岡市友利の発言 (公害対策及び環境保全特別委員会)

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○参考人(岡市友利君) 岡市でございます。実は、私、香川大学の農学部に昭和三十九年から奉職しまして、ずっと瀬戸内海の海洋観測及びその他赤潮発生に関する研究を続けてまいっております。そういう立場から、本日は時間をいただいて、私の意見を述べさせていただきたいと思うわけでございます。この特別措置法は、当然、前回の臨時措置法を引き継いで、さらにそれを発展して制定されるものだと私たちも理解しておりますが、私がこの法案及びその実施計画の策定案を拝見いたしまして感じました点を、主に三つの点に要約してお話しさせていただきたいと思っております。ちょっと順序はまちまちになって失礼ですが、一つは、自然海浜の保全についてでございます。私は、日本人が、といいますか、われわれが海洋民族であった時代というのは、いまNHKで放送している、呂宋助左衛門の時代のような、あるほんのわずかな時代を除いて、恐らく海洋民族であったことはないのではないか。むしろこれからの二百海里時代を控えて、これからこそわれわれが海洋民族として発展すべき時代にきているのではないか。そういう時代を踏まえて、ことにこの瀬戸内海の問題を世界の問題としてもやはり考える必要がある。そういうときに、当然瀬戸内海が漁場として重要なことは法案にもうたわれていることでございますが、さらに、一般市民がそこでどういうふうにして海と接触するかということが非常に重要な問題であろうと考えているわけです。で、策定案の「計画の性格」としまして、「国民に対して瀬戸内海の環境保全の目標を示し、その理解と協力を得て、」ととうたわれております。いかにして理解と協力を得るかというのに、ただ汚染の結果を示すだけでは決して十分ではありませんで、海そのものに市民が接触する機会を大幅に与えるということがきわめて重要になってまいります。
 そういう意味で、たとえば環境庁がこの法案の参考資料としてこの四月に提出しましたものに、「瀬戸内海海岸線状況」という資料がございます。その中で、瀬戸内海では、自然海岸が四〇%、半自然海岸が二四・一%、人工海岸が三五%として、それで、その純自然海岸と半自然海岸を合わせて六四・七%であるとしてあります。しかし、こういう取りまとめ方に、実は、私はかなり問題があるのではないかと考えております。瀬戸内海では、半自然海岸というのは人工海岸の方にむしろ入れるべき問題であって、自然海岸としての瀬戸内海をいかに保全するかということがもっと明確にならなければならないのではないか。たとえば東京湾では、純自然海岸が一〇%、半自然海岸が九・五%とされて、その合計として二〇%とされております。東京湾のようなところの半自然海岸はそれなりにまた半自然海岸として評価する意味があるわけでございますが、瀬戸内海では、半自然海岸を自然海岸の中に入れることにどういう意味があるのか。こういう考え方に一つ問題点があるかのように思っております。
 二番目には、実はこれは環境行政の問題点についてひとつ御指摘させていただきたいと思っております。
 これは、瀬戸内海というのは、先日も実は大気汚染の問題、オキシダント問題について新聞で報道されていたことでございますが、たとえば新居浜とか愛媛県の東予地区で発生した光化学スモッグの状況を、そのほかの山口、広島、香川の状況と対比してみますと、そういうふうな光化学スモッグの起きたときにはやはり他県にも同じような状況が起きているということが報道をされております。こういうふうに、瀬戸内海の問題は決して行政区画で区切られるような問題ではない問題がずいぶんございます。たとえば私たちが面しております播磨灘、それから燧灘というかなり大きな開けた海がございますが、播磨灘の調査をするときに、行政区画が岡山県、兵庫県、徳島県、香川県と分かれておりますので、各県の水産試験場が調査するときに、岡山県の水産試験場は岡山の領域であるごく北西の部分だけ、兵庫県の水産試験場の船が来ますと小豆島の南までもなかなか来れませんで、それから南の香川県側は調査しない。香川県の船はもちろん兵庫県側あるいは淡路島寄りには行かない。そういう資料を突き合わせて一つの播磨灘像というものをつくっているわけです。そのこと自体にきわめて無理が一つあります。
 そういった意味で環境行政というのは、たとえばこの法案にも総理大臣から各府県の長に指導助言ができるというふうに書いてございますが、そういう立場ではなくもっと広い立場から、もし海を対象にするならば播磨灘を一つの区域と考え、あるいは燧灘を一つの区域と考える、周防灘を一つの区域と考える。そういった広い環境行政の実施ということが問題になってきております。
 このことは、単に海だけではなくて陸上と海との関係を考える上にもなお重要な問題が出てきているわけでございます。これは諸先生方はもちろん御存じのことで、工場排水、都市排水の影響ということが議論されておりますが、最近ではさらに農薬の問題が漁業者の間では大きな問題として出てきているわけでございます。どちらも一次産業でございまして、私たちがこれから瀬戸内海沿岸で守っていかなければならないものですが、そういったものの中にやはりお互いの相互関係が生じつつあるということです。これは農薬使用に関する指導の問題も踏まえていろいろ問題があるということでございます。
 そういう意味で、環境問題というのは決して地方行政の個々小さく区切られた中で解決できる問題ではないということでございます。これを考えてみますと、私は、多少きついことを申させていただきますが、現在の環境庁の姿勢と申しますか、そういうものに多少不満の念を禁じざるを得ないわけでございます。というのは、単に環境が調整問題であるのかあるいは行政問題であるのかということをやはりここでお考えいただけたら幸いかと思っております。こういったことが実は私の第三点の論点になるわけでございますが、きわめて研究体制の不備につながってまいっているわけです。現在水産試験場の研究者たちが環境保全の面をかなり受け持っております。たとえば窒素や燐の分析調査というのは水産試験場の職員が受け持っているわけですが、すでにそういう人たちのこれは労力的な、能力じゃなくてむしろ労力的な限界に現在達してきているというふうに考えております。その後、臨時措置法の施行に伴いまして、各水産試験場でその方面の職員が確かに増強はされましたけれども、本来水産試験場というのは、魚を養殖し、育て、漁業者の指導を行うということが本業でございます。そこへいきなりこういうふうな大きな問題が入ってきております。そういうことで、かなり水産試験場の整備というようなことも私たち現場にいてよく考えることです。これにあわせて、瀬戸内海の環境総合研究所の設置ということが、これは地元ではかなり大きな問題としていつも考えられておるわけです。すでに昭和四十七年の国会図書館の調査立法考査局が出しました、瀬戸内海における環境破壊に関する報告書の中にも、瀬戸内海環境総合調整研究所を設置することが望ましいという一項が入ってございます。そういうことがなかなか取り上げられないで、現在、国立公害研究所に海洋環境室という研究室が一室最近設けられました。それは研究室長がただお一人おられるだけの研究室でございます。こういった問題をやはり今後踏まえていかなければならないのではないか。
 最後に、この法案で、問題になっている赤潮の発生要因をさらに研究していくということがうたわれておりますが、現在の赤潮研究の方法というのは、私に言わせればいわば対策的、赤潮が発生したときにこれを考えるということになるわけです。これは先ほど申しましたような水産試験場その他の調査研究体制の不備が当然もたらすものでございまして、むしろもっと、海域の中の生態系がどう組み立てられているのかというようなこと、たとえば海にはバクテリアがおりまして、植物プランクトン、動物プランクトン、それを食べる魚がいるわけです。そういった生態系の組み立てがどういうふうに瀬戸内海の各灘で行われているのかというようなことが一つも明らかになっておりません。わずかに燧灘のみでございます。播磨灘でハマチの大きな被害がこの数年間続いておりますが、それがなぜ起きたかということは多少研究者の関心を引きますが、それでは、播磨灘がそういうハマチの養殖にどういうふうに適しているのかという答えを出すには、実を言いますと全く資料が欠けているわけでございます。そういうふうな赤潮の研究についても、もう一段下がった基礎研究というものが今後必要でございます。
 たとえば燐につきましても、燐の規制を陸上から考えますと、確かに燐の流入量を減らすということになります。ところが、海の立場から考えますと、燐の循環スピード、これは生物を通じた循環のスピードが一体どのくらいなのか、あるいは流れ込んだ燐がその海域にどのくらいとどまるのかという、滞留時間と私たち言いますが、そういった滞留時間の測定も行われていないわけです。これは先ほど申しました基礎研究の全く欠如のもとに行われているわけで、現在これは、私どもの研究者仲間では、国際的に瀬戸内海の汚染ということは非常に注目しております。というのは、アメリカでも赤潮が沿岸で起きておりますので、そういう共同研究その他の声もあります。そういったときに瀬戸内海をいかに守っていくかというのは、これは私たちの役目でございますし、あるいは世界に対する、二百海里時代を迎えての一つの大きな、何というんでしょうか、曲がり角に立った重要な時期ではないかと考えております。
 これで私の意見を終わらしていただきたいと思います。

発言情報

speech_id: 108414205X01619780602_003

発言者: 岡市友利

speaker_id: 11294

日付: 1978-06-02

院: 参議院

会議名: 公害対策及び環境保全特別委員会