公害対策及び環境保全特別委員会

1978-06-02 参議院 全212発言

⚠️ 発言のコピー・転載時は出典元URL(kokkai.ndl.go.jpおよびkokkai-data.com)を必ず残してください。改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

会議録情報#0
昭和五十三年六月二日(金曜日)
   午前十時九分開会
    —————————————
   委員の異動
 六月一日
    辞任         補欠選任
     岩上 二郎君     菅野 儀作君
     岩崎 純三君     森下  泰君
    —————————————
  出席者は左のとおり。
    委員長         田中寿美子君
    理 事
               久次米健太郎君
                原 文兵衛君
                矢田部 理君
                小平 芳平君
    委 員
                菅野 儀作君
                田代由紀男君
                林  寛子君
                藤井 丙午君
                三善 信二君
                森下  泰君
                山内 一郎君
                粕谷 照美君
                坂倉 藤吾君
                広田 幸一君
                中野  明君
                沓脱タケ子君
                柳澤 錬造君
   国務大臣
       国 務 大 臣
       (環境庁長官)  山田 久就君
   政府委員
       環境庁長官官房
       長        金子 太郎君
       環境庁長官官房
       審議官      石渡 鷹雄君
       環境庁企画調整
       局長       信澤  清君
       環境庁自然保護
       局長       出原 孝夫君
       環境庁大気保全
       局長       橋本 道夫君
       環境庁水質保全
       局長       二瓶  博君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        今藤 省三君
   説明員
       環境庁長官官房
       参事官      岩崎 壽男君
       運輸大臣官房環
       境課長      中島 眞二君
       運輸省海運局総
       務課長      山下 文利君
       運輸省港湾局技
       術参事官     久田 安夫君
       海上保安庁警備
       救難部航行安全
       企画課長     渡辺純一郎君
       建設省都市局下
       水道部下水道企
       画課長      高橋  進君
   参考人
       香川大学農学部
       教授       岡市 友利君
       入浜権運動推進
       全国連絡会議代
       表        高崎 裕士君
       東京都公害局水
       質保全部長    田尻 宗昭君
       全国漁業協同組
       合連合会参事   浜崎 礼三君
       日本弁護士連合
       会公害対策委員
       会委員      水野 武夫君
    —————————————
  本日の会議に付した案件
○瀬戸内海環境保全臨時措置法及び水質汚濁防止
 法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院
 送付)
    —————————————
この発言だけを見る →
田中寿美子#1
○委員長(田中寿美子君) ただいまから公害対策及び環境保全特別委員会を開会いたします。まず、委員の異動について御報告いたします。昨一日、岩上二郎君、岩崎純三君が委員を辞任され、その補欠として菅野儀作君、森下泰君が選任されました。
    —————————————
この発言だけを見る →
田中寿美子#2
○委員長(田中寿美子君) 瀬戸内海環境保全臨時措置法及び水質汚濁防止法の一部を改正する法律案を議題とし、本法案について参考人の方から御意見を聴取いたします。本日は、お手元の名簿にございます五人の参考人をお招きいたしております。この際、参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。本日は、御多用中のところ、本委員会に御出席をくださいまして、まことにありがとう存じます。
 ただいま議題といたしております法案は、ここ数年来、関係府県はもとより各方面から多くの提言や要望がなされるなど、広く国民の関心を集めているところでございます。本日は、参考人の皆様に、それぞれのお立場から御意見を承り、本案審査の参考にさせていただきたいと存じます。どうぞ忌憚のない御意見をお述べくださいますようお願い申し上げます。なお、御意見の開陳はおのおの十五分以内でお述べをいただき、その後、委員の質疑にお答え願いたいと存じます。
 それでは、まず、岡市参考人からお願いいたします。
この発言だけを見る →
岡市友利#3
○参考人(岡市友利君) 岡市でございます。実は、私、香川大学の農学部に昭和三十九年から奉職しまして、ずっと瀬戸内海の海洋観測及びその他赤潮発生に関する研究を続けてまいっております。そういう立場から、本日は時間をいただいて、私の意見を述べさせていただきたいと思うわけでございます。この特別措置法は、当然、前回の臨時措置法を引き継いで、さらにそれを発展して制定されるものだと私たちも理解しておりますが、私がこの法案及びその実施計画の策定案を拝見いたしまして感じました点を、主に三つの点に要約してお話しさせていただきたいと思っております。ちょっと順序はまちまちになって失礼ですが、一つは、自然海浜の保全についてでございます。私は、日本人が、といいますか、われわれが海洋民族であった時代というのは、いまNHKで放送している、呂宋助左衛門の時代のような、あるほんのわずかな時代を除いて、恐らく海洋民族であったことはないのではないか。むしろこれからの二百海里時代を控えて、これからこそわれわれが海洋民族として発展すべき時代にきているのではないか。そういう時代を踏まえて、ことにこの瀬戸内海の問題を世界の問題としてもやはり考える必要がある。そういうときに、当然瀬戸内海が漁場として重要なことは法案にもうたわれていることでございますが、さらに、一般市民がそこでどういうふうにして海と接触するかということが非常に重要な問題であろうと考えているわけです。で、策定案の「計画の性格」としまして、「国民に対して瀬戸内海の環境保全の目標を示し、その理解と協力を得て、」ととうたわれております。いかにして理解と協力を得るかというのに、ただ汚染の結果を示すだけでは決して十分ではありませんで、海そのものに市民が接触する機会を大幅に与えるということがきわめて重要になってまいります。
 そういう意味で、たとえば環境庁がこの法案の参考資料としてこの四月に提出しましたものに、「瀬戸内海海岸線状況」という資料がございます。その中で、瀬戸内海では、自然海岸が四〇%、半自然海岸が二四・一%、人工海岸が三五%として、それで、その純自然海岸と半自然海岸を合わせて六四・七%であるとしてあります。しかし、こういう取りまとめ方に、実は、私はかなり問題があるのではないかと考えております。瀬戸内海では、半自然海岸というのは人工海岸の方にむしろ入れるべき問題であって、自然海岸としての瀬戸内海をいかに保全するかということがもっと明確にならなければならないのではないか。たとえば東京湾では、純自然海岸が一〇%、半自然海岸が九・五%とされて、その合計として二〇%とされております。東京湾のようなところの半自然海岸はそれなりにまた半自然海岸として評価する意味があるわけでございますが、瀬戸内海では、半自然海岸を自然海岸の中に入れることにどういう意味があるのか。こういう考え方に一つ問題点があるかのように思っております。
 二番目には、実はこれは環境行政の問題点についてひとつ御指摘させていただきたいと思っております。
 これは、瀬戸内海というのは、先日も実は大気汚染の問題、オキシダント問題について新聞で報道されていたことでございますが、たとえば新居浜とか愛媛県の東予地区で発生した光化学スモッグの状況を、そのほかの山口、広島、香川の状況と対比してみますと、そういうふうな光化学スモッグの起きたときにはやはり他県にも同じような状況が起きているということが報道をされております。こういうふうに、瀬戸内海の問題は決して行政区画で区切られるような問題ではない問題がずいぶんございます。たとえば私たちが面しております播磨灘、それから燧灘というかなり大きな開けた海がございますが、播磨灘の調査をするときに、行政区画が岡山県、兵庫県、徳島県、香川県と分かれておりますので、各県の水産試験場が調査するときに、岡山県の水産試験場は岡山の領域であるごく北西の部分だけ、兵庫県の水産試験場の船が来ますと小豆島の南までもなかなか来れませんで、それから南の香川県側は調査しない。香川県の船はもちろん兵庫県側あるいは淡路島寄りには行かない。そういう資料を突き合わせて一つの播磨灘像というものをつくっているわけです。そのこと自体にきわめて無理が一つあります。
 そういった意味で環境行政というのは、たとえばこの法案にも総理大臣から各府県の長に指導助言ができるというふうに書いてございますが、そういう立場ではなくもっと広い立場から、もし海を対象にするならば播磨灘を一つの区域と考え、あるいは燧灘を一つの区域と考える、周防灘を一つの区域と考える。そういった広い環境行政の実施ということが問題になってきております。
 このことは、単に海だけではなくて陸上と海との関係を考える上にもなお重要な問題が出てきているわけでございます。これは諸先生方はもちろん御存じのことで、工場排水、都市排水の影響ということが議論されておりますが、最近ではさらに農薬の問題が漁業者の間では大きな問題として出てきているわけでございます。どちらも一次産業でございまして、私たちがこれから瀬戸内海沿岸で守っていかなければならないものですが、そういったものの中にやはりお互いの相互関係が生じつつあるということです。これは農薬使用に関する指導の問題も踏まえていろいろ問題があるということでございます。
 そういう意味で、環境問題というのは決して地方行政の個々小さく区切られた中で解決できる問題ではないということでございます。これを考えてみますと、私は、多少きついことを申させていただきますが、現在の環境庁の姿勢と申しますか、そういうものに多少不満の念を禁じざるを得ないわけでございます。というのは、単に環境が調整問題であるのかあるいは行政問題であるのかということをやはりここでお考えいただけたら幸いかと思っております。こういったことが実は私の第三点の論点になるわけでございますが、きわめて研究体制の不備につながってまいっているわけです。現在水産試験場の研究者たちが環境保全の面をかなり受け持っております。たとえば窒素や燐の分析調査というのは水産試験場の職員が受け持っているわけですが、すでにそういう人たちのこれは労力的な、能力じゃなくてむしろ労力的な限界に現在達してきているというふうに考えております。その後、臨時措置法の施行に伴いまして、各水産試験場でその方面の職員が確かに増強はされましたけれども、本来水産試験場というのは、魚を養殖し、育て、漁業者の指導を行うということが本業でございます。そこへいきなりこういうふうな大きな問題が入ってきております。そういうことで、かなり水産試験場の整備というようなことも私たち現場にいてよく考えることです。これにあわせて、瀬戸内海の環境総合研究所の設置ということが、これは地元ではかなり大きな問題としていつも考えられておるわけです。すでに昭和四十七年の国会図書館の調査立法考査局が出しました、瀬戸内海における環境破壊に関する報告書の中にも、瀬戸内海環境総合調整研究所を設置することが望ましいという一項が入ってございます。そういうことがなかなか取り上げられないで、現在、国立公害研究所に海洋環境室という研究室が一室最近設けられました。それは研究室長がただお一人おられるだけの研究室でございます。こういった問題をやはり今後踏まえていかなければならないのではないか。
 最後に、この法案で、問題になっている赤潮の発生要因をさらに研究していくということがうたわれておりますが、現在の赤潮研究の方法というのは、私に言わせればいわば対策的、赤潮が発生したときにこれを考えるということになるわけです。これは先ほど申しましたような水産試験場その他の調査研究体制の不備が当然もたらすものでございまして、むしろもっと、海域の中の生態系がどう組み立てられているのかというようなこと、たとえば海にはバクテリアがおりまして、植物プランクトン、動物プランクトン、それを食べる魚がいるわけです。そういった生態系の組み立てがどういうふうに瀬戸内海の各灘で行われているのかというようなことが一つも明らかになっておりません。わずかに燧灘のみでございます。播磨灘でハマチの大きな被害がこの数年間続いておりますが、それがなぜ起きたかということは多少研究者の関心を引きますが、それでは、播磨灘がそういうハマチの養殖にどういうふうに適しているのかという答えを出すには、実を言いますと全く資料が欠けているわけでございます。そういうふうな赤潮の研究についても、もう一段下がった基礎研究というものが今後必要でございます。
 たとえば燐につきましても、燐の規制を陸上から考えますと、確かに燐の流入量を減らすということになります。ところが、海の立場から考えますと、燐の循環スピード、これは生物を通じた循環のスピードが一体どのくらいなのか、あるいは流れ込んだ燐がその海域にどのくらいとどまるのかという、滞留時間と私たち言いますが、そういった滞留時間の測定も行われていないわけです。これは先ほど申しました基礎研究の全く欠如のもとに行われているわけで、現在これは、私どもの研究者仲間では、国際的に瀬戸内海の汚染ということは非常に注目しております。というのは、アメリカでも赤潮が沿岸で起きておりますので、そういう共同研究その他の声もあります。そういったときに瀬戸内海をいかに守っていくかというのは、これは私たちの役目でございますし、あるいは世界に対する、二百海里時代を迎えての一つの大きな、何というんでしょうか、曲がり角に立った重要な時期ではないかと考えております。
 これで私の意見を終わらしていただきたいと思います。
この発言だけを見る →
田中寿美子#4
○委員長(田中寿美子君) どうもありがとうございました。
 では、続きまして高崎参考人。
この発言だけを見る →
高崎裕士#5
○参考人(高崎裕士君) 高崎でございます。
 私は学者でもございませんし、また法律の専門家でもございません。入浜権運動をやっております住民の立場から、素朴な感情ということで述べさせていただきたく思います。
 入浜権というようなものがまだ熟さないものでございますので、その説明もしなければならないかと思いますが、時間がございませんので、委員長の御許可をいただきまして、レジュメ及び入浜権の参考文献等お配りさせていただきましたので御了承いただきたく思います。
 私は、その立場から、主として自然海岸の保護ということと埋め立て規制などにつきまして意見を述べたいと思います。
 自然海岸の保護ということについてでございますが、ちょうど五月二十九日、松山地裁におきまして、あの俗に海水浴場訴訟と申しますものの判決が出ました。これは漁港の築港差しとめ訴訟ということでございますけれども、不幸なことに何か表面的には漁民とおかの住民との利害の対立のように見えておりますけれども、決してそうではございませんで、入浜権本来の考え方といいますものは何よりも漁業権というものが真っ先に尊重されなければならない、そしておかの住民の側からも海に親しむ権利があってよかろうと、その両両相まって海岸を守ることができるのではないかと、こうした考え方でございますので、御了解いただきたく思います。余談になりますけれども、この判決がああした形で出ましたときに、私のところに真っ先に心配して電話をかけてきましたのが、福岡県海水浴場組合連合会でございました。この団体ははっきりと自民党を支持している団体でございます。これはなぜそのようなことを申すかと申しますと、入浜権運動と申しますのは、これは自民党を支持なさる方もまたその他すべての政党を支持なさる方、すべての分野のすべての人たちが入っている運動であるということを御紹介したかったからでございますが、そうした電話もかかってまいりました。私は現地とは関係はございませんから、漁港差しとめのああした判決そのものの是非はともかくといたしまして、このたびの特別法の自然海岸の保護ということに関連をいたしまして、入浜権に対するこのたびの司法判断に関して次のように考えるものでございます。
 この判決というものは、全体として申しますならば、大変古い考え方に基づいていると言わなければなりません。これに対しまして各新聞の論調、特に本日は朝日が社説を書いておりますけれども、やむを得ない面はあるけれども、やはり現実はそうではないから、行政措置でありますとか立法措置というものが先行しなければならないだろうということを述べております。それだけに、瀬戸内法というりっぱなものができ上がるということにつきましては住民の期待するところは大きいわけでございます。たとえば自然海岸の保護ということを打ち出されたということにつきましても評価はできるのでありますけれども、やはりそこには十分でない点がございます。
 話がもとへ戻りますけれども、長浜判決につきまして意見を申し述べますならば、この海や海浜などの自然公物は国の管理であって、住民は使用を許されている、すなわち禁止されないでいるにすぎないとしているいわゆる反射利益論というのがございます。本日は日弁連の水野先生おいででございますから、私がこんなことを申し上げるのは大変恥ずかしいんですけれども、あえて住民の感覚で申し上げさせていただきたいと思いますが、まずそれにつきましては、明治六年以来、地租改正のときに海岸が雑種地という地目で官有地になりますまでは、各地域ごとに海浜というものが入会地のようなものとしてみんなの共有財産であり、さまざまに利用されてまいった。そうしたものが明治六年以降官有地になったというような発生の経緯を無視しているのではないかという点が一つございます。それともう一つは、現在では西ドイツ、フランス、アメリカ等では、特に戦後、公物——公の物の住民、市民による自由使用権あるいはまたそれはお上のものを住民が使わせていただくという感覚ではなくって、本来国民みんなのものを国や地方自治体がこれを正しく管理するように委託されていると考えること、いわゆる公共信託理論などがだんだんと根づいてまいっているかのように聞いております。したがって、自然公物は国民のものではない、国のものを国民が使用を許されているんだという考え方でありますけれども、自然公物の「公」という字は一体何を意味するのかということから問われなければならないと存じます。
 また、第二の点といたしまして、自然景観などはいつでもだれでも楽しめるから権利とは言えないという判断が出ておったと思いますけれども、反論といたしまして、たとえば空気でございます。空気はいつでもだれでも吸えるけれども、もしきれいな空気が吸えなくなったとしますならば、これは生存権の一部として空気を吸う権利ということが主張できるはずでございます。自然と景観というものは空気のように直接生存に関係がないからという議論もあるかと思いますけれども、私はそんなに軽んじられてよいものであろうとは思いません。人間が人間らしく生きるためにどうしてもなくてはならないものであろうかと思います。空気を汚すものが出てきましたから大気汚染防止法が必要になりました。と同じように、海岸というものがむやみに破壊されるというようなここ二十年ばかりの間の状況が出てまいったのですから、いつでもだれでもが楽しめるというふうにのんきなことを言っておれないのであり、そうした実定法がなかった、入浜権なんていうような実定法はなかったということは、逆に昔はだれでもがいつでも楽しめたということをむしろ反映しているのでありまして、今日のようにいつでもだれでもがこの恵みを享受することができなくなった以上は、これをやはり権利として設定をしていかなければならないんではないか。法以前の法であると言っておりますけれども、そうした実情の変化に応じて、法以前の法もまた目覚めなければなりませんし、実定法とされる必要があるのではないか。すなわち、司法判断に先立って立法措置というものが必要になってくるのではないかと思います。
 また、第三点としまして、住民が海浜に対して権利性を有するとの事実がないと読み取れるような判決でございますけれども、入浜慣行の事例というものはきわめて多くございます。この点につきまして、たとえば昨年十月に、あの福岡県の豊前環境権訴訟の中間的総括のためにシンポジウムが開かれました。その中で、立教大学の淡路剛久教授は、入浜慣行の立証が必要かつ有効であるということを述べられました。また、実際にその訴訟団は、それまでの裁判の中で約手名の豊前市民を証人に立てて、これまでどのように海や海浜とかかわってきたかを明らかにしています。その締めくくりとして、私自身も福岡地裁小倉支部で証言台に立ちまして、海浜を奪われた高砂市民の立場から、かつて高砂で住民がどのように海浜とかかわって生活していたかという入浜慣行の数々と、それがどのように失われ、いま高砂市民がどのように苦しんでいるかということも立証させていただきました。で、そのときに用いましたものが、昭和五十年九月に私たちが採集して編集いたしました「一〇〇人証言集——高砂の海いまむかし」というものでございます。
 そもそも入浜権という言葉自体が、ある会合で古老が語ります、昔は嵐の後などには海岸に出て流木を集めてたき木にして一年不自由しなかった。打ち上げられた貝や魚を拾ったという話から、山林の入会権に似たものが海浜にも存在すると考えて着想したものでございますが、私たちは、それをさらに多くの人々の証言によって裏づけようと考えたわけでございます。この聞き取りの作業をいたしましたときに、そうした証言の性質上年配の人々が多かったのですけれども、海岸の思い出がそれぞれの人の青春の、また幼い日の思い出と離ちがたく結びついておりますためでしょう、どの人も皆若者のように目を輝かして話をしてくださいました。中には涙ぐんでしまった人もございました。こうしてでき上がりました「一〇〇人証言集」でございますが、これはこのようなものでございますけれども、後でまた委員会の方に提出したく思いますが、民俗行事や古くからの慣習と考えられるものを、合計八種類の民俗行事を四十六人の人が証言しております。また、海水浴、潮干狩り、釣り、散策といった近代的なレクリエーションに関するものを合計百三十七人の人が証言しております。塩田や遠浅の海といった地形、景観に関するものを七十四人。動物、植物等の生態系に関するものが二十人。海浜というものの精神性、教育的な価値に関するものが二十八人でございました。
 実際の証言を一つ、二つ紹介したく思います。時間の関係で、私が申し述べたいことの全部がもしお話しできません場合には途中で打ち切らせていただいて、これはまた後ほどの御質問にお答えする形で申し述べたいと思います。やはり具体的な住民の言葉というものを紹介する方がいいと思いますので、お許しをいただいて紹介したく思います。——年齢は編集当時の年齢です。
 小松正光 四十四歳 高砂神社宮司 高砂町
  「神社の古い絵馬にもあるのですが、ずっと昔は鳥居のすぐ先が砂浜で、まわりは松林でした。江戸末期頃には新田ができ海岸線はかなり遠のきましたが、美しい海岸であったことには変りなく、つい十四、五年前頃までは春の潮干狩、夏の海水浴に遠くから大勢の方が見えられ、帰りには高砂神社に参詣されるということも多くありました。なにしろ、相生の松や謡曲で有名でしたから。この頃はそういうことも少くなってさびしいですね。」
 野村英夫 六十八歳 理容店店主 高砂町
  「そら昔はアンタ、嵐の後なんか楽しみでしたで。広い砂浜のあっちにひとかたまり、こっちにひとかたまり、魚やタコが打ち上げられとりますネン。一人でバケツに一杯二杯と集めて持って帰って親によろこんでもろたもんです。」
 奈良きぬゑ 七十三歳 無職 伊保町
  「ほらあんさん、昔海があった時分はナ、旧の節句には梅井、高須のもんはナ、たいがい女でっけど、年寄りから娘までみんな弁当持って行って、ほて、広い広い砂ツパでほたえてはしゃいだもんですわいな。土用の丑には、いっぺんアセボなおしに行こかいうて、浴びに行きよりました。」
 以下略します。
 中本育己 五十五歳 写真店経営 高砂町
  「小学校からフンドシ一本で、熱い道をぴょんぴょん跳びながら海へ行ったものです。泳げないと赤フンドシをさせられるので皆よく練習しました。六年生の最終日二時間半の遠泳があり、あとでもらうアメ湯のうまかったこと。教室から見える海岸土手は形のよい松やガマなど茂っていたので、よく時代劇無声映画のロケがありました。片岡千恵蔵なども来て、赤穂浪士早籠の場でしょうか、撮映しているので勉強が手につきませんでした。」
 花光徳男 五十四歳 和菓子店経営 高砂町
  「土用の丑の日は海水につかると体が丈夫になるといわれていて、夜通し休憩所が開いており、高砂の商人はこの人出で、四月から八月の五ケ月間で一年分のかせぎをしたものです。今の子供となら天国と地獄で、私らのような昔の海を知っている者は、アホらしいてプールヘなんかいけませんな。」
 最後に、当時中学一年生でありました正中円さんの昭和四十七年の瀬戸内海汚染防止関連知事賞受賞作文の一節を読ましてもらいますと、
  「高砂には昔がなくなったと祖母から聞きました。美しくすきとおった海、どこまでも続いたきれいな砂浜、松の緑、青くすきとおった空が、いまではなくなってしまったのです。昔の高砂は、浜辺に茶店やみやげもの売り場が立ちならび、神戸や大阪など、もっと遠い所からも潮干狩りや海水浴を楽しみに来る人がたくさんいたそうです。
  四月三日は、高砂の言葉で「しんがさんにち」といって、浜びらきの日だったそうです。この日は、打ち上げ花火の音が町じゅうにひびき、よきょうがあったり、宝さがしがあったり、まんざい師や落語家たちがたくさん来て、せいだいに行なわれたそうです。祖母も子供のとき母に手をひかれ、おべんとうやおやつを持ち、一日中はまぐりやあさり、おお貝をとり、まて貝の穴に塩をいれて、貝が飛び出てくるのをタイミングよくつかまえて遊んだという。」
 こうして見ますと、海浜というものは、明治以降海水浴、潮干狩り、釣りなどで民衆に親しまれてきたばかりでなく、数々の民族行事や神事の形で、古来住民の生活と切り離せないものであったことがわかります。海浜というものは、単に生産のためだけでなく民衆の休息、交歓、信仰の場として、物質的のみならず精神的にも海の恵沢にあずかるところであったことがわかります。こうした、海岸というものが失われていこうとしていることに対して入浜権運動というものが起きたわけでありますが、そういう入浜的慣行の事実はきわめて多いということをお話ししたく思ったわけでございます。
 さて、本法案の、特に自然海浜につきまして、府県知事の条例による自然海岸の保全指定というものは問題があると思います。公有水面埋立法によりまして、埋め立て免許者、調停者が知事であり、多くの場合埋め立て権者もまた知事であるということ。で、住民は、これは言葉は悪いですけれども、博徒が十手捕りなわをあずかるに等しいと批評しています。また、埋め立て規制とも関連しますけれども、瀬戸内海全域を指定してこれ以上の破壊、改変は原則的に規制すべきだろうと思います。その理由の一つとして、瀬戸内海というものはもはや瀕死の状態にあります。どこをさわりましても全体に致命的な影響を与える。特に漁場、魚の産卵場としてのモ場、海水浴場、潮干狩り場への影響が大きいと思います。また、指定制ということになりますと、逆に指定を外された地域の破壊が促されるおそれがございます。そのような、すでに海岸が失われたような地域の住民も、逆になぎさの回復を心から願っています。たとえば高砂では五キロメートルの海岸がすっかり失われておりますけれども、昨年八月制定されました高砂市基本構想にはこう書かれています。「とくに、本市は工場立地によって自然の海浜が失なわれ、「渚を返せ」という住民運動が「高砂」を原点として全国的に展開されている。このため、渚の回復を基調として海に親しむ場の確保につとめる。」、このようなものでございます。どんなささやかな無名の海岸でありましても、その地域で生まれ育った者にとってはかけがいのない自然であります。したがって、ここは継承に値する、保護に値するというような指定ではなく、すべての地域を指定して保護していただきたいと思います。どうしても仮に部分を指定しなければならないのでありますならば、先ほど言いましたように知事さんが指定をなさるのではなく、住民や漁民、地方自治体、海洋学者、生態学者、海水浴場等海浜業者、釣り団体などすべての代表で構成する海浜保全委員会といったものをつくって、その議を経て環境庁長官が、全体を見渡せる目で指定を行っていただきたく思います。
 以下につきましては、御質問に答えて申し上げるようにいたします。
この発言だけを見る →
田中寿美子#6
○委員長(田中寿美子君) どうもありがとうございました。
 それでは、続いて田尻参考人にお願いいたします。
この発言だけを見る →
田尻宗昭#7
○参考人(田尻宗昭君) 私は、前職の海上保安庁でタンカーの油について非常に苦労いたしましたので、その体験等も含めて申し上げておきたいと思います。
 まず、この瀬戸内海保全措置法の第十七条に、海難等による大量の油の排出の防止及び防除に関しての規定がございますけれども、このこと自体は非常に意義のあることだと思いますけれども、こういうような表現の条項あるいは条文というものは、すでに海上保安庁におきまして非常に古くからもう行っておることでございますので、問題はこの中身であります。どういう対策を具体的に政令、省令等で定めていくかということが一番キーポイントであります。何しろこのタンカーの油対策といいますのは非常にいろんな困難性がありまして、ただ指導、取り締まりを強化するというような言葉だけではとても片づけられない大変な大きな転機に立っておるわけでございます。
 海上保安庁の持っております海洋汚染防止法あるいは海上交通法というような一般法では、どうしてもこの瀬戸内海というような特殊な海域の巨大タンカーは律し切れない。どうしてもこういうような特別法の中で特殊な対策を、この際大胆に発想を転換して実効のある対策をとっていただかないと、瀬戸内海で一たび巨大タンカーが油を流しましたときにはもう致命的である。それはもう水質汚濁なんという言葉で言えない非常に致命的な影響を与えるということは、単に私のオーバーな発電ではございません。ことしの三月十六日にフランスのブルターニュ海岸におきましてリベリアの便宜置籍船二十三万トンのタンカーが座礁いたしました。その結果、沿岸二百数十キロにわたって油が流れました。軍隊が数千人、二十四隻の軍艦が出動いたしましたけれども、もうほとんど手がないということで、いまだにこの油の汚染が数ヵ月続くだろうと言われております。しかしながら、御案内のようにこれは英仏海峡でありまして、もし瀬戸内海のように閉鎖された水域ですと、これは傑然たる状況になるのではないかということです。ある学者は、東京湾において二十万トンのタンカーが油を流せば、一昼夜で東京湾はすべて油に覆われてしまうという研究をいたしております。それからこのアモコ・カジス号の流した油が二百数十キロといいますと、ちょうど瀬戸内海の閉鎖性の部分がすっぽりと入るのでございます。これは非常に偶然の数字でございますけれども、これを瀬戸内海に置きかえれば瀬戸内海は全部油になるということでございます。従来の例で言いますと、水島が一万トンそれから新潟のジュリアナ号事件が七千トンでございましたから、二十万トンの油が流れますと水島の二十倍、あるいはジュリアナの三十倍という油が流れるということでございます。国際的にも一九六七年のトリー・キャニオン号というのがイギリスの海岸に座礁いたしました。イギリスはもう何ともはや打つ手がなくて、英空軍が爆撃をいたしました。それから新潟のジュリアナ号事件、水島事件、これはもうよく御存じのように、結局はむしろとひしゃくしか役に立たなかった。これはもう事実でございます。
 そういう実態がありまして、世界的にもこの大量の油にはもう手がないというのが本当の事実でございます。たとえばオイルフェンス、オイルフェンスというのは私たちも現場で本当に苦労いたしましたけれども、三十センチの波とか二ノットの潮がありますともうだめなんです。使えないですね。油が下をくぐってしまうし、潮が二ノットも流れていますともう沈没してしまう、いかりで張っておりますから。吸着材というのは、こういうような何か座布団みたいな、吸い取り紙みたいなものをばっと投げるわけですけれども、これを固めてぽっと投げると——海面にきれいに敷き並べるといいんですけれども、固まって落ちるものですから、これはもう油をなかなか取れない。取った後がどうしようもないわけです。だれかが一枚ずつ敷き並べればいいんですが、まあそういうことはできません。そういうことで対策はほとんどない。したがって、何とかこの巨大タンカーの事故をなくすということを未然に考えなければ、現在の海上交通法のように決められた全国で十一の航路だけを、しかも衝突防止だけをやっている、あるいは海洋汚染防止法のように事故が起こってから後始末を考えるというような法律だけではこれはどうしようもないということであります。現在、もともとタンカーにつきましては非常に立法が不備でありまして、タンカー安全法がないのであります。機帆船も漁船も共通の船舶安全法しかない。非常に私たちは不満であります。それから、乗組員に危険物の免状が要らないんですね。これはまた何としたことかということで、いまだにそういうことでございます。
 瀬戸内海は世界で最大の、一番長い狭水道、一番困難な、まあわれわれ船舶関係にとりましては非常にいやなところでありまして、たとえばデータで申し上げますと、一日平均明石海峡を通る船が千二百隻でございます。千二百隻といいますと一分間に一隻であります。ただこれは二十四時間に全部ならしての話であります。これはわが国最大、最も過密であります。それからタンカーも、瀬戸内海の明石海峡で一日平均二百九隻、これも最高であります。それから海難も瀬戸内海が一年間で、五十一年で六百二十二件、全国の七八%であります。それから海洋汚染が五十一年度で瀬戸内海で五百二十九件も起こっているんです、油で。こういうようなデータが余りにも知られてないんじゃないかということです。
 それでは、瀬戸内海で本当に巨大タンカーの海難を防ぐにはどうしたらいいかということを申し上げてみたいと思います。
 第一は、やっぱり何と言いましてももう巨大船のトン数を規制をしないといけない。私たち商船学校を出たころは、一万トンの船なんというのは最高でございました。この十年間ぐらいで物すごいスピードでタンカーが巨大化をいたしました。もともと小さい港でございます。瀬戸内海なんというのは小型船がゆっくり走っていた海域でございます。そこへ二十万トンを入れるというようなことは、私たちが学校を卒業するころには常識では考えられませんでした。
 そこで、二十万トンタンカーというのはどういう船かといいますと、デッキの長さが後楽園球場の三倍ございます。東京駅が三つ入る。十六階建ての建物と同じ高さであるということをお考えいただければ大体おわかりだと思います。この二十万トンタンカーは、エンジンストップしてブレーキかけましても四千メーターとまらないのであります。そういうような、動く島というようなタンカーが入ってくる。これはもう常識で私たちは考えられない。それでは、その二十万トンタンカーはどこに入っているかといいますと、水島、もうほとんど水島なんです。そして水島で受け入れている企業は何社か。二社である。たった二つの会社のために、瀬戸内海を二十万トンが、すれすれの危険性を持って走っておるということは、私はやはりぜひお考え願いたい。
 客観的に申しますと、岡山県が「水島の歩み」というパンフレットを出しました。その「水島の歩み」に、この水島港のことが非常によくわかるように書いてありますので、ちょっと引用してみます。
 港湾計画は、会社の要望を入れて次々に大型化されていった。三菱石油の誘致は長い期間を要した。水島が完全ならば、こんな期間はかからなかった。いや完全ではなかった。それは何よりも港湾の条件にあった。昭和二十六年には水深三メーターぐらいの小さな港を七メーター半にしゅんせつする計画であった。そのうちにタンカーの方が二万八千トンから四万トン、六万トン、八万トン、十万トンと大型化していった。水深も十メーター、十二メーター、十三メーター、十六メーターと、だんだん必要になってきた。昭和三十二年十月にアメリカのタイドウォーターの副社長が十五万トンを入れたいが喫水が十五・五メーターあるのでと申し入れたところ、知事が即座に十六メーターに掘りましょうと答えた。ところが、当時十五、六メーター掘る技術がなかった。将来可能になるであろうということで決まった。
 こういうようなことが書いてあります。つまり、あの港は河川港でございまして、もともと千トンぐらいの船しか入れない港でございます。そこに二十万トンが入っている。具体的に申し上げますと、実は昭和四十八年の十月十六日に、運輸省の港湾審議会の計画部会で十二万トン以上は入れないことにしようという申し合わせがなされている。いま二十万トンが入っております。それから昭和四十七年の岡山県のパンフレットにも、十万トン級の船舶が入れるというぐあいに書いておりますけれども、水深はその当時から全然変わらないのに、もう二十万トンが入っている。
 そこで、なぜこれは入れないかといいますと、第一に水島航路、水島港ともに深さが十六メーターでございます。二十万トンの足の深さというのは二十メーターでございます。四メーター足りないわけです。で、どうしているかといいますと、川崎に行ってちょっと油を揚げて船足を軽くして、あるいは沖繩で軽くして、そうしてセカンドポートとして入ってくるというのですね。ところが、最初に揚げる港というのは、これは商売ですから、そんなに御要望に応じて喫水だかり考えて油を受け入れるわけではございませんので、沖繩なんかでは海がしけてきたらもう中止になるわけです。そうすると多少積み過ぎたまま入ってくるのですね。船長はそれからが頭が痛いんです。満潮を利用して入ってくるというような離れわざをする。満潮ですと少し深くなりますから、そのときをねらって入ってくる。そして油を揚げている間にだんだん潮が引いてくるだろうというような、非常に危険なことをやっている。この一番浅いところでは十四・八メーターというところがあるのですが、同じ十五・八メーターの喫水の船が、昭和四十九年の十二月二十八日に日進丸という船が入っている事実を確認しております。そういうようなことをやっている。
 第二番目に、幅が四百メーターでありますけれども、これは運輸省令で、長い航路では船の長さの一倍半をとれ、こうなっている。船の長さが三百六十メーターですから、計算をすると五百四十メーター要る。この航路では四百メーターしかない。運輸省令に百四十メーター足りない。
 第三番目に、運輸省令に言う「泊地」、駐車場でございますね。駐車場がない。細長いわけですから駐車場がないわけです。
 それから第四番目に、これが問題ですけれども、備讃瀬戸から水島に入るところはこう九十度曲がるんです。大型タンカーは旋回するのに十二分かかります。非常に腰が重い。ですから、九十度、曲がるというのは大変なんです。ここは潮が三・四ノットと非常に速い。しかも、ここへ本四架橋が今度かかるわけです。橋の足がこう立つわけですね。ここで九十度曲がるというのはもう大変なことです。ちょうど高速道路の真ん中でダンプが横倒しになるというような感じです。船の航路でございますから、そういうことでは非常にこれは問題であるということです。
 次に、大きな第二番目といたしまして、ぜひ外国船の対策を考えていただきたい。これはアモコ・カジスが座礁しましたときに、EC八カ国が非常にたまりかねて、もう便宜置籍船は入れないと、入港禁止を打ち出しました。この便宜置籍船といいますのは、リベリアとかパナマのような規制の甘いところに籍を移すのです。そうしますと税金がかからない、検査が要らない、おまけに東南アジアあたりの船員を安い賃金で雇えるというようなことで、一種のもぐり船であります。だから、検査がないものですから全く欠陥船ということで、世界では海の無法者ということできらわれております。これが一番世界で海難を起こしております。特にリベリアの便宜置籍船。明石海峡を航行する巨大タンカーの五百六十六隻のうち、二百二隻が外国船であります。この外国船が、便宜置籍船が一番悪質であります。ところが、驚くべきことには、このリベリアに籍を移してもぐりをやっている船の一番大手が、わが日本であります。三百隻。実は、リベリアの船ということであるけれども、ひっくり返せば日本の船であるというのが三百隻もある。したがって、皮肉なことに、EC八カ国からリベリアという形の実は日本船が入港禁止をされている。海運界はこれは大変でございます。そういうことがありますので、瀬戸内海におけるこの便宜置籍船の欠陥船、それを入れるということをもう考え直さなきゃいかぬじゃないか。先進国がやっておるのでありますから、これは瀬戸内海のように世界最大の難所では当然考えるべきことです。
 それから第三番目に、水先人。これは瀬戸内海に水先人が義務づけられていない。ぜひ水先人を義務づけるべきであります。水先人に定年制がありませんので、八十何歳という水先人が運航している。これはもう本当に困った話でございまして、戦前は定年制があったのであります。
 それから四番目に、アセスメントではいつも煙突と排水口の話ばかり出てくる。タンカーのアセスメントをぜひやってほしいということなんです。いつもこれが忘れられている。水島のときも和歌山の御坊が対立候補であったようですが、このときに瀬戸内海の巨大タンカーの問題を少しでも配慮して水島に企業が立地しなかったならば、今日の瀬戸内海の危険はなかったということであります。
 最後に、これは非常にトピックでございますけれども、最近姫路港にLNGタンカーを入れようという計画が進んでおります。このLNGタンカーがまた私ども専門家の中では非常に厄介な船でございまして、十二万五千トンもあるわけですが、まだ日本ではできない。外国が特許であります。フランスや西ドイツであります。実は、この明石海峡ではやっぱり五十年に二十二回、五十一年に十七回と最高の海難が起こっておりますけれども、LNGタンカーというのはマイナス百六十二度という非常に低温の液化ガスでございますので、これが、一万五千トンの船が五ノット以上のスピードで衝突しますと、完全にタンクに破口が生じます。そうしますと、六分間でこの全量のLNGが流出をいたします。LNGというのは、当初は海面で猛烈なあわを立てます。このガスが約一万二千メーターに広がるわけであります。このLNGガスの爆発性は非常に強大でありまして、最高の爆発性を持っております。アメリカのクリーブランドで一九四四年にLNGタンクが爆発をいたしました。死者百三十六名、住宅八十二戸が全壊。一九七二年にアメリカのスターテンアイランドで、やはりLNGの爆発がございまして、それで住民を含む死者が出ております。以後、このLNGというのは余り解明されないまま実はLNGタンカーが入ってこようとしているけれども、非常に問題なのは明石海峡が最大の難所であって、潮が非常に速いということです。ここで衝突事件が起こりますと、一万二千メーターにガスが広がるということは、その中に数十隻の船舶が入ります。この船舶がすべて着火源であります。爆発の源であります。しかも、明石海峡が四千メーターでございますから、残る八千メーターというのは沿岸の住宅がやはりガスに覆われるということでございますので、海も陸もやはりこの爆発の危険にさらされる。もし、爆発をいたしましたならば、このアメリカのような例が起こらないということは絶対に保障できないわけでございます。ところが、二重に困りますのは、LNGというのは鉄を、脆性破壊といいましてひび割れが生じる、瞬時にして。したがって巡視船が近得れない。これは致命的であります。それからオイルフェンスを張りましても、オイルフェンスがぼろぼろになる。つまり全く手がない。油以上に手がないということでありますので、これは非常に問題であります。しかもデッキの上にタンクが載っておりますので、千メーター向こうが見えないんですね。千メーター向こうが見えないような船で明石海峡を走るのは、私ならばもうごめんであります。したがって、このLNGタンカーというものは、この際真剣なアセスメントをやらないと、一たんここで事故が起こると、やっぱり災害につながるということをぜひ申し上げておきたいと思います。
 一応これをまとめまして、第一は、五万トン以上のタンカーの瀬戸内海の航行規制をすべきである。第二番目に外国船対策、特に便宜置籍船の入港を禁止すべきである。第三に水先人を義務づけ定年制を実施することである。第四番目、タンカーアセスメントをすべきである。第五に、姫路のLNG受け入れ計画を再検討すべきである。
 昨年、米国のカーターがタンカーを二重底にするというような厳しい提案をいたしました。いま国際海事会議等でも検討されていますけれども、一つ申し上げたいのは、このタンカーを二重底にするというあたりまえのことが——昔は小さな船でも二重底でした。乗り上げたときに防御するように二重底でした。それに反対をしているのはわが日本であります。一体海洋国日本に海洋政策があるのかということを、私たちは海洋人の一人として非常に恥ずかしい思いをいたしております。
 いま、安全も公害も一体であると思います。そういう意味で、一度やったら終わりだという意味で何とか巨大タンカーの対策を、こういう保全措置法の審議を契機といたしまして、有効な対策をきちっと確立をしていただきたい。それが瀬戸内海を守る最大の大きな方法であることを申し上げておきたいと思います。
この発言だけを見る →
田中寿美子#8
○委員長(田中寿美子君) どうもありがとうございました。
 続きまして、浜崎参考人にお願いいたします。
この発言だけを見る →
浜崎礼三#9
○参考人(浜崎礼三君) 御紹介いただきました全漁連の参事浜崎でございます。
 本日、本委員会におきまして、参考人として、漁業関係を代表して瀬戸内海の環境保全につきまして意見を開陳させていただきますことに対し、厚く御礼を申し上げたいと存じます。
 昭和四十八年、かの水銀、PCB問題が国内を挙げての大きな問題となりました年に、先生方の御努力によりまして、議員立法として制定され、本年十一月期限切れとなります環境保全臨時措置法を、特別措置法として、恒久法として制定していただくということで、今回その改正法案が水質汚濁防止法の一部改正案とともに国会で御審議いただき、衆議院を通過いたしまして、現在参議院で御審議いただいている次第でございますが、これに対しまして、私ども漁業者としては大変に喜んでおり、感謝いたしておりますということをまず申し上げたいと存じます。
 御案内のように、二百海里問題が非常に深刻化いたしまして、厳しい影響を漁業者に与えまして、漁業種類によっては壊滅的なものになりつつあります。それだけに、いよいよわれわれ漁業者は、わが国の列島周辺の二百海里内の漁場、沿岸海域を大事にし、その生産を拡大することに努力しなければいけない。そのためにも沿岸海域環境というものを保全整備するということが一番大事な現在の急務だということを考えております。したがいまして、本法案の成立いたしますことを、この種問題は単に瀬戸内海の関係の漁業者だけではございませんで、同じように閉鎖性水域の伊勢湾、東京湾関係の漁民あるいは全国の沿岸の漁業者がすべて強い関心を持っており、熱意を持っておりますということを申し上げたいと存じます。
 次に、今回の瀬戸内海法に対する改正につきまして、これはもうあらゆる場合に引用されていることでございますが、瀬戸内海を、世界に比類のない美しさを誇る景勝地であり、また漁業資源の宝庫であると位置づけまして、その環境を保全し、後世に継承すべしという立法精神が強く引き継がれているということにつきまして、この環境行政の姿勢というものにまず第一に敬意を表さしていただきたいと存じます。
 先生方御案内のように、臨時措置法は、施行以来、埋め立てに関する基本方針の調査審議や、産業排水に係りますところのCODの半減等の大きな成果を上げてまいりましたことは事実でございます。しかしながら、このように御努力いただきまして、施策の推進をしていただいたにもかかわりませず、瀬戸内海の現状を見守りますと、すでにもう言われておりますように、播磨灘の大規模赤潮の発生、あるいは富栄養化の急速な進行、そして赤潮が多発化していること、さらに悪質化しておりますこと、それによりますところの漁業被害が多発増大いたしておりますこと、さらには大型タンカーや危険物の積載等を含む船舶ふくそうにかかわりますところの漁業操業の支障やその事故、また油汚染、各般の問題というものは山積し、深刻化しておる事態でございます。これもまた先生方御高承のところでございまして、関係の漁民もまた大変心配しておる問題でございます。
 臨時措置法は、非常に大きな成果を上げ、環境の悪化を食いとめるという役割りを果たしていただきましたのでありますが、技術的な問題あるいは経過年数等の問題もございまして、広く環境を保全し、浄化を図るという意味合いにおきまして、残念ながらいまだしの感を深くするものでございます。その意味で、私どもとしてはこの後継法及びこれに伴いますところの施策につきまして非常に期待しておるところでございまして、その理由また要望の諸点を次に申し上げさせていただきたいと思います。
 第一は、水質の汚濁対策、特に富栄養化の防止対策でございますが、この対策として、水質汚濁防止法の一部改正によりまして、従来の濃度規制から総量規制の導入が図られようとしておりますが、これは漁業者のもう十数年来の要望でございまして、この実現ということは非常にうれしく存ずる次第でございます。今回の改正によりまして、瀬戸内海、東京湾、伊勢湾を対象とする総量規制方式が実施されることとなっておりまして、特に瀬戸内海はその規制対象水域に指定をされ、指定項目としてCODによる総量規制がさらに行われるのでございますが、この具体的な効果につきましては、要は維持すべき環境上の目標を、すなわちどの程度にきれいな海がいつまでに達成されるかということにつきましては、あくまでもこれは行政の判断にゆだねられているところでございますけれども、現在の瀬戸内海あるいは汚染が進行をしておりますところの東京湾、伊勢湾の水質の状態を考えますとき、総量規制の具体的施策につきましては特に厳しい姿勢を打ち出していただくよう、そして速やかに海域ごとに指定された環境基準が達成維持されますように御要望申し上げたいと存じます。
 総量規制にかかわりますところの指定項目につきましては、CODのみならずその他の汚染物質につきましても規制の対象とするよう早急に御検討を願わなければなりませんし、富栄養化対策につきましては、当面燐の削減指導をすることとされておりますけれども、さらに赤潮発生の原因の一つとされております窒素につきましても、除去技術の早期開発といったものを進めていただきまして、指定物質の追加等につきまして特段の御配慮をお願いいたしたいと考える次第でございます。
 さらに、伊勢湾、東京湾における豊栄養化対策につきましては、これはなるべく早く、瀬戸内海の経験ともにらみ合わしながら科学的知見を確立していただきまして、その防止対策を導入していただくようお願い申し上げたいと存じます。
 それから、水質総量規制の導入に当たりまして、前提となるのはどうしても下水道の整備という問題でございます。積極的な整備計画の推進をお願いいたしますが、反面、下水道整備が逐次できましても、二次処理の段階でとどまりますと、かえて富栄養化の進行を促進するという事態も招く場合もございますので、終末処理場の規模や維持管理の技術的な面等で十分な行政の指導をお願いいたしたいと存じます。われわれといたしましては、下水道の終末処理施設というものは、逐次というよりは急速に三次処理に向ける、その方向を強化するという点につきまして、行政当局の指導の徹底をお願いし、財政援助につきましても大幅な対策をお願い申し上げたいと考えます次第でございます。
 第二に、自然海浜の保全につきましては、現法案におきましては、先ほど来お話しもありましたように、県条例によって云々ということになっておりますが、すでに瀬戸内海の沿岸海域が各種の埋め立てによりまして、魚類の産卵、生育の場としての干がた、モ場が急速に減少いたしております現在、これらの保全のための施策の推進を地方公共団体の努力にのみゆだねるのではなく、国の行政指導の強化というような面について格段の御措置をお願い申し上げたいと存じます。人工のモ場あるいは人工の干がた、さらには魚の保護林、魚つき林というような問題につきましては、この積極的な造成について財政的配慮等特段の措置をお願いいたしたいと存ずるものでございます。
 それから、瀬戸内海の油の汚染の問題につきまして、漁業界が要望しておりました大型タンカー、危険物積載船の航行規制や船舶交通の安全対策、船舶からの油の排出規制等の事項につきましては、第十七条に努力規定が盛られております。これは私どもは、船舶交通の安全対策あるいは船舶からの油の排出規制といった諸施策は、まあ海上交通安全法あるいは海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律という現行の法律体系の中で処理されようということについてはわかりますけれども、それだけに、閉鎖性海域としての瀬戸内海の特性にかんがみまして、具体的な措置を一日も早くとっていただくこと、これをくれぐれもお願い申し上げたいと存じます。
 最後に、赤潮の多数発生、油汚染事故、原因者不明の漁具損壊事故というような問題について一括して御要望申し上げたいと存じます。
 赤潮の発生は申し上げましたように、各種の施策推進にもかかわりませず、瀬戸内海でも年々発生件数の増加を見ておりますのみならず、太平洋岸や日本海側に至るまで、わが国の沿岸海域におきまして、発生件数、発生水域というものは年々拡大しておりまして、つい最近でも三浦半島をはさみまして東京湾、相模湾等にその発生が報ぜられているところでございます。この発生機構の解明につきましては、いま一歩というところが究明されませず、これに対しては総合的な研究体制、その整備拡充をお願いするところでございますが、あわせて、私ども漁業者の立場からは、被害に対する救済対策の確立についてお願い申し上げたいと思います。
 赤潮発生の要因は水の富栄養化にあり、さらにその原因の大きなものは、私どもは合成洗剤にあるというふうに考えております。その追放運動を全国的に展開いたしておりまして、一部の県、一部の漁協におきましては、もう完全に使わないというところまで至っておりますが、この点につきまして、政府に対し、沿岸地域の一部重要地域等では使用販売の禁止というふうな措置もとっていただきたいとお願い申し上げておりますが、この漁業被害につきましては、現在赤潮特約共済を除きましては被害救済対策は確立しておりません。この件につきましてよろしくお願い申し上げたいと思います。
 おかげさまで、原因者不明の油濁事故救済につきましては、漁場油濁事故救済基金の設立によって果たされておりますけれども、先ほどの赤潮被害とともに、原因者不明の漁具損壊事故、これは夜などに船舶の当て逃げ等によりまして漁業者の定置漁具あるいは養殖漁具が破壊される問題等でございまして、これらについても効果的な救済制度の確立をよろしくお願いいたしたいと存じます。瀬戸内海の恒久法案が確立した時点で、申し上げましたような諸点について、各般の法体系の整備についてお願い申し上げる次第でございます。
 以上、法律案並びに関連する問題について、いろいろと各般の問題に手を広げて御意見を申し上げましたけれども、十一月の期限切れを前にいたしまして一日も早い本法案の成立というものを、連日御審議に御努力をいただいております先生方に御礼申し上げるとともにお願い申し上げる次第でございます。さらに、今後の法運営につきまして、政令の指定等の問題につきまして、厳しい姿勢、早急な推進措置というものを行政当局にお願い申し上げまして、この法案に盛られておりますところの環境保全の精神がさらに広くわが国の沿岸海域に拡大されますことを心からお願い申し上げ、意見陳述を終わらしていただきます。
 ありがとうございました。
この発言だけを見る →
田中寿美子#10
○委員長(田中寿美子君) どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして水野参考人にお願いいたします。
この発言だけを見る →
水野武夫#11
○参考人(水野武夫君) 御紹介いただきました、日本弁護士連合会公害対策委員会の水野でございます。
 私ども日弁連公害対策委員会は、従来からこの瀬戸内海の問題について重大な関心を払ってまいりました。臨時措置法ができました昭和四十八年に、私どもは大々的な瀬戸内海の調査を行いまして、いまお手元に配付しております「海と国民の権利」という形で報告書をまとめておりますし、あるいは昨年の十月に大阪で開かれました人権擁護大会のシンポジウムにおきましては、「海と海岸線の保護」というふうなテーマでこの問題を取り上げ、それらの成果を踏まえまして今度の恒久法の提案の前に、私どもの案といたしまして、お手元にございます瀬戸内海環境保全法試案要綱といったものを公表いたしまして、この問題に取り組んできたわけでございます。そういった観点から今度の瀬戸内法の改正及び水質汚濁防止法の改正案を拝見いたしますと、正直に申し上げて、私どもが期待をしておりましたものとはかなり遠いということを言わざるを得ないのでございます。時間の関係もございますので、四点だけにしぼりまして、今度の法律案についての意見を申し上げたいと思います。
 まず第一は、総合的な管理あるいは規制、こういった点から見て、今度の改正案で十分かどうかという点でございます。御承知のように、瀬戸内海というのは一体となっておるものでありまして、瀬戸内海を全体的にとらえて、しかも海域と陸域とを一体としてとらえて総合的な管理規制をしていかなければならないということは、従来から指摘されてきたことでございます。さらには、瀬戸内海の国民の利用というのは、さまざまな形で利用されております。そういった国民のさまざまな形の利用、それをどういうふうに調整していくかということについても、総合的に考えていかなければならないということもまた指摘されてきたところでございます。
 そういった観点から今度の改正案を拝見いたしますと、まず今度の改正案では、基本計画というものを総理大臣が作成しまして、それに基づいて府県知事が府県計画というものを策定するということになってございます。これは確かに現在の府県ばらばらの行政よりは一歩進んだものであるということは評価できると思います。しかしながら、この基本計画に基づいて府県計画というのがまず一体いつごろまでに作成されるのかということについては、法律的には何ら歯どめがないわけであります。御承知のように、四十八年に制定されました臨時措置法が、政府は速やかに基本計画を策定すべしというふうに規定しておりましたけれども、結局五年近くたって初めて基本計画ができたというふうなこともあるわけでありまして、やはり基本計画はいつまでにつくる、それに基づいて各府県の計画というのはいつまでにつくって一斉にそれを出す、そして、その各府県の府県計画をさらに全体的な観点から総合して、もう一度全体的な統一した総合計画をつくると、こういうふうな観点が欠けておるのではないかというふうに考えるわけでございます。
 さらに、先ほど岡市参考人の御指摘にもありましたように、こういう府県という単位でこういう計画をつくるのが果たして妥当かどうかということについては、非常な疑問があると思います。私どもの案では、岡市参考人の御意見にもありましたように、一定の海域ごとに地方保全委員会というふうなものをつくって管理していくべきではないかということを提案しておるわけでありますけれども、一挙にそこまでいくのはなかなかむずかしいということはあるかと思います。しかしながら、府県計画を最後にもう一度全体的な形で取りまとめる、統一的に取りまとめるということはぜひお考えいただきたいというふうに考えるわけでございます。
 それから第二点は、それと関連いたしますけれども、今度の改正案では、自然海浜保全地区を指定することができるというふうな規定が新たに設けられております。これは恐らく今度の改正案の一つの目玉になっておるのではないかと思います。こういうふうな保全地区を指定して保全を図れということは私どもの主張と一致するところでございまして、これについては一応の評価ができるわけでございます。しかしながら、先ほど高崎参考人あるいは浜崎参考人の御意見にもありましたように、これは府県が条例で指定をするということになっておるわけであります。それじゃ現在そういった自然海浜を破壊していっておるのはだれかといいますと、これはほかならない府県なんですね。したがって、府県が果たしてこういった指定をどこまで有効にするだろうかということが非常に疑問なわけでございます。それに対する担保が何もないわけであります。したがいまして、やはり瀬戸内海の全体的な視野から、現に客観的にそういう形で残っているものは、これは府県の思惑にかかわらず環境庁長官なり何なりがそういう指定をしていくと、そういう形で保全を図っていかなければ、せっかく海浜保全地区の指定といった規定を設けた実効が上がらないのではないかというふうに考えるわけでございます。
 さらに、自然海浜保全地区はどういうふうな規制がされるかというのを改正法で見てみますと、一定の行為をする場合には届け出をするということになっております。そして、府県知事はこの届け出に対して勧告あるいは助言を行うと、こういうふうな規制の仕方になっておるわけであります。で、こういったことで十分な保全が図られるのかどうかということについては非常に疑問であると言わざるを得ないわけでございます。
 さらにもう一点、この自然海浜保全地区は、それじゃ埋め立てはどうなのかと、埋め立ては禁止されるのかということなんです。これについては何ら明確な規定がないわけであります。私は、この法律の解釈から、自然海浜保全地区に指定されれば、これは全面的に埋め立ては禁止されるのだというふうに解釈すべきではないかと考えてはおりますけれども、しかしながら、その点が必ずしも明確ではないということを問題点として指摘しておきたいと思います。
 さらに、三番目は、総量規制の問題でございます。これはまた今回の改正案の一つの大きな目玉でありまして、一歩前進という意味で高く評価できるものであります。しかしながら、瀬戸内海の関係について考えてみますと、瀬戸内法ではCODについてのみ総量規制を行うというふうに書いてあるにすぎません。しかも、今回の総量規制というのは、本来言われておる総量規制、すなわち一定の地域、海域の環境容量を設定しまして、その範囲内で全部の汚染を賄うと、そういった本来あるべき総量規制ではございませんで、現在の状態から汚染物質を削減していこう。しかも、可能な範囲で削減していこうという制度でございます。したがいまして、この制度は現行の瀬戸内海環境保全臨時措置法、この方式と何ら変わらない。したがって、瀬戸内法に関しては一歩も前進したことになっていないのであります。しかも、このCODの削減に関しましては、臨時措置法では少なくとも目標年度と目標量というのが法律に明記してございまして、そのために三年間であの目標が達成できたわけであります。しかしながら、今度の瀬戸内法の改正案では、そういった目標というものは法律的には何ら規定がされていない。内閣総理大臣の方に一方的に任してしまうという形になっておるわけでありまして、もしもその目標の設定の仕方あるいは削減量の設定の仕方が不十分であれば、現行の臨時措置法よりもかえって後退するということにもならざるを得ないというふうに考えるわけでございます。
 さらにもう一つ、燐その他富栄養化による被害防止のために、そういった指定物質につきましては、指定物質削減指導方針というものを策定しまして赤潮の防止に努めようというのが今度の臨時措置法の規定でございます。しかしながら、燐その他のそういった物質を削減していくというのであれば、どうしてこういう指導方針といった別の形でやるのか。これをCODと同じように、現行から削減していくわけでありますから、CODと同じ方式の総量規制方式で乗っけて、それと同じ方式でやっていくのに何ら支障がないはずであります。したがって、その点も現行法のこの改正案では不十分ではないかということを言わざるを得ないわけであります。
 さらに、水質汚濁防止法の総量規制、これは瀬戸内海のみならずすべての海域について、すべての水域につきまして総量規制が導入されたということで非常に高く評価するわけでありますけれども、一番最後に、各発生源ごとに定められる総量規制基準というものが定められることになっております。で、各事業者は、この「総量規制基準を遵守しなければならない。」という規定があるわけであります。しかしながら、それに違反した場合にそれを処罰する規定がない。これは、現行の水質汚濁防止法の濃度規制については処罰する規定があるわけであります。しかしながら、今度の総量規制の、総量規制基準に違反した場合には処罰する規定がない。これはやはりしり抜けだというふうに言わざるを得ないのでございます。
 第四点、埋め立ての問題についてでございます。埋め立てが瀬戸内海汚染の元凶であるということは従前から多くの人に指摘されてきたわけでございまして、埋め立てを何とか規制しなければならないということが瀬戸内海環境保全の第一の目標だと言っても過言ではなかったかと思うのでございます。ところが、御承知のように、臨時措置法は十三条で、埋め立てをする場合には、「瀬戸内海の特殊性につき十分配慮しなければならない。」と、こういう訓示規定が置かれたにとどまりました。これは先生方御承知のように、各党から、全面禁止であるとかいろいろなきつい案が出たわけでありますけれども、最終的にそういう訓示規定に落ちついた。そのかわりと言っては何ですけれども、第二項で、埋め立ての基本的な方針については、「瀬戸内海環境保全審議会において調査審議する」と、こういった二項の規定が設けられまして、妥協的に成立した経過がございます。そこでこの基本方針は、昭和四十九年五月九日に、瀬戸内海環境保全審議会が、埋め立ての運用に関する基本方針というものを答申しております。その埋め立ての基本方針にはこういうふうに書かれています。「瀬戸内海環境保全臨時措置法が全会一致の議員立法として制定された経緯にもかんがみ、瀬戸内海における埋立ては厳に抑制すべきであると考えており、やむを得ず認める場合においてもこの観点にたって別紙の基本方針が運用されるべきである」、このように明確に述べておるわけであります。しかしながら、現実はどうでありましようか。その後各地で埋め立ての免許がおろされております。これはすべてこの基本方針に適合しておるということでおろされておるわけであります。で、適合しておるかどうかの判断はこれはだれがやるのか。これは、免許を申請し免設を許可する府県知事自身が一人でやっておるわけでございます。埋め立ての基本方針には、影響が軽微であること、そういったことを十分検討しなければならないということが規定されております。しかしながら、その埋め立てを考える場合の報告書は、すべて、この点はこういうことで影響が軽微である、この点はこういうことで影響が軽微である、こういった形で作文的につくられて、それがそのまま通って埋め立てが認可されるという形式になっておるわけであります。あるいは、特定の汚染地域につきましては「留意事項」というのがございまして、この「留意事項」に適合しない埋め立てはできないということになっております。その中に、たとえば「公害防止・環境保全に資するもの、」こういう規定があるわけであります。ところが、たとえば陸域の公害工場を移転するために埋め立てをする。これは陸の方は住工が混在しておりまして非常に公害が大きい、それをまとめた形でどこかへ移転させたい。移転させるには海を埋め立てるしかないということで埋め立ての免許が出されて、これはこの「留意事項」に適合するということで認可がおろされるというふうな形になっておるわけであります。そうしますと、われわれいろいろな事例を拝見しておりますと、現在のこの臨時措置法十三条及びそれに基づく基本方針ということにつきましては、四十八年当時先生方が意図されました結果、さらに瀬戸内海環境保全審議会が意図いたしました結果とはかなり違って、まあいわば全然埋め立ての規制にはなり得てないということが言えるのではないかと思うのであります。確かに環境庁から出されております資料は、埋め立て免許の件数、それから埋め立て面積については減少しております。しかしながら、これは基本方針ができたために埋め立て免許が減ったということでは決してないと思います。これは経済的な不況であるとかそういったものの影響でありまして、少なくともこの現行の基本方針は埋め立てには何ら規制的な役割りを果たしてない。そうしますと、今度の改正案ではどうなっているか。この点については、今度の改正案は何ら変わるところがないわけであります。したがって、一番大きな問題点である埋め立てについて、五年前に制定された臨時措置法、しかもそれが十分な役割りを果たしていないということが認識されておるにもかかわらず前進していないというところは、やはり大きな問題だろうと思うのであります。
 昭和四十八年九月に、公有水面埋立法の改正に際しまして参議院建設委員会が附帯決議をしております。その附帯決議によりますと、「公有水面の埋立て及び埋立地の利用により、公害の発生等の深刻な社会問題を生じている近時の状況にかんがみ、」「公有水面埋立法を抜本的に検討し、早急に所要の法整備を行なうこと。」という附帯決議をしておるわけであります。これは五年前のことであります。公有水面埋立法の抜本的な見直ということも、当時から言われておりながら一向に進展をしていないのが現状でございます。したがって、その点も今度の改正案については問題があるということを申し上げまして、私の意見を終わります。
この発言だけを見る →
田中寿美子#12
○委員長(田中寿美子君) どうもありがとうございました。
 以上で、参考人の方々の意見開陳が終わりました。
 参考人に対して御質疑のある方は順次御発言を願います。
この発言だけを見る →
原文兵衛#13
○原文兵衛君 岡市参考人にお伺いいたします。
 岡市参考人は、赤潮の発生機構等について非常に御研究していただいておりまして、感謝いたしておるわけでございます。当委員会におきましても、この研究体制の整備強化ということにつきましては、決議もいたしましたし、今後も大いに進めていただきたいと思うんですが、現在まだ赤潮の発生機構は未解明であるということが言われておるわけでございますが、未解明の分野というのはどの辺におありになるのか。また、これは研究体制の整備強化とも関係すると思いますけれども、この赤潮発生機構を完全に解明するのに、私は全く素人でわからないんですが、大体何年ぐらいかかるか、いつごろになったら解明できるのかという点について、御感想をひとつお聞きしたいと思うんですが。
この発言だけを見る →
岡市友利#14
○参考人(岡市友利君) 赤潮の発生要因の未解明の点でございますが、私は、わかっていると言えばわかっているんだけれども、一体どこまでわかちないのかということ、つまり、一つ国の政策を立てる上でどうすればいいのかということについては、窒素、燐の流入負荷を削減することでかなりの目的は達することができるだろう。ただ、あるこの時期に赤潮がここに発生するんだと、そういうふうないわば天気予報的な意味での予報を出すにはまだまだ時間がかかる。しかし、現在のところ、重要な魚類養殖をしている海域、たとえば播磨灘で、ホルネリアという種類がございますが、この種類が七月の末ごろから出てくるということはもう大体わかっております。そういった現象部面ではかなりわかってきておりますが、先ほど私も申しましたように、これが海の生態系の中のどういった乱れの中で発生するのかというところはちょっと解明がまだできていない。それと、赤潮のプランクトンが要求する栄養素は、よく言われますように、窒素と燐以外にビタミンの——まあ私たちがビタミン飲みますが、ああいったものの中で、ビタミンの恥だとかビタミン島というものが必要なわけです。そのほかに微量の金属、有機鉄が主ですが、こういうものが必要なわけです。そういうものが播磨灘などでどのように分布しているのか、こういった実態が実は測定されていないわけです。これは、現在環境庁の瀬戸内海汚濁調査計画が窒素と燐に重点を置いているために、そのほかのいわば必要な微量栄養素の調査が行われていない。この辺が未解明の点でございます。
 それから、どのぐらいになったら解明でき、わかるのかという御質問でございますが、瀬戸内海に関して言えば、たとえば瀬戸内海の海水交流の現状がわかり、それから先ほども申しましたような燐の滞留年数がわかり、そういうふうなことを一応解明する必要があるということを考えれば、まあ十年はかかるというふうに私たちも考えております。というのは、現在決定的な研究者不足でございます。こういうことを申していかがかとは思いますけれども、瀬戸内海の沿岸で、赤潮のプランクトンを培養できる研究室は現在香川大学しかございません。もちろん、海洋の調査そのものはほかの大学でもやれますけれども、そういう実態で瀬戸内海の調査が行われているわけでございますから、最低十年はかかるだろうと考えております。
この発言だけを見る →
原文兵衛#15
○原文兵衛君 岡市参考人にもう一点お伺いしたいんですが、窒素とか燐、これは一般的には植物の栄養素でもあるということだと思いますが、瀬戸内海で最近ノリの養殖が非常に活発になってきたというかふえてきたということは、反面において富栄養化と関連するんじゃないかと思うんですが、この辺の関係はどうでございましょうか。
この発言だけを見る →
岡市友利#16
○参考人(岡市友利君) この辺について、よく漁業者の間でも、ノリがとれて、シャコがとれて、アカガイがとれるようになると、その次は何もとれなくなるということを言っております。ノリはそういう意味では富栄養化のいわば頂点のところでとれる海草でございますけれども、これに対して、いま御質問のように、富栄養化の進行をとめてしまえばノリがとれなくなるんじゃないかというような行き過ぎた考え方が一つございますけれども、もしそういうことが問題になるのであれば、これは私は水産学者あるいは水産研究者の責任において、必要なときに窒素や燐をノリを養殖しているところにまいて、いわば農業で肥料をある時期にまくような技術を開発すること、そのことが必要なので、ノリの生産を陸上から流入する排水に依存するというのは、これは本来本末転倒な考え方でございまして、むしろそういった意味の水産技術の開発が片方でやはり行われなければいけないというふうに考えております。
この発言だけを見る →
原文兵衛#17
○原文兵衛君 高崎参考人にお伺いいたします。
 先ほど高砂の住民の方のいろいろな作文とかまた御意見、幾つかの例を読んでいただきまして、私も子供のころは夏になりますとしょっちゅう海水浴に行っておりまして、大変郷愁を覚えるんですけれども、瀬戸内海沿岸をとってみましても、人口もふえておりますし、それから、一方においてまた開発がおくれている地域もあるわけでございますね。そういうようなことで、これは非常に矛盾するので私どもも大変悩むわけでございますが、そういう地域では産業活動も伸ばす必要があるというところもあるわけでございまして、したがって、埋め立ての全面禁止あるいは開発を全面的に凍結してしまえばいいじゃないかということになりますと、いま言ったような開発のおくれている地域等につきましては、やはり地域住民の生活の向上という面から、そういう点を否定してしまうことになりはしないかというようなことで、私は、この法律で、「自然海浜の指定等」を府県知事が条例をもって「指定することができる。」というふうにしてあるのは、ちょうど適当なところじゃないかと思うわけでございますが、先ほど高崎参考人は、開発の方も府県知事なんで、府県知事に条例による指定を任せるのは、何と言いましたか、ばくち打ちに十手捕り縄を持たせるようだという、なかなかおもしろい比喩があったわけでございます。しかし、私は、いまの知事というのはいわゆる公選知事でございまして、やはり住民の側に立って物事を考えるのがこれは当然でもありますし、知事も、それは五十万なら五十万、百万なら百万の住民全部が賛成するというわけにはいかなくても、やっぱり県として住民の意向も参酌しながら、これが一番いいという方向を考えるんだろうと思うわけでございます。そういうような意味ではやはり知事にこれを指定させるということは妥当なんじゃないかと思うのでございますけれども、その辺についての、先ほどそういう比喩を引用しての御発言があったので、もう一回お考えを聞きたいと思います。
この発言だけを見る →
高崎裕士#18
○参考人(高崎裕士君) まず、瀬戸内海全域の人口を養う上での開発も必要ではないだろうかという御指摘でございます。しかしながら、私は狭い高砂という地域のことしか存じませんので、一つの例を申しますと、高砂がああいうふうに臨海コンビナートになりまして決して豊かにはならなかったのでございます。その後の公害を防ぐためのいろいろな持ち出し、あるいは関連した社会投資等から非常に財政的にも苦しくなりました。たとえば、海がなくなりました。では、子供たちがどこで泳ぐか。じゃ高砂市がその結果豊かになってりっぱなプールができたかというとそうではございません。高砂の中学校では、海がなくなって十五、六年になりましてやっとプールが一つできたところです。これは、私もPTAに関係をしておりまして、せめてプールでもつくってくださいということを市長さんにお願いしましても、やはり財政が苦しくてできないということで、決して豊かになっておりません。たとえば、高砂の人口はどんどん減って過疎化しております。高砂中学校の生徒は埋め立て前千三百人おりましたものが、ことしは四百五十人という激減ぶりです。非常に生活環境が悪くなっておる。こうしたことを考えますと、もっともっと、数量化できない面でもいろいろな貧困化がむしろ進んでいるんではないかと思いますので、そうした点は、御質問の御趣旨と少し違うかもわかりませんけれども、豊かさというものをもう一遍、精神的なものまで含めて考え直すべきではなかろうか。
 もちろん、じゃ経済の方はどうなるんだという御質問おありかと思いますけれども、やはりそれは経済のあり方全体を、そうした人間のあり方ということも含めて皆さんで考えていただかなければならない時期に来ているんじゃないだろうか。これまでと同じ論理で、やはり開発の必要ということで進めていきますならば、瀬戸内海全体はどうなってしまうんだろうかという心配から申し上げたわけでございます。
 それから、知事さんのことでございますけれども、これはもう住民たちがみんな言っている言葉でございます。私の発明ではございません。水野参考人もその点を追及しておられたと思いますけれども、確かに知事は私ども住民が選ぶ方でございます。しかしながら、やはり仕組みの上でもこれは別にしておかなければ、知事も人間でございますから、まずいのではなかろうかと、かように存じます。
この発言だけを見る →
原文兵衛#19
○原文兵衛君 浜崎参考人にお伺いします。
 最近瀬戸内海では、例の赤潮による養殖ハマチの被害というような深刻な問題があるわけでございますけれども、一方において、貝とかエビというような種類の魚が、これはその漁獲量がむしろふえてきているというふうにも聞いております。ということは、臨時措置法等によりまして水質がとにかくある程度改善されたんじゃないかというふうに思うわけでございますが、水産関係者としてはその辺のところをどういうふうにお考えでございましょうか。
この発言だけを見る →
浜崎礼三#20
○参考人(浜崎礼三君) 原先生御指摘の点につきましては、四十五、六年以降の水質規制、それから臨時措置法のCOD削減措置、それらの環境対策と相まちまして、四十年ごろから国の瀬戸内海栽培漁業センター等による栽培漁業振興の措置もずっと十年来続けられております。それらの環境規制とそれから栽培漁業の振興というものが絡み合って、相乗効果としてできたものと考量いたしております。
この発言だけを見る →
原文兵衛#21
○原文兵衛君 時間ももうございませんので、最後に水野参考人にお伺いいたしたいと思いますが、この間の臨時措置法は相当厳しいへたとえばCOD二分の一カットとか、それも期限つきとかいうようなことであって、これについては非常な努力があって、むしろ一〇〇%以上、一三〇%ぐらい実際には成果を上げているわけでございます。
 この法律でございますけれども、私は、やはりあの当時は、とにかく瀬戸内海このままいったんじゃ大変だと、死んでしまうんじゃないかというようなことで、重病人に対する頓服といいますか、カンフルといいますか、もうきわめて強烈な薬を与えたというような感じの、またそういうふうな気持ちでもってあの臨時措置法というものが制定されたかと思うんです。いま浜崎参考人も言われましたように、まあいろんな原因があるでしょう、それ以外の原因もあると思いますが、とにかくCODが相当カットされて水質もある程度改善されてきたということでございますが、そういうことになりますと、——しかしまだ病人は治っていないので、ほっとけばまた大変なことになってしまう。しかし、ある程度よくなったら、これは適当な薬を与えて、そうしてだんだんこれをさらによくしていくというような方法で、いつまでもカンフルあるいは頓服ばかりやっていると、逆に病人を殺してしまうと、いろんな副作用が出てかえって健康を害してしまうというようなことも考えられるので、やはり恒久法としてはこの程度のもので、これをとにかく厳しく、またこれは行政措置でやる面もたくさんあるわけでありますが、ちゃんときちっとやることによってだんだんによくしていくというのが一応妥当な線じゃないかなと私は思うんですけど、これについての御意見を伺いたいと思います。
この発言だけを見る →
水野武夫#22
○参考人(水野武夫君) 一挙に大幅なカットをすぐにやれというのは無理だろうということは十分承知しております。ただ、臨時措置法ができましたときには、四十七年当時のCOD、これは環境庁が調査いたしまして、それの二分の一にカットすると、こういう目標だったんですね。この目標はどこから出てきておるかと言いますと、四十七年当時の二分の一にいたしますと、昭和三十年代のCODの値になると、で、そのあたりまで戻そうじゃないかというふうなことからそういう数値が出てきたというふうに記憶しております。
 ところが、臨時措置法が三年あるいは五年過ぎまして、確かに産業排水の排出量というのは、これは二分の一カットは達成できたのですね。しかしながら、全体的なCODの値というのは、これは二分の一にはなっていない。これはもちろん産業排水以外のものもありましょうし、すでにたまっておるやつもありましょうから、当然と言えば当然でありますけれども。したがって、全体的にはほぼ横ばい。だから、四十七年当時の、非常に瀕死の状態だと言われた状態から全体的には変わっていない。昭和三十年代まで戻そうという意図はとうてい達成できていない。これが現状でございます。
 で、COD二分の一にカットしたのがかなりカンフル剤的な措置であったかどうかということについては、私は必ずしもそれほど、何と言うか、劇薬と言いますか、一時的な劇薬というものではなかったのではないか。二分の一カットはかなり容易に達成できたのではないか。これは当時からいろいろな科学者が、二分の一カットはそれほどむずかしいことではないというふうに言われておりましたので、私は素人でありますけれども、そのように考えておるわけであります。したがって、いまよりもさらに、少なくともいまと同じようなベースで規制をしていくということが、昭和三十年代の海に戻すという当初の発想からすれば当然に必要なのではないか、このように考えております。
この発言だけを見る →
坂倉藤吾#23
○坂倉藤吾君 田尻参考人にお尋ねをいたしたいと思います。
 先般の本委員会で、実は私どもの粕谷委員が、水島港に入港いたします大型タンカーの問題について質問をいたしたわけでございます。そのときに、運輸省の省令の関係をとらえまして、二十万トン級の大型タンカーの水島港入港については、現行運輸省令から言っても法律違反ではないのかという指摘をされたわけでございます。きょう田尻参考人の方から大変詳しく御説明をいただきまして、私どもとしてはよく理解ができたわけでありますが、問題は、そのときの運輸省の答弁の中で、現在の、港湾施設の技術上の基準に関するいわゆる省令については、これは違反ではないんだと、こういう答弁と同時に、航行の際の水深あるいは幅員、屈曲ですね、こうしたすべての面から見ても省令の基準に照らして特に問題はない、こういう答弁がありまして、そして、粕谷委員の意見とこの答弁とは食い違ったままで、実は田尻参考人に本日お越しをいただくので、その際にひとつ決着をつけようと、こういう立場になって、残された問題になっておるわけでございます。
 きょう粕谷委員は所用で出席ができませんので、私、かわってお尋ねをするわけでありますが、先ほどの開陳をいただきました御意見の中で、いま申し上げました観点から、再度ひとつ、法違反であるのかどうかという観点も含めて御説明をいただければ大変ありがたいというふうに思います。
 それから、先ほど五万トン以上の船についてはもう航行規制を行うべきだと、こういう御意見がまとめられておるわけでありますが、これは、その航行規制の内容の問題が、田尻参考人としては、本来もう瀬戸内海についてはこれ以上のものは当然航行を禁止をすべきである、こういう立場であろうというふうに私は受けとめたんですが、仮にそういうふうに規制をしようとしたときに、現行法ではこれはできないことになるだろう。そうしますと、その辺の縛りをしていく立場というのはどこに見つけ出していくことが有効になるのだろうか。こうした観点を少しお尋ねをしたいと思います。
この発言だけを見る →
田尻宗昭#24
○参考人(田尻宗昭君) 運輸省が、省令に全く問題がないとおっしゃるのは、私はよくわからないんです。それは、省令にこういうことになっておりまして、これは昭和五十年の二月に、「港湾の施設の技術上の基準とその運用」ということでありまして、根拠となります省令は、昭和四十九年の、運輸省令第三十号で、港湾局長通達が港建第二百五号、建設課長通達が港建第十四号、それでいずれも出ております。その中で、航路については、「比較的距離が長い航路」「対象船舶どうしがひんぱんに行きあう場合」には、船の長さの二倍、「上記以外の航路」、船の長さの一・五倍と書いてあるわけですね。そうしますと、二十万トンタンカーというのは約三百六十メーター——三百数十メーターありますから、それを一倍半すれば五百四十メーターになるわけでございますから、これは数字の問題でございますから、それがもしも違反でないとおっしゃるならば、船の長さをもっと縮めなければいけない。私はそこはよくわかりません。したがいまして、違反とかなんとかいう言葉でございますけれども、はっきり言いまして、運輸省令というものは時々、何といいますか、こう表現で例外的な表現がとってありますね。たとえば、若干こういう考慮ができるとかこういう措置が行っていた場合にはそれは少しやわらげてもいいような、表現は確かにそれぞれとってありますから、この省令自体が少しやわらかなものだとおっしゃるならそれはもう話は別でございます。しかしながら、私はここに書かれた数値をきちっととらえて物を言っているわけでございますから、具体的な数字で、この省令には満足しているということを聞かなければ私は納得できません。
 それから、たとえば泊地の問題にいたしましても、船の長さの一倍半という船舶の泊地が要るということになっております。これは船舶というのはいかりを打つ場所がぜひ必要でございまして、岸壁に着けておって、風が吹いてきたり、だんだん気象が悪くなりますと、岸壁に打ち当てて外板にひびが入るというようなことで、どうしても岸壁を離れていかりを打つ場所が必要なわけでございます。たとえば、前の船が荷役をしているとき、そういう場合もやっぱり必要でございます。そういう意味で、この泊地というものをちょうど駐車場のような扱いで、やはり船の長さの一倍半という泊地を決めているわけです。これが水島港にはないんです。ですから、私は具体的に申し上げておるのであって、そういうような数字をここに書いておられる以上、これは、この省令を満足しているんだということであれば、私の方がその根拠を知りたいわけでございます。
 それから、もう一つございまして、こう言うと恐らくこれは港湾区域内の話だと言うでしょうけれども、やはり省令の精神というものは、後向きではなくて前向きにとらえないと、水島港がマンモスタンカーではもうだめだということはもうわれわれ仲間では常識なんです。だから、海員組合でも昭和四十八年に運輸大臣に対して申し入れ書を出しております。もう大型タンカーやめてくれということを再三申し入れている。最近でも非常にいろいろな動きがあるようでございますけれども、船舶操船者がわれわれの同級生でありますから、そういう実感は余すことなく私は聞いております。
 そこで、九十度旋回ということを申し上げましたが、運輸省令では、航路は三十度以上曲がってはいけないと書いてあります。なぜ三十度以上曲がっていけないかと言いますと、腰が重いので、三十度以上急に曲がるということは、どうしても風や潮に流されて、その間にのし上がってしまうという危険性を考えて、三十度以上を超えないことと書いているわけですから、いずれもそういうような数値を満足しているとおっしゃるならば、私の方が逆に具体的に聞きたいと思います。
 そこで、そういうことは一つの原則であって、いろいろと例外を認めてもいいんだとおっしゃるのならもう話は終わりであります。
 それから、水深でありますけれども、水深が足りないと申し上げましたけれども、それは確かに油をちょっと荷揚げして、そうしてつじつまを合わせて入っていることは事実です。しかし、先ほど申しましたように、実態というものは、そう物差しではかったようにここまで揚げてくれと言いましても、受け入れる方も商売でありますから、いや、そんなに要らないと言ったら終わりで、少し大目に入ってくるときは、船長が苦心惨たんしているのが事実でございます。潮を利用して入ってくるなんというのはもう本当に船にとってはサーカスプレーであります。そういうことを考えますと、もともと船足が水深よりも深いような、水深の方が浅いような港に入れるべきではないのであります。どんなことがあるかわかりません。天候や気象に左右されて船の時間というものはまちまちでありますから、そう汽車の瞬間のようには正確にいかないわけでございますから、潮に頼って入ってくるなんということは非常に不安である。とにかくこの港は三千トンクラスの、わずか三メーターの水深の港であったということをよく思い起こしてみたいと思います。ただ船の深さだけを掘りましても、たとえば港の中で四百メーターの幅があるんですけれども、そこで、入るときはそのまま入っちゃうんですけれども、出るときはおしりから出るわけにいきませんから、くるっとこう旋回する。そうすると、四百メーターの中で三百六十メーターの船が旋回しますと、前後二十メーターしか余裕がないんです。そうすると、十六階建てのビルから見ているわけですから、目の前に後楽園球場の三倍ぐらいのデッキがあるわけですから、もう二十メーターなんという余裕水面は見えないわけですね。向こうの山しか見えない。だから岩壁へ衝突しているのかしていないのかもわからないわけです。そういう、単に勘で操船をしているという、そのことを申し上げたいわけです。われわれ仲間の船員がもう本当に全神経を集中して操船をしてやっと事故を防いでいる。
 水島港では、港の入り口に四十六年から四十八年に巨大船が四隻座礁しております。これも一つの重要な事例だと思います。そういうことを考えても、ただ単に省令を満足しているというようなことを言っておると、水島で巨大タンカー事故を起こしたときにその責任は重大であって、そういうことをあげつらうべきでない。やはり省令の精神というものをきちっととらえて基本的な対策を打たなければ、取り返しのつかないことになるということを同じ行政官として私はそう感じます。
この発言だけを見る →
坂倉藤吾#25
○坂倉藤吾君 ありがとうございます。
 再度お聞きをするわけですが、ちょっとそのときの議事録がまだでき上がっておりませんので私のメモ書きによるわけですが、水深の関係も、実は満載時喫水というのはそれから船底までの深さですが、十五メーター十六、これが後で訂正をされまして、二センチだけ変わりまして、十五メーター十八とこういうふうになりました。それからいわゆる干満の差三メーター。したがって、荷を軽くすることと、その三メーターをうまく組み合わせて入っておるので問題がないんだと、こういう答弁が実はありました。いまのお話を聞いていますと、この答弁自体が、大変現実に合わない、実情を知らない答弁じゃないかという感じがするわけであります。
 それと同時に、水先人の関係につきましては、おおむねいま準備がされておりまして、何か強制水先をしなければならない、そういう立場のところに指定をしようと、こういう準備になっておるようでありますのでその辺はわかるわけでありますが、ただ、水先人の養成が問題だというふうに答弁をしているわけです。この辺の、水先人の養成等については、どういうふうにすれば早く養成ができるのか、その辺もお触れいただいてひとつお教えを賜りたいと思います。
この発言だけを見る →
田尻宗昭#26
○参考人(田尻宗昭君) まず第一に、水深の問題でございますけれども、やはり私感じますのは、港湾関係の方というのは船のことをよく御存じないですね、船のことを。これはまことに残念です。非常に土木的な発想でやられちゃたまらぬですね。船は生きた人間が操船しているということを強調しておきたい。たとえば水島航路の、港内の航路の真ん中に十四・七メーターという浅いところがございます。これは岩盤でございますね。これは非常に危険なんです。現在水島港では十四・八メーターという水深で入港せよという指示をしておるんです。しておりますが、これでも細かく言うと十センチオーバーですね。それから現に昭和四十九年の十二月二十八日に日進丸が十五・八メーター、その浅いところよりもっと深い喫水で入っておるわけです。それはたまたま潮を利用しているんですね。その潮を利用するというのは危ないです、とっても。向こうからはるばるやってくるわけですから、バーレーンあたりからやってきて、まあセカンドポートですけれども、入ってくる船長というのは非常に時間を急いでおりますからね。したがって、こういうようなところを無理して入るということは事実ある。マラッカ海峡でも何度も底をこすりながら走ったという船長は聞くわけです。どうしても無理をする。船長という立場、弱いわけです。そこで、いまの水深の問題というのは、現実に十四・七メーターがあるということを運輸省は御存じなのかどうかということを私は逆に聞きたいと思います。
 それから、先ほどのお尋ねで漏れておりますけれども、五万トン以上の船を規制せよと言ったのは、おっしゃるとおり禁止せよということです。五万トン以上の、つまり二十万トンタンカーなどを入れていたんではだれが操船をしても事故は必ずいつかは起こる。これは人間のやることでございますから。だからそこをきちっと禁止をしなければ、仮に水先人が乗りましてもこれは事故は起こるんであります。水島港の入り口で起こしました事故でも水先人が乗っておりました。あるいは室蘭で二十八日間港が燃えましたヘイバルド号事件でも水先人があの事故を起こしたわけです。水先人も同じ人間であります。
 それから、なぜ五万トンと言いましたかといいますと、船の喫水、それから航路の幅、それから船がぐうっと旋回をいたしますと旋回圏といいまして、車のように急にくるっと回りませんから幅が要るわけです。この幅をきちっと計算をしますとこれちょうど五万トン当たりになるんですね。衝突を避けようとかあるいは座礁するのを避けようというとき、船は精いっぱいかじを取ってぐるっと回ってもとに戻る以外ないんですね。そういうときにその幅が要るではないか。そうすると、二十万トンでは千メーター要ります。いまの航路幅は四百メーターです。これは足りません。それで四百メーターというとちょうど五万トンぐらいなんですね。そういうことを計算すると、これは数字で出てまいるわけです。
 そこで、いま日本の産業界、特に石油産業界も二十万トン、三十万トンという時代はもう転機に来ていると思います。といいますのは、日本のように複雑な海岸線ではもう三十万トンが入れる港というのはほとんどないんですね。ないのにタンカーだけ大きくしていったものだから、もうつじつまが合わなくなっているんですよ。ですから、ここら辺でやはりこれを見直さないと、一度事故が起こったら、恐らくその企業は立ち上がれないほどの打撃を経済的にも受けざるを得ないわけです。そのことを考えれば、やはり企業家というものはこういう事故の際の問題も考えて経営をしませんと、一たん事故を起こしたら企業経営も成り立たないということも考えなくてはいけないと思います。
 それから、水先人の問題でございますけれども、水先人は足りないという話はあべこべでございまして、いままで全国で、何年か前までは五つしか水先人を義務づけた港はなかったんですね。これはだれが決めたかというと、占領軍が決めたんです。それから改正されてなかったんです。五つの港以外は水先をとらなくてもオーケーだったわけです。そういうことをやっぱり早く改正して、特に重要な港には水先人を早く義務づけておれば、水先人はどんどん養成もできたと思うんです。それから、今度瀬戸内海で水先人の義務づけを考えていることは私も知っておりますけれども、何といっても水島港でも義務づけるべきだと申し上げているわけです。瀬戸内海だけではいけない、水島港も義務づけるべきだということを申し上げているわけです。
この発言だけを見る →
坂倉藤吾#27
○坂倉藤吾君 ありがとうございました。
この発言だけを見る →
矢田部理#28
○矢田部理君 私は、水野参考人と高崎参考人に、同じ問題について伺っておきたいと思いますが、環境を守ったり公害を防止したりするためには、住民の参加が非常に大事だというふうに考えているわけです。住民の権利なり参加なりについて、今度の後継ぎ法には率直に言って何もない。これでは基本的に環境を守り切れるのか、住民の意向が反映できるのかということが非常に大きな視点としてあるわけでありますが、とりわけ日弁連などでも、たとえば環境保全委員会をつくってその中に自然保護団体の推薦する者を参加させるというようなことも考えておられるようですし、あるいはまた国民の権利という一章を設けて、いろいろな住民の権利についての各般の規定を準備されてきておったようでありますが、この辺についてどのように考えておられるかということを、水野参考人からは法律家としての立場から、それから高崎参考人の方には住民の立場から御意見をいただければと思っています。
この発言だけを見る →
水野武夫#29
○参考人(水野武夫君) 先生の御指摘のとおりでありまして、私どもは、環境の保全というものは、住民がやはりその中に入って、住民の意見を反映しながらやっていかなきゃならないということを前々から強く訴えておるのであります。したがいまして、今度の瀬戸内海環境保全試案要綱、私どもが発表した案におきましても、従来の行政機関ではなくて、「中央保全委員会」あるいは「地方保全委員会」といった別の機関を設けてその中に住民参加をさせる、そして、住民参加のもとでお互いに瀬戸内海をどういう形でどういうふうにして保全、利用していくかというふうな観点から、住民の意見を反映さしてやっていこうではないかということを提案しておるわけでございます。
 そしてもう一つは、御指摘がありました国民の権利を保障するということ。これは高崎参考人から御紹介がありました入浜権、こういった、何といいますか、新しい権利というものはなかなか裁判所では認められない。これは、行政的ないろんな計画が全部決まりましてから、後で司法裁判所の救済を求めるといった場合には非常にむずかしいというのが現状でございます。したがって、そういった権利をこの法律によって明確にして、そしてその権利に基づくいろんな規定をこの法律自体に盛り込んでいくと、そういうふうな観点からこういうふうな案を提案しておるわけでございます。従前の瀬戸内海の環境の破壊というのは、これは行政機関が住民の意思を無視しまして、せいぜい漁民に金を払ってやってきたというのが実情でございます。漁民だけに金を払えばたくさんの国民が享受しておる利益は失われていいのかということが大きな問題であります。そういった観点から私どもの案を提案しておるわけでございます。今度の改正案では、もちろんそういう観点が全然盛り込まれておりません。これはまことに残念だと申し上げるほかございません。
この発言だけを見る →
← 戻る