鈴木修の発言 (公害対策並びに環境保全特別委員会)
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○鈴木参考人 私、鈴木自動車工業の鈴木でございます。
私どもの排ガスの規制対策問題につきまして御説明を申し上げたいと思います。
まず、私どもの会社でございますが、自動車のほかにオートバイ、雪上車、船外機等を生産いたしておりますが、これらのエンジンはすべてツー・サイクル・エンジンでございます。この点が他のメーカーさんと異なっている点かと思います。また、自動車の生産、販売も一、軽自動車すなわち三百六十ccの排気量の車だけでございまして、これまた他のメーカーさんと違っている点かというふうに思っております。次に、この軽自動車、三百六十ccという車も日本独特のものでございまして、ツー・サイクル・エンジンの自動車を量産しているのも日本のみでございまして、アメリカはじめ、ほかにはないというふうに思っております。
このように、ガソリンを燃料とする自動車といいますと、一般にフォアサイクルというふうにお考えでございますが、ツーサイクルのエンジンで自動車をつくっているというのが実情でございます。もちろんロータリーというようなこともございます。
そこで、自動車の排気浄化対策そのものは、そのエンジンの排気特性と申しますか、メカニズムによってきまってまいります。その点でツー・サイクル・エンジンの機構や特性を御説明申し上げたいと思います。
いささか技術的になりますが、お手元へ資料として提出をさせていただきました図1をごらんいただきたいと思います。この図はツー・サイクル・エンジンのシリンダーの内部を示しているのでございますが、ガソリンと空気の混合したものが入りまして、ピストンで圧縮をされ、プラグが点火をして爆発を起こし、動く力になっているわけでございます。この繰り返しでございますが、右のほうの「排気」とありますのは、その爆発すなわち燃焼した排気といいますか、燃えかすが出ていき、左のほうから同時に次の新しいガスと空気のまざったものが入ってまいります。一方、フォアサイクルの場合は、図を見ていただきますとおわかりかと存じますが、ツーサイクルと本質的に異なっておりまして、爆発して燃焼した排ガスといいますか燃えかすを、一たん全部出してしまってから新しいガスと空気のまざったものをシリンダーの中に入れるという、排気と吸気、それぞれ独立をしているわけでございます。
先ほど申し上げたように、ツーサイクルは排気と吸気を同時に行なうために、完全に燃えかすが出てしまわない、一部がシリンダーの中に残って、その中へ新しいガスが入ってまいります。このために燃焼温度が低く、NOxの発生が少ないという結果になっております。一般に燃焼温度が高い場合にNOxが多く、低いとNOxが少ないといわれている点でございます。また、ツーサイクルの場合、先ほど排気、燃えかすの出るのと、掃気すなわち新しいガスが入っているのと同時であるために、一部燃えかすが残ることも一申し上げましたが、逆に新しいガスの一部がそのまま出てしまいます。これを普通吹き抜けといっておりますが、このように一部吹き抜けてしまうので、HCが多く排出されるということにもなるわけでございます。
以上整理してみますと、エンジン特性によってツーサイクルはHCが多く、フォアサイクルはNOxが多いという結果になっております。このことから昭和四十八年規制は、エンジンの特性を認めたきわめて合理的な設定かというふうに考えております。
資料の表1に、昭和四十八年のそれぞれの規制値がございますけれども、ツーサイクルのNOxは〇・三グラム・パー・キロメートル、フォアサイクルのNOxは二・一八グラム・パー・キロメートル、約七分の一ということになっております。半面HCはツーサイクルが一六・六グラム・パー・キロメートル、フォアサイクルは二・九四グラム・パー・キロメートルと約六倍になっております。ツーサイクルはエンジン特性としてNOxは少なく、一部エンジンの改良を加えることによって、昭和五十一年規制値の〇・二五グラム・パー・キロメートルは、昭和五十年でも一達成が可能な見通しでございますから、あとはCOと吹き抜けた未燃焼ガス、すなわちHCをエンジンから出たあとで、もう一度どこかで燃やすことによって排気は浄化できるということでございます。
私どもは、この考え方で、再燃焼方式を主体にして実は開発を進めてまいりました。しかしながら、運転条件、いわゆるアクセルの踏み方により、排出ガスの流れる量は変化しますので、常に安定してすべてを燃やすということが、なかなか困難でございます。一部が燃えたり燃えなかったりするので、浄化のばらつきがございます。これが解決困難な問題点の一つになっております。また、このように排出ガスを燃やすと多量の熱が発生をいたしまして、ガス温度が大体千度から千百度ということでございます。この温度は、たとえばアルミで六百六十度、銅で千八十三度ぐらいで溶けることと比べていただければ想像がつく値でございます。このように、もう一度燃やせばと申し上げましたが、研究を進める中で、進めば進むほど予想しなかった困難な問題が次々と発生をいたしております。
すなわち、浄化装置の二次燃焼室は高温度に耐えられるように特殊耐熱鋼を使用しておりますが、加熱、冷却の繰り返しと、排気圧及び振動に耐え得る構造と強度が要求をされます。この装置の完成には、さらに長い実験とテストが必要であると考えております。浄化装置の温度上昇防止対策として二次燃焼室を二重構造にいたしましたり、あるいはファンを設けて新しい空気を送って冷却するという、いわゆるフィルムクーリング方式を採用いたしましたが、エンジンルーム内の温度の上昇により、一部、部品の中には保証温度の限界に近くなるものがあり、さらに改善のための研究を進めておりますが、軽自動車という限られたスペースの中でHCを燃やす対策と燃えたあとの熱の対策の解決に迫られているのが実情でございます。
さらに、ユーザーの千差万別な運転のしかたに対しても一、ばらつきがないよう高い信頼性を確保するには、もっと時間をかけて積み重ねる必要があろうかと思います。
ただいまホット・テン・モード対策車についてのみ申し上げましたが、本年一月告示によりコード・イレブン・モードの測定法が新しく追加をされまして、測定法は実は二つになりました。ツーサイクルの場合は、エンジンの始動直後に浄化装置の温度を急激に上げてHCを燃焼させるためにコールド・イレブン・モード専用の装置が必要となって、この二つの測定法にそれぞれ独立した専用の装置をつけなければなりません。したがいまして、現在ホット・テン・モードに全力をあげている段階で、さらにコールド・イレブンモードが追加され、排気浄化対策の成否が企業の存亡にかかわるだけに、設計、研究者の六〇%を投入し、研究試作費の八〇%をかけて、ここ数年努力いたしておりますが、五十一年四月の生産化は非常に困難な状況となっております。私どもの技術開発の現状からたいへん御迷惑をおかけいたしておるわけでございます。その点、深くおわびを申し上げたいと思います。
なお、資料、表1として昭和四十八年、五十年、五十一年のツーサイクル、フォアサイクル別の規制値の表を添付させていただきました。これは昭和四十八年が、エンジン特性によりましてツーサイクル、フォアサイクルのHC、NOxがそれぞれ異なった値となっております。昭和五十年、五十一年はエンジン特性を一切考慮せず、同一数値とするとのお考えのように伺っておりましたけれども、ごらんのように、ホット・テンモードでツーサイクルで対策容易なNOxは〇・三グラム・パーキロメートル、フォアサイクルが一・二グラム・パー・キロメートル、ツーサイクルで対策困難なHCはフォアサイクルと同一の〇・二五グラム・パー・キロメートルと、ややバランスが欠けていると考えられましたので、添付をさせていただきました。
なお、残された期間、全力をあげて努力をする所存でございます。よろしくお願いをいたします。
これで説明を終わります。長時間ありがとうございました。