久保田きぬ子の発言 (外務委員会)

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○久保田参考人 申し上げます。
 御指摘のとおりに、人権侵害の問題はもはや現在では国家権力による侵害の問題から私人による侵害の問題に移っております。これをどういうふうにして救済すべきかということ。これはそれぞれ各国いろいろと工夫をいたしておりますようでございまして、たとえばドイツでは西独の基本法の一条の解釈規定で第三者効力というような理論をとっております。それからアメリカでは私的政府とかあるいはステートアクション、州の行為、日本で言えば国家の行為にひっかかるところを求めて、そして私人による人権の侵害を救済しようといたしておりますし、日本では幾つかの労働関係の判例に示されておりますように、民法九十条の公序良俗違反の条項を用いておるのでございますが、私が承知いたしております限りでは、今日では各国、国家権力による人権侵害もさることながら、巨大な労働組合であるとか、巨大な宗教団体であるとか、その他の私的団体によります人権侵害がゆゆしい問題になっております。それに対しまして、憲法を専攻いたしております者は、懸命にどうにかして救済する道はないかということを詰めておりますけれども、それぞれの国はそれぞれの国の法体系というものもございますものですから、既存の法体系によって救済していこうという努力をしておりますのが実情であろうかと思います。
 私も、もはや人権の侵害は国家権力だけの侵害だけを考える段階ではないということは御指摘のとおりだと存ずるのでございます。しかし、これは大変むずかしいことでございまして、法的にするか、ことに憲法の場合には原則といたしまして、そして伝統的に憲法のたてまえは国家生活における基本的なルールでございまして、国家権力対国家構成員という考え方で構成されておりますので、大変むずかしいと思うのでございます。それに関連いたしまして、和島参考人から一言お触れになりましたプロトコルの問題でございます。いわば市民的、政治的権利に関する選択議定書の問題でございますが、これは実は個人に対する侵害に対する救済でございますが、この条項の審議のもう一つ前の人種差別の撤廃に関する条約の実施条項の審議に参画いたしました者といたしまして、それがそのまま人権規約のプロトコルになっておりますのでございますが、私自身といたしましては、どうやって人権侵害の事実を認定するかというところに全く制度的に抜けておるものがございます。だれがやるのか。で、その主張をいたしまして、それが真にそれであるかどうかということの認定は非常にむずかしいものでございますから、問題は、国内的にさえ解決できておりませんものを国際的に解決することは、より一層困難ではないだろうかと思います。そういう意味におきまして、このたび国際条約の御提案の中にこのプロトコルが外されておりますることは私は大変御賢明であるというふうに承知いたしております。
 大変私が長くなりまして恐縮でございますが、なぜ批准を早めるか、なぜ留保をやめるべきだというのかという私の見方を申し上げますと、いささか外へ出てまいっておりますと、日本はこういう条約に対しまして大変誠実でございまして、国内法体制が決まってすっかり完備しない限りにはしないというきわめて優等生で誠実過ぎるんでございますが、私は国際条約ないしは国際社会をながめまして、日本の程度ほどの人権の保障が国内的にされていない国の方がずっと多いわけでございます。そういう国のことをも考慮いたしますと、わずかなことにかかずらわりまして、余りにも日本人が正直で誠実であることによって批准をしないということは、日本が逆に誤解を受けるもとになっているやに私は考えます。そういう意味で、不満なところはいろいろございましょうけれども、にもかかわらずこれだけ人権保障が整備いたしておりまする国が率先していくべきではないか。いずれにいたしましても、人間のいたしますことでございますから不備のところはございましょうけれども、私は、これは整備が先ではなくしてむしろ国民の努力にまつよりほかしようがない、その結果の国民の合意を得ることへの努力の方が先決ではないかというふうに考えておりますものでございますから、ぜひ御批准を早めていただきたい、留保も、これは全く国内的な御配慮からの留保であるように思うのでございます。そういう意味でできるならばすんなりとなすった方がよろしいというので、大変失礼でございますけれども……(小林(進)委員「金大中は」と呼ぶ)金大中の問題は、私は新聞で拝見いたしておりまするだけでございまして、これも私がそういう意味で、たとえばアメリカをお出しになっていらっしゃいましたけれども、アメリカのやり方を事例にとりますならば、やはりそこに何らかの形で国家権力が介入していたということが立証されない限り困難ではないかという気が法律的にはいたします。それはむしろもっと次元の異なる問題のように思いまして、私の領域外でございますので、御遠慮させていただきます。
 以上でございます。

発言情報

speech_id: 108703968X00919790507_026

発言者: 久保田きぬ子

speaker_id: 22750

日付: 1979-05-07

院: 衆議院

会議名: 外務委員会