渡部一郎の発言 (本会議)
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○渡部一郎君 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、ただいま議題となりました日韓大陸棚関係二協定を承認するの件に関し、重大な疑義を表明するとともに、若干の質問を行うものでございます。
まず、外務委員会の審議に際し、自民党側委員による議事運営がしばしば適正を欠いたことは、野党側の抗議をしばしば招き、これはきわめて遺憾であります。国家の基本にかかわる重要な案件が当該委員会で十分な審議もなされず、また多くの疑問点に対する納得できる政府の説明もなされないまま、出席、質疑を通告している野党側委員の出席を待つことなく、自民党側委員による一方的な質疑の打ち切り、採決の強行という暴挙を行うに至ったこと自体、きわめて遺憾な事態であります。
かかる暴挙は、総理の主張されておられる「協調と連帯」とは全く矛盾するものであると同時に、日韓問題に対するとかくの国民的不信をさらに拡大するものであると言わなければならないのであります。
私は、まず第一に、自民党総裁として、総理に、これに対する明確な反省と弁明を承りたいのであります。
まず、本案件は、提出の手続からしてきわめて不適切なものであります。本案件審議に当たって、性格の全く異なっております二つの協定を一案件として提出したこと自体、条約に対する立法府の審査権を侵すものとして、安保条約の審議の華やかなりし昭和三十年代より指摘され続けてきたものであります。すなわち、こうした手続が乱用されるならば、何十、何百もある条約を全部一つの案件にまとめて提出して、議会の審査を大幅に省略して、通過させることが可能だからであります。再々私は外務委員会において指摘し、今後こうした提出は避けるべきであると主張をいたし、当局も、避ける旨約束をされたのでありますが、改めて総理にこの点を確認しておきたいのであります。
本案件の中の一つの協定、日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚(だな)の北部の境界画定に関する協定については、重大な欠陥があります。日韓間の長年の懸案である竹島及びその領域の所属が未定のまま除外されているということであります。こうしたままで両国のいわゆる北部境界画定とみなすこと自体が、羊頭狗肉と言われても仕方のないものであり、将来にさらに大きな紛争を両国間に残すものでありまして、この点について政府の御見解を承りたいのであります。
次に、日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚(だな)の南部の共同開発に関する協定についてであります。
政府は、わが国の領海十二海里実施に伴って、本協定の共同開発区域にわが国領海が含まれるという重大な事態が発生した問題に対し、国際法的に効力を疑問視される口上書をもって協定の実質的修正を行ったと主張いたしているのでありますが、これはきわめて疑義の多いものであります。しかも、将来に危険な前例となるおそれもあるものだと言わなければなりません。といいますのは、日韓両国間において、双方が確定された意思に基づいて協定内容が変更されているという明確な証拠が存在するのかどうか、これを明らかにしていただかなければならないからであります。
また、両国間においては、従来しばしばこうした政府間取り決めの不愉快なる無視が行われた先例があるところから見れば、このような措置では与党議員の諸君でも十分であるとは言い切れないものと思うのであります。政府はどう保証するつもりであるか、明らかにせられたいのであります。
また、協定が領海十二海里実施によって実質的に変更されたにもかかわらず、本協定に関係する国内法、すなわち日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚(だな)の南部の共同開発に関する協定の実施に伴う石油及び可燃性天然ガス資源の開発に関する特別措置法案の条文が、従来のものと何ら変わっていないというのはおかしなことなのであります。条約と国内法は、これは相連関し、相互に琴瑟なものでなければならないのでありますが、政府は、この際、関係国内法を訂正し、改めて国会に提出し直すべきであると思うが、どうでありましょうか、御見解を示していただきたい。
中華人民共和国政府は、去る四月二十二日、本協定に対し、中国の主権を侵害するものである旨の抗議を再び政府に行っております。中国側の正式な了解を得る努力を怠ったまま協定を発効させることは、日中関係に悪影響を及ぼし、将来国際紛争の原因となるおそれのあるものであります。特に、資源、エネルギーの観点からのみこれを述べたといたしましても、日中間においては日韓間と同じように大陸だな問題が将来の問題として残されております。そして、その海底資源は日韓間のそれとは比較にならぬ莫大なものであると言われているものであります。したがって、なぜ政府は、こうした配慮もなく、関係国との話し合いというものを不十分なまま本協定の成立を急がれるのか、この理由を説明されなければならぬと思うのであります。
本協定の共同開発区域は、日韓中間線のわが国内側の方に設定されております。政府は、協定交渉の過程では、確かに等距離中間線論を主張しておる、しかし、結局は日本の内側にすべて含まれるような共同開発区域に同意しなければならなかった。この点につきましては、外務委員会において飯田忠雄議員と私が指摘し、それに対する政府統一見解におきましても認められたとおり、わが国の正当な権益の実質的な放棄であります。改めてこの点に対する政府側の見解を示していただきたい。
まことにこのとおりきずが多いのであります。
政府の説明によれば、海洋法会議においては韓国側が今度とりました立場の大陸だな自然延長論がきわめて優勢であるということでありますが、イギリスとノルウェーとの間の大陸だな画定については、大陸だな自然延長論ではなく、むしろ政府が当初とられました等距離中間線論で合意されているのであります。こうした前例があるにもかかわらず、なぜわが国側がこうした努力を積み重ねなかったのか、どうしてそれだけできなかったのか、説明をされたいのであります。
また、今度は逆に、政府側の立場から論議を進めてみますと、政府の説明のとおりでありますと、本協定は日本側にとってきわめて有利であり、韓国側にとってきわめて不利だという議論になっているわけであります。もし海洋法会議の結論が、政府の説明どおり韓国側にとられたいわゆる大陸だな自然延長論の勝利となって、日本側の主張した等距離中間線論の敗北となったならば、近き将来韓国側は本協定というものに対しては逆に鋭い不満を示し、将来日韓間の紛争の原因となりかねないのではないかと私は思うのであります。であるからして、むしろ海洋法会議の結論を待たずこうした法案を強行するということは、政府・与党側が当初主張した論点とは全く逆に、むしろ日韓間の紛争の種となりかねない行動ではないかと思うのでありますが、この点をいかがお考えですか。
海底よりの鉱物資源の探査及び開発を実際に行う場合には、海底から海上に届く堅固な構築物をつくる必要があることは言うまでもないのでありますが、北海油田において例があったのでございますが、第三国から、そのような構築物について、国際航行上の障害となるとか、あるいは安全保障上の問題等を理由として撤去を要求され、国際紛争の要因となった実例があるのでありますが、わが国政府としては、共同開発区域の法的地位はいかなるものになるかを明確にする必要があるのであります。また、同開発区域に対して第三国からの武力攻撃が生じた場合、日米安保条約第五条でいう日本の施政権下への武力攻撃となるのかどうか、また、第六条の極東条項でいう安保条約発動による米軍出動対象となり得るのかどうか、また、自衛隊、韓国軍との間の共同防衛区域というようなものを考えておられるのかどうか、まことに困難な問題でありますが、政府側の見解を示していただかなければならないのであります。
共同開発区域の水域は、黒潮と対馬海流の双方にかかわるところであります。もし石油流出事故が起こるならば、日本の沿岸漁業に重大な被害を招来し、大きな国際問題になることは必然であると言わなければなりません。この可能性は、北海油田エコフィスク地区の例を見るまでもなく、十分に考えられるものであり、単に賠償金を払えば済むという問題ではないのであります。石油流出事故というのは絶対にあり得ないなどということは、常識から言っても、科学的な常識から見れば絶対にあり得ないのであります。もし石油事故がないというのだったら、それは石油が出なかった場合であると言わざるを得ないのであります。しかも、ここで問題なのは、韓国側には公害防止の国内関係法規を欠いておるということが、連合審査会の席上、わが党古寺宏議員の質問で明らかにされましたけれども、一体これに対してどう考えておられるのか、石油流出対策とともに政府の考えをお伺いしたいのであります。
さらに、本協定での共同開発区域の資源埋蔵量は、そう多くなく、七億トン程度ではないかという説もございますが、もしそうならば、わが国消費量の二年分程度との説があり、採算的に合うかどうか、疑問の余地があるのであります。政府は、同地区の資源埋蔵量をどのくらいであるとの見通しをとられているのか、科学的根拠はあるのかどうか、明らかにされたい。
また、外務委員会における参考人のお話にもありましたように、多く見込めない場合は、かえって将来のために、開発を急がず、貯留すべきであるという、肯緊に値する議論もあるのであり、政府はこうした点もきわめて不十分な御意見しかないようでありますので、重ねて伺うものでございます。
また、共同開発に当たって石油公団の出す拠出金に関するルールがあいまいであると言わざるを得ないのでありますが、開発資金に関するルールをお示しをいただきたい。韓国側には開発資金のめどがはっきりしているのかどうか、場合によっては日本側が韓国側に貸し付ける形で行うようなことも想像されるのでありますが、その点どうか、お示しをいただきたい。
また、もし今国会で承認されなければ、韓国側は一方的に開発を強行するとか、報復手段として漁業専管水域二百海里設定を行うとか伝えられているわけでありますが、政府側の見通し、また、韓国側に対する措置、どう対処なさるのかもお示しをいただきたいのであります。
政府は、今国会で承認されなければ国際信義にもとると言われております。しかし、その発想は、国権の最高機関であるところの国会の審議権並びに意思決定に対する重大かつ不当な干渉と言わざるを得ないのであります。
確かに本協定は、署名されてから実に三年半を経過し、国会におきましても通算六会期を経ているのでありますが、このことは本協定がいかに問題多きものであるかという証拠であります。しかも、審議の過程を振り返りましても、私がいままでるる申し上げたたくさんの疑問が本質的にはほとんど解明されていないというところにその原因があることを、政府側は深刻に反省をなされるべきでございましょう。
従来、政府が結ばれた条約あるいは協定等で、国会の審議が留保されているものは多数あるわけであります。また、政府自体も、明治時代にみずから加盟した条約を今日まで国会への提出を控えておられる例があることを、私は十分承知をいたしております。そうした措置があるということは、国益の上からいって当然のことでございます。
本協定に限って承認を急がなければならない、おくれているから急がなければならぬという理由はなく、むしろ、国家百年の大計からいけば、私が申し上げましたような数々の疑問に対して十分の審議を尽くされることがわが国の将来のために必要なのであります。わずか五分、十分の追加質問等の質疑をもって本院を通過せしめるならば、国会の権威をさらに落とすものと言って差し支えはないのであります。
私達本協定の慎重かつ十分な審議を要望しつつも、それを損ない続けた政府・自民党の恣意的な審議態度というものに対し、この際猛反省をお促しすることにいたしまして、私の質問とさせていただきます。(拍手)
〔内閣総理大臣福田赳夫君登壇〕