楠敏雄の発言 (予算委員会公聴会)

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○楠公述人 まず一点目の教育の問題ですけれども、私自身が目が見えない者として初めて国公立の教壇に立ったわけですけれども、この場合、最初まず、教員採用試験を受けるという段階で教育委員会でシャットアウトをされたわけです。目の見えない人は採用できない、採用するはずがないので試験も受けさしてもらえないということで拒否をされたわけです。また受け入れる際にも、たとえば現場の先生方の間からいろいろと、目の見えない人がちゃんと教育できるのか、あるいは自分たちの労働強化にならないかというふうな形で反発も出たわけです。私自身も、目の見える人たちの前で教壇に立つことの不安ということは非常に大きかったわけですけれども、そういう中で、教育の現場に立ってみてつくづく感じているのが、小学校あるいは中学校からの教育がきわめてお粗末であって、その中でいわば落ちこぼされてきた、落とされてきた生徒たちがたくさんいる。私のクラスにも、高校二年、三年でまだABCが書けない生徒もいるわけで、それは決して本人の責任ではないし、やはりごく一部の人たちだけに焦点を合わせてきた教育の結果ではないか。それは私自身が目が見えないという立場で、この置いてきぼりの教育、人をけ落とす教育のいやらしさというものをつくづく痛感しているわけです。現在私は、生徒たちに協力してもらいながら、たとえば黒板に字を書く、板書ですね、これに関しても、生徒に協力してもらって書いてもらう、あるいは送り迎えをしてもらうという関係で、ともに教育を進めていくということを通じて多少なりとも教育のあり方を変えていきたいというふうに考えているわけです。
 さらに義務化の問題で、とりわけ重度、重症と言われる子供たちの問題はどうなのかということですけれども、もちろん、何人たりとも義務教育の義務があるとしなければならないはずです。これは憲法にも教育基本法にもうたわれていることですし、これは絶対に実現されるべきだ。
 もう一つは、それでは養護学校へ行かなければならないというふうに義務化するのかどうかという問題です。現在大阪ではすでに、車いすの障害者や寝たきりの障害者が十名以上、地域の普通の学校でみんなと一緒に勉強している。ある教室では、教室に畳を敷いて寝たきりの障害児の場を確保している。そういう中で一般の子供たちが、たとえば、早く算数の計算ができた子供がこういった重度の障害児に協力して、一緒になって計算をしようとする。そのことですぐにその障害児が数を覚えるということではないにしても、彼の表情が非常に生き生きとしてきている。こういう報告が数々出てきているわけです。そういう中で、行くべきであるとか行くべきでないという規定を法律や行政がするのではなしに、本人や親の希望というもの、地域でみんなと一緒に生きていきたいという希望をやはり尊重すべきだということを、あえて追加して申し上げておきたいと思います。
 時間がありませんので簡単に申し上げますけれども、交通の問題です。
 車いすに乗ってバスに乗車すること、電車に乗車することに対して、さまざまな拒否が起こっています。この問題が起こったときに、問題を起こした障害者の側に、とんでもない障害者だ、乱暴なことをしているというふうな批判として返っていますけれども、なぜああいう行動をとらざるを得なかったのかという背景をむしろ深刻に考え直していただきたい。障害者が一人の人間として、映画を見たい、外へ出たいといってバスを利用しようとした、タクシーでは乗車拒否をされるということでバスを利用しようとしたときに、車いすは乗るなとか折り畳んで乗れというふうな決めつけをされてくる、こういうことに対する怒りのあらわれであるということをぜひとも受けとめていただいて、一日も早く関係当局で障害者の乗車を認める、そのための具体的な施策に関しても早急に講じていただきたい。
 さらに、目の見えない人が二人に一人は駅のプラットホームから落下している実例があるわけなんです。実際に、先ほども言われましたように、もう十人近くが生命を奪われている。私も落ちた経験がありますけれども、幸い電車が来なかったので現在ここにこうしています。そういう、われわれにとってはいわば欄干のない橋を歩いているに等しいプラットホームの現状に対して、一日も早く安全対策を講じてもらわなければならないわけですけれども、国鉄は、赤字だ、あるいは障害者に対する設備はサービスでやっているんだという発言をしかせずに、一向に抜本的な対策を講じようとしないということに対して、われわれは本当に命がけでプラットホーム、交通機関を利用しているんだということを、ここで強く訴えておきたいと思います。
 簡単ですけれども、終わらしていただきたいと思います。

発言情報

speech_id: 108405262X00119780209_019

発言者: 楠敏雄

speaker_id: 29979

日付: 1978-02-09

院: 衆議院

会議名: 予算委員会公聴会