片岡清一の発言 (農林水産委員会)
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○片岡委員 私は、去る十月四日から三日間にわたり、北海道における異常低温による農作物の減収状況調査のため派遣されました委員を代表して、調査の概要を御報告申し上げます。
本委員会から派遣されました委員は、私のほか、芳賀貢委員及び瀬野栄次郎委員でありますが、このほか現地において国会議員三名の参加がありましたことを申し添えます。
まず、調査いたしました被害地を順を追って申し上げます。
まず、十月四日は、札幌において道庁から今回の冷害の総括的な説明と要望を、また道議会及び農業各団体からの陳情を聴取いたしまして、直ちに現地に向かい、水稲の激甚被害を受けた空知支庁管内の南幌町及び月形町の被害地を調査いたしたのであります。
翌五日は、旭川市、和寒町、剣淵町、士別市、名寄市及び富良野市に参り、上川支庁管内における被害状況と陳情を支庁当局から聴取するとともに、現地を調査し、関係者からの被害の実情と強い要望をお聞きしたのでありますが、この地域は特に著しい被害をこうむった水稲及び豆類の耕作地帯であります。
六日は、江別市に参り、石狩支庁管内の被害状況と陳情を聴取いたしました後、江別市、広島町、恵庭市、千歳市の水稲被害地域を調査し、三日間にわたる調査を完了したのであります。
次に、今回北海道各地に大きな被害をもたらしました気象状況について、その概要を申し上げます。
四月上旬は北海道全道にわたり低温であり、道東地方は記録的な大雪に見舞われましたが、その後は月末まで比較的温暖に経過し、五月に入り再び低温になり、中下旬は高温、寡雨、多照で乾燥状態が続き、地域的には降雪や降霜が見られたのであります。六月上旬は温暖に経過したが、中旬に入りオホーツク海高気圧が南下したため曇天が続き、月末まで低温と日照不足が目立ったにもかかわらず、降水量は道南地方を除き全般に少なく、特に道北地方は極端な寡雨状態となり、平年度に比較して六〇%から八五%前後を記録しているのであります。たのため水稲は葉数の増加が緩慢となり、稲作に異常があらわれ始めたのであります。七月は上中旬とも冷涼な高気圧が全道を覆い、天候は概して快晴であったにもかかわらず気温は上がらないまま推移し、この時期が幼穂形成期に当たっていたため幼穂形成に相当のおくれが見られるようになったのであります。下旬に至るや低温から一転して高温と異常気象があらわれ全道的に多照、寡雨状態となり干ばつ傾向となるとともに、地方により降霜が見られたのであります。しかしながら、水稲に見た場合は日照が多かったことが幸いし冷害を思わせた不稔現象は少なくなり、生育は相当程度促進されたようであります。八月に入るや再び低温となりほとんど全期間にわたり大陸から張り出した冷たい高気圧に全道が覆われ、昭和三十一年以来の強い低温を示し、空知支庁管内地方等には一部に降ひょうが見られたのであります。この時期はちょうど登熟期に当たっており、整粒の増加が停滞し、不完全粒が多く見られるようになったのであります。九月は上中旬とも気温はほぼ平年並みに経過したが、下旬に入り山間地帯や道東、道北地方の一部で降霜を見るといった異常低温気象があらわれたのであります。
以上が現在までの気象の概要であります。
このように、低温現象が農作物に最も大切なほとんど全期間にわたって起きたため、水稲を初め豆類、牧草、その他各種農作物は激甚な被害を受けておるのであります。
今回の冷害等による農作物被害の概要を申し上げます。
被害は九月二十日現在で面積にして五十二万五千ヘクタール、金額にして八百四十一億円に上り、このうち水稲は十八万四千ヘクタールで六百五十六億円、畑作物は三十四万二千ヘクタールで百八十五億円となっており、畑作物の主なものは豆類が六万七千ヘクタールで七十七億円、飼料作物が二十四万五千ヘクタールで五十五億円、野菜が一万ヘクタールで三十四億円、バレイショが九千ヘクタールで八億五千万円のほか、てん菜四億円、果樹四億円等となっているのであります。
これを支庁別に見ますと、空知支庁管内は水稲被害が特に著しく八万一千ヘクタール、二百六十七億円で、畑作被害と合わせ二百八十一億円となっております。上川支庁管内は水稲三万八千ヘクタール、百二十一億円で、畑作被害と合わせまして百五十八億円、石狩支庁管内は水稲一万九千ヘクタール、八十九億円で、畑作被害と合わせ百五億円、網走支庁管内は七十九億円、十勝支庁管内は六十八億円等となっているのであります。
この被害額も今後の降霜の有無とその程度によりさらに大きな数字となってあらわれることは必至でありまして、北海道農民にとりましてはまさに未曾有の災害となったのであります。
次に、今回の農作物被害の概況に触れておきたいと存じます。
まず水稲でありますが、水稲は生育期の七月中旬、穂ばらみ期の下旬、出穂期の八月上旬までは、何とか日照不足と低温の程度は水稲に強い悪影響を及ぼさずに済む程度に推移してまいったのでありますが、八月中旬に入ってからは、異常低温と著しい日照不足に陥り、その後は一カ月の間連日異常低温が続き、開花受精期という稲作の最も大切な時期がこの異常低温に襲われたのでありまして、出穂し、幾らかの収穫が期待されるものでありましても、稔実不良となり、完熟粒はわずかにまざっているという程度の地域が調査全域に広くあらわれていたのであります。このような受精障害を受けた稲は、手にとって見ればわかりますが、ここに現物がございますが、多くの場合外見で判明することは困難というのが常識であります。さらにこれに加え、穂ばらみ期に一部に発生した葉鞘褐変病は、出穂期に入り全道に広がり、われわれの調査した地域の水稲は、ほとんど全部穂は褐色に変色しておりながら茎がいまだに青く、また穂先が真っすぐに突っ立っているという異常現象となっているのでありまして、遠くからながめた限りではその作柄は容易に判別しがたいのでありますが、手にとって見るか近づいて見れば、被害がいかに著しいものであるかに驚かされたのであります。
このような被害を受けた農家は、半作の収穫を得ることも困難であると知りながら、営々辛苦、半年の長きにわたる汗とあぶらとの努力の結晶により育て上げた水稲であるだけに、一粒でも多くの収穫を得るために、重い気持ちにみずからむちを当てて降霜予防に励んでいる姿があちこちに見受けられたのでありまして、切々胸に迫るものがあったのであります。
冷害という特殊な災害は、薫煙による低温緩和という原始的方法が唯一のものであり、これという決め手の防災方法もないため、手の施しようもなく、また災害発生時期も容易に予測できないため、災害対策も結果的にはおくれがちとならざるを得ないものであり、それだけに農家の心残りも多いことと思われるのであります。まことに気の毒にたえないものがあったのであります。
北海道の農家は内地都府県と異なり、水稲においても耕作の北限地であり、豆類、バレイショ、てん菜等に依存せざるを得ない営農諸条件の劣悪下にあり、昭和二十八年、二十九年、三十年、三十九年、四十一年及び四十六年の冷害等による大凶作の後遺症を背負って営農を維持しているのが農家の実情であります。このような劣悪な条件下にある北海道の農業を維持し、再生産に励まんとする被害農家が、われわれ国政に携わる者に対する救済の期待はいよいよ大きいものがあるのでありまして、われわれはこの実情を胸に刻み、限りない同情と必要可能な限りの救済措置を早急に実施すべく勇気を持ってこれに当たり、被害農家の期待にこたえるべきであると痛感してまいったのであります。
次に、道並びに地元から異口同音に各種の熱心な要望がありましたが、ここでは要望事項のうち特に重要な点につきまして、調査団の意見を付して申し上げておきたいと存じます。
第一の要望は、激甚災害法並びに天災融資法に基づく天災資金の早期貸し付けであります。今回の冷害については、激甚災害法の適用をすることは確実でありますが、被害農家の実情を考慮し、早期に貸し付けできるよう特段の措置を講ずるとともに、北海道の農業の特殊性からいたしまして、貸付限度額の引き上げ及び金利の引き下げを図るべきであると思うのであります。
第二の要望は、自作農維持資金の特別枠の設定による貸し付けと貸付条件の緩和であります。今回のような低温による災害は、公共施設等諸施設に損害を受けていないがゆえに、公共土木事業の実施が容易でなく、したがって、被害農家は救農土木事業等の実施による現金収入の道が少ないのでありまして、現金を得るためには、自作農維持資金の借り入れに頼るほかはないのが実情であります。したがいまして、この維持資金に対する期待が非常に大きいのであります。政府は、この際、十分被害者の要望する融資額を確保するよう、これに必要な資金枠を設置し、早急に貸し付けるとともに、金利の引き下げについても思い切った措置を講じ、被災者の期待にこたえるべきであると思うのであります。
第三の要望は、農業近代化資金等制度資金について、被害農家の要償還額のうち、償還不能分について償還猶予の措置を講ぜられたいというのであります。北海道における一農家の要償還額は年百万円以上となっているのでありまして、この実態にかんがみまして、償還延期または償還猶予の措置を講ずるにとどまらず、再貸し付けを行う等の措置を講じ、実質的な貸付条件の緩和を図るべきであると存ずるのであります。
第四の要望は、共済の損害評価基準の緩和と共済金の早期支払いでございます。農業共済における収穫対象となっている損害評価基準のふるいの目は一・七ミリとなっており、これ以上の米はすべて収穫とみなされて共済金の支払い額から差し引かれているのであります。今回の冷害米は粒は大きいのがありましても、青米等で政府買い入れ米の対象とならないものが非常に多く混入しているのであります。この点を考慮し、特別措置を講じて、この基準を緩和し、実情に合致した被害の認定を行い、農民の窮状を参酌し、年内といわず一日も早く共済金の支払いを行うべきであります。
第五の要望は、低品位米の政府買い上げ措置を講じられたいというのであります。現行農産物検査規格によりますと、五等以上の品位に格づけされた玄米を政府が買い入れると規定されておりますが、特例として、被害が著しい特定の地域において発生した規格外米及び等外米についても買い入れることができる道が開かれておるのでありまして、過去において政府買い入れを行った事例もあるのであります。今回の北海道の冷害による水稲被害は、生育過程における障害が主であります関係上、青米と未熟米の上位すれすれの米が過半量を占めているのであります。この被害の実情にかんがみまして、今回の災害についても、品質の規格を大幅に緩和して政府の買い入れ制度を早急に決定し、全量買い上げ花実施すべきであると思うのであります。
第六の要望は、他に働く場所を持たない被災農家に対し、現金収入の道を開くため救農土木事業を実施されたいというのであります。前にも述べましたとおり、今回の冷害にあっては、施設被害を受けていない関係上、災害復旧公共土木事業がありませんので、今年度実施予定の土木事業及び明年度予定事業の繰り上げ実施を行うよう、国及び道は了解事項として実施することが必要であると思うのでありまして、若干の無理がありましても災害の実情にかんがみ、鋭意現金収入の道を開いてやるべきであると存ずるのであります。特に地元市町村の要望として、積雪下におきましても実施できる事業として、排水溝の清掃、改修及び設置、暗渠排水、客土、農道及び林道の補修、土地改良、砂利採集事業、国有林及び市町村有林の除間伐事業、治山治水事業等があるとのことでありますので、政府においてもこれが実施できるよう万全の協力と措置を講ずべきでありますし、客土事業は団地事業となっており、一団地の事業面積が二十ヘクタール以上となっておりますのを一事業五ヘクタール以上の分割実施できるよう、条件緩和をすべきであると思うのであります。北海道の今回の災害により収入源を失った被災農家の農業維持経営を可能にするかしないかは一にこの救農土木事業の適切なる実施のいかんにかかっているという印象を強く受けてまいったのであります。また、これが実施に当っては、労賃単価の改定を行い、真に救農の効果があらわれるよう努力を願いたいのであります。特に、市町村が行う農道及び市町村道の補修事業の実現に強い希望を持っていたのであります。
第七の要望は、越冬用飼料の確保についてであります。牧草及び飼料作物が甚大な被害を受け、越冬用の飼料の大半は他から購入しなければならない現状にあるのであります。御存じのように、特に北海道の農業は酪農に大きなウエートを置いた農業経営でありますので、今回の冷害により受けた打撃は大きく、営農と生活は極度に悪化しているのでありまして、この際、政府は、これら酪農農家を救済するため、政府手持ちの濃厚飼料を格安に払い下げるとともに、牧草、稲わら等、飼料の購入費に対しても特段の助成を行い、酪農の育成に万全を期すべきであると思うのであります。
以上のほか、再生産用種子購入費の助成、昭和五十一年産米予約概算金の返納の猶予と利子の減免、国営土地改良事業負担金の徴収猶予、豆類について下位等級を設定するよう農産物検査規格の特例措置、国及び地方公共団体の税の減免等がその主なものであります。
さらに、恒久対策として食糧自給向上を指向し、農業改良普及制度及び寒冷地農業の改善のための諸施策に抜本的な検討を加え、再びこのような惨事を起こさないための農業経営の確立を図るべきであると思うのであります。
以上、調査の概要について申し述べましたが、政府は今次災害の特異性を考慮し、各要望事項について慎重に検討を加えられるとともに、これが期待にこたえるべく善処されることを強く要望いたしまして、報告を終わります。(拍手)