は日額二千円以下、月額に換算すると六万円以下という賃金になっております。しかも、この膨大な低賃金労働者の存在が、他の労働者の賃金にも悪影響を与え、今日のわが国労働者の生活を常に不安におとしいれているのみならず、法的最低賃金は、さらに米価の生産費に含まれる労働力の費用の基礎ともなり、農民の所得水準をも規制しているのであります。さらに生活保護基準、失業保険の最低額、失対賃金、国民年金とも関連し、低い国民生活水準のおもしとなっているのであります。まさに国民総生産世界第二位を誇るわが国の見せかけの繁栄を物語っていると申せましょう。現行最賃法では最低賃金制度本来の役割りを十分果たし得ないのはここに明らかであろうかと思います。
 世界にも類を見ないインフレの驚くべき高進という重大な局面を迎え、いまこそ真の最低賃金制を確立することこそ国家の急務であります。
 以下、法案の内容について御説明申し上げます。
 まず第一に、最低賃金の適用方式は全国一律制にいたしたのであります。このことは特にわが国のように、産業別、業種別、地域別の賃金格差がはなはだしく、低賃金労働者が多数存在する状態のもとでは、それぞれの最低賃金を定めることは最低賃金制度の効果を半減せしめ、賃上げの足を引っぱることにさえなるからであります。
 なお全国一律の最低賃金制の上に、労使の団体協約に基づいた産業別あるいは地域別に拘束力を持つ最低賃金の拡張適用の制度も積み上げることといたしました。
 第二は、最低賃金の決定については、労働者の生計費(原則的には標準家族の必要生計費)と一般賃金水準等を考慮してきめることといたしました。
 第三に、最低賃金の決定及び改正は行政委員会の性格を持つ最低賃金委員会に権限を持たせることとし、同委員会は労使同数の委員とその三分の一の公益委員をもって構成することといたしました。
 第四に、最低賃金委員会は六カ月に一回、必要生計費及び一般賃金水準に関する調査を行ない、その結果を公表し、必要生計費が三%以上増減したときには最低賃金の改正を決定することといたしました。
 以上、この法律案の提案理由及びその概要につきまして御説明を申し上げました。
 今日までのあってもなきにひとしい無意味な最低賃金法に対する汚名をそそぐために、何とぞ慎重に審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いして、提案説明を終わります。(拍手)
    —————————————

発言情報

speech_id: 107204410X01119740326_004

発言者: 村山富市

speaker_id: 16399

日付: 1974-03-26

院: 衆議院

会議名: 社会労働委員会