豊田英二の発言 (公害対策並びに環境保全特別委員会)
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○豊田参考人 ただいま委員長より御指名をいただきましたトヨタ自動車工業株式会社の社長豊田でございます。
本日は、国会の場におきまして私どもの実情につきまして御説明する機会を与えていただきましたことを深く感謝を申し上げる次第であります。
私どもトヨタは、創業以来、よい品、よい考えを基本理念として努力してまいりました。今回の大気の清浄化につながる自動車の排出ガス対策につきましては、メーカーとしての社会的責任を深く自覚するとともに、わが社の総力を結集し、あらゆる可能性を追求しつつ、その技術開発に最大限の努力を傾注してまいりました。
すなわち、昭和三十九年より排出ガス対策に関する研究に着手し、昭和四十年にはプロジェクトチームを組みました。さらに、より深い研究を進めるために、同年東富士研究所を着工いたしました。昭和四十三年には、第一次排気ガス実験棟が完成いたしましたので、排気プロジェクトチームのうち、先駆的研究部門を東富士研究所に移しました。そして開発を展開する部門として本社技術部門の体制を整えてまいりました。
研究開発費として、昭和四十五年から昭和四十八年までに約二百九十五億円を投入し、昭和五十年末までに、さらに約四百二十四億円を投入する予定であります。研究者は、昭和四十五年に五百十九名でございましたが、その後、逐年増加し、昭和四十九年には千八百七十名の規模になっております。
このように、私どもは五十一年規制を達成することをトヨタの基本方針として、最大の努力を傾注いたしております。
五十一年規制の技術面について申し上げますと、委員の先生方すでに御高承のとおり、一酸化炭素及び炭化水素を低減する方法と窒素酸化物を低減する方法とは、燃焼温度の点から考えて相反する関係にあり、この三成分を同時に低減するのは、なかなか容易ではございません。特に乗用車の五十年規制は、規制が実施されていなかった時期に比べ、一酸化炭素は五%以下に、炭化水素は四%以下に、窒素酸化物は三九%以下にするという大幅な低減が要求されております。さらに五十一年規制は、窒素酸化物を八%以下に低減しなければならないというきびしいものでございますが、これは技術的に非常に困難な水準でございます。
ここで、トヨタがこれまで研究開発を行なってまいりました五十一年規制に対する排出ガス対策技術につき御説明申し上げたいと存じます。
窒素酸化物に対するきわめてきびしい数値を達成する道は、第一にガソリンと空気の割合、すなわちどのような混合比を使うか、第二に還元触媒を用いるか、第三にガソリンの性質、組成等を変えるかの三つの手法に分類されます。トヨタはこれらのすべてに対しまして、技術力を動員し、目標を〇・二五グラム・パー・キロメーター達成の一点にしぼり、研究、開発を実施いたしてまいりました。
その第一の、混合比からの研究といたしましては、濃混合比方式としては、リアクターシステムまたはこれに酸化触媒を組み合わせたシステム等を、また理論混合比方式としては、三成分の同時処理システム等を、あるいはまた希薄混合比方式としては、トヨタ燃焼制御方式等を対象といたしました。なお、この分類の一つとして、本田CVCCがあり、これも導入、研究をいたしました。
第二の、触媒を用いる方式としては、還元触媒を加えたデュアル触媒コンバーターシステムその他の研究、開発を重ねてまいりました。
機能部品としては、サーマルリアクターは自社開発のほか豊田中央研究所、日本自動車部品総合研究所、米国のデュポン社にも開発を委託しました。
また、酸化触媒は約五千種に及ぶ研究のほか、海外十八社を含む三十五社の約二百種を研究し、還元触媒は約四百種の自社開発に加えるに、十四社で約四十種に及ぶ検討をいたしました。さらに、三成分触媒は自社のほか海外を含む七社を対象にそれぞれ研究、開発を実施いたしました。このほかにガソリン噴射等も日本一社、海外六社に対し、共同研究をいたしました。
次に、第三の供給燃料の性質、組成等を変更させる方式といたしましては、後述いたしますJPLの水素添加方式をも含んだトヨタ独自の燃料処理方式等を研究いたしてまいりました。
このように、考えられるすべてに対しまして幅広く研究、開発を展開、推進いたしました。これらの研究の結果、このきわめてきびしい〇・二五グラム・パー・キロメーターの数値は、現在の燃焼制御方式では到達不可能に近い見通しを持ちましたので、還元触媒方式による解決策を見出すべく、ここ数年間、広範囲の努力と探索を進めまして、初期値は達成することはできましたが、触媒の耐久性等が、なお不足のため五十一年規制値を完全に満足することはできませんでした。また、燃料の性質、組成等の変更につきましては、鋭意研究中でありますが、十分な見通しを得るには若干の年月を必要とします。
なお、燃焼制御方式につきまして、ふえんいたしますと、ある程度の窒素酸化物の値に押えることはできますが、実用的に規制値を満たすことはできず、また、現在の希薄燃焼制御方式から出る窒素酸化物を、還元触媒をもってさらに浄化することは技術的に不可能であります。
さらに別種の研究につきましても、世界的規模で評価、検討をいたしました。たとえば未公表の研究として、西独ジーメンス社の改良燃料によるもの、米連邦航空宇宙局の委託によるジェット・プロパルション・ラボラトリーによる水素添加による燃焼制御または米国ドレッサー社の燃料微粒化による燃焼制御等を含めまして、研究につとめてまいりました。
このように社内の研究、開発のみならず、国際的にも評価を加え、考えられるすべてについて研究、開発を実施いたしましたが、現時点では〇・二五グラム・パー・キロメーターを達成することはできませんでした。
続きまして、暫定値について申し上げますと、私どもはいままで申し上げましたとおり、昭和四十七年十月五日の環境庁方針告示に従い、〇・二五グラム・パー・キロメーターを達成することのみに目標を定め、そのためのシステムを組み、研究、開発を実施してまいりました。ところが、本年六月聴聞会において、環境庁より暫定規制値を提案してほしい旨の御要望がありましたので、即日検討に入りました。しかし暫定規制値の設定には、いままでの開発結果を再検討し、さらに〇・二五グラム・パー・キロメーター対策用のシステムとは別のシステムに組み直し、耐久性等を含め、どこまで可能かを広範囲な製品について研究する必要があります。それには検討期間が不足の点もありまして、先般、環境庁には、とりあえず次のとおりお答えをいたしました。
すなわち、五十年対策システムの延長上でたえ得る数値として、一部の車種について一・〇ないし一・一グラム・パー・キロメーター、その後の目標値としては、全車種に対し、五十二年ないし五十三年に〇・九グラム・パー・キロメーターのレベルになるかと思いますが、今後暫定規制値対策のシステムについて研究を進め、おおむね一年後にその結果を御報告申し上げることにいたした次第であります。
特に窒素酸化物の暫定規制値に関連いたしまして、試験法がきまっておりますので、窒素酸化物はほぼ車両の重さに比例して排出されます。すなわち軽い車より重い車のほうが排出量が多くなりますので、車両重量と窒素酸化物排出量は相関性があることに御留意をいただきたいと存じます。
このような技術的問題のほかに、生産と品質保証という面からのばらつきの問題と、開発目標値と規制値の関係や耐久性の確認、さらには開発より生産に至るまでのリードタイム等を十分御配慮いただきますようお願い申し上げます。
さて、いままで御説明申し上げましたとおり、あらゆる有効と思われます方法につきまして、幅広く検討を加え、研究につとめてまいりました。また今後も努力を続けますので、近い将来独自の方法によって、さらによい結果を得ることを確信いたしております。
つきましては、私どものこのような実情から、五十一年規制値等につきまして若干の要望をさせていただきたいと存じます。
五十一年規制は、五十年規制のまま、さらに二年間継続されるようお願いいたします。
その後につきましては、五十年規制による大気汚染減少効果等の実績や、技術開発の進歩及び社会経済情勢の変化等を勘案して、総合的判断に立って妥当な規制値を再検討していただきたいと存じます。
次に、規制の達成に関連して、組成性状を明確化した無鉛ガソリンの健全なる供給、測定機器の開発、特に精度向上及び標準ガスの開発等について、具体的、実質的な推進をお願いいたします。
以上、私どもがここ十年来、本問題に関しまして、たどりました経過を申し上げ、かつ若干の実情を申し述べさせていただいた次第でございます。
なお、本問題は、資源、コスト、その他国民経済、国民生活、ひいては国民の福祉等広範な影響を及ぼすものと考えますので、大所高所の見地から格別の御配慮をお願い申し上げる次第でございます。
どうもありがとうございました。