田尻宗昭の発言 (公害対策及び環境保全特別委員会)
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○参考人(田尻宗昭君) 運輸省が、省令に全く問題がないとおっしゃるのは、私はよくわからないんです。それは、省令にこういうことになっておりまして、これは昭和五十年の二月に、「港湾の施設の技術上の基準とその運用」ということでありまして、根拠となります省令は、昭和四十九年の、運輸省令第三十号で、港湾局長通達が港建第二百五号、建設課長通達が港建第十四号、それでいずれも出ております。その中で、航路については、「比較的距離が長い航路」「対象船舶どうしがひんぱんに行きあう場合」には、船の長さの二倍、「上記以外の航路」、船の長さの一・五倍と書いてあるわけですね。そうしますと、二十万トンタンカーというのは約三百六十メーター——三百数十メーターありますから、それを一倍半すれば五百四十メーターになるわけでございますから、これは数字の問題でございますから、それがもしも違反でないとおっしゃるならば、船の長さをもっと縮めなければいけない。私はそこはよくわかりません。したがいまして、違反とかなんとかいう言葉でございますけれども、はっきり言いまして、運輸省令というものは時々、何といいますか、こう表現で例外的な表現がとってありますね。たとえば、若干こういう考慮ができるとかこういう措置が行っていた場合にはそれは少しやわらげてもいいような、表現は確かにそれぞれとってありますから、この省令自体が少しやわらかなものだとおっしゃるならそれはもう話は別でございます。しかしながら、私はここに書かれた数値をきちっととらえて物を言っているわけでございますから、具体的な数字で、この省令には満足しているということを聞かなければ私は納得できません。
それから、たとえば泊地の問題にいたしましても、船の長さの一倍半という船舶の泊地が要るということになっております。これは船舶というのはいかりを打つ場所がぜひ必要でございまして、岸壁に着けておって、風が吹いてきたり、だんだん気象が悪くなりますと、岸壁に打ち当てて外板にひびが入るというようなことで、どうしても岸壁を離れていかりを打つ場所が必要なわけでございます。たとえば、前の船が荷役をしているとき、そういう場合もやっぱり必要でございます。そういう意味で、この泊地というものをちょうど駐車場のような扱いで、やはり船の長さの一倍半という泊地を決めているわけです。これが水島港にはないんです。ですから、私は具体的に申し上げておるのであって、そういうような数字をここに書いておられる以上、これは、この省令を満足しているんだということであれば、私の方がその根拠を知りたいわけでございます。
それから、もう一つございまして、こう言うと恐らくこれは港湾区域内の話だと言うでしょうけれども、やはり省令の精神というものは、後向きではなくて前向きにとらえないと、水島港がマンモスタンカーではもうだめだということはもうわれわれ仲間では常識なんです。だから、海員組合でも昭和四十八年に運輸大臣に対して申し入れ書を出しております。もう大型タンカーやめてくれということを再三申し入れている。最近でも非常にいろいろな動きがあるようでございますけれども、船舶操船者がわれわれの同級生でありますから、そういう実感は余すことなく私は聞いております。
そこで、九十度旋回ということを申し上げましたが、運輸省令では、航路は三十度以上曲がってはいけないと書いてあります。なぜ三十度以上曲がっていけないかと言いますと、腰が重いので、三十度以上急に曲がるということは、どうしても風や潮に流されて、その間にのし上がってしまうという危険性を考えて、三十度以上を超えないことと書いているわけですから、いずれもそういうような数値を満足しているとおっしゃるならば、私の方が逆に具体的に聞きたいと思います。
そこで、そういうことは一つの原則であって、いろいろと例外を認めてもいいんだとおっしゃるのならもう話は終わりであります。
それから、水深でありますけれども、水深が足りないと申し上げましたけれども、それは確かに油をちょっと荷揚げして、そうしてつじつまを合わせて入っていることは事実です。しかし、先ほど申しましたように、実態というものは、そう物差しではかったようにここまで揚げてくれと言いましても、受け入れる方も商売でありますから、いや、そんなに要らないと言ったら終わりで、少し大目に入ってくるときは、船長が苦心惨たんしているのが事実でございます。潮を利用して入ってくるなんというのはもう本当に船にとってはサーカスプレーであります。そういうことを考えますと、もともと船足が水深よりも深いような、水深の方が浅いような港に入れるべきではないのであります。どんなことがあるかわかりません。天候や気象に左右されて船の時間というものはまちまちでありますから、そう汽車の瞬間のようには正確にいかないわけでございますから、潮に頼って入ってくるなんということは非常に不安である。とにかくこの港は三千トンクラスの、わずか三メーターの水深の港であったということをよく思い起こしてみたいと思います。ただ船の深さだけを掘りましても、たとえば港の中で四百メーターの幅があるんですけれども、そこで、入るときはそのまま入っちゃうんですけれども、出るときはおしりから出るわけにいきませんから、くるっとこう旋回する。そうすると、四百メーターの中で三百六十メーターの船が旋回しますと、前後二十メーターしか余裕がないんです。そうすると、十六階建てのビルから見ているわけですから、目の前に後楽園球場の三倍ぐらいのデッキがあるわけですから、もう二十メーターなんという余裕水面は見えないわけですね。向こうの山しか見えない。だから岩壁へ衝突しているのかしていないのかもわからないわけです。そういう、単に勘で操船をしているという、そのことを申し上げたいわけです。われわれ仲間の船員がもう本当に全神経を集中して操船をしてやっと事故を防いでいる。
水島港では、港の入り口に四十六年から四十八年に巨大船が四隻座礁しております。これも一つの重要な事例だと思います。そういうことを考えても、ただ単に省令を満足しているというようなことを言っておると、水島で巨大タンカー事故を起こしたときにその責任は重大であって、そういうことをあげつらうべきでない。やはり省令の精神というものをきちっととらえて基本的な対策を打たなければ、取り返しのつかないことになるということを同じ行政官として私はそう感じます。