小川泰の発言 (外務委員会)

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○小川参考人 小川でございます。
 私は、あらかじめ用意してきたのですが、前四人の参考人の方がほとんど規範的な部分その他を言われておりますし、時間的な点もございますので、できるだけ重複を避ける意味で端的な内容に触れさしていただきたいと思います。
 俗に言う人権規約、またA規約、B規約と言われている一連のものについて、私の考えといたしましては、総体的に、原則として早くこれを批准し、日本の立場を明らかにすべきだという基本的な立場に立つことが一つであります。
 二番目には、この規約の趣旨をよしとするならば、どういうふうにして実効が上がるように国内においてこれを適用させるのかということを、将来の課題として非常に重要な問題ではないかということを私は申し上げさしていただきます。
 三つ目には、そういう内容がしっかり組み立てられるためには、国内法の整備が当然に必要になってまいりまするので、これを具体化するためにできるだけ恒常的な審議機関といいますか、検討機関といいますか、そういうものを即刻設けていただきまして、世の移り変わりやあるいはいろいろな動態の変化に対応して、前向きにこれに対応できるような措置が必要であろうということを申し上げさしていただきたいと思うのです。できればそういったような点は、政治の場でございますから、国会等で十分対応できるような附帯決議等の御検討を賜れば大変幸いだな、こんなふうに思っているわけでございます。
 全体的な最後に、これに直接かかわる問題であるかどうかは別といたしまして、私としては難民問題について一言触れざるを得ないと思うのであります。難民問題につきましては、この規約とどういう関連を持つかは、私法律をよく存じませんけれども、別途集中的な検討をぜひ早目に行っていただきたいものだということを申し上げざるを得ないと思うのです。難民問題というのは、私は現実にベトナム難民の諸君と何回か数年にわたって触れておりますけれども、高邁な理想、高邁な条約という問題の前に、一日も早く、日本国としてこの問題にどう対応するのかという具体的な措置こそが、世界に向かって日本の人権に対する尊重態度を明確に打ち出す現実的な証左ではないかと私は思いますので、よろしく御検討をお願い申し上げ、それを受け入れるためにはたくさんの条件が必要だと思いますので、それぞれの条件整備のために力を注いでいただくことをこの際強調申し上げたいと思います。
 以上が、総体的に私のこの人権規約に対する考え方でございます。
 これから、何人かの方がお触れいただきました、当面、当国会で論議されている規約の批准に当たって、政府提案の留保条項について一言ずつ触れさしていただきます。
 まず第一の公の休日の報酬という問題は、私も条約案を読んでみましたし、関係各国にも問い合わせてみたのですが、なかなか公の休日の報酬というその「公の休日」という範疇と「報酬」のとらえ方というものが大変まちまちでございまして、私は、一体この条約自身は何を指しているのだろうかということを、できれば国会の名においてひとつ明確に規定さしていただいて、その上で当然にこの問題を国内に引き直して批准をしていくという態度をとっていただきたいというふうに思います。そういう意味でありまして、何も留保条件に賛成ということではありませんので、基本的には留保条件はつけない方がよろしいという立場で、内容を明確にした上でこれに対応してほしいということを申し上げさしていただきたいと思います。
 二番目にはいわゆるストライキ権。ただいま前者の方も触れられましたが、これについても一言私どもの立場で触れさしていただきたいと思うのです。同盟罷業をする権利というものはいかなる産業、いかなる労働であっても基本的に権利として認めるべきである、この原則は毫も崩す必要はないという前提に私は立つわけでございまして、何らこれには条件をつける必要はないというのが基本的な考え方でございます。だがしかし、われわれ労働組合側からも、昨今の経済や社会の状況の変化、いろいろなものを考えた場合に、何でも自分が持っておる権利は、人に迷惑をかけてもしゃにむにふるうというようなことは、労働組合といえども、いわゆる公序良俗に照らしていかがかという良識は持ち合わせているつもりでございます。そういう意味合いにおきまして、いま論議をされておるこのストライキ権については条件つき、こういう条件をつけまして、そして基本的にスト権を認めるという方向で明確な立場をとらしていただくのが一番よろしいのではないかというふうに考えるわけでございます。前者は官公労働者のスト権、団結権等に触れられましたが、私どもは、民間労働者を組織しておる中でも、特に昭和二十九年以来電力労働者がスト権を規制されていることは御承知のとおりでありまして、われわれ、電力労働者がもし仮にストライキをやろうかというようなことになりますと世の中一体どうなるかというような点等についても、良識を持ってみずからを規制し、みずからのあり方というものでもってスト権問題では一つの問題提起をし、政府の検討を煩わしておる現状に照らしましても、十分な検討要因をこの中に含んでおるものというふうに考えておるわけでありまして、そういうこととイコールにして、だから留保しなければならないという問題とは次元が違うという観点に立って、この条項もよろしくひとつ御撤回いただいて、国内法の良識的な整備によってこれを速やかに批准すべきだ、こういうふうに私は申し上げてみたいと思います。
 三番目の中等教育、高等教育の漸進的な無償化という条項にもいろいろな留保条件がついておるようでありますが、これもどうも条約批准書の中の文言を照らしてみましても、国々によって、どこに線を引くのか、どういう規模のものかというものも恐らく画一性はなかなかできまいという感じはございますので、同様にそこらあたりも十分調査をして、日本としてはこういうことだということを明確に打ち出していただくのも一つの方法ではないかなというふうに考えております。だがしかし、この規約は理想的なものであって、現実になじまないのだという考え方も仄聞するところあるようではございますけれども、私は、この方向は大変結構な方向でございますので、原則的に賛意を表しまして、むしろ規約の趣旨に沿えるように今後努力をすべきだという意味合いで、この条項の留保も撤回することを希望として申し添えておきたいと思います。
 四番目の団結権の制限についてでありますが、これも前者が触れましたとおり、警察と消防、この区別は明確でありまして、何らこの問題について留保条件をつける理由はないという立場に立って、これも御撤回いただきたい、全体的にすんなりとこの国際人権規約はまず批准をなさることが一番よろしいのではないかということを、この際もう一度総体的に申し上げておきたいと存じます。
 最後に、この人権規約の中身は大変むずかしい条約文章でありますので、なかなか、問題によっては難解なところがたくさんございますけれども、こういう国際的な人権規約を批准するかしないか、あるいは国連と日本という関係、さらには国際化社会がどんどん進められる現状に照らして、一体われわれ日本国民としてこういうものに対応する基本的な姿勢はいかにあるべきかという点について、一言触れさせていただきたいと思うのです。
 端的に申し上げまして、いまの一国社会というものは、一国だけで存立することができないことは明確でございまして、わけても日本のような各種の条件を持っておる国家といたしまして、同様に日本国憲法は世界に冠たる平和憲法でございます。なかんずく憲法九条の戦争放棄、さらには唯一の原爆の被爆国としてのわれわれ日本人、こういう観点から、非核三原則というふうなものをもって、戦争に対する憎悪を憲法というものに照らして国際的に宣言している民族の立場ということから考えるならば、ますますこの種の国連あるいは国際的なこういう問題には、むしろ多少の疑問があろうともそこは大きくのみ込んで、先駆けた国際的な立場を日本の立場というかっこうで明確に打ち出していくという姿勢こそが私は重要だというふうに思いますので、条約案件そのものの中をつぶさに吟味することも大切ではございますが、その内容を精査する余り消極的な姿勢をとるということは、何か本末転倒のきらいなしとしませんので、そういう基本的な姿勢でこの種の問題にはお取り組みいただくことを重ねて御要望申し上げさせていただきたいと思うのです。一たびこういう国際的な規約でわれわれの立場というものを明らかにした以上は、これを具体的に行動に起こし、実践のための具体化を急ぐということは当然のことでございますので、できるだけこの規約を速やかに批准をし、内容、条件の整備を急ぐために各般の手だてを良識ある国会として打っていただくことを特にお願い申し上げたいと思うのです。
 最後に、一言だけ私の体験上触れさせていただきますが、私もいろいろな意味合いでこういう労働組合運動を続けておりますが、国連で昨年、国連軍縮総会というものが創立されて、初めて国際舞台で軍縮問題が取り上げられるということを聞きつけまして、民間代表として行ってまいりました。そしてできるだけ多くの代表部と接触もいたしましたし、日本国民として核兵器の廃絶、そして非核三原則の徹底、日本国憲法九条による戦争放棄の民族としての意思を明確に国連の場に反映させようというので、民間代表として国連にも参加させていただきました。そういう体験の中からおもんぱかってみますと、一音で申し上げさせていただきますならば、こういう時代が進めば進むほど、戦争というものほど残酷なものはないということを日本人が一番よく知っているわけでありますので、いわゆる社会権とか自由権とかいろいろ言う前に、一たび戦争が起こったらすべてすっ飛ぶという基本的な気持ちで日本国憲法はでき上がっておるわけでありまするから、そういう世界の中の日本、日本の民族の誇りとして、各般の国際舞台には積極的に国の責任者が先頭となって参加をし、声高らかに国際世論の中に渦を巻き起こしていただきたいな、こういう気持ちを私は大変強く印象づけられて帰ってまいった一人でございます。
 そういう立場からも、この人権規約というものの中身の一々については専門家ではありませんからわかりませんが、ごく常識的な日本人の一人として、総体的に批准の促進をお急ぎいただきまして、国際的に日本の立場を明確に打ち出していただきたいものだということを申し添えまして、私の意見にかえさせていただきます。
 ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 小川泰

speaker_id: 30194

日付: 1979-05-07

院: 衆議院

会議名: 外務委員会