真柄栄吉の発言 (外務委員会)

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○真柄参考人 真柄です。
 この国際人権規約は、恒久平和の確保と社会の発展のために欠くことのできない基礎として、政治、経済、社会、文化、すべての分野における基本的人権が保障されなければならない、そのことを示したきわめて重要な意義を持つ国際条約とまず考えます。
 第二次世界大戦の悲劇的な教訓の中から生み出された世界人権宣言は、一九四八年に採択され、戦後世界の平和建設の指導理念として広く世界に知られましたが、これは法的拘束力を持ちませんでした。国際人権規約は、この世界人権宣言に掲げられた内容を、批准をすれば法的義務を負わなければならない国際条約として整備されたものであって、その重要性から見て、今日までわが国において放置されていたことはきわめて残念と言わざるを得ません。わが国は先進工業国のトップグループの一員にランクされ、国連、ILOなど、国際諸機構の中で重要な役割りを果たさなければならない立場にあるわけでありますから、なおのことと考えます。
 その批准の状況は詳細は省略いたしますが、日本だけが先進工業国の中で取り残されていると言って過言でありません。したがって、この国際人権規約の批准は早急になされなければならない日本の責務と考えるものであります。ところが、政府はこの国際的責務を果たすべき重要な課題に対して、きわめて遺憾な態度をとっていると言わざるを得ません。それは、四項目にわたる「留保及び解釈に関する宣言」であります。私は、これらの「留保及び解釈に関する宣言」のうち、労働基本権に関することについて、参考人として意見を述べさしていただきたいと思います。
 政府は、いわゆるA規約「第八条1(d)の規定に拘束されない権利を留保する。」として、ストライキ権保障の部分を適用させない措置を強行しようとしています。この留保措置によって直接的な影響を受けるのは、現行国内法によってストライキ権が不当にも禁止、制限されている官公労働者であるわけですが、官公労働者のスト権問題については、日本国内において長い間論議されてきた課題であり、その中でも、国際的に見てわが国の現行法が大幅に立ちおくれていることが指摘され続けてまいりました。国際人権規約でも、国際的常識として当然にストライキ権を保障すべきであるとしています。国連における最も基本的な人権条約としてあるこの国際人権規約がスト権保障を明らかにしている事実を直視し、従来の国際的常識に反する態度を改める絶好の機会としてその批准をとらえるべきでなかったかと考えます。
 政府の留保をする態度は、「人権の尊重は日本国憲法を支える基本理念の一つであり、」「規約の締結は、わが国の人権尊重の姿勢を改めて内外に宣明する観点から意義深いものと考えます。」という政府の批准提案理由そのものにも反することでないかと考えます。これは体面のみ取りつくろおうとする態度であると非難せざるを得ません。
 また、国際人権規約批准に伴う留保をすることによって、今後の官公労働者のスト権回復運動の前進に歯どめをかけようとする不誠実な態度にも通ずるものでないかと指摘せざるを得ないものであります。
 私は、政府が提案理由に掲げるように、「人権の尊重は日本国憲法を支える基本理念の一つであり、」それを尊重する立場に立つのであるならば、その日本国憲法も明確に保障しているスト権保障を留保する必要は何もないし、政府が留保なしに批准をすることを英断されるよう強く望むものであります。
 次は、いわゆるA規約第八条の2及びいわゆるB規約第二十二条の2にいう警察の構成員に消防職員が含まれると解釈する宣言の問題であります。この問題についてはILO八十七号条約に関し、毎年ILOの場で論議されていることでありまして、国際的には明確に結論が出されている問題と考えます。
 ILO八十七号条約は結社の自由と団結権の保護を目的とする条約でありますが、この条約の第九条で、「この条約に規定する保障を軍隊及び警察に適用する範囲は、国内法令で定める。」として、条令の適用に関する例外規定が置かれています。
 日本政府は、この「警察」の中に消防が含まれていると強弁し続けてきたわけであります。消防が警察と本来異なるものであることは、政府がいかに強弁しようとも否定できないものでありまして、政府部内からもこのことを認めるやの言質もあります。たとえば昭和四十三年八月、「京都消防」という雑誌の中で、元消防庁長官の佐久間さんがそういう点について触れています。詳細は省略いたします。
 ILOの場におきましても、このことについての結論は明確に出されていると思います。一九七二年、総評自治労は、消防職員の団結禁止措置をとり続ける日本政府の態度は、ILO八十七号条約に対する重大な違反行為であるとして、結社の自由委員会への提訴手続をとってまいりました。すでに条約勧告適用委員会ではこの問題が審議されており、七二年六月の第五十七回総会における条約勧告適用専門家委員会報告は、海上保安庁職員、入国警備官については、警察類似職員であるが、消防職員については団結権が与えられるべき部分であることを明らかにしております。
 さらに、七三年六月の総会に対する条約勧告適用専門家委員会報告でも、この問題に対する画期的な見解を明らかにし、要は消防職員にも団結権が与えられるべき方向について、日本政府に適切な措置をとるよう希望したのであります。
 しかし、このILOの明確な判断にもかかわらず、日本政府は一切それを無視し、消防職員の団結禁止の解除に向けての具体的措置に着手することをしてこなかったのであります。そこで、毎年の総会で労働側から、日本政府の国際信義に背反する不誠実な態度に対する批判、ILOへの適切強力な措置の要請が提起され、それに対し日本政府は、「政府は消防職員の地位について長期的視野にたって慎重に考慮する」「日本の消防は、三〇〇年来警察的機能をもっており、ILO八七号条約第九条にいう「警察」にふくまれるのであり、条約違反ではない」など、日本における特殊性を強調しながら逃げ切ろうと繰り返してきているのであります。
 しかし私は、論議の性格は明らかだと考えます。ILOの結論は明確であると申し上げましたが、ただそれに日本政府が従わない現状にあると言い尽くせると考えます。一九七七年の六十三回総会におきましても、この条約勧告適用専門家委員会は、「日本の消防職員の職務については、いくつかの特別な特色があるが、その反面、当委員会の判断によれば、これらの労働者を当条約の第九条にもとづき労働組合を結成する権利から排除することを正当化するようなものであるとは思われず、また団結権の承認は自動的にストライキ権をともなうものではないことが想起される」と報告しております。さらに昨年のILO第六十四回総会でも、官公労働者の労働基本権に関する国際基準としてのいわゆる百五十一号条約、公務における団結権の保護と雇用条件決定の手続に関する条約が採択されたのでありますが、この条約の審議の中でも消防職員の団結権問題は、日本政府の主張とは明確に反する結論が出されています。もっとも日本政府はこれらの提案に対する修正案を提起をいたし、「適用にあたり国内法令及び慣例に正当な考慮が与えられるべきである」と国内法優先の考え方を修正案の中で盛り込んだのでありますが、最終的には日本政府はこの修正案を撤回をいたしている事実もあります。
 以上の経過については、若干、時間の関連があって割愛をする部分をお許しいただきたいと思います。
 このようにILOの場では消防職員の団結権は国際的に保障されることが常識であり、そのように要約することが言えるのであります。国内におきましても、一昨年八月以来、全国消防職員協議会が結成され、自主的な活動が進められている現状にあり、消防職員の団結禁止という措置はますます無意味なものになりつつあると言えると考えます。
 国際人権規約の批准に当たりまして、何らの合理性もなく、国際的常識に反する解釈宣言をするようなことをせず、無条件で批准をすべきことを特に強調させていただきまして、参考人としての意見にかえさしていただくところであります。ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 真柄栄吉

speaker_id: 8124

日付: 1979-05-07

院: 衆議院

会議名: 外務委員会