村沢牧の発言 (災害対策特別委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○村沢牧君 去る六月十五日、村田委員長、遠藤理事、田原委員、藤原委員、河田委員、柄谷委員、目黒委員及び私村沢は、大地震により激甚な被害に見舞われました宮城県仙台市の実情を衆議院災害対策特別委員会と合同で調査をしてまいりました。
 以下、その概要と今後の課題について御報告申し上げます。
 まず、地震発生の状況並びに被害の概況についてであります。
 六月十二日午後五時十四分、宮城県の洋上百キロ、深さ四十キロの海底で、マグニチュード7.5の大地震が発生、仙台、大船渡、福島、新庄で震度五の強震となったほか、秋田、帯広、水戸、東京で震度四の中震を記録、このため宮城県を中心に東北一帯は大きな被害をこうむったのであります。
 同地域では、本震に先立って午後五時六分、最大震度三の前震があり、また本震の後も十五日朝までに震度四を含む十数回の有感地震が頻発していましたが、一連の地震も鎮静化しているとの気象台発表で地元民の不安感は徐々にぬぐわれ、各所で応急復旧の取り組みが進められておりました。
 北海道から関東、東海に及ぶ広域を揺るがした今次の地震は、去る昭和三十九年六月の新潟地震に匹敵する最大級の規模であったことにかんがみ、気象庁は一九七八年宮城県沖地震と命名し、その記録を明記することとなりました。
 大地震の直後、太平洋岸一帯には津波警報が発令されましたが、幸いに高潮被害から免れたものの、内陸部は強い衝撃をまともに受け、特に仙台市では、建物の破損、倒壊を初め、電気、ガス、水道等都市施設の被害が頻発し、原油流出の二次災害も加わって深刻な事態となったのであります。
 宮城県がまとめた六月十五日付の被害調査によりますと、被害総額は四百十億円に上っており、内訳は住宅関係百五十三億円、土木関係九十九億円、都市施設関係四十三億円、教育、医療関係三十五億円、水産関係三十二億円等でありますが、商工関係等の県の集計は大幅におくれており、調査が進むにつれて被害額は激増するものと思われます。
 また、一般被害につきましては、死者、行方不明者二十三名、負傷者九百四十六名を数えており、住宅被害では全壊三百三十戸、半壊二百九十五尺一部破損三万四千戸、非住家被害八千百四十戸となっており、おびただしい数の建物損壊とともに、住宅付帯施設であるブロックべい、門柱等の倒壊が多くの人命損傷をもたらしたことが特徴でもありました。
 こうした事態の中で、宮城県は直ちに災害対策本部を設置、激甚災害が集中した仙台市、登米郡迫町、同米山町に災害救助法を発動するとともに、断水地域への給水、仙台港での流出原油除去等の支援のため、自衛隊に対し災害派遣を要請したのであります。
 次に、主な被災地の状況と今後の対策について申し上げます。
 仙台市は人口六十四万を擁する東北地方での中心都市であり、震災後三日にして都市交通、電気通信等の機能はほほ回復しておりましたが、一たび沿道に目を移すと、ビルの沈下、屋根がわらの落下、窓ガラスの破損、ブロックべいの倒壊等が散見をされ、市民生活の安定回復はなお長引くものと予想されました。
 仙台港では東北石油仙台製油所の原油流出事故現場を視察いたしましたが、近代都市構造の中の危険な一面が露出したものだけに、今次災害の大きな焦点と思われました。
 地震直後、同製油所構内にある石油タンク八十七基のうち三基に亀裂が入り、合計七万キロリットルの精製中の原油がタンクから流出、当初製油所の各施設に阻まれて構内にとどまっておりましたが、ついにその一部約三千キロリットルが排水溝より仙台港に流出したのであります。
 海上での原油の拡散防止策としては、仙台港北航路内に一次から七次までのオイルフェンス約八千七百四十メートルを張り、これにより三次フェンス以内で原油の拡散を阻止したとのことで、視察当時は回収効果を上げるために一次フェンス内への油面の縮小が図られておりました。
 一方、構内にとどまった約六万数千キロリットルの原油は防油堀を越えて通路にあふれ、芝生、植え込みの地帯にも浸入、一時は事務所周辺にも近づいて大火災の危険も予想され、物々しい警戒体制がしかれたとのことでありました。
 流出原油の回収作業は、自衛隊を含め構内で約五百名、海上で約二百八十名が従事していましたが、特に海上では原油と水との混合を避けるため、ひしゃくで回収する人海戦術がとられており、完全回収を果たすまでにはなお日時を要するものと思われました。
 同製油所は昭和四十六年に操業を開始、仙台湾新産業都市の中核コンビナートとしてスタートしたもので、当時防災面でも最新設備を導入、鋼鉄製のタンクはマグニチュード8の地震に耐える構造と説明されていたのであります。しかし、現実にマグニチュード7.5、震度五の地震でもろくも破損をする事態となっており、石油タンクの設計上、工事上の欠陥か、地盤との関係か、いずれにせよこの原因は徹底的に詰めなければならないものであると痛感をいたしたのであります。
 仙台市の東部地区を中心に街路筋に展開する建物被害の状況は、倒壊したビル、アパートを初め、入居不能状態の個人住宅等が放置をされており、また一部破損の住宅は屋根がわらの落下、窓ガラスの破損、壁面の亀裂等によるもので、破れ個所はテントやビニールを張り夜露をしのいでいるのが大半でありました。
 さらに、多数の被害者を出したブロックべい、門柱等の倒壊は二千個所以上に上っており、これらは歩行者通路に面しての設置が多かっただけに、安全対策の不備が大きな問題となっておりました。
 住宅被害の代表例として、仙台市福室にある分譲マンションサニーハイツ高砂の被災状況を視察をし、居住者から説明を聴取いたしました。
 同マンションは、三LDK、百九十戸からなる十四階建ての高級住宅であり、昭和五十一年六月に数少ない公庫融資つきマンションとして売り出され、快適な生活が約束されていたものであります。ところが今次の地震により敷地が波打って陥没、ために建物は大きく揺れて全戸にわたり壁面が亀裂、七階以下では窓枠が外れ、玄関ドアの開閉ができなくなったほか、屋上の給水タンクと各階の配管施設も破損いたしまして、ガス、水道、トイレが使用不能という無残な状態でありました。室内は家具や壁面の崩壊で三十二名の負傷者を出したほどに混乱をしており、ドアの開閉しない家庭等六十戸の人々がマンションを出て知人宅に避難をしているとのことでした。
 大都市ではマンション需要が増大の傾向にあり、今次の被災原因は建築技術の面から解明されるべきでありますが、同時に入居者の多くがマンション購入費の支払いを長期ローンで果たしている実情の中で、地震災害に関し購入者と業者との間で事前取り決めを制度化することが必要と痛感をされました。
 仙台市東部地区はかねてから地盤の弱い地域と言われており、土木学会において地震防災の上で地盤構造調査が急務であるとの指摘をされていたのであります。案の定、今次の大地震では卸商社の集まる卸町とその周辺で、事務所、工場、倉庫が軒並みに傾斜、倒壊し、展示商品や製品にも多大の被害をもたらしたのであります。ビルの一階部分が地下にめり込む形で倒壊した文具取扱店オビサンの周囲にはコンクリート、タイルが飛び散り、鉄筋も曲がってむき出しており、地震被害の惨状をいまにとどめておりました。
 三百に及ぶ卸商社が集まるこの地域は、昭和四十五年に整備された近代的卸商センターでありますが、理事長の説明によれば、ほとんどの商社が被災をしており、被害額は百億円を超えると見込まれるとかで、復興再建のための国の十分な援助、融資を訴えておりました。
 仙台ガス局の製造部門原町工場では、地震の直後、低圧ガスホルダーが倒壊して炎上、市街地の中だけに二次災害が懸念をされましたが、一時間後に無事鎮火、しかし焼けただれた施設の完全復旧には半年以上が必要とのことでした。幸いに同じ製造部門の港工場は、構内配管が損傷したものの直ちに復旧、東北石油からの原料供給が回復すれば製造が再開できるとのことでしたが、一方、市内のガス導管は亀裂被害が顕著であり、この復旧になお十日程度を要するとのことで、都市災害の底の深さを痛感した次第であります。
 最後に、今次災害の総括的な問題点並びに所見について申し上げます。
 第一は、大都市機能と防災体制についてであります。
 今次の大地震は、災害に強いと言われていた杜の都仙台市において被害が集中、上下水道、ガス、電気通信等の施設被害も加わって都市機能は混乱状態となったのであります。この混乱は、生活の利便さを支える都市機能が、一たび不測の事態に遭遇すると、すべての人々の生活安定が失われることを改めて教えており、もしこれが超過密都市の東京を直撃していたらば、各種のパニック現象の同時多発が十分に予想されたところであります、、
 近代都市の防災環境はきわめてもろいとの前提に立って、食糧、医療、交通、情報等に関し非常時体制を整えるため、国、自治体、住民の協力関係を確立し、官民一体の防災体制を実現することが緊要と痛感したのであります。
 第二は、コンビナートの防災体制についてであります。
 仙台港への原油流出事故は、その後の懸命な回収作業の結果、大事故を誘発する危険性はなくなりましたが、石油タンクの安全性の面で大きな問題が暴露されたのであります。
 すなわち、昭和四十六年に石油タンクを設置した東北石油の場合、五十年十二月施行の石油コンビナート等災害防止法による防災基準、五十二年二月改正の消防法による耐震技術基準等によるチェックからは除外されているのであります。強化された法基準の適用以前に設置された施設には遡及して補修する義務はなく、防油堀のかさ上げ、化学消防の充実等、次善策で対処すれば足りるとされているのであります。
 通産省の調査によれば、一万キロリットル以上の石油タンクは全国で二千七百八十七基、その大半は改正消防法適用以前に設置されたものとのことです。石油備蓄が叫ばれ、そのための基地建設が進められている現在、各地のコンビナートの安全性を確保することが必要であり、既設石油タンクの防災対策の確立は重要な課題と思うのであります。
 第三は、ブロックべい対策の強化についてであります。
 今次災害の痛ましい死傷事故の大半は、身近な生活の場に配置をされているブロックべい、石べい等の倒壊によるもので、以前から指摘されていた鉄筋骨組みの必要性が改めて実証されたのであります。
 建築基準法施行令によれば、補強コンクリートブロックの場合、直径九ミリ以上の鉄筋を八十センチ間隔で縦横に配置するとされておりますが、一般的な組積造のへいの場合は、高さ二メートル以下、基礎部分は地中に二十センチ以上押し入れる等の規定があるのみで、鉄筋は不要とされているのであります。一
 倒壊したブロックベい等の構造が法規で定めた基準どおりであるならば、耐震性を見直した上で基準の強化改正を急ぐべきであります。また現行基準すら遵守されない不良施工が倒壊の原因であるならば、監督官庁による施工過程における安全チェック等、実効ある行政措置を講ずるべきであります。
 いずれにせよ、この事態を教訓に、建物の付属物等について安全性を再点検し、官民ともに日ごろの防災意識を高め、事前の対策を講ずることが必要であります。
 第四は、地震観測体制の整備についてであります。
 今次の震源となった宮城県の沖合いは、これまでも三陸地震、金華山地震等大きな地震が頻発しており、特にこの地域の地震発生のメカニズムは日本付近で最も複雑と言われ、地震学会においてもその解明が急がれているところであります。
 このように地震の巣と言われる宮城県沖ではありますが、この地域での地震観測の体制は、東海沖、紀伊四国沖に比べ皆無にも等しい状況にあり、地震予知連の定める特定観測地域にすら選定されていないのが実情であります。
 さきの国会で成立を見た大規模地震対策特別措置法のもとで、今後全国的にも地震観測の強化が図られることとなったのでありますが、過去に幾たびも大地震を経験し、また研究者の一部で巨大地震の発生が予測されている宮城県沖は、他の地域に優先して観測体制を整備する必要があると痛感されるのであります。
 第五は、財政措置、融資措置についてであります。
 大地震による災害形態は非常に特殊であり、広範囲にわたり同時的に被害が頻発し、社会機能、生活機能を破壊するに至るのでありますが、今次はそれが大都市においてもたらされたものだけに、災害の底が広がり一層深刻な事態になったのであります。それゆえ個々の被災物件はきわめて激甚となり、いわゆる個人災害も莫大な規模になっており、宮城県、仙台市は、公共土木関係等の激甚災害の指定、特定地方公共団体の決定について強い要望を繰り返しておりました。
 人口の増大に伴い行政費の需要が急増している仙台圏の自治体財政を補完し、各施設の災害復旧と防災面の拡充措置を講ずるため、国の大幅な財政援助は不可欠であり、そのために激甚災害の指定を早急に決定すべきであります。
 同時に、個人災害に対しても、災害援護資金制度等の運用拡大を図るとともに、災害復興住宅資金、自作農維持資金、中小企業災害特別融資等について特別の配慮を行い、地方税等の減免措置についても検討すべきであるというふうに思うのであります。
 以上が調査の概要でありますが、これらは今次大災害の中でほんの一端にすぎないことは改めて申すまでもありません。政府は、被災地の真摯な要請と、指摘をいたしました問題点について十分に検討され、必要な行財政上の措置を早急にとられることを強く要請をし、あわせて今次災害の犠牲者の御冥福と災害地の一日も早い復旧をお祈り申し上げ、報告を終わる次第であります。

発言情報

speech_id: 108414339X00119780623_005

発言者: 村沢牧

speaker_id: 15072

日付: 1978-06-23

院: 参議院

会議名: 災害対策特別委員会