井坂正規の発言 (科学技術振興対策特別委員会)

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○井坂参考人 井坂でございます。
 私は、現在、日本原子力研究所労働組合の中央執行委員長であると同時に、JRR4という原子炉で運転及び保守の業務に携わっております。そういう立場から発言させていただきたいと思います。
 まず初めに、原研の労働組合が、これまで「むつ」の問題につきまして、いろいろと労働組合として検討してきまして、その検討してきたことがパンフレットあるいは報告書という形でまとめて報告されておりますので、それについて若干紹介させていただきたいというように思います。
 一九七四年の九月に「原子力船「むつ」放射線漏れ問題に関する報告書」というのを出しておりますが、これは原研労組として放射線漏れの問題につきまして検討した結果をまとめたものであります。この報告書によりますと、問題点は五つぐらいに要約してまとめてありまして、まず設計資料が非公開であるという点です。これは労働組合として、そういう原子力船の放射線漏れの問題につきまして、いろいろ調べようとしても、データが公開されていないということによって、調査自身も非常に困難を来す、そういうことでは研究にとっても非常に問題なのではないかということが指摘されているわけであります。二番目として、研究者の意見が非常に軽視されているという点が報告されております。これは設計の再評価というような声が、研究者の間から出されておりましたけれども、そういった声が実際には取り入れられなかったといった問題であります。それから次に、自主研究の放棄といった問題であります。これは日本の原子力開発が、発電炉からの導入技術によってずっと進められてきたという経過の中で、基礎研究の基盤がないのにいきなり船をつくったというようなところに大きな問題点があったのではないかというようなことであります。四番目は、事業団体制の問題であります。事業団体制として、事業団は出向者で占められておりまして、長期に一貫して責任を持ってやれるような体制にはなっていないということであります。こういう事業団体制では、本当の研究というのはできないのではないかということであります。次に、安全審査の問題であります。安全審査の問題につきましては、専門のスタッフがいないというような問題で、検査官がパートタイマーとしてやっておるといったような問題が報告されております。
 それから、この報告書に続きまして、一九七六年五月に原子力船「むつ」の遮蔽改修に関する共同研究についての調査報告書というのを出しております。これは昭和五十一年の三月ごろから、原船団、原研、船舶技研、三者共同研究ということで、私の働いている四号炉で共同研究が行われたということになっているわけでありますけれども、それについて調査検討した結果、これは共同研究というのは名ばかりで、原研の研究者の意見を反映させる余地はきわめて少なかったということが報告されております。
 さらに、その年の六月に、原子力船「むつ」問題を解明するということで、これがパンフレットになっておりますけれども、科学者会議と共同編集ということで「むつ」問題は、単なる技術的な問題ではなく、原子力開発のあり方の本質にかかわる重大な問題であるということで、各方面から分析した結果がいろいろまとめられております。この資料は各党の方にはお配りしておりますけれども、ここに若干持ってきておりますので、必要があればお配りしたいというふうに思います。
 続きまして、今回の法改正についての問題点、原研労組が特に問題だと思っている点について述べさせていただきたいと思います。
 それは、原子力船事業団の統合先がどうも五年以内に原研に統合されるというような予定になっている、そういう予定になっているにもかかわらず、原研の研究者、技術者、こういった人たちの意見を十分聞くという努力が現在なされていないという点であります。
 この点について労働組合では、何回か研究者の意見を聞く集会なども持っておりますけれども、その中で出てきた意見を紹介しますと、まず一つの問題として、原子力船「むつ」が研究材料として本当に活用価値があるのかどうかという点であります。労組の企画した討論会の中で、研究者の意見として出てきたものとしては、「むつ」の原子炉は、非常に古いタイプの炉であって、今後の舶用炉の開発の研究材料として役立たないのではないか、そういう意見が多かったわけであります。そして、むしろ「むつ」は邪魔になるのではないかといった意見も多く出ております。
 また、政府の法案では「むつ」を動かして、今後の資料にするデータをとるというようなことを言われておりますけれども、陸上での基礎研究、そういったものの積み上げ、そういうものがなしに船でデータをとると言っても、本当に有効なデータが果たしてとれるのであろうかということであります。どういうデータが必要なのかということは、基礎研究の段階からそういうことを予想して検討していかなければならないもので、ただやみくもにデータをとっても、データがたくさん集まったというだけで、それが役立たないということになるという可能性があるということであります。
 続きまして、最近、スリーマイル島の原発事故がありまして、安全審査を厳しくする必要があるということが各方面から言われているわけでありますけれども、「むつ」を遮蔽、改修して、安全上の問題で果たして今後本当に解決できる見通しがあるのかどうか、これはきわめて疑問だという点であります。
 さらに、研究開発をやる体制の問題として、たとえば原研で舶用炉の研究をやるというようなことをわれわれは否定するわけではありませんけれども、そういう舶用炉の研究をしてほしいというのであれば、事前に研究者、技術者の意見を十分聞いて、基礎からやり直す、どういう体制でやるのかということも、きちんと研究者の討議の中でつくっていくという点が必要だという点であります。
 さらに、人員と予算についても十分な保証が必要だということであります。
 それから、研究をやるに当たりましては、研究者の自由の問題、基本的人権、それから研究者の権利の保障といったような問題も必要であるということです。
 次に、原子力船事業団法が統廃合の問題として出されておりますけれども、今後、統廃合がどのように進むかという点であります。
 今度の法案が通れば、「むつ」の結果がどうあろうと、それに関係なく統廃合が進められるというふうに私たち思っているわけでありますけれども、安易な統廃合がきわめてまずい結果を招きかねないということをわれわれ心配するわけであります。
 かつて原研の大阪研究所が、高分子研究所より原研に統合されましたが、この大阪研究所の運営について、いまきわめて憂慮すべき状態になっているということが、大阪研の組合員から報告されております。この大阪研についてもどういう状況になっているか、ぜひ政府としても調査していただきたいというふうに思います。
 また最近、原研のJPDRの廃炉の方針が新聞で報道されております。この新聞発表を見ますと、現場のJPDRの上司の方々が説明されていることと大分違った内容が報道されているということがあります。これは一般の国民かあるいは現場の職員か、いずれにしろ、どちらかを欺くことになるのではないかというふうに思います。
 「むつ」については、一切そういった説明はなされていないというのが現在の状況であります。こういった状況では困るということであります。
 このようなもろもろの点を含めて今後どうすべきか、研究者、技術者の意見を十分に聞く必要があるという点であります。
 政府が「むつ」問題を本当に解決したい、そういうふうに思っているのであれば、現時点で「むつ」をどうするかというのは、白紙の状態にして、研究者、技術者の検討にゆだねるというそういう態度をとられたらいかがなものでしょうか。それだったら、原研の労働組合としても、そういった政府に協力してやっていく、そういう用意はあるということを言っておきたいと思います。そうでなくて、いまの法案を通した後で後始末だけをわれわれ原研の労働者に押しつけられるというようなことになるのであれば、われわれは組織を挙げてこれに反対せざるを得ないと言わざるを得ないのであります。
 最後に、原子力船が外国では軍事利用と表裏一体という中で開発が進められてきているという中で、わが国が平和利用を貫くということは、重要な問題でありますし、原子力三原則を厳格に守り、軍事利用など絶対にしないと、そういうことを約束していただきたい。そのために国会でぜひ非核三原則を法制化していただきたい、そういうことを申し上げまして発言を終わります。(拍手)

発言情報

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発言者: 井坂正規

speaker_id: 22738

日付: 1980-05-14

院: 衆議院

会議名: 科学技術振興対策特別委員会