森下元晴の発言 (農林水産委員会)
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○森下委員 委員派遣第二班の調査結果の概要を御報告申し上げます。
本班は、去る十月三日から十月六日までの四日間にわたり、青森県、岩手県及び秋田県における異常低温による農作物の減収状況調査をしてまいりました。派遣委員は、自由民主党の私森下元晴、日本社会党の米内山義一郎君、日本共産党・革新共同の中川利三郎君の三委員でありますが、現地において、青森県では熊谷義雄君と竹中修一君が、また秋田県では川俣健二郎君が参加されました。
まず簡単に調査日程を申し上げます。
十月四日は、早朝青森県に入り、三沢市淋代地区、八戸市市川地区及び階上村赤保内地区で水稲の被害調査を行った後、八戸市の青森県合同庁舎において、県当局並びに関係市町村から冷害の総括的な説明と要望を聴取いたしました。次いで三戸町泉山地区でリンゴの腐乱病による被害の調査を行った後、同日岩手県に入り、一戸町奥中山地区及び葛巻町小屋瀬地区で水稲及び飼料作物等の被害調査を行いました。
十月五日は、岩手県庁において県当局並びに関係団体から冷害の総括的説明と要望を聴取した後、西根町田頭地区及び松尾村で水稲の被害調査を行い、次いで同日秋田県に入り鹿角市坂比平地区、田沢湖町鎧畑地区、中生保内地区及び西木村上檜木内地区で水稲の被害調査を行いました。
十月六日は、五城目町杉沢地区、恋地地区で水稲の被害調査を行った後、秋田県庁において県当局から冷害の総括的説明と要望を聴取し、全日程を終えたのであります。
次に稲作等を中心に今回の大冷害をもたらしました気象状況等についてその概要を申し上げます。
まず、五月上旬に異常低温に見舞われ、特に標高の高い山間地帯や冷水灌漑地帯において苗代の障害が見られるとともに、一部地区においては田植えのおくれがあり、また六月下旬から七月上旬にかけても異常低温の発生により稲の生育が停滞したとのことであります。その後七月下旬には、短期間ではありましたが高温多照の天候となり稲の生育は順調に回復するとの期待が持たれたのでありますが、八月に入ってからは、近年に例のない持続的な異常低温と日照不足等に見舞われたのであります。特に八月の異常低温は、青森及び秋田では大正二年以来のものであり、また盛岡でも気象台の観測が始まって以来というまことに厳しいものであります。このため稲の生育は、出穂のおくれやその期間が長引き、一部地域においては遅延型冷害により青立ち稲となり、またせっかく出穂した稲についても障害型不稔を随所に発生させたのであります。さらに、九月に入りましても、下旬以降は低温寡照の日が続き、一部高冷地では例年より一週間程度早い初霜が見られる等のこともあって、これが稲の登熟をおくらせ、今回の冷害を一層厳しいものにしております。
以下、各県の被害状況等につき、視察日程に従い御報告申し上げます。
最初に青森県の状況について申し上げます。
まず稲作の被害でありますが、県全般の被害状況は、九月十五日現在における作況指数で七九から八九となっており、被害額は二百億円を超すものと想定されております。特に被害が大きいのは標高の高い十和田湖を中心とした山間冷涼地帯と下北半島から八戸地域に至る太平洋沿岸地域であります。今回視察した三沢から八戸に至る地域は、八月に入ってからの異常低温に加えて、太平洋から吹き込む冷い風、いわゆるやませの影響により大きな被害を受け、至るところで生理的不稔による青立ちや褐変もみが見られ、また一部地域においては、従来北海道にしか見られなかった葉鞘褐変病も散見されたのであります。これらの地域では収穫皆無のところもあり、私たちは視察個所ごとで多くの被災農民から一日も早い国の援助措置の要請を受けたのであります。
米以外の被害ではリンゴ、野菜等の被害も大きいとのことでありますが、特に特産のリンゴは冷害被害に加えて腐乱病による被害も大きく、関係者からは腐乱病根絶のための試験研究機関の充実強化とともに低位生産園再開発事業に対する国庫補助率の引き上げ等につき強い要請がありました。
次に岩手県の状況について申し上げます。
岩手県は今回の冷害では東北六県の中で最大の被害を受けた県とされておりますが、まず稲作の被害について見れば、県全体の被害状況は九月二十日現在の作況指数で七四となっており、被害額では三百二十億円余りが想定されております。特に被害が大きいのは県北部と北上山系及び奥羽山系の高冷地帯であり、これら地域においては、収穫皆無ないしは被害率が七〇%を超える個所が随所に見られるとのことであります。今回視察した一戸町、葛巻町等はいずれも標高が四百メートルを超える高冷地であり、県内でも最大の被害を受けた地域とされております。例年なら収穫期を迎えているはずの稲が沿道の至るところに黒褐色に棒立ちし、収穫を全く期待し得ない状況を目の当たり見、調査団一同胸の詰まる思いがしたのであります。さらに、本地域の多くの農家は米と酪農等を結びつけた複合経営を行っておりますが、七月上旬と九月下旬の二度にわたる降霜によりデントコーン等の飼料作物も未曾有の被害を受け、農家の経営はまさに崩壊寸前の状況となっております。かかる状況に対し、調査団は、政府において早急に適切な救済措置を講ずることを督励する旨約束してまいった次第であります。
次に、岩手県においては米及び飼料作物のほかに、豆類、野菜、果樹等についても大きな被害を受けており、これら作物被害についても適切な助成措置を講ぜられたい旨の要請がありました。
次に秋田県の状況について申し上げます。
本県も冷害により大きな被害を受けており、稲作の被害については現在進行中のため断言はできないものの、作況指数は九〇を割るのではないかと説明がありました。特に被害が大きい地域は奥羽山系及び出羽丘陵を中心とした高冷地となっております。私たちが視察した鹿角市及び田沢湖町等は県内でも被害が最も甚大なところとされており、たとえば田沢湖町管内においては、例年五万俵の出荷をしていたのが本年は五千俵程度になるのではないかとの説明がありました。実らない青立ちの稲を前にして借入金の返済や出かせぎの心配をしている純朴な農民の姿はまことに痛ましいものがあり、調査団一同、救済措置に万全の努力を約束するとともに、今後の農業経営に挫折することのないよう精いっぱいの激励をしてまいった次第であります。
以上が冷害被害の調査概要でありますが、ここで各県並びに地元から出されました各種の要望を取りまとめ、調査団の意見を付して申し上げます。
第一点は金融対策についてであります。
まず、天災融資法並びに激甚災害法の早期発動についての強い要請がありました。すでに御承知のとおり、政府においてはこれら法律の発動を十一月に入ってから行うと言明しておりますが、収穫皆無等の被災農民の窮乏度はきわめて厳しいものであり、早急に資金手当てができない限り今後の営農計画にも大きな支障を及ぼしかねない状況にあります。そこで、政府においてはかかる実情を十分認識し、迅速に被害調査を行い、これら法律の発動を一日も早く行うことを要請しておきます。またこの点と関連し、生活資金としての自作農維持資金につきましても、災害特別枠の確保と貸付限度額の引き上げにつき強い要請がありました。いずれにせよこれら資金については、一刻も早い貸し付けが緊要であり、これが貸し付け体制の整備までの間はつなぎ融資等による適切な救済措置が望まれております。
次に農業近代化資金等各種制度資金の既借入金について償還猶予期間の延長と利子の減免措置を講ぜられたい旨の要望がありました。この点については、被災農家は農機具等購入のための借入金返済に日夜苦慮しているところであり、政府の指導によりきめ細かい緩和措置が講ぜられるよう要請しておきます。その他金融対策につきましては、乳牛等家畜保留のため必要な低利資金の創設等について要請がありましたが、この地方における酪農等は近年ようやく発展の緒についたところであり、今回の冷害により経営が一たん崩壊すればその再建がきわめて困難な状況に置かれることは必然であります。政府におかれては、かかる点を十分認識し、手厚い助成措置を講ずべきものと思います。また畜産問題に関連して付言すれば、霜害等により飼料作物に大きな被害を受けた農家に対し、越冬用飼料の確保に対する国の助成措置につき強い要請がありました。
第二点は、農業災害補償法に基づく共済再保険金の早期支払いと共済損害評価事務費の助成措置についての要望であります。政府はその支払いにつき十二月末までに実施すると言明しておりますが、現地における損害評価業務の状況は、事業量が例年の四倍から五倍にも上り、かつ事業費の不足等もあって必ずしも順調に進んでいないのが実情であります。そこで政府は、これら損害評価業務を一層促進する方策を講じ、被害農家に一日も早く共済金の支払いを行うことを強く要望しておきます。
第三点は、等外米及び規格外米の政府買い入れ等についての要請であります。本年度の冷害においては収量の減収のほか大量の低品位米が産出されることが見込まれ、その販売方策が大きな問題となっておりますが、政府においては、早急に規格の設定と価格を決め、農家が安心して被害米の収穫と販売ができる体制をつくることが緊要と思われます。
また、この問題に関連し、米の事前売り渡し予約概算金の返納に係る納期の延長と利子の減免措置、次年度用優良種子、特に種もみの確保に対する助成措置、さらには飯米不足農家に対する配給割り当て枠の拡大措置等についても要望がありましたが、これらについても政府において十分な対策を講ずることを要請しておきます。
第四点は、救農土木事業による就農機会の拡大措置等についての要請であります。
御承知のとおり、今回視察した冷害地帯は、地元における他産業への就業の機会が少なく、従来から典型的な出かせぎ地帯となっております。このため、今回の大冷害により現金収入の道を閉ざされた農民は、従前にも増して出かせぎを余儀なくされる事態になっておりますが、いま以上に出かせぎ者を出すことは、畜産等を中心とした今後の農業経営に大きな悪影響を与えるばかりか、村落運営の日常業務にも支障を来すのではないかと懸念されております。かかる事態に対処し、県当局及び地元市町村においては、地元における就業機会の拡大を図るべく、いわゆる救農土木事業に着手しているところでありますが、いずれの県及び市町村においても財政力が弱く、さらに国による事業をこれら地域に重点的に実施されたい旨の強い要望がありました。
そこで政府に対し、本年度の予備費等の執行に当たっては、これら冷害地域を対象とした救農土木事業に対し重点的な配分を行うとともに、早急にその事業規模を明確にし、また事業の内容についても、林業関係の作業等多くの者が就業機会を得られるものにするといったきめ細かい配慮をすることを要請しておきます。
第五点は、被害農作物の病害虫防除のための防除費等に対する助成措置についての要望でありますが、この点につきましても、農薬費及び防除機具の補助等につき、従前の例にとらわれることなく、できる限りの助成措置を講ずべきものと思います。
第六点は、冷害回避のための恒久的対策確立についての問題であります。もちろん今回の被害は、その過半が異常気象に起因することは明白でありますが、そのほか稲作技術体系等のあり方についても幾つかの問題が指摘されております。すなわち、化学肥料多投のための地力の低下、耐寒品種から銘柄品種への移行、水田の灌漑方法、さらには機械田植えの普及による田植えのおくれ等がその主なものであります。そこで国を初め関係者においては、今回の大冷害を契機に、こうした稲作技術体系についても十分反省し、冷害回避のための試験研究の充実等に積極的に取り組むことを強く要望しておきます。
以上、視察に基づく冷害被害の状況とその対策につき申し述べました。
申すまでもなく、東北地方は北海道とともにわが国最大の食糧基地であり、今後の食糧自給率向上に大きな役割りが期待されております。こうした中での今回の冷害は、これら地域の農民に大きな打撃を与えたばかりでなく、わが国農業の将来に大きな試練を与えたものと言っても過言ではありません。
政府においては、かかる実情を十分認識し、冷害に苦しむ農民に対し、あすへの希望をつなぐ手厚い助成措置を早急に講ぜられんことを切に要請し、報告を終わります。(拍手)