村本周三の発言 (予算委員会公聴会)
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○村本公述人 ただいま委員長から御指名をいただきました、第一勧業銀行の頭取を務めております村本でございます。
本日は、国債引受団を代表いたしまして、五十三年度予算案につきまして意見を申し述べるようにとのことでございますので、五十三年度予算案に関します概括的な考え方を申し上げますとともに、予算の運営等につきましての私どもの意見あるいは希望を若干申し述べさせていただきたいと存じます。
まず最初に、五十二年度予算を取り巻くわが国経済の現状について見ますと、御案内のとおり、思わざる海外からの諸要因もございまして、景気の回復は予期どおり進んではおりません。五十二年度の実質成長率は、政府の実績見込みによりますと五・三%ということであります。鉱工業生産も昨年一年間を通じて一進一退の状況にありまして、去る十一月に、ちょうど四年ぶりにようやく石油ショック時の水準に回復したというありさまでございます。
こうした景気回復のおくれを反映いたしまして、昨今のわが国経済におきましては各方面に摩擦現象が目立ってきております。
第一に、企業経営につきましては、このところ一段と困難の度が加わってきております。主要企業に関します日本銀行の調査を拝見いたしましても、また上場会社の決算の状況を見ましても、企業収益は五十二年度上期から再び低下を見せておりまして、構造不況業種は申すに及ばず、多くの業種で企業経営はきわめて苦しい状況に直面しておると申してよろしいかと存じます。全国銀行協会連合会の調査で資本金百万円以上の法人の取引停止処分件数を見ましても、昨年は一万八千七百件ということで、過去最高でございました。
その二は、雇用情勢の悪化であります。昨年を振り返りますと、完全失業率は二%、失業者は百十万人という高水準にありましたし、有効求人倍率は〇・五六倍という低水準でありました。ちなみに、年間を通じて失業人口が百万人を超す水準にあったということは戦後初めてのことでございますし、有効求人倍率の低さも統計開始以来のことであると承っております。
これに加えて第三に、対外的な摩擦の増大ということがございます。昨年におきまして、わが国輸出の急増をめぐる欧米諸国とのトラブル、あるいはわが国経常収支の黒字幅増大をめぐるトラブルが目立ってきていることは、御高承のとおりでございます。その背景にはさまざまな原因がございましょうが、やはり国内景気の不振による輸出圧力の増大及び輸入の伸び悩みというところに最大の原因があろうかと思います。
このようにわが国経済の現状について見てまいりますと、景気の速やかな回復を図り、それによって内外不均衡の解消を図ることが、五十三年度におけるわが国経済の最大の課題であるというふうに考えるものであります。
そこで、五十三年度予算案につきましても、まずこうした視点、すなわち速やかな景気の回復とそれによる内外不均衡の解消という当面の最重要課題に、この予算案がいかにこたえているかという視点から見ることが大切であろうかと存じますが、結論を申し上げますと、厳しい財政事情の中で、景気浮揚に格段の配慮が加えられた内容であるというふうに存じます。
すなわち、まず財政規模でございますが、一般会計の予算規模は三十四兆二千九百五十億円、前年度当初予算に比べ二〇・三%の増加となっておりまして、前年度に比較した伸びは、五十一年度の一四・一%、五十二年度の一七・四%を大きく上回っております。政府の経済見通しによります五十三年度の名目成長率は一二%ということでありますから、これと比較いたしますと、景気浮揚型の積極予算であるということが言えるかと存じます。こうした姿勢は財政投融資計画にも貫かれておりまして、計画の規模は十四兆八千八百七十六億円、前年度に比較した伸びは一八・七%、やはり五十一年度及び五十二年度の当初計画の伸び、並びに五十三年度の成長率の見通しを上回っております。
次に、財政支出の内容でございますが、景気刺激効果が大きいと目される公共事業関係費に重点的に財源が配分され、一般公共事業につきましては、前年度当初予算比三四・五%増の五兆一千八百三十五億円が割かれております。なお、五十三年度予算案におきましては、経常部門の前年度当初予算に対する伸びを一七・四%に抑える一方、投資部門の伸びは三一・七%という高いものになっておりまして、総じて景気浮揚に対する配慮がうかがわれるのであります。
以上、見てまいりましたように、景気浮揚という観点から見ますと、五十三年度予算案は、厳しい財政事情の中で格段の努力が払われていると評価するものでありまして、重要なことは、五十三年度の財政政策の運営の中でこの予算案を有効に生かしていくことにあると思われるのであります。
そこで、潜越でございますが、五十三年度の財政政策の運営に関しまして若干の意見を申し述べさしていただきますと、第一に、予算の迅速な、かつタイミングのいい執行が必要であろうと存じます。さきに成立しました五十二年度第二次補正予算とあわせまして、政策当局におかれましては公共事業等につき十五カ月予算として執行に当たられるというふうに伺っておりますが、この予算に盛られた公共事業等を、物価の上昇などをもたらすことなく、迅速かつ円滑に執行していくためには相当の工夫と努力が必要であろうかと思う次第であります。
また、以上のこととも関連いたしますが、地方財政との緊密な連携が重要なポイントになろうかと存じます。特に執行面では十分なチームワークを組んでいただく必要がございましょう。
次に、マクロの経済の動きばかりでなく、ミクロの動きにも十分配慮した、きめの細かい政策運営が必要であります。構造不況業種に対する取り組み、円高等により打撃を受けている中小企業に対する配慮、雇用問題に対する対策等は、とりわけ重要であろうかと存じます。
なお、この予算案によって、わが国経済を速やかな景気回復軌道に乗せることができるかという問題につきましては、御案内のとおり、五十三年度のわが国経済を取り巻く環境は非常に厳しいものがございます。加えて、内外に不確定要因も多く、見通しがきわめて困難であるという事情もございます。したがいまして、これだけの予算案をもっていたしましても、わが国経済を回復軌道に乗せることは必ずしも容易ではないと予想される次第でありますが、私どもといたしましては、適切な執行によりまして早期に景気浮揚効果があらわれることを期待いたしますと同時に、私どもの側面からできる限りの御協力をいたしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
以上、五十三年度予算案の歳出面につきまして、もっぱら景気浮揚という観点から申し述べてまいりましたが、改めて申し上げるまでもなく、五十三年度のわが国経済の課題は、景気の速やかな回復のただ一点にとどまるものではなく、また、予算の役割りはきわめて幅広いものであります。したがいまして、五十三年度予算案につきましては、福祉の充実という観点から、国際協力の推進という観点から、あるいはその他さまざまな観点からの見方なり評価も必要であると申せましょう。しかしながら、そういう点につきましては、それぞれ御専門の方がいらっしゃることと存じますので、本日は省略さしていただきまして、次に、歳入面の問題、とりわけ私ども国債引受団として最も大きな影響のあります国債の問題につきまして、意見を申し述べさしていただきたいと存じます。
御存じのとおり、五十三年度予算案におきましては十兆九千八百五十億円の国債発行が計画されておりますが、これは前年度当初予算の八兆四千八百億円を二兆円以上上回り、また、前年度第二次補正後予算の九兆九千八百五十億円をも一兆円上回るという膨大な額であります。したがいまして、五十三年度予算案における国債の依存度は三二%に達しております。前年度あるいは前々年度の当初予算における二九%台を上回っておるわけであります。なお、この国債依存度につきましては、本年度から五月分税収の年度所属区分の変更が予定されておりまして、この変更を、織り込まない場合には三七%にも及ぶということであります。わが国の過去の歴史に照らしてみましても、また欧米諸国の実情と比較してみましても、まことに異例としか申し上げようのない金額及び比率でありまして、余儀なき事情によるとは言え、このような大量の国債発行につきましてはきわめて心配をいたしておる次第であります。
ここ数年来、各方面で盛んに議論されておりますので、私がここで改めて申し述べるまでもないとは存じますが、財政運営を大量の国債発行に依存して行うことの危険性あるいは弊害等につきましては、やはり十分に留意していただく必要があろうかと存じます。
問題の第一は、国債発行に過度に依存した財政運営の進行によって財政の硬直化を招き、ついには運営自体もきわめて困難に陥るということであります。このことは、五十三年度予算案におきましてすでに国債費が三兆二千億円、歳出の九・四%に達していることを見ましても、十分に予測されるわけであります。また、国債発行に依存した財政運営が、どちらかと言うと歳出の合理化、効率化についての努力を鈍らし、財政の放漫化を招きやすい傾向を有していることも注意しておかなければならないと存じます。
問題の第二は、国債の大量発行がインフレーションにつながりやすいということであります。この点につきましては、わが国経済が目下巨額のデフレギャップを抱え、卸売物価、消費者物価ともに安定した状況にあることを考えますと、当面は心配しなくてもよいかとも思われますが、巨額の国債発行による財政支出の増加によりボトルネックが発生いたしますと、一部公共投資関連資材について値上がりの懸念もございましょうし、また、将来このような財政の体質が定着いたしますと、マネーサプライの増加を通じまして物価全般の上昇を招く危険性があることにつきましても、十分警戒しておく必要があろうかと思われます。
第三に、いわゆるクラウディングアウトの問題がございます。五十三年度におきましては、約十一兆円の国債のほかにも、一兆三千六百億円の政府保証債、六兆二千二百億円の地方債が発行される予定になっておりまして、その他借入金等を合わせますと、公共部門の資金需要は二十兆円を超すものと見込まれております。現在のところ、景気回復のおくれを反映いたしまして民間の資金需要が落ちついておりますから、まだ問題は表面化いたしておりませんが、わが国の金融構造の仕組みから見て、資金偏在という問題もございますので、景気回復が進むにつれまして、民間の資金需要が急速に圧迫される可能性は十分に考えられるわけであります。
このような危険性あるいは弊害が国債の大量発行により生じることを考えますと、基本的にはやはり財政の健全化を目指す必要があると申せましょう。これを国債発行のあり方に即して申し上げますと、財政法第四条に基づく建設国債の発行に限定するという原則を確認し、いわゆる赤字国債の発行は当面の応急的措置として極力抑制するとともに、できるだけ速やかにその圧縮を図る必要があるわけであります。中長期的観点から財政支出の内容を十分吟味、検討するとともに、国民の受益と負担の関係についても見直しを図って、一日も早く財政の健全化を図っていただきたいと考えている次第であります。
ただ、このように申しましても、当面五十三年度につきましては、大幅な財源不足の中でわが国経済の立て直しを図るというのが緊急の課題でございますから、大量の国債発行も万やむを得ない措置であろうかと存じます。私どもといたしましては、国債の円滑な消化に最善の努力を払っていく所存でございますが、一方で、現行方式による国債の引き受けは多くの金融機関において資金の固定化を招いておりますし、また、収益面におきましても先行き大きな問題をはらんでおりまして、私どもの負担能力は限界近くに達しているというのが現状でございます。つきましては、関係御当局におかれまして、以下申し上げる諸点につきまして特に御配慮いただきますようお願い申し上げておきたいと存じます。
その第一は、国債の引き受けについてでございます。五十三年度につきましては、まことに残念ながら資金運用部引き受けの予定がないというふうに伺っておりますが、公的部門におかれましても応分の負担をわれわれの側からはお願いいたしたいと存じます。また、民間部門につきましては、個人、機関投資家を含め、さらに多様な消化層の拡充を図り、かつ引受団各員の引き受け能力の強化のためのいろいろな施策の展開もお願いしておきたいと存じます。
第二は、国債の発行条件についてでございまして、適正な市場の実勢を反映することが基本でございますが、その際にも、長期投資としての妥当な水準を目指しつつ、弾力的に設定していただきたいということでございます。
第三は、国債の流動化についてでございます。国債の流動化を容易ならしめるために、流通市場の整備拡充を初めとする諸施策を展開していただきたいということであります。
これらの施策は、未曾有の規模に達することになる五十三年度の国債を円滑に消化するためにはぜひとも必要なことであり、また、大量の国債発行がもたらす弊害を予防し、これに歯どめをかけるという観点から見ましても、きわめて重要なことであろうかと存じます。関係御当局におかれまして、こういう諸点について十分に御理解を賜り、応分の御配慮をしていただきたく、この席をおかりいたしまして御要望申し上げた次第であります。
以上、五十三年度予算案につきまして所見を申し述べさせていただきましたが、改めて申し上げるまでもなく、私どもといたしましては、政策の運営に十分協力し、景気の速やかな回復と内外不均衡の解消を図るというわが国経済の課題を達成するために、また、さまざまな社会的な要請にこたえ、国民生活の向上に寄与するという、私どもに課せられている本来的使命を果たすために最大限の努力を払う所存でございます。
最後に、国債引受団の中核となっております銀行の経営について一言申し上げたいと思います。
銀行といたしましては、今後とも公共債の引き受けに御協力申し上げることはもちろんでありますが、融資につきましても、安価良質な資金を広く供給することによって、企業経営の内容の改善あるいは発展に寄与してまいりたいと思っております。中小企業向け融資には特に配慮いたしまして、健全な経営を行っている企業が資金繰りの圧迫のために倒産したりすることがないよう、万全の努力をしていく所存でございます。
また、住宅ローンにつきましては、国民の要望にこたえまして十分な資金供給ができるよう努めてまいりたいと思っております。
さらに、近年、銀行に対する要請は、有利な貯蓄手段の提供や生活の向上のためのさまざまな金融サービスの提供から、国際、いわゆるインターナショナルな業務に至るまできわめて広範にかつ多様化してまいっておりますが、私どもといたしましては、こうした社会のニーズに可能な限りこたえてまいりたいと考えている次第でございます。
御高承のとおり、最近におきまして、銀行経営はきわめて厳しい状況に立ち至っております。かねてから私どもは、経営の効率化につきまして最大限の努力を払ってまいりましたが、何分にも貸出金利の引き下げや公共債の保有の増加に伴いまして資金の運用利回りが低下いたしております。これに加えて、預金金利が下方硬直的であることや、やむを得ない諸経費の増大によりまして資金の調達利回りは十分に低下せず、ために利ざやは大幅な縮小を見ております。また、景気回復のおくれに伴い経営内容の悪化する企業が増加しておりますが、これにつれて銀行の貸し出し内容も悪化傾向にあることは否めません。さらに、公共債保有の増加や住宅ローンの拡大に伴い資金運用の長期化が進んでおるわけでありますが、これも資金調達とのバランスを考えれば、いささか問題ありと申さざるを得ないのであります。
これらの諸点につきましては、かねてから行政御当局にはよく御説明申し上げ、抜本的解決策といたしまして、資金吸収パイプの拡充強化や内部留保の充実等の諸施策についてお願い申し上げておりますが、皆様方におかれましても、銀行経営の現状とその果たしている役割りにつき、さらに一層の御理解と御関心をお持ちいただき、御協力を賜りますようお願いいたしたいと存じます。
申すまでもありませんが、銀行経営の根幹は、国民の資産を安全に預かり、信用秩序を維持することにあります。私どもといたしましては、今後とも一層の経営努力を払い、国民の信頼をいささかも揺るぎないものとする所存でありますが、その信頼をさらに強固なものにするためには、ぜひとも皆様方の御指導、御尽力をいただきたく、一言申し添えさせていただいた次第であります。
これをもちまして、私の陳述を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)