荒牧寅雄の発言 (公害対策並びに環境保全特別委員会)
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○荒牧参考人 いすゞ動車の社長荒牧でございます。
弊社は、ディーゼルトラック及びバスと、小型ガソリン車の製造、販売をいたしておりますが、会社概要につきましては、お手元に提出してございます「いすゞ案内」をごらんいただきたく存じております。
では、昭和五十一年度排出ガス規制対策の推進状況につきまして、お手元に提出してあります説明資料を参照しながら御説明申し上げます。
まず、技術開発体制でございますが、説明資料の二ページ及び三ページに組織と担当項目を、四ページの別表−1に昭和四十年以降の排出ガス対策研究施設と研究者数の推移を説明し、五ページの別表−2に排出ガス対策研究開発費の推移をそれぞれ示しております。
表でごらんいただけますように、開発にはあらゆる部門の技術者がそれぞれの専門分野で研究を行ない、それらを総合して推進しております。
研究施設につきましては、規制値が強化されますたびに高精度のものを必要としますので、逐年陳腐化いたしますことと、研究規模を拡大することによりまして、毎年追加設置をいたしております。
研究者数並びに研究開発費も逐年ごらんのように増加いたしております。
弊社といたしましては、ガソリン車の排気対策のほかに、ディーゼル車の排気対策、騒音対策、車両の安全対策など重要な法規制対策の研究を推進せねばなりませんので、ガソリン車の排気対策に、現在研究者を百二十八名(別表−1)投入していることと、研究開発費を現在までに約七十億円(別表−2)投入しておりますことは、弊社の規模といたしましては、きわめて大きな数字でございます。
しかしながら、これだけではとうてい足りませんので、昭和四十六年七月に、米国のGM社と安全、公害に関する技術提携契約を結び、技術導入をはかりますとともだ、国内はもとより欧米の大学、研究所、触媒メーカー、公害防止機器メーカー等と委託研究または共同研究をしております。英、米、独等二十社ぐらいに及んでおるのでございます。
さらに、昨年九月には、本田技研工業株式会社と契約を結び、CVCC方式の技術導入をはかるなど、可能な限りの努力を傾注いたしておるのでございます。
次に、排気対策技術の研究経過を申し上げます。
すでに皆さま御承知のとおりと存じますが、ガソリン機関の排気は、燃焼がよければCO、HCは少なくなりますが、NOxは大となります。また逆に、燃焼が悪ければNOxは少ないが、COとかHCは大となります。このように逆な現象を同時に克服いたさなければ、この基準には合格しないのでございます。NOxを少なくするためには、まず燃焼を悪くする、そうして後にまた還元触媒を使ってOを取り去る。またCO、HCを少なくするためには、御承知のように酸化触媒を使ってCO2またはH2Oとするのでございます。
かような原理を中心にいたしまして、このやり方を大別いたしますと、第一番に燃焼あと処理方式の研究、第二番に燃焼改善そのものによるアプローチの努力、第三番目に、通常のガソリンエンジン以外の原動機の検討であります。
まず、一の燃焼あと処理方式でありますが、説明資料の六ページに記載してありますように、昭和四十一年よりAIR、すなわち二次空気噴射装置、それからサーマルリアクター、排気熱反応方式、とにかくCO、HCをよくすることでございます。EGR、排気ガス再循環装置、これは一ぺん燃えたガスでございますから、それをもう一ぺん回すのですから、燃焼が悪くなる方法の一つでございます。それから酸化触媒コンバーター、いま申しましたCO、HCをCO2またはH2Oにする、そして無害のものにしていくというコンバーターです。それから還元触媒コンバーター、これはNOxからOxというものを取り除いて、Nだけにして無害にもっていこう。こういうものの研究を進めてまいりました。
二の燃焼改善によるアプローチでありますが、資料の六ないし七ページに記載してありますように、昭和四十六年より逐次、電子制御ガソリン噴射システム、ECGI、層状給気燃焼方式、これはなかなかむずかしゅうございますけれども、濃い燃料を送ってやって、最初にNOxを出さないようにして、そして順次自然に回りながら燃やしてやる、こういう方法でございます。それから次にCVCC、御承知の本田技研さんの開発エンジンでございますが、原理、考え方は大体同じようなことでございます。などの研究を進めてまいりました。
三の通常のガソリンエンジン以外の原動機ということの検討につきましては、資料の七ページに記載してありますように、昭和四十五年より電気自動車の研究をしております。
なお弊社は、小型高速ディーゼルエンジンについて長年の経験と市場実績を持っておりますが、ディーゼルエンジンは、もともと排気の有害成分が少なく、また燃料消費量も少のうございますので、エネルギークライシスに対処するエンジンとして将来のために、振動、騒音対策等ということを中心にいたしまして、さらにまたNOxを少なくするための排気対策の研究も進めております。
次に、五十一年規制に対応する技術開発状況について申し上げます。
弊社は、NOx低減対策として、資料の一〇ページに記載されております五種類のシステムを重点的に検討してまいりました。
一番は、気化器と、それから排気ガスの再循環装置、EGR、さっき申しました燃えた排気ガスをもう一ぺん回すということによって燃焼を悪くするというふうなEGRと、それから酸化触媒を使った組み合わせ。二番目は、電子制御燃料噴射、ECGI、それからさっき申したEGRを組み合わせ、さらにまた、これに酸化触媒を加えて組み合わせていく。三番目には、デュアル・コンバーター・システム、すなわち気化器プラスEGRプラス還元触媒プラス酸化触媒のこの四つの組み合わせ。四は、クローズドループECGIシステム、すなわち電子制御燃料噴射プラスEGRプラスO2センサー、つまりオキシゼンセンサーを使う、プラス三元触媒、CO、HC、NOxともに触媒するという組み合わせでございます。五番目は、サーマルリアクターであります。
次に、これらのシステムと問題点について申し上げますならば、一番に対する試験結果を資料の一二ページ、別表−3に示しますと、五十年規制には合格しますが、五十一年規制にはNOxが合格しません。試験データで見られますように、このシステムでNOxを低減するにはEGRの量を増加し、空燃比を小さくせねばなりません。空気と燃料の比率を小さくせねばなりません。EGR量をあまりに増加すれば燃焼が不安定となり、運転がしにくくなりますし、空燃比を小さくすれば濃い混合気となり、HC、COが増大いたします。このような制約がございますので、このシステムでは五十一年規制に合格することができません。
二に対する試験結果を資料の一三ページ、別表−4に示しております。五十年規制には合格しますが、五十一年規制にはNOxが合格いたしません。このシステムもEGR量を増加すればNO2は低減しますが、一と同様の理由で制約を受けますので、五十一年規制に合格することができません。したがいまして、五十年規制に合格したからといって、その技術を延長させて、それで五十一年規制の対策ということにはなりません。五十一年規制に対しては、別の手段でNOxの低減方策を講じなければならないのでございます。
三のデュアル・コンバーター・システムは、前述の一のシステムに還元触媒を追加して、NOxの低減をはかろうとするシステムでありまして、試験結果を資料の一四ページ、別表−5−1に示しております。ごらんのように装置類の組み合わせによっては初期値、最初の値としましては五十一年規制に近いものを得られております。しかしながら直ちに還元触媒の劣化が著しく、耐久試験で五十一年規制に合格することができません。資料の一五ページ、別表−5−2に還元触媒の耐久試験の結果が示してございます。この表に見られますとおり、わずか六千四百キロメートル程度の走行でNOxは二・五から三・九倍に劣化しております。最大の問題点は、還元触媒の耐久性の問題でございまして、弊社といたしましては、国の内外の触媒メーカーにコンタクトをいたしておりますが、いまだに合格するものが得られないでおります。
四は、電子制御燃料噴射装置と三元触媒を用いてNOxを低減しようとするシステムで、排出ガス中の残留酸素をオキシゼンセンサーによって検出して電子制御装置にフィードバックし、燃料噴射を微妙に制御して排出ガスの成分を改善し、さらに三元触媒によって排気中のCO、HC、NOxを同時に処理しようとするシステムであります。試験結果を資料の一六ページ、別表16に示しますが、表に見られるとおり、実験初期値は五十一年規制値に近いも一のを得られましたが、三元触媒の耐久性がなく、三万キロメートル走行後には、COは二・九倍、HCは五倍に、NOxは四・八倍に、それぞれ悪化しており、五十一年規制値を大幅に上回り合格いたしません。最大の問題点は、三元触媒とO2センサーの耐久性であります。
五のサーマル・リアクター・システムは、触媒を用いないで、どの程度NOxが低減できるかを追求するために研究しているシステムでございまして、空燃比を相当に濃くして、まず燃焼室の中ではNOxの発生を押え、燃え残って排出された燃料の成分を排気集合管の中で燃焼させる方式であります。試験結果を資料の一七ページ、別表—7に示しておりますが、現在のところ、五十一年規制値にははるかに及んでおりません。
さらに別な手段としてCVCC方式の研究を開始しましたことは先ほど申し上げました。日なお浅く、データを報告できる段階には至っておりませんが、今後も一研究を推進いたします。
弊社は、−設立以来、高品質をもって顧客に奉仕するという理念で経営いたしてまいりました。したがいまして、このたびの排出ガス規制に対しましても、あらゆる努力を傾注いたしまして研究を推進しておりますが、現時点におきましては、残念ながら規制値を満足させる試験結果を得るに至っておりません。このことは、五十一年排出ガス規制値が、現在の技術水準に対してきわめてきびしく、困難なものであることを意味しておると私は考えております。
私は、今後も排出ガスの改善に向かって米国ゼネラルモーターズ社の技術導入なども一含めまして、全社をあげて推進いたす所存でございますが、現状に対する皆さまの御理解をお願いいたす次第でございます。
以上、弊社の状況説明と意見を申し述べさせていただきました。
御清聴まことにありがとうございました。