中川幹雄の発言 (科学技術振興対策特別委員会)

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○中川参考人 御紹介いただきました中川参考人であります。
 私たち造船重機労連は、労働組合の立場から原子力の平和利用ということを積極的に打ち出しております。原子力の平和利用といいますと、発電、さらには、ここで議論されておりますところの原子力船になろうかと思います。
 なぜわれわれが原子力の平和利用を願うのか、それは端的に申し上げまして、ちょっと天井を見ていただきたいのですけれども、この天井には十二カ所の蛍光灯がついておりますが、この十二カ所の蛍光灯の中の二カ所はもうすでに原子力発電によって賄われている、それだけ原子力はわれわれの生活に結びついてきているというところが、われわれが関心を持たなければいけない大きな問題ではないかと考えているところであります。
 そこで、原子力船にかかわる問題について推進する背景について若干申し上げますと、先ほど来議論されておりますけれども、一つは、エネルギー対策だと思います。さらには、われわれ造船、海運の将来の産業政策としての大きな課題ではないか、さらに原子力船技術、それに波及して出てまいります技術開発、そういったことを通じながら、新しい分野の産業開発をしながら、そのことから雇用を拡大していただく、雇用を拡大させ、われわれの働く道を求めてもらう、そういう単に造船、海運のみならず、国民的な課題ではないかと考えているところであります。
 細かく申し上げますと、エネルギー問題は、世界各国共通の大きなテーマになっております。一週間前ですか、国際エネルギー機関IEAで、事務局レベルでの話を聞いておりますけれども、石油需要抑制のために、石油から脱皮して原子力を活用していこうではないかという提言がなされたようであります。とりわけ、われわれ日本という国は、ほとんどのエネルギーを輸入しておるわけであります。私が言うまでもありませんけれども、イラン問題を含めて供給不足、供給の不安定、さらには高価格といったことを考えますと、石油の有効活用、石油からの脱皮が、単に専門家だけではなくて、われわれ労働組合も率直に関心を持たなければならない問題ではないかと考えているところであります。特にわれわれ海運業においては、石油のおよそ一〇%を消費していると言われております。これをすべて原子力にということにはいかないと思いますけれども、少しでも原子力への移行ということを通じて国民に対するわれわれの責任を果たしていくことも一面必要ではないかと考えております。
 また、世界の産業分野は、発展途上国の工業化の進展に伴いまして、われわれの働く基幹産業というのは、工業国間の国際競争が非常に激化しているところであります。したがいまして、そのこととの関連も含めて、国際分業の傾向が一層高まっているわけでありますけれども、こういった中で、何とかわれわれ日本が世界的工業国としていままで以上にその役割りを果たしていこうとするならば、さらに国際競争力を維持していこうとするならば、いままでやってきた産業ではなくて新しい産業、それも技術集約的な産業あるいは付加価値の非常に高い分野への産業構造の転換がおのずから求められなければならないし、また求めていかなければならないと考えているわけであります。
 われわれ海運、造船は、世界の中でもリーダーシップを持っている国であります。その海運、造船業も、この五年間非常にめちゃめちゃな不況を経験してまいりました。何とか政治、さらには労使の努力によりまして立ち直りのきっかけをつかみつつありますけれども、発展途上国の追い上げという非常に厳しい状況の中に置かれております。これからわれわれ造船が目指す一つの方向は、技術集約度の高い、しかも付加価値の高い船といったところに、われわれの視点が生まれてこようかと思っております。
 さらには、船のみならず、海洋構造物への開発も、いま私どもはその代表的なものとしてここで取り上げられております原子力船なりセミサブ式浮体空港、今国会でいろいろ御議論いただいておりますけれども、こんなところもわれわれの目指す一つの方向だということを御理解いただきたいわけであります。
 さて、原子力船の状況でありますが、多くは申し上げませんけれども、すでにアメリカあるいは西ドイツ、ソ連においても、原子力船の時代に備えながら着実にその実績と経験をかなり積んできているようであります。米国ではサバンナ号を完成させながら、もうすでに運航する上での技術的な問題はないというところまで来ているようであります。西ドイツについても、オット・ハーン号を中心にしながら、もうすでに実験船としての機能を果たして、原子力船としての実験を完了しているように聞いております。ソ連についても全く同様であります。
 一方、わが国の造船ないし海運における状況から考えますと、その原子力船についての方向がまだまだ定まっていない、さらには、その力がないわけでありますけれども、そのことにおけるわが国の開発を急がなければならないのではないか、そういう立場に考えているところであります。原子力船「むつ」があのような状態の中に置かれておるわけでありますけれども、何と言ってもこの責任は、われわれも政府に大きく求めるところであります。
 原子力船の実用化は二十一世紀という提言が一つ行われておりますけれども、もっと早い時期にその状況が生まれてくるのではないか。つまり、石油の供給が非常に不安定である、非常に高いといったことを考えますと、この二十世紀後半には、そういった需要を通じながら建造に取りかかる国があらわれてくるのではないか。したがいまして、われわれは一日も早く安全確保を第一にしながら、信頼性なり経済性等のノーハウを確立するために、政府主導型で積極的に推進していただきたいと思うわけであります。
 そのためには、当面「むつ」が議論されておるわけでありますけれども、何と言っても早急に工事契約を結び、安全にしかも確実に修繕をし、完成した上で試験航海を行い、あらゆるデータを集めて実用化に向けての前進を図っていただきたい。特にここで言及しておきたい点は、われわれは船を修理する側でありますから、修理に際しては、十分な費用と時間と労働者の安全対策に万全を期してやっていただきたい。われわれ労働組合としても、みずからの問題として点検をし、監視体制を整えていくつもりでおりますけれども、そういったことについてぜひともお願いをしておきたいと思います。
 一方、先ほど来の議論の中にも、私の受け取り方が悪かったら御訂正いただきたいわけでありますけれども、原子力船の開発を否定するような動きがあるわけであります。しかし「むつ」は、国民の財産であるという立場に立ちながら、政府は積極的に運動を進めていくことが必要ではないか、すでに世界の趨勢は、原子力を中心にして動いてきている、こういったことに目をつぶることは果たして国民にとってプラスなのか、やはり国民の期待する方向に持っていくことが必要ではないか。御案内のとおり「むつ」の開発は、国会でその必要性が認められ、推進をされてきているわけであります。その費用は、私が言うまでもありませんが、すでに五十三年度末までに二百六十億強の税金が使われているわけであります。この船を廃船することは、二百六十億円をどぶに捨てることにつながる、こう言明しても間違いはないのではないか。政府は責任を持って修理をして完成させ、国民の期待にこたえることが必要ではないかということを私は申し上げておきたいわけであります。
 改めて次の点をひとつ政府に申し上げ、要請をしたいと思います。
 一つは、原子力基本法の三原則でありますところの自主、民主、公開の原則を徹底していただきたい。やはり自主技術を開発する、そのことによって国産技術を確立することが非常に必要ではないか。われわれ産業にはその技術力と労働力はあると断言するにやぶさかではございません。さらに原子力開発は、国民の合意が第一義であることは論をまちません。そのためには、原子力の正しい知識を積極的にPRする、さらには、企業は企業の持つ社会的責任というものを果たす、そういう状況の中で、安全にかかわる問題を初めとして、政府主導で積極的に国民に公開していく、消極的な公開ではなくて前向きな公開ということをぜひともお願いしたいところであります。
 二つ目には、わが国で蓄積されている発電用原子炉の技術、さらには造船技術を十分生かして、原子力船技術を確立する中で、関連する産業の開発、さらには新分野の産業拡大をして、われわれ労働者に新しい雇用をつくってほしい、このように考えるところであります。
 三つ目には、現在、原船団におる職員を見てみますと、非常に哀れな状態に置かれているようであります。やはりそこで働いている人たちの労働条件なり雇用の保障ということを積極的にやりながら、そこに働く人たちが一生懸命仕事ができる環境をつくってやることが、私たちは、その周りの人として必要ではないかと思います。
 四つ目に、先ほども若干出ておりましたけれども、この原子力船「むつ」というのは、政治がすべて先行しております。原子力というのは、われわれの目に見えないところにも技術的な大きな問題があろうかと思いますけれども、やはり技術者、科学優先の開発、そのためには優秀な人材が世の中にはいっぱいいるわけでございますから、政府の主導の中で、そういう学者諸士に積極的に原子力開発に向けての方向で問題提起をしていくことが必要ではないか、そういったことのために法の整備は当然必要だと思います。さらには十分な予算措置も必要だと思います。そのためには、国民、さらにわれわれ働く側は、拍手を贈って、そういったことに十分対応する考え方を持っております。
 最後に、安全対策について言及したいと思います。
 先ほど来私たちは、労働組合の立場からいろいろ申し上げましたけれども、安全を第一義として初めてその選択の対象になることは言うまでもないわけであります。原子炉の事故、さらには海難事故、あらゆることを想定しながら、そのときの安全対策を二重三重に、さらに四重に講じながら、政府の主導のもとに、国民の合意の得られる原子力船づくりを推進していただきたいことを申し上げておきたいと思います。
 われわれ労働組合としても、事前協議を通じながら積極的に参加し、協力していくことを申し上げまして、終わりたいと思います。
 ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 中川幹雄

speaker_id: 34116

日付: 1980-05-14

院: 衆議院

会議名: 科学技術振興対策特別委員会