戸叶武の発言 (外務委員会)

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○戸叶武君 私は二つの事例で感心したんですが、フランスのストラスブールはラインの下流にありまして、ローマの植民地時代から二千年の古い歴史を持っております。人口はわずか三十三万とか四万程度だということですが、水の都として、古都として非常な理想的な町づくりをやろうというので、町の財政だけではやり切れないところを国からも大きな援助があって、そうしてきれいな水を流し、池を残し、緑地地帯を設け、水には水鳥が浮かび、緑地地帯には大木が保存される。町においては古いいろんな記録や何かを掘り下げて、古い建物を、新しい建物をつくる以上の金をかけて復活さしていくというような形で、一つのフランスの理想的な町づくりをやっております。やはり私の友人である数学者の吉田洋一君、吉田夏彦君の弟さん夫婦ですが、何かもうパリよりは、やはり若いときに留学したトスラスブールの生活というものが本当に楽しい、あそこへ行って泊ることにしていると言いますが、かつてアルザス・ロレーヌのドイツ、フランスが入り乱れて、血を流してきたいやな歴史が残っているところにおいてすら、そういう一つのドイツとフランスの融和の上に、自然と人間との調和というものをつくられてきております。日本は、京都でも奈良でもりっぱなところがありますが、東京の近くにも鎌倉なりあるいは利根川べりなり、そういうようなところに、霞ヶ浦でもそうですが、もっと私たちは自然と人間とが溶け合っているような美しい環境をやはり保存するために努力しておかなければならないんじゃないか。これはストラスブールで感じたことの一つであります。
 またもう一つは、やはりイギリスのケンブリッジを一番で出た——一番で出ようがびりで出ようがそのことは問題じゃないが、イギリスの社会主義の影響を受けたリー・クアンユーがシンガポールでやっている政策の重点は住宅政策です。徹底してあの貧民窟をなくさせて住居の改革をやった。りっぱな建物に入っていると、こっぱずかしくて淫売なんかできなくなる。あるいは麻薬なんかを吸うこともできなくなる。やっぱりここでは健全な働きがいのある仕事をしないと近所隣に対してもかっこうがつかないというような形で、居が人間の生活に新しいモラルをつくり上げていく。しかも水を大切にし、緑地を大切にし、かつてのジャングルを保存していくというようなことを一都市国家のモデルとしてりっぱなものをつくり上げてきたので、シンガポールには前から幾たびか行っておりますが、こんなに短かい間にこうも改革したのかなあと思ってびっくりしている。変な金を使わなくても、リー・クアンユーの党は、とにかくこの住居も、この公園も、この緑地帯もわれわれがつくったというだけの具体的事実を市民に知らせるだけで、野党なしのすべてが与党になってきてしまった。
 こういうふうに、具体的な事実をつくり上げるということがいまの新しいタイプの政治においては必要なのじゃないか、ということをつくづく私感じておりますので、そういう点を、やはり外務大臣にしても非常に国際的な感覚を持っている方ですから、あるいは環境庁なんかも百聞は一見にしかずで、びりぐそをたれ流しのインドネシアからやはりシンガポールの土地、一衣帯水の地に存在してこうも違うのかという感を深くするのですけれども、そういうちぐはぐな形の東南アジアにおいても、日本がもう少し現地の人々と協力していくならば、もっと理想郷の拡大というものができるのじゃないかと思うので、そういうことは、やはり今後外交においても、技術・経済協力においてもあるいは環境整備の問題でも私たちはしてもらいたいということをお願いする次第です。
 それからエジプトにおいても、世界一の観光地は、イタリアよりも、エジプトから昔のカルタゴのあたりじゃないかと思いますが、いまヨーロッパではやはり肉食は害がある、たばこは四十以上は余り吸っちゃいけないというような形で、肉よりも菜食が勧められているが、日本同様野菜は高くてなかなか買えない。果物を食べろと言う。果物はスペインや南仏やイタリアだけでなく、地中海のかなたのアフリカのかつてのカルタゴのあたりから、やはりずいぶんおいしい果物が送られてくるというふうに、食生活の変化も出てきているんですが、やはり環境整備ということは、生活の変化に対応しながら、やはりそれにふさわしい環境づくりということが重要でして、生活がきれいになると心もきれいになるので、外交の方も変なつまらない権謀術策をやるだけの外交じゃなく、明るい太陽のようなやっぱり光り輝く外交というものが精彩を放つときがくると思うんです。
 そういう意味において、外務省あたりも、外務大臣が来ているからあれですが、環境庁あたりは寄せ集めの感じがして、意欲はみんな持っているが、意欲を発散すべきチャンスに恵まれていないというような点がありますけれども、やはり今後は、一つは外交上の問題と、もう一つは自分たちの日常生活における原点としてのそこに婦人その他が参加して、市民闘争が直接政治につながるものとして活発になり、西ドイツのグリーンパーティーのような動きというものが新しい青年、婦人、インテリ、そういうような人からやはり起きてきて、いままでのような薄汚い政治と違ったフレッシュなものが出てくるんじゃないかと思いますが、ひとつ外務大臣あたりもいまの中東の問題の後は東南アジアの問題にもなり、また日本をひっくるめてのアジアにおける環境整備の問題にも問題が転換してくる。その一番発火点は、水の都ベネチアのサミットから起きるのではないかと思いますが、そういう点で、ベネチア・サミットへ行くまでの道、これは険しい道ですが、中東の若い経験を基礎とし、そしてアジアの現実をながめて、ヨーロッパのように先進国的な基盤の上に立っていないまちまちの面があるアジアにおいて、ただASEAN体制と言うけれども、スローガンだけかASEAN体制で、足が地に着かないようなASEAN体制では何にもならないと思うんですが、そこいらはやはりアジアにふさわしい連帯をつくり上げてもらいたいと思うんですが、外務大臣から、ベネチアへ行ってから考えてもらっても差し支えないんですが、水の都で心を澄まして、油だけに埋没しないで、われわれの水、われわれの生活、われわれの平和、そういうものを保つことが大切だという先取りをやはりいまから考えて臨んでもらいたいと思いますので、外務大臣から最後の質問としてこのことを承っておきたい。

発言情報

speech_id: 109113968X00419800401_028

発言者: 戸叶武

speaker_id: 23841

日付: 1980-04-01

院: 参議院

会議名: 外務委員会