安田安次郎の発言 (商工委員会)
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○安田参考人 安田でございます。
これから平電炉に関する問題点を四つほど申し上げます。一つは概況、第二の点は現状、第三の点は当面する諸問題、第四番目にそれらを踏まえて国家にお願いいたしたい点、この四つの点について簡単にお話し申し上げたいと存じます。
平電炉業界というのは、市中に発生する工場の加工くずとか自動車のくず、家電のくずというようなものを溶かしまして、それをもう一遍建設用の材料として小形の棒鋼とか中小形形鋼を製造するのが業界の仕事でございます。
わが国における平電炉のシェアは、粗鋼においては約一二%で、そのトン数は千三百十万トン、また鋼材においては一六%で、その生産トン数は千二百四十万トン程度になるのであります。ちなみに五十一年度におきます丸棒の総生産高は約一千万トンあったのでありますが、そのうち約七〇%が平電炉でつくられております。なお、中小形形鋼は三百万トン以上つくっておるのですが、そのうちの約九割が平電炉でつくっておる製品でありますので、平電炉業界は鉄鋼業界においては非常に重要な仕事をやっておるわけであります。
また、先ほど申し上げましたように、平電炉の主たる原料は鉄くずでありますので、これを原料としてやっておるのは日本の産業の中で鉄鋼業界だけでありまして、これを除いては需要産業がないのであります。したがって、日本経済の立場から見ましても、この国内の資源を有効に利用するという電炉の仕事は非常に大切なものだと言わなければならぬと思います。
毎年発生するスクラップの量は約二千万トン以上超えるのでありますが、この市中くずをそのまま放置するといたしますと非常にゆゆしい社会問題になるわけでありますが、電炉業界はそれを利用することによって建設資材をつくっておるわけでありますので、環境保全の対策面からも非常に大きく貢献しておるものと信じております。今後この産業は国民経済上不可欠な産業であるのみならず、経済的にも社会的にも非常な重要な意義を持っておるものと私は信じます。
次に、現況でございますけれども、主たる製品の丸棒の内需のうちの約九〇%は建設用の部門に消費されております。昭和四十八年度以後は年間大体十数%の伸び率をもって伸びてきたのでありますけれども、石油ショック以後は急角度にこれが減退いたしたのであります。
昭和四十八年度の小形の棒鋼の内需は年間八百七十万トンでありましたが、五十一年度においてはその百万トン減の約七百五十万トン程度になったのでありまして、片方、供給能力といいますと、四十八年度以後は積極的な設備投資がありましたために、五十一年度において平電炉の関連製品を粗鋼のベースで直してみますと、約七百万トンの需給ギャップが出たのであります。
こうした状況のもとにおきまして、昭和五十年の九月から五十一年の四月まで八カ月の間小棒について独禁法に基づいて生産数量カルテルをやってまいりました。ただし、残念ながらその事態は改善することができませんでしたので、再び昭和五十一年の十一月から九月末まで十一カ月間、独禁法に基づいた生産数量カルテルをやり、八月十七日から九月末まで一カ月半価格カルテルを実施してまいったのであります。それで、十月からは中小企業の団体法に基づきまして約五十二社の丸棒のメーカーは工業組合を設立して現在実施に至っておるわけでございますけれども、残念ながら市況は低迷いたしておりまして、価格はわれわれのコストを大幅に下回っておる状態でございます。
さて次に、当面する諸問題でありますけれども、まず第一番に、何といってもこの需給のギャップでありますが、これを早急に解決することが最大の問題点であります。
ことしの二月に、通産省基礎産業局長の私的諮問機関であります平電炉基本問題研究会によって報告されたところによりますと、昭和五十五年度の粗鋼の供給能力は二千六戸三十五万トンに見込まれ、これに対する需要は二千四十五万トンから、多く見積もっても二千二百四十五万トンとなっております。したがって、三百九十万トンから五百九十万トンという大幅なギャップが存在すると推定されておりまして、現時点において予測せられます最大限の需要見通しのもとにおいての過剰能力三百九十万トンについては少なくとも処理しなければならぬというふうに提案されておるのであります。このうち平電炉のしょうべき過剰能力は約三百二十万トンございまして、これは昭和五十三年、来年度までに必ずこの需給ギャップを解消することを図るように努力いたしておるわけであります。
第二の問題といたしまして、非常に問題になるのは資金難の点であります。
二カ年にわたるコスト割れによる販売のため、企業の体力はその限界に達しまして、関係当局の御指導、関連企業、金融機関、商社等各方面からの御支援をいただいておるわけでありますけれども、大幅な赤字、債務超過という状態の中では、市中からの民間融資を仰ぐことは非常に困難でありまして、運転資金にも事欠くような苦しい状態にあるということでございます。
これらの状態を踏まえまして、一体われわれは国家に対してどういうお願いをするのかという点について二、三申し上げてみたいと思うのであります。
ただいま申し上げましたように、平電炉の構造改善につきましては、個々のメーカーにおきましてはすでに設備の休止措置が行われ、小形棒鋼の部門から撤退するとか、あるいは業務提携による生産販売の調整、工場の集約化が行われ、構造改善は順次行われております。
こうした業界の自主的努力だけではとうていだめでありまして、政府当局のこの業界に対する特別の援助が必要でありまして、目下いろいろいただいておりますが、金融面については、設備処理に伴う所要資金を民間の金融から借り入れる場合に、その債務保証の制度を設置していただいたことであります。
また、商工組合中央金庫からビレットを担保にして金を借りるとか、政府機関から借りております金融による貸付金利の引き下げであるとか、あるいはその他借入金の繰り延べであるとかというような、いろいろな政府の援助をいたしてもらっておることについて、この席上をかりまして厚くお礼を申し上げる次第であります。
最後にわれわれが申し上げたいことは、こういう窮状にございますところに、さらに最近の円高傾向によりまして、小形棒鋼、中小形形鋼というものの生産の約三割が輸出に向けられておりますので、いまのような状態で円高になってまいりますと、現在は約七〇%くらいの稼働率でありますけれども、さらに引っ込みまして六〇%を割るのではなかろうかという懸念があるわけであります。したがって、円高というものは全く当業界にとっては致命傷であると言わなければならぬと存ずるのであります。どうかそのために、こういう意味で政府資金を何とか融資していただくようお願いいたしたいのであります。
さらに、税制面につきましてもいろいろとお願い申し上げたい点がございますが、時間の関係で省きまして、われわれはもう一つさらにお願い申し上げたいことは、小棒の需給のバランスがとれておりません。したがって、現状約三十万トンくらいが在庫をオーバーしておると言われておりますので、何とかこれを政府で買い上げいただきまして、経済協力推進の一環として発展途上国へ製品の供与という方法をとっていただきたいということであります。
もう一つさらにお願いいたしたいことは、現在景気振興のため公共事業の促進をされておられることは、平電炉業界にとっては非常に喜ばしいことで、期待いたしておることでありますが、それの公共事業用の資材についてお願い申し上げます。
現在、公共用の資材の購入価格は市中価格で買われておるわけでありますけれども、いままで申し上げましたような構造上の不況産業である平電炉の現状では、市中の価格というものはわれわれの原価をはるかに下回っておりまするので、どうか公共事業の買い入れるものについては適正な原価の購入価格にしていただきたいというのがお願いであります。
以上、いろいろとお願いを申し上げたわけでありまするが、われわれ丸棒の五十二社で工業組合をつくって減産をなし、さらに採算面でも資金面でも苦しい犠牲を払っておりますけれども、残念ながら、この組合に加入しておられない方が相当おられます。その数字は、われわれの生産に比して約二割の人たちが未加入でありますので、これだけのものがあったのでは、とうていこの業界の需給ギャップを解消したり、業界の安定を望むということは非常にむずかしいということであります。したがって、どうかこの中小企業団体法に基づきまして、早急にこれらの未加入の方々の生産の制限をするように御指導願いたいというのがお願いでございます。
最後にお願い申し上げたい一点は、雇用の対策の問題であります。
いろいろ雇用対策に問題点がありますけれども、いろいろつくっておられますが、聞くところによりますと、今国会に構造不況業種の離職者を救済する目的のために特例法案が提出されるという旨を承りましたが、どうか離職者に対しては長期間の失業給付支給や国家的配慮による離職者救済をぜひとも実現していただきたくお願いいたしまして、私の説明を終わらしていただきます。