田口一男の発言 (社会労働委員会)
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○田口議員 私は、提案者を代表いたしまして、ただいま議題となりました労働基準法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由と概要について説明いたします。
申し上げるまでもなく、労働基準法は、憲法二十七条に基づいて制定されたものであり、憲法二十五条の生存権を労使関係の場で実現することを目的としております。すなわち、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を満たすべき労働条件で働くことができるように、労働条件の最低基準を定立したものでありまして、その基準の順守を使用者に対し厳格に要求する労働者保護法であります。あわせて、労働基準法が定立する最低の労働基準は、広く国際的労働基準と密接な関係を持っていることも御承知のとおりであります。
今日、わが国の生産力は、世界各国に類のない高度成長をなし遂げ、量的にも質的にも国際経済の中で大きな力を持つようになりましたが、このような高度の成長をもたらした要因は、わが国労働者がきわめて高い労働強度で、長時間労働をしいられて来たことにあるのであります。
その事実をよく示す証拠の一つに、労働基準法の違反事項件数はきわめて多く、労働省が発表したここ数年の数字を見ても、年間定期監督実施二十余万事業所のうち七〇%に及ぶ事業所の違反が摘発されているのであります。ちなみにその違反内容は、安全衛生、健康管理、労働時間、割り増し賃金、休日労働の順であります。それとうらはらに、労働災害や職業病が高度成長を遂げ、労災保険の新規適用者数は毎年百五十万人を数え、官公労働者を除く領域だけでも、労災による死亡者は年間五千人をこえているのであります。このことはつまり、大部分の労働者が安全基準に達しない危険な職場で、低賃金と長時間労働をしいられ、命と健康をすり減らしながら働いていることを如実に示すものであります。
とりわけ労働時間については、その長さを欧米諸国と比較した場合、昭和四十六年の製造業生産労働者の年間平均で、週実労働時間がわが国は四十二・四時間であり、アメリカ、西ドイツとは週五時間余の差があり、その他主要西欧諸国に比して週一・五ないし三・五時間程度長いのであります。また欧米諸国ではすでに一般化している週休二日制や、年次有給休暇の長期連続活用は、実質的内容から見るならばその普及の一歩を踏み出したにすぎない現状であります。
さらに、全産業にわたって女子労働者の進出は著しいものがあります。全労働者中に占る比率も三十数%に達し、いまや女子労働力を抜きにして日本産業の運営は不可能といえる程度に至っているのであります。その中で特に注目しなければならないことは既婚者が多くなり、その結果、いわば家事、育児と、職場の勤務を両立させていかなければならないという、精神的、肉体的により過重な負担を要求される立場の女子労働者が急増し、母性保護と健全な育児制度の確立が緊急の課題になっているという事実であります。
こうした現実を直視するとき、これまでの経済成長の成果を、これに貢献してきた人々に還元することは当然の要請でありますし、労働面について見ても、賃金所得への還元はもちろんのこと、労働時間等への還元も十分考慮し、労働者生活全般の福祉の向上をはかるべき段階に来ていると考えるのであります。
このことを換言すれば、わが国の労働条件を国際水準に引き上げていくことは、国民福祉の向上という内的要請にこたえることであるとともに、国際的な労働条件の確保を通じて、日本経済の姿勢を正し、国際経済社会との調和に資することにもなるのであります。
こうした考え方に立ちまして、週休二日制の採用、労働時間の短縮、坑内労働者、乗務員労働者等、危険な労働時間の大幅短縮、深夜業の制限その他労働条件の基準の改善をはかるとともに、女子労働者の特色に対応して、出産に伴う産前産後休暇の期間の延長、妊娠中及び産後一カ年を経過しない女子の解雇の禁止、育児時間の延長その他女子労働者の労働条件の基準の改善をはかる等の必要性はきわめて大きく、かつ急を要するのであります。
以上がこの法律案の提案理由とその概要であります。
何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたしまして提案説明を終わります。(拍手)
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