栂野泰二の発言 (本会議)

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○栂野泰二君 私は、日本社会党を代表し、ただいま議題となりました防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に関し、総理並びに関係各大臣に対し、以下若干の質問を行います。
 まず最初に、総理の防衛政策に対する基本姿勢について伺います。
 総理は、昨年末の自民党総裁選に際し、福田前内閣の有事立法必要論は、軍事力の強弱や法律、技術論に偏っていると批判し、終始慎重論を唱えてこられました。こうした防衛問題に対するいわばハト派的姿勢が好感を持って迎えられ、それが総裁選勝利の一因にもなったというのが大方の見方であります。また、今国会冒頭の施政方針演説においても、節度ある自衛力、あるいは、真の安全保障は防衛力だけで足れりとするものではないなどと述べ、少なくともこの時点までは、防衛力を控え目にとらえ、むしろ安全保障政策の多元性、総合性が強調されていたと思うのであります。
 ところが、去る三月十八日の防衛大学校卒業式の訓示においては、防衛力の充実整備を総合安全保障の根幹と位置づけ、さらに、専守防衛を目的とするわが国の防衛力は、他国に脅威を与えるものではないが、真に抑止力たり得るものでなければならないとの見解を示されました。私は、総理が抑止力を強調されるとき、専守防衛と抑止力保持とは併存しがたい概念であると言った栗栖前統幕議長の言葉を思い起こさずにはおれないのであります。また、去る四月十九日、アメリカ人記者との会見では、極東ソ連軍の増強に対応するため、日本は軍事的偵察能力及び抑止力を強化しなければならないと述べられたそうでありますが、一体、防衛政策に対する総理の基本姿勢はこの数カ月の間に変わったのか、変わらないのか。変わったとすればいかなる理由によるものか、この際、明確にお答えいただきたいのであります。(拍手)
 ところで、総理、私はまずあなたに、次の演説の一節をお聞きいただきたいのであります。
 「人類の先覚者としての誇り高き憲法の精神に立脚して、我が国は、他国に脅威を与えるような軍事大国にならないことをその基本政策の一つとし、国際協調をその外交政策の前提としております。我が国がこのような世界史上例の少ない実験にのりだす途を選択した背景には、第二次世界大戦の体験を通じて日本国民の一人一人の心に深く根ざした「二度とこのような戦争があってはならない」という決意があります。この決意は、戦後三十余年を経た今日、日本国民の間に深く定着しており、将来にわたって我が国がこれに反するような行動をとることは断じてありません。」そしてまた、「相互不信が軍備の増強を招き、軍備の増強が不信の種をまくという悪循環を断ち切り、相互信頼が軍縮をうながし、軍縮が相互信頼を醸成するという関係に置きかえなければなりません。」というのであります。
 これは、国連軍縮特別総会における園田外務大臣の演説の一節であります。まことに格調高く、かつまた正論と言うべきであります。
 しかし、問題は、どこの国がまず軍縮への第一歩を踏み出すかであります。けだし、どこかの国が率先垂範しない限り、軍縮というきわめて困難な世界史的大事業の実現はとうてい不可能だからであります。私は、それこそ、園田演説の言う、誇り高き憲法を持つわが国が、その光栄ある最初の国となる勇気と決断を持つべきであると思うのでありますが、総理はいかがお考えでありましょうか、御所見を伺いたいのであります。(拍手)
 わが党は、かねてからこうした見地に立ち、まず、全面軍縮への足がかりとして、アジア・太平洋地域における非核武装地帯の設置を提唱し、その実現に向けて具体的努力を行ってまいりました。さきの園田演説でも、わが国がかかる非核武装地帯の設置を有益であると考えている旨述べられておりますが、政府としては、この非核武装地帯設置について具体的構想を持っておられるのかどうか、あわせてお答えいただきたいと思うのであります。
 国連軍縮特別総会における園田演説は、わが国が日本国憲法の精神を踏まえ、軍拡を拒否し、軍縮に努力することを全世界に向かって公約したものと言わなければなりません。歴代自民党政府の防衛政策が、この公約と全く相反するものであったことはいまさら多言を要しないところでありますが、いまや、大平内閣もまた歴代自民党内閣と同じく、いやむしろそれに拍車をかけて軍備を増強し、軍事大国への道をひた走ろうとしているのであります。
 本法案で改編強化が企図されている潜水艦隊も、これまで増強の一途をたどってまいりました。すなわち、一次防における潜水艦はすべて基準排水量七百トン級であったのでありますが、二次防では千六百五十トン、三次防では千八百五十トンと次第に巨艦化し、現在建造中の艦に至っては実に二千二百トン級となっているのであります。そして、これを一個艦隊として一元的に運用しようというのが本法案の内容であります。こうして、潜水艦隊は、すでに専守防衛の域を越え、攻撃的外洋艦隊へと変身しつつあると言わなければなりません。そのことは、潜水艦の任務を沿岸警備に限定している西ドイツ海軍が、その保有する潜水艦の基準排水量を四百トン以下にとどめていることと対比してみても明らかであります。
 また、防衛費は、本年度予算においてついに二兆円の大台を超え、いまや、実に世界第八位という巨額に達しているのであります。しかも、伝えられるところによりますと、防衛庁はバッジシステムの更新などを内容とする中期業務見積もりを策定し、防衛費の対GNP比を、現在の〇・九%から五年後には一%に引き上げる方針であると言われております。しかし、御案内のとおり、わが国のGNPはきわめて大きく、ことしのGNP〇・一%でも二千億円を優に超える巨額となるのでありまして、もしこうした方針が事実立てられているとすれば、それは絶対に容認しがたいものであります。事実かどうか、防衛庁長官にお尋ねいたします。
 なお、この際、政府は将来とも防衛費をGNPの一%以下にとどめるという方針を堅持されるのかどうか、その点もあわせてお伺いいたしたいのであります。
 私は、ここで、昨年十一月、日米安全保障協議委員会において合意を見た「日米防衛協力のための指針」、いわゆるガイドラインの問題を指摘をしておきたいと思います。
 このガイドラインのねらいは、アメリカのアジア軍事戦略の中に自衛隊を取り込み、米軍と自衛隊を一体化させ、その臨戦化、有事即応化を図ろうとするところにあります。しかも、その目指すところは、対ソ戦と朝鮮半島有事を想定した日米共同作戦体制の確立であり、この意味で、ガイドラインは日米安保条約を実質的に改定するものと断ぜざるを得ないのであります。
 たとえば、ガイドライン第三項では「日本以外の極東における事態で日本の安全に重要な影響を与える場合」「日米両政府は、情勢の変化に応じ随時協議する。」とされておりますが、ここに言う日本の安全に重要な影響を与える事態とは、どんな事態を想定されているのか、また、情勢の変化に応じた随時協議とは、いかなるレベルで何を目的として行われるものなのか、全く不明であり、私は、この点にこそ、日米安保条約の実質的改定の意味が隠されていると考えざるを得ないのであります。ぜひ納得のいく御説明をお願いしたいと思います。(拍手)
 最近の防衛庁による防衛力強化キャンペーンには無視し得ないものがあります。極東の軍事情勢変化を理由に「防衛計画の大綱」の修正を示唆した永野陸幕長発言、極東ソ連軍はわが国の潜在的脅威と断言した山下長官発言などがそれであります。
 確かに、国後、択捉両島における軍事基地の建設、伝えられる空母ミンスクや戦略爆撃機バックファイア配備の動きなど、極東におけるソ連の軍事動向には注目すべきものがありますが、その意図するととろや及ぼす影響については、冷静な情勢分析と慎重な対処が要求されるのであり、ソ連の軍事動向が直ちにわが国に対し現実の脅威を与えるかのような短絡した対応に出るのは、きわめて危険であります。まして、最近の防衛庁のように、これに籍口し、ことさらに国民の危機意識をあおり立て、防衛力の強化を企てるがごときは、断じて許し得ないと言わなければなりません。(拍手)いま一番大事なことは、脅威を強調することではなく、脅威をなくす努力をすることであります。
 そこでお尋ねしますが、政府は、現時点における極東の軍事情勢をどのように認識されているのか、また、これとの関係で「防衛計画の大綱」の見直しを検討すべきであると考えておられるのかどうか、総理並びに防衛庁長官にお答えいただきたいと思います。
 最後に、総理は、来週いよいよ注目の日米首脳会談に臨まれるわけでありますが、この会談において、日米防衛協力問題を議題とするおつもりなのかどうか、もし議題にするとすれば、いかなる方針で臨まれるのか、この際、明らかにしていただいて、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣大平正芳君登壇〕

発言情報

speech_id: 108705254X02119790426_029

発言者: 栂野泰二

speaker_id: 9078

日付: 1979-04-26

院: 衆議院

会議名: 本会議