河島喜好の発言 (公害対策並びに環境保全特別委員会)
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○河島参考人 本田技研工業株式会社社長河島でございます。
当社は戦後、創業者でございます本田宗一郎の技術を母体といたしまして発足した会社でございます。近く創立二十六周年を迎えますまだ若い会社でございます。
企業規模でございますが、最近の年間売り上げでは約四千三百五十億円、そのうち二千四百億円が輸出でございます。約六割に相当するのでございます。
もともと当社は二輪車メーカーとして成長をしてまいった会社でございますが、十一年ほど前より小型四輪車の生産も開始をいたしたわけでございます。現在四輪車の売り上げに占めます割合は、約四割ということになっております。
自動車の排出ガス規制に関しまして、本年七月、環境庁長官よりの御要請に対しまして、私どもが御報告申し上げました昭和五十一年度規制対策に関する内容を要約して申し上げますと、次のようなものでございます。
すなわち当社では、CVCCシステムをもって五十一年規制値を実験室的には達成してはおりますが、いまの状態では、これが多量生産され、広く社会に受け入れられ、お客さまに喜んで使っていただける自動車とはいえないと現時点では判断しております。
私どもは社会的の責任の一つとして、公害対策の重要性を十分認識し、今後とも引き続き技術開発を積極的に進めてまいりますが、これの実現には、さらに新しい研究開発成果の誕生を必要とするのでございます。
このような次第でございますので、今後とも適当な間隔で聴聞会のような機会をつくっていただき、その間の技術進歩の状況などを把握していただき、それに基づいて規制の適切なステップアップをはかっていただくようお願い申し上げたわけでございます。
また、私どもが現在生産しております小型車を中心にいたしまして、五十一年規制の暫定値について御説明申し上げました。
これは、当社はすでに五十年規制を満たす車としてシビックCVCC千五百を生産、販売いたしておりますが、そのNOx排出ガスに関する性能を踏まえまして、今後技術開発成果の投入、品質管理水準の向上によって車の性能を維持しつつ、到達し得るNOxのレベルとしては千五百cc、シビックCVCC車においては〇・六グラムパー・キロメートルを目標といたしております。
なお、この数値〇・六グラム・パー・キロメートルは、車両重量やエンジンの特性等から、必ずしもすべての車に共通して適用できるものとは考えておりません。したがいまして、かりに暫定規制値を御決定になるとすれば、前にお話しいたしましたような諸条件などをお考えいただきまして、妥当な水準をきめていただきたいものというふうに申し上げた次第でございます。
すでに御高承のとおり、私どもはこの排出ガス対策を進めるにあたって、幾つかの排出ガス防除技術を並行的に研究してまいりましたが、それらを総合的に評価した結果、最も望ましい方法として、やはりエンジン本体の燃焼過程を改善し、できるだけ排気をもとできれいにすることのできる方式が一番よいということを決定し、その実用化に研究開発の重点をもっぱらしぼってまいりました。これがCVCC方式でございます。そしてこれをホンダシビックの車体に搭載いたしまして実験を重ね、実用化の問題点を解明してきたものでございます。
排出ガス対策という新しいシステムの開発にあたって、それを構成する個々の部品や材料に、私どもの未知な分野をなるべく持たないことが、まず第一に大切なことだと考えました。未知な分野に属する技術を導入しないことによって将来意外な災いを起こさないで済ますことができると考えたからでございます。また、現在の生産ラインの大部分の設備が流用できて生産ができるということは、排気対策を時間的により早く実施できるという点をシステム選択の重要なファクターと考えた次第でございます。
当社の限られた研究開発力を集中し、力の分散防止をはかり、構造的には従来のレシプロエンジンの改造型によって排気対策とする方針をとってまいった次第でございます。
排出ガス特性の相反するCO、HC、NOxの三成分を同時に低く押えるために、薄い燃料と空気の混合比を使って、ゆっくりと燃やす、その場合の着火性能を確保するために、もう一つの小さな燃焼室を設けたもの、これがCVCCエンジンでございます。
CVCCシステムによる五十年対策車は、昨年末より生産を開始いたしまして、現在までに約一万五千台をお客様にお渡しいたしました。現在もこの生産、販売を継続しており、十月からは対米輸出車の生産を開始する予定でございます。
この低公害車の対米輸出車の生産開始の準備、それからシビックCVCC一五〇〇以外の車種の五十年規制への生産切りかえ及び五十一年対策技術の研究開発、これが現在の当社技術陣、研究陣の最大かつ最重点の業務となっておるわけでございます。
今日、国民的な関心事であり、かつ社会的な強い要請として承知しております五十一年規制の問題でございますが、当然私どもはこれに対して、企業として最大の努力をしなければならないことは十分に認識をいたしております。
五十一年規制対策として、私どもはこれを五十年規制対策の延長としてとらえ、すでに生産ラインに乗せたCVCC五十年規制対策エンジンを、さらに改良し、NOxのレベル低減の可能性を求めるという線に沿って努力してまいりました。
このアプローチが政府の規定する五十一年規制値〇・二五グラム・パー・キロメートルに対して、実験室で排出ガスNOxの数値だけはクリアするものが出ておりますけれども、自動車としての総合性能という見方からいたしますと、残念ながら不合格と判定せざるを得ません。言いかえますと、とてもこれでは社会が求めております自動車への期待を満たしきれず、このまま市場に出しても、とても使っていただけないであろうと判断せざるを得ないのが現状でございます。
この問題点と申しますのは、第一は、運転性能の低下でございます。第二が、燃料消費量の増大、第三が、エンジンの燃料供給装置の品質管理の困難さであり、第四は、付加装置の信頼性、耐久性の不安でございます。
これらはメーカーという立場から申し上げますと、とてもお客様に使っていただける状態の自動車ではないということでございますが、品質管理の困難さ、耐久性、信頼性等の問題は、これはメーカー自身が解決しなければならないことでございます。もし時間をいただけるならば、何らかの技術的方法を見出し、よりよい方向に近づけてまいりたいと存じておる次第でございます。
運転性能の低下や燃料消費量の増加等については、その完全な解決というものは、理論的には、はなはだむずかしいものがございます。今後いろいろの技術方策の組み合わせで改善の方向にあるはずとは考えておりますけれども、これは使用過程の未対策車との混合使用の状態における安全問題、交通の流れの不円滑、不経済性が問題となるところでございます。いずれも自動車に対します価値観の問題であり、公害対策の優先性から考えますれば、新しい価値観が社会に生まれてくるものと考え、またそう願っております。
CVCCシステムをもっての五十一年規制への挑戦は、社会、ユーザーに受け入れられる限界として、千五百ccクラスの軽量車においては〇・六グラム・パー・キロメートル付近に現在の困難件があると判断せざるを得ません。この困難を乗り越え、さらに〇・二五グラム・パー・キロメートルという排出レベルを実現するためには、さらに新しい研究開発成果の誕生を必要といたしますが、環境の保護、交通安全、省資源の重要性は深く認識しており、したがって私どもは、私どもの責任を果たす意味合いからも、引き続き技術開発を積極的に進めて、〇・二五グラム・パー・キロメートルを目標として、一そうの努力を重ねてまいる所存でございます。
以上をもちまして、私どもの御報告とさせていただきたいと思います。