岩越忠恕の発言 (公害対策並びに環境保全特別委員会)

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○岩越参考人 日産自動車の岩越でございます。
 参考人といたしまして、昭和五十一年度自動車排出ガス規制に取り組んでおります日産自動車の現状について御報告申し上げます。
 現在、わが国の公害問題、特に大気汚染問題につきましては、自動車からの排出ガスがその一因であり、大気清浄化のために定められました規制値を一日も早く達成することが、私どもの大きな社会的責任であると思っております。
 このために全社をあげて日夜努力を重ねてまいっておりますけれども、まことに遺憾ながら実験段階における初期値といたしましては、規制値を満足する値も一部得られておりますが、後ほど詳しく御報告申し上げますとおり、走行を重ねるにつれまして満足しなくなり、あるいは耐久上問題を生ずるという状態を来たし、または、運転性能が著しく落ちることによって、いまだ実用化できるめどをつかむに至っておらない状況にございます。全力を振りしぼって努力いたしておりますとは申しながら、大気清浄化計画の中で自動車に課せられております課題を満たし得ない点につきましては、まことに遺憾に存ずるものでございます。しかし、今後とも窒素酸化物〇・二五グラム・パー・キロメートルの目標値を一日も早く達成すべく、全力をあげて開発に努力を引き続き傾注いたす所存でございますことを御報申し上げます。
 いささか言いわけめいてたいへん恐縮でございますが、日産自動車の現状について、その内容を御報告させていただきます。
 当社が排出ガス低減対策に取り組んでおります概要の一端につきまして申し上げますと、排出ガスを低減させるための技術開発には広範囲かつ多岐にわたる技術と、それに伴う各種の実験を必要といたしますので、中央研究所、設計実験等の各部門がそれぞれ業務を分担いたしまして研究開発を進めますとともに、これら部門の総合的な連携を深めて、より効果的な開発を促進させるために、排気対策委員会を設けて、総合的見地から万遺漏なきを期しております。
 一方、自動車産業は総合産業でございますから、たとえば電子制御、触媒、各種制御機器等の排気対策に関連するメーカーさんとの協力体制も大切でございますので、安全公害対策会議並びに安全公害特別委員会を設けて、研究開発の促進をはかっている次第でございます。私は、このために必要とする研究開発費につきましては、技術陣の必要とするものは、すべて認めるという方針のもとに、排気対策関係に限りましても、昭和四十六年から四十九年、本年末でございますけれども、四百七億円余を投入してまいりました。
 四十九年度について申し上げますと、全研究開発費の五三%となっておりまして、また研究開発人員といたしましては、現在約千六百名でございますが、日夜、一丸となって努力を重ねておる状況にございます。
 ところで、昭和四十一年以降、わが国の自動車排出ガス規制は漸次強化されてまいりましたが、私どもは規制値を上回る諸対策を実施するとともに、実施時期の面でも、規制に先がけて、極力技術開発の段階に応じて実施できるものは先行採用いたしてまいりました。
 これらの諸対策によってどの程度排出ガスが低減しているかについて数字で御報告いたしますと、昭和四十年に比較いたしまして、現在の私どもの自動車は、炭化水素約六〇%減、一酸化炭素約七〇%減、窒素酸化物では約四〇%減になっております。五十年排出ガス対策車ではさらに低減され、炭化水素、一酸化炭素では九〇%以上の減、窒素酸化物では約六〇%の減少となる見込みでございます。
 それでは、続きまして、五十年排出ガス対策の概要について御報告申し上げます。
 私どもといたしましては、五十年型車の排出ガス対策として、三つの方式を基本として進めております。
 第一は、エンジン改良方式に酸化触媒を付加する方式、第二は、トーチ点火層状燃焼方式、NVCCで、第三はロータリーエンジンによる方式でございます。
 これらの方式の詳細につきましては、すでに御提出申し上げました補足資料をごらんいただくことといたしまして、ここでは時間の関係もございますので、省略させていただきたく存じます。
 これらの三方式のうち、現状では省資源の見地から、燃料消費量が最も少なく、また、これまでの開発成果が確立しておりますエンジン改良方式に酸化触媒を付加するシステムを主体として、トーチ点火層状燃焼方式とロータリーエンジンは、開発状況及びこれらの特徴を勘案いたしながら、一部の車種に採用いたしたく存じております。
 いずれにいたしましても、五十年排気対策につきましては、規制値達成は可能でございます。
 しかしながら、排出ガスを低減させますには、エンジン各部の改良と各種低減装置を採用いたしておりますが、このほかにも車両全般にわたる改造が必要となってまいります。主要な個所といたしましては、エンジンルームの形状、冷却システムの仕様、排気系統、触媒システム装着のための床部の形状、防熱板の採用等、数え上げたら限りがないほどでございまして、自動車全体に及ぶといっても一過言ではございません。現状では、五十年排出ガス対策車を実際の生産に移すために、工場の準備体制、部品供給体制の確立に全力を傾注いたしております。
 この五十年排出ガス規制に対処するためには、先ほども御報告いたしましたが、革新的な技術の採用並びに大幅な車両としての改造が必要でございますが、このような大幅な変更は、私どもといたしましては初めての経験でございます。したがいまして、万全の配慮を払ってはおりますものの、革新的技術でありますので、たとえば予期し得なかったようなトラブルが多少なりとも懸念されるのであります。このような事態の発生を未然に防止するために種々の対策を施すなど、従来のいかなる新技術採用のときよりも、はるかに多くの努力を払わせております。
 さらに、お客さまのあらゆる使用条件に対応するサービス体制を確立することが必要でございます。端的に申し上げますれば、品質の安定した生産体制、万全のサービス体制が伴わなければ、いかに優秀な排出ガス対策車を開発いたしましても、その効果を十分発揮することは保証できないと考えておるものでございます。
 当社では昭和四十五年ごろから排気中の窒素酸化物を大幅に低減するにはどうしたらよいかという研究開発に着手いたしております。現在実験段階における初期値といたしましては規制値を満足する数値も一部得られてはおりますけれども、耐久性の問題とか、運転性が著しく劣るとか等対策技術の諸困難性から、本日までのところ、いまだ実用に供し得るめどをつかむには至らない状況にございます。五十一年度窒素酸化物〇・二五グラム・パー・キロメートルを達成すべきことを緊急の責務と考え、最大の努力を重ねましたものの、かかる実情を御報告せざるを得ませんことは、まことに遺憾に存ずる次第でございます。
 五十一年排出ガス規制対策に現在、鋭意開発実験中のシステムといたしましては、先ほど御報告いたしました五十年窒素酸化物の規制基準一・二グラム・パー・キロメートルを目標としたシステムの改良によって、〇・二五グラム・パー・キロメートルを達成することは、きわめて困難でございますので、これら技術を改良し、積み重ねるだけではなくて、新たに非常に精密な管理限界をいかに確保するかが必要になってまいりますし、また、還元触媒などの新技術を採用することが必要と考えております。
 これらの考えのもとに、私どもとしましては、次の四つのシステムを主として、その他幾つかの研究開発を鋭意進めておる次第でございます。
 四つのシステムは、第一は、デュアルベッド触媒システム、第二は、三元触媒システム、第三は、トーチ点火層状燃焼方式に排気還流装置を付加したシステム、第四は、ロータリーエンジンに排気還流装置を付加するシステムでございます。
 これらの個々の詳細につきましても、時間の関係上、省略させていただきますが、お手元の資料でごらんいただきたく存じます。
 ここでは、四つのシステムの概要と技術上の課題等について、要点のみ御報告申し上げます。
 まず、デュアルベッド触媒と申しますのは、基本的に一酸化炭素、炭化水素を低減するための触媒に窒素酸化物を低減するための還元触媒を追加したシステムでございますが、実験室における初期値では、窒素酸化物〇・二五グラム・パー・キロメートルに達しているものも一部にはございますが、熱対策、性能劣化防止策、耐久性の保持が不十分であって、システムとしての総合適合性についても、さらに研究を要するところでありますし、システムのコントロール技術がきわめてきびしく要求されます関係上、これら制御技術も十分研究を進める必要がございます。
 第二に、三元触媒システムでございますが、このシステムは炭化水素、一酸化炭素及び窒素酸化物の三成分を同時に転換する特性を持った三元触媒を使用して、電子制御燃料噴射装置、酸素センサーを組み合わせ空燃比のフィードバック制御をきびしく行なう方式でございますが、三元触媒自体の耐久性が乏しいこと、空燃比コントロール技術がきわめてむずかしいので、さらに鋭意研究を進めてまいる所存でございます。
 第三は、トーチ点火層状燃焼方式に排気還流装置を付加する方式でございます。
 第四の方式としては、ロータリーエンジンに排気還流装置を付加する方式でございますが、この第三、第四の両方式とも、排気還流量をふやすことによって、運転性、燃費が大幅に悪化いたしまして、五十一年規制に対していまだ見通しが得られない状況でございます。
 以上が、五十一年排気対策に関する私どもの現状でございますが、さきに環境庁長官殿より、現在開発中の五十年低公害車システムを基本として、当面窒素酸化物をどの程度低減できるかについて、新たに御下問をいただきました。この点につきましては、あらためてその線に沿った実験を追加して、鋭意努力を重ねております段階でございますので、技術的根拠をもってお答えすることはむずかしいわけでございますが、達成可能なめどといたしまして、五十年度規制値の二五%減程度、〇・九グラム・パー・キロメートルを考えております。
 しかしながら、かりにこれを実施いたすことにきまったといたしましても、五十年規制車のフォローアップ体制、新しいEGRシステムの開発及びシステム全体の開発から生産に至る諸般の準備を考えますと、相当の準備期間を要しますので、最大の努力をいたしましても、実施時期は五十二年度からになるものと思われます。
 当日産自動車の自動車排出ガス低減に関し、特に五十一年度窒素酸化物〇・二五グラム・パー・キロメートル達成への企業姿勢及び開発状況につきましては、以上御報告申し上げたとおりでございますが、国民の健康保護及び生活環境保全をはかるため、企業の大切な社会的責任として、さらに一段と研究開発を促進して、もって御期待に沿うよう努力いたす所存でございます。
 しかしながら、自動車は、その使用されている実情から考えますと、あらゆる職業の方々、そして性別、年令を問わず、幅広い方々によってみずから運転されているのが実態でございます。しかも、使用される外的条件は、地理的条件、気象条件、道路条件等、千差万別と申し上げても過言ではないと存じます。
 あえて言わせていただくならば、専門家が運転される諸機器とは大いに異なり、特に安全性、信頼性、耐久性の点で技術を要請されているものと考えております。万一不十分な研究開発、耐久試験等によって安全性を欠くことがあるような場合、人身事故にもつながる可能性があることを考えますと、自動車メーカーとしての責任を遂行するためにも、慎重な上にも慎重なフォローアップを重ねなければならないと信ずるものでございます。
 したがいまして、五十一年度窒素酸化物の規制につきましては、万全を期して努力いたしますので、いましばらくの御猶予を賜わりたく、ここにお願い申し上げまして、御報告を終わりといたします。
 なお、お手元の資料でございますけれども、いまお話を申し上げました内容につきまして、それを図表にまとめたものでございまして、いろいろ研究段階と、現在の規制とわれわれのやっております実情等について、まとめて資料といたして御提出いたした次第でございまして、よろしくお願いいたします。
 以上でございます。

発言情報

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発言者: 岩越忠恕

speaker_id: 3160

日付: 1974-09-11

院: 衆議院

会議名: 公害対策並びに環境保全特別委員会