戸叶武の発言 (外務委員会)

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○戸叶武君 キッシンジャーの回想録なんかを読んでみていても、やはり彼は、メッテルニヒが西ドイツ、ラインの沿岸から出て神聖ローマ帝国の伝統を守っていくが、オーストリアの国家の宰相になった、あのようなけんらんたる宰相としての役割りをやはり理想としているかと思われる節もありますが、中国でもやはり六国が個々に戦国時代に滅ぼされたときにおいても、秦の始皇帝の覇権主義をめぐって蘇秦、張儀のような人が合従連衡の策を提案してそうして戦国時代の一個の謀略屋として最高の地位を占めたが、しかし、蘇秦、張儀などによってどれだけあの秦の始皇帝の時代に中国の民衆が苦悩を重ね悩まされたかわからないんで、ああいう十八世紀においてならば通用したような権謀術策のけんらんたる外交よりも、やはり日露戦争に負けたときに軍部や何かの野心家が収拾がつかなくて、野にあったウイッテ伯を起用してポーツマス条約において小村寿太郎にひけをとらない外交展開をやらせたのを見ればわかるように、私はいまのアメリカにおいても、キッシンジャーでもシュレジンジャーでも相当な人であるに相違ないが、やはり自分たちの能力、学識、やらんかなの精神を過大評価して、そうして世界をやはり何かの実験場のように騒がせている一つの人物が輩出しているのは、やはり大統領なり一国のリーダーなりに、さっき、情報に対する選択なり操作の問題を大来さんは挙げておりますが、そのステーツマンシップ、リーダーシップというものがないから、こういう権謀術策主義の中に事が過たれていくんじゃないかということをしみじみと私たちはいま感じさせられています。
 いまの日本においても非常に危ないのは、やっぱりこの力の政治、力の外交、押しの政治、押しの外交、相手の立場に対する思いやりというもの、相手の言い分も聞こうという側隠の情がないところに——徳の最たるものは側隠の情ですが——非常に相互の不信感というものを不必要ほど私はまき散らしているんじゃないか。そういう意味ではもっと、いま外務大臣や何か世界を飛び歩いていますが、トインビーが言っているんじゃないけれども、やはり体で接触して、触れ合って、そうして相手をいたわる気持ち、相手の立場をも理解する気持ちが浸透しなければ、私は外交において一番大切な信義というものも確立しないのじゃないかと思っておるのであって、いまいろんな意味における外交献策はいろいろ出されておるけれども、そういうのは二流、三流の政治屋がやることであって、やっぱり一流の政治家というものはもっと大きく世界の中における日本のあり方、また、日本の一挙手一投足がどういうふうに影響して万波を生ずるかということまでの配慮がなされなければ、真の外交の成果というものは上がらないんじゃないかと思います。
 そういう意味において、今度のベネチア・サミットにおいては、石油の問題代替エネルギーの問題、通貨の問題、基準通貨の問題あるいは貿易に必要な通貨の安定の問題、いろいろ私は出てくると思いますが、特に欧州において重視しているのは水の問題です。環境整備の問題です。きれいな環境をつくるためにはきれいな水を流していかなけりゃならない。下水を整備していかなけりゃならない。また、本当にインディビデュアルな精神、自由をたっとぶ精神、人間を愛する精神を培うためには、やはり自分で責任を持つような個室を子供たちにも与えるような住宅政策が整備されていかなけりゃならない。そういうものが、生活環境における暮らしを健全にさせる方向づけが文明生活の要素として現実に要請され、具体化されているが、日本はECの官僚が皮肉ったように、ウサギの寝床みたいなところに住まっている。そこに何か一つの人間的な、都市生活においても潤いかない。モラルが欠けていく。人を殺すなんかは何とも思わなくなってしまうというような、一つの内部的な崩壊がいま出てきていると思うんですが、そういう点において、日本がいまのようなアセスメント法案を、いいかげんなものを出し、今度できるやつだって、財界の一喝を食らってよろめいてつくったんだから、できていいやら悪いやら、わけのわからないような不完全なものができるんじゃないかという心配もありますが、それは外交の問題とは離れているようですが、一事が万事、一番重要な自分たちの日常生活、そういうところに心が至っていないというところが、相手から、文明国、先進国として、サミットの会なんかで大口をたたく資格がないんじゃないかという軽べつ感で見られる危険性もあると思いますが、外務大臣並びに環境庁における責任ある人の答弁をいただきたい。ベネチア・サミットにおいては、意外にそういう面で、私は日本は、この国が先進国の資格ありやなしやというようなABCの問題で——このころはどうも大学の入学まで賄賂を取って片づける時代になっとるんだからあれですか——そういうところで恥をかくんじゃないかと思いますが、そういうところは万般、ベネチア・サミットへ、油の問題だけで夢中になっておると、これは逆な面から恥をかく点があることになるんですが、外務大臣並びに環境庁の責任ある人からその答弁を聞きたいと思います。

発言情報

speech_id: 109113968X00419800401_025

発言者: 戸叶武

speaker_id: 23841

日付: 1980-04-01

院: 参議院

会議名: 外務委員会