細田吉藏の発言 (安全保障特別委員会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○細田国務大臣 このたび、衆議院に安全保障特別委員会が設置されましたことは、わが国の安全保障問題について広く関心が高まりつつある折から、まことに有意義かつ時宜を得たものであると存ずる次第であります。
今後は、坂田委員長を初め委員各位の安全保障問題に対する高邁なる御識見と豊富なる御経験に基づく幅広い御審議を通じ、国民の安全保障問題に対する関心を高め、その理解を深めるとともに、政府の安全保障政策推進の上に有益なる指針を本委員会からお示しいただけるものと確信いたしておるところでございます。
本日、委員会の御審議が開始されるに当たり、私から国際軍事情勢に対する認識及びわが国の防衛政策に関し、所信の一端を述べさせていただきます。
まず、国際軍事情勢に対する認識について申し上げます。
第二次大戦後の世界を概観すると、圧倒的な軍事力を持つ米ソ両国を軸とする東西の集団安全保障体制が厳しく相対峙する反面、米ソ両国ともに、全面核戦争とそれに至るような事態は回避しなければならないとの点で認識が一致し、対立と協調という二面的性格を持って推移してきたと言えましょう。
しかしながら、ソ連の軍事力増強の結果は年を追って顕著となり、これに対し西側諸国も対抗措置を余儀なくされるに至って対立関係の面が強くなり、特にソ連のアフガニスタン軍事介入以降は、東西間の不信、対立の様相が深まっております。
米国は、総合的な国力では依然としてソ連に対し優位に立っており、また信頼するに足る多くの同盟国を持っている強みはありますが、米ソの軍事力に限って見る場合、ソ連は過去二十年近くの間、西側をはるかに上回るペースで軍備増強を進めてきた結果、地上兵力において従来から優位であったのに加え、いまや、核戦力、海空軍力等の分野においても米国に迫りつつあり、一部はすでに対等となっていると見られます。
このようなソ連の世界的規模の軍事力増強の一環として、わが国周辺においても、極東ソ連軍の質量両面にわたる増強とこれに伴う行動の活発化には顕著なものがあります。すなわち、量的には十五年前と比べて地上軍及び太平洋艦隊は倍増、作戦機も四割以上の増となっております。特に太平洋艦隊は、過去一年間にトン数が一割近くも増加している状況であります。また、質の面も、空母ミンスク、揚陸強襲艦イワン・ロゴフのほか、カラ級巡洋艦等の大型新鋭艦や戦闘爆撃機ミグ27の配備等に見られるような著しい向上に加え、SS20中距離ミサイル及びバックファイア爆撃機の配備による戦域核戦力の大幅な増強も見られます。さらに、ソ連は、わが国固有の領土たる北方領土にも地上軍部隊を配備し、基地建設を続けており、現在、部隊の規模は師団規模に近づきつつあります。
このほか、昨年二月の中越戦争を契機にベトナムの海空軍基地の使用を開始し、最近は、航空機の滞在期間が長期化し、艦艇の入港及び南シナ海におけるプレゼンスの隻数が増加しており、ソ連はいまや基地の常時使用の状態に至っているものと思われます。このことは、外洋への出口が海峡によって扼されているという、ソ連太平洋艦隊が抱えている制約を緩和し、西太平洋、インド洋へのプレゼンス能力を飛躍的に向上させるものであり、有事におけるわが国の海上交通路の安全に大きな影響を及ぼす可能性があります。
これらに示される極東ソ連軍の増強と活発な行動は、わが国に対する潜在的脅威の増大として重大な関心を抱かざるを得ないものであります。
このような中でソ連と強い対立関係にある中国は、西側への接近を図り、米中間では国防関係要人の交流、技術協力等が進められる等、世界及びアジアの軍事情勢に影響を及ぼす可能性のある動きが生じています。
一方、わが国と一衣帯水の間にある朝鮮半島の平和と安定は、わが国の安全、東アジアの平和と安定にとって重要な要素でありますが、この地域では南北間の軍事的対立が依然として続いており、特に、北朝鮮は七〇年代に少なくとも二〇%以上の大幅な軍事力増強を行ったと見られます。米国は、このような情勢をも踏まえ、昨年七月、在韓米地上軍の撤退計画を一九八一年まで凍結する措置をとり、その間に韓国軍の増強と半島の緊張緩和のための努力が進められることとなっております。この地域における事態は、予断を許さないものもありますので、今後とも注意深く見守ってまいる所存であります。
また、インドシナでは引き続きポル・ポト軍とベトナム軍及びヘン・サムリン軍とがカンボジア内で戦闘を続けています。この紛争に関連して、タイ、カンボジア国境においてもかなりの緊張が生じており、今後の動向には引き続き注意を払う必要がありましょう。
さらに、中東、ペルシャ湾、インド洋地域では、ソ連のアフガニスタンへの軍事介入とイランにおける米大使館員人質事件等をめぐって緊張が高まっていることは、この地域の資源に大きく依存するわが国としても、重大な関心を持たざるを得ないものであります。
かねてから西側諸国は、東側との軍備管理交渉を進めてまいりましたが、ただいま申し上げたような諸情勢も踏まえ、一昨年五月のNATO首脳会議において長期防衛計画に合意するとともに、防衛費の実質、年三%を増加する等の決定を行い、昨年十二月のNATO閣僚理事会において戦域核近代化を決める等、それぞれ困難な政治経済情勢下にありながら国防努力の強化を図っております。中でも米国は、いまや将来にわたってソ連に優位を保ち続けるか否かを決定すべき歴史的転換点に立っているとして、みずから国防支出の持続的な実質増に着手するとともに、西ヨーロッパ、日本等の同盟国に対し、より一層の国防努力を求めている状況にあります。
以上、国際軍事情勢に対する認識を申し上げましたが、このような国際環境の中にあって、わが国は、御承知のようにみずから適切な規模の防衛力を整備するとともに、米国との安全保障条約によってわが国の安全を確保することとしております。そこで、次にこのわが国防衛政策について御説明したいと思います。
まず第一の柱であるわが国防衛力の整備についてでありますが、政府は、昭和五十一年十月、昭和五十二年度以降に係る「防衛計画の大綱」を国防会議及び閣議において決定しております。従前、政府は、四次にわたる防衛力整備計画に基づき、段階的に防衛力の整備を図ってまいりましたが、第四次防衛力整備計画が昭和五十一年度をもって終了するのに伴い、当時の国内外の諸情勢を考慮して、昭和五十二年度以降の最も効率的な防衛力のあり方を示すものとして、この大綱が作成されたものであります。
この大綱では、わが国が保有すべき防衛力のあり方として、防衛上必要な各種の機能を備え、後方支援体制を含めてその組織及び配備において均衡のとれた態勢を保有することを主眼とし、これをもって平時に十分な警戒態勢をとり得るとともに、限定的かつ小規模な侵略事態に有効に対処し得、さらに、情勢に重要な変化が生じ、新たな防衛力の態勢が必要とされるに至ったときには、円滑にこれに移行し得るよう配意されたものとする必要があるとの考え方を示しております。
わが国は、昭和五十二年度以降、この大綱に従い、質的に充実向上した防衛力整備の具体的実施を進めておりますが、大綱の策定以来、特に最近わが国をめぐる国際情勢が厳しさを増しつつあることにもかんがみ、この大綱に定められている防衛力の水準を可及的速やかに達成することが必要であると考えております。
防衛庁は、昨年七月、昭和五十五年度から五十九年度までの五年間における陸海空各自衛隊の主要な事業についての見通しを得るため中期業務見積もりを作成いたしました。
この作成に当たりましては、「防衛計画の大綱」に示されている基幹部隊の早期整備、装備の質的向上を中心にした各種防衛機能の整備充実及び有効な防衛力の発揮に資するための後方支援、教育訓練態勢等の整備充実を特に重視いたしており、これが予定どおり達成されると、わが国の防衛力は相当に向上することが期待されますが、それでも「防衛計画の大綱」に示す防衛力の水準を達するにはなお努力を要する状況にあります。現在防衛庁といたしましては、こうしたことを踏まえつつ、この見積もりを早期に達成するよう見直し作業を実施しているところであります。
また、私は、防衛力の整備に当たっては、研究開発の推進についても十分配慮していかなければならないと考えております。
わが国の国土国情に適した質の高い装備は、みずからの手で研究開発し、国産することにより、初めて得られるものであり、また、これにより長期にわたる維持補給が安易となるのみならず、技術力の維持育成及び防衛生産基盤の確立を図ることもできると考えております。
世界の主要国は装備の研究開発に、相当の予算と人員を投入し、絶えず装備の高度化、近代化を図っているところであります。
防衛庁においても、民間技術力の活用を図りつつ研究開発を推進してきたところでありますが、今後とも、研究開発態勢のなお一層の充実に努力していかなければならないと考えている次第であります。
次に、第二の柱である日米安全保障体制の円滑かつ効果的な運用体制の整備について申し述べたいと思います。
わが国は、安全保障の基調を日米安全保障条約に置いておりますが、かつては、米国との間で軍事面を含めた協力態勢に関する研究、協議は行われてきておらず、たとえば、わが国に対して武力攻撃が発生した際に日米両国が協力してとるべき措置の内容、範囲等についても、具体的な協議が行われたことがないという状態でありました。
このような状態を改めるため、一昨年「日米防衛協力のための指針」がまとめられ、現在、この指針に示された基本的枠組みを踏まえ、共同作戦計画、情報交換に関する事項及び後方支援に関する事項等に係る各種研究を在日米軍当局との間で鋭意進めているところであります。
日米防衛協力のあり方についてこのような指針が作成され、この指針に基づいて所要の研究が行われることは、安保条約の円滑な運用の整備を図る上できわめて有益なことであり、同条約の有する抑止効果を高め、もってわが国の安全及び極東の平和と安全を一層効果的に維持することにつながるものと信じております。
次に、日米共同訓練についてでありますが、自衛隊においては、これまで海上及び航空自衛隊が、戦術技量の向上を目的として、米国との共同訓練を実施してきております。
昨年度は、特に海上自衛隊が初めてリムパックに参加し、これまでの対潜戦のほか、防空戦、水上打撃戦、電子戦を含む総合的な訓練を実施し、米海軍の最新の戦闘技術を習得する機会を得ましたが、このことは海上自衛隊の戦術技量の向上を図る上で大きな前進であったと考えております。
防衛庁といたしましては、今後とも、米国との間の共同訓練を着実に推進してまいる所存であります。
最後に、在日米軍の駐留経費や防衛施設の問題でありますが、在日米軍の駐留を真に実効のあるものとして維持することは、日米安全保障体制を防衛の基調とするわが国にとってきわめて重要なことであります。
政府は、このような立場から、在日米軍の駐留経費の負担については、地位協定の枠内においてできる限りの努力を行ってきておりますが、今後とも、この努力を続けてまいる所存であります。
また、防衛施設は、自衛隊の活動と在日米軍の駐留の基盤をなすものであり、その安定的使用は、わが国の防衛にとって必要不可欠なものであります。この防衛施設の安定的使用は、関係地方公共団体、住民等の理解と協力なしには行い得るものではありません。同時に、防衛施設の使用によってその周辺住民のみが特別の犠牲を強いられることがあってはならないのであります。
このため、政府は、防衛施設の設置、運用とその周辺地域の発展や関係住民の民生の安定との調和を図るため、防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する諸施策を講じてまいりましたが、さらにこの諸施策を充実して、防衛施設の安定的使用について関係者の一層の理解と協力を得たいと考えております。
以上、防衛政策に関する最近の諸問題について申し述べました。今後、坂田委員長初め委員各位におかれましても格段の御指導、御鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)