大平正芳の発言 (本会議)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○国務大臣(大平正芳君) 私は、四月三十日から五月七日まで、大来外務大臣を伴い、米国、メキシコ及びカナダを訪問いたしました。さらに、カナダ訪問への途次、チトー大統領の計報に接したため、五月八日ユーゴスラビアに赴き同大統領の国葬に参列し、帰路九日にはシュミット首相と会談するため西独を訪問し、十一日帰国いたしました。
米国におきましては、五月一日、カーター大統領と会談したほか、米国議会指導者と懇談いたしました。申すまでもなく、日米間にはあらゆるチャンネルを通じて不断に緊密な連絡がありますが、現在の厳しい国際情勢のもとではさらに十分な意見交換を行い、重要な国際的問題に対処していくことが緊要であると考えます。
カーター大統領との会談の中心は、今日の情勢を反映して、イラン、アフガニスタン問題でありました。この二つの問題は、性質を異にしておりますが、いずれも基本的な国際秩序に対する重大な脅威であります。これらの問題に対して、両者は、国際社会全体が協調して対処することが肝要であるとの点で意見の一致を見ました。
米側からは、わが国のこれまでとってきたこの二つの問題に対する措置を高く評価するとの発言がありました。当方からは、今後とも、米国の友邦としてのみならず、国際社会の一員として、これらの問題の早期解決のため、EC諸国等とも協力しつつ、可能な限り努力を続けてまいる所存である旨明らかにいたしました。
私から、大統領に対し、イランの人質問題については、米国があくまでも忍耐強く自制し、その平和的解決を図るよう率直に要望したのに対し、大統領は、同感の意を表しつつ、そのためにも友邦諸国の一層の協力が必要であることを指摘しました。
両者は、難民問題が国際社会全体にとってなお深刻な問題であり、今後とも引き続き協力して対処する必要があるとの認識で一致しました。
また、朝鮮半島情勢及び中国との関係についても有益な意見交換を行いました。
わが国の防衛力の問題については、大統領より、これまでのわが国のこの面での努力を多とし、また、日本の国内的制約を理解しつつも、今後の一層の努力がアジアの平和と安定のために有益であるとの見解の表明がありました。私からは、わが国の国内的制約に対する米側の理解を多とするとともに、わが国としても最近の国際情勢に照らし、防衛力整備の必要性が高まっていることについてはよく認識しており、今後とも自主的に一層の努力を続ける決意である旨述べました。
また、私は、広い意味での安全保障確保のため、わが国がこれまでも経済技術援助を通じ、アジアの政治的、経済的安定に資すべく努力してきたこと、及びこれからも一層その努力を強めていく考えであることを説明いたしました。
また、ベニス・サミットの関連では、エネルギー問題等につき、日米間はもとより、国際的な協調を強めることが重要であるとの点で一致しました。
日米貿易経済関係については、双方が自由貿易を堅持することの重要性を再確認の上、米側より自動車及び政府調達問題について言及がありました。これらの問題につき、両者は、すでに日米関係当局の間で問題の所在に対する理解とその対応についての話し合いが相当に進んでおり、なるべく早く双方にとり納得のいく解決を図るべきことで意見の一致を見ました。
なお、今次訪米を機会に、私と大統領は、科学技術における研究開発のための協力に関する協定に署名いたしました。昨年署名されましたエネルギー分野での協力協定と相まちまして、ここに日米両国の科学技術分野全般について協力体制が整うことになりました。
私は、訪米中、上下両院議員とそれぞれ懇談の機会を持ち、当面の国際問題、日米二国間の経済問題等につき率直な意見の交換を行いましたが、これは国会レベルにおける相互理解を深めるに役立ったものと信じております。
私は、五月一日より四日までメキシコを公式訪問し、ロペス・ポルティーリョ大統領と二度にわたって会談いたしました。
私は、伝統的に友好的な日墨関係は、メキシコの政治的安定と経済的発展を通じて今後一層重要になるものと確信いたしております。
今度の大統領との会談では、かかる認識のもとに、政治、経済、文化等の幅広い分野での日墨間の協力を協議するとともに、現下の国際情勢について率直な意見交換を行いました。そして、今次訪墨の機会に、両国間の相互理解を一層促進するため、日墨友好基金に百万ドル相当の贈与を行うとの意図を表明いたしました。
また、メキシコが高い優先度を置いている鉄鋼プロジェクトに対し、わが国が誠実に協力していくため交渉をなるべく早く進めることとするとともに、その他の分野における協力方についても探究していく旨を明らかにいたしました。
さらに、私は、メキシコ原油の対日輸出決定とその開始についての大統領の英断に敬意を表するとともに、一九八二年までに一日当たり三十万バレルにまで増量することについてのわが方の希望と期待を表明いたしました。これに対し、大統領は、政治的決意と善意をもって配慮するとの意向を示されました。
今次訪問は、日墨関係を、長期的な観点に立ち、かつ幅広い基盤の上に、より一層緊密化していくための重要な契機となったものと考えております。
次いで、私は、五月四日から七日までカナダを公式訪問し、トルドー首相と二度にわたり会談したほか、カナダ連邦議会において日加関係の展望につき所見を述べる機会を持つことができました。
トルドー首相との会談におきましては、国際間及び二国間の主要な問題につき広範かつ率直な話し合いを行いました。
国際情勢については、イラン、アフガニスタン問題及びカンボジアにおける紛争等、国際不安が高まっていることを憂慮し、国際平和の確保のため日加両国があらゆる可能な努力を払ってまいることで意見の一致を見ました。
二国間問題のうち、経済問題につきましては、両者は、年々発展を記録しつつある日加貿易経済関係を一層拡大し、かつ多角化していくとの決意を新たにいたしました。このため、民間レベルでの接触と相まって、政府間におきましても、日加経済協力合同委員会等の場を活用し、十分な話し合いを続けていくことに意見の一致を見ました。
また、民間において具体化しつつある二国間の石炭その他エネルギー開発の交渉を歓迎し、それを促進することについての話し合いも有益でありました。
さらに、日加外務大臣間の定期協議を開始すること等により、日加関係をより広い基盤の上に緊密化を図る必要性について完全な意見の一致を見ました。
私のカナダ訪問は、近年特に貿易経済関係を中心に急速な発展を遂げてきた日加関係がさらに政治、文化、科学等の分野で多面かつ立体的な発展を遂げていくための重要な契機になったものと考えております。
メキシコからカナダに向かう機中において私はチトー・ユーゴスラビア大統領の訃報に接しました。よって、私は、八日、ベルグラードに赴き、故大統領の国葬に参列いたしました。
故大統領は、ユーゴスラビアの偉大な指導者であったのみならず、九十カ国を超える非同盟運動の創始者として世界の平和と安定の維持に大きく貢献してこられた二十世紀最後の偉大でありました。
国葬は、八日、歴史的な指導者の逝去を悼むにふさわしく、百カ国以上の諸国首脳の参列を得て盛大かつ厳粛にとり行われました。私は、これら諸国首脳とともに故チトー大統領の御冥福を祈るとともに、ユーゴスラビアの新指導者及び国民に対し深甚なる哀悼の意を表しました。
また、私は、ジュラノビッチ・ユーゴスラビア首相と会談し、同首相から、今後とも故チトー大統領の遺志を継いで独立・非同盟路線を堅持するとともに、日本との友好関係を引き続き深めていきたいとの決意を伺い、意を強くした次第であります。
さらに、私は、今回のベルグラード訪問の機会に、華国鋒中国総理と会談したほか、ガンジー・インド首相、ラーマン・バングラデシュ大統領等と意見を交換し、その他数多くの指導者と接触し、あいさつを交わす機会を得ました。
最後に、私は、かねてよりのシュミット首相の招待により、八日から十日まで西独を訪問し、同首相を初め、同政府指導者と一連の会談を行いました。
これら会談においては、私から米国、メキシコ、カナダ三国歴訪について説明を行ったほか、イラン、アフガニスタン問題を初めとする現下の国際政治問題、ベニス・サミットを中心とする国際経済問題、その他両国が共通の関心を有する諸問題につき忌憚のない意見交換を行いました。
私は、今次一連の会談を通じ、日独両国間のみならず、日欧間における対話と協調の関係をさらに強めることができたものと確信しております。
最後に、私は、今回の各国訪問を通じ、いまや国際社会が容易ならぬ政治的、経済的困難に直面しており、いかなる国もその影響から免れ得ないこと、また、その困難を緩和ないし克服するための共同の努力に対しわが国の積極的な寄与が各国から強く期待されていることを痛感いたしました。同時に、わが国は、国際社会の名誉あるかつ有力なる一員として、友邦各国と協力しつつ、広く世界の安定と繁栄に一層建設的な貢献を行わねばならないとの決意を新たにいたした次第であります。
右御報告申し上げます。(拍手)