大平正芳の発言 (本会議)
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○国務大臣(大平正芳君) 小野さんにお答えいたします。
イランにおける人質救出作戦にアメリカは失敗したが、それについて率直に反省を求めたかという御質問でございました。
人質の拘束が長期にわたっておりまして、これまで種々の努力にかかわりませず依然として解放の目途が得られていない状況でありますことは、小野さんも御承知のとおりでございます。
〔議長退席、副議長着席〕
目下アメリカ国内におきましてはこの五十人の同胞の人質の安危を気遣っておるときの私の訪米でございました。したがって、私は、かねてから、この人質の救出作戦というのはイランの国民あるいはイランの国に対する敵対行動ではなくて、人質救出という限定された行動であるので軍事行動ではないという理解を示しておったわけでございますので、今度の首脳会談におきましては、五十人の米国人の人質の安全と、今回の救出行動で犠牲となられた方々に対する弔意を表明するだけにとどめておいた次第でございます。いずれにいたしましても、しかしながら、人質問題は、米国があくまでも忍耐強く自制して、交渉による平和的解決を目指していただかなければなりませんので、率直に大統領にこれを要望いたしました。先ほどの報告にも申し上げましたとおり、大統領は同感の意を示しながら友邦諸国の一層の協力を求められた経緯は、御報告申し上げたとおりでございます。
次に、オリンピックに対して政府は介入すべきではないと思うがどうかという御質問でございました。
政府は、これまで、モスクワ・オリンピック大会が友好と平和裏に安心して参加できる雰囲気と状態の中で開催されることを願ってまいりましたが、開催国であるソ連のアフガニスタンへの軍事介入は、国際社会から大きな非難を浴びておるにかかわりませず依然として継続いたしておりまして、むしろ長期化の様相さえ示しておるような状態でございまするので、今日のような現況のもとではモスクワ・オリンピック大会に選手団を派遣することは望ましくないという考えを政府は持っておるわけでございます。オリンピック大会に参加するかしないかはもとよりJOC日本オリンピック委員会が決めることであることは言うまでもございませんが、私はJOCが政府の意向をおくみ取りいただいて適切に対処されることを期待いたしております。
それから米国の世界戦略に同調するためいかなる犠牲を国民に強要するつもりかという意味の御質問でございました。
この御質問に答える前に、イラン問題、アフガン問題について、先ほども申し上げましたように、これは国際社会の秩序に対する基本的な脅威であって、国際社会の一員として日本もこれに対しまして平和的解決を要求する権利があるわけでございます。したがって、そういう立場に立ちまして国際社会の一員として当然なすべきことをなさなければならない、その場合に多少の犠牲を伴うことがあってもこれは当然のことではないかという心構えを私はかねてから申し上げておるわけでございます。しかしながら、わが国の具体的なそれでは個々の政策をどのようにしてまいるかということにつきましては、個々のケースに応じましてわが国自体の判断によりまして決定してまいっていくことは当然でございまして、国民の受ける犠牲を最小限度にとどめながら対処してまいるのは政府の当然の責任であると考えております。
経済援助に対する方針を問われたわけでございますが、紛争周辺国への援助は問題ではないかという意味の小野さんの御意見でございました。
わが国の経済協力は、一義的には開発途上国の希望を受けてその国々の経済社会開発に貢献することによりまして住民の福祉の増進を図るという見地から実施されておりますことは、御案内のとおりでございます。そういう方針に基づきまして、わが国がいかなる国に対していかなる援助をどの程度行うかにつきましては、もちろん外交上、政治経済上種々の理由があることもこれまた事実でございます。たとえば、人道的な見地からインドシナ難民援助を実施しておるとか、資源に乏しいわが国は石油を中心とする資源保有国に対しまして経済協力を通ずる友好関係の増進を図ることによって資源の安定供給を確保することもあります。さらに、広い意味での安全保障の見地から、現下の国際情勢を踏まえつつ、わが国独自の立場で援助の強化を図ることもあることは御理解いただけることと思うのでございまして、私どもはそういう方針から外れておるつもりはございません。
それからカーター大統領の防衛力増強要請は内政干渉ではないかという懸念を表明されたわけでございます。
安保条約に基づきましてわが国の防衛についてそれなりに責任を持っておるアメリカが、わが国に対しまして防衛上の希望、期待を表明することは、私はあってしかるべきことと思っておるのでございます。しかし、これを内政干渉であると私は考えておりません。日本の防衛政策は日本が自主的に決めることでございましてアメリカが決めることではないわけでございまして、これを内政干渉のように受け取ること自体が問題ではないかと思っております。
それから中期業務見積もりの取り扱いについての御質問がございました。
中期業務見積もりというのは、防衛庁が予算を年々要求する場合における参考資料としてつくったものでございまして、これを政府の計画として認知しようとするつもりはございません。私どもといたしましては、防衛力の整備を政府として決めるのは、国防会議、閣議を経まして毎年毎年の予算案という形で答えてまいるつもりでございまして、五十六年度におきましてもそのような形で責任ある答えを出したいと考えております。
それからメキシコ外交についてのお尋ねでございました。
私は、日墨間は伝統的に友好関係にございましたけれども、一層これから白墨関係は相互依存関係が深まっていくものと期待をいたしておるわけでございます。わが国の対墨経済協力につきましては誠意をもって交渉に入る約束をいたしたわけでございます。
わが国に対するメキシコの原油の供給でございますが、先般、江崎、園田両君が参りまして十万バレル・パー・デーの確約を取りつけていただきまして、ちょうど五月四日に最初の日本向けの船が積み込みを始めたと聞いたわけでございまして、私は、メキシコ政府の配慮に謝意を表しますとともに、八二年までには何とか三十万バレル・パー・デーの供給を期待し、希望いたしたわけでございます。これに対しまして、先方は、つい二カ月前に八〇年から八一年にかけての増産計画を立てたばかりである、その計画による配分を決めたばかりでございますので、いま新たに日本政府の要請に応ずるわけにはまいらないということでございますが、日本のせっかくの要請は大統領みずからの政治的決断と善意をもってこれに対応してまいる所存であるということが表明されたわけでございますので、私は今日の事態におきましてはこれ以上の成果を期待することはむずかしいのではなかろうかと判断いたしておるわけでございます。
最後に、日本は軍事国家に踏み込むのではないかという御懸念を表明されたわけでございますけれども、われわれといたしましては、先ほども藤田さんにお答え申し上げましたとおり、防衛につきましては「防衛計画の大綱」というものを踏まえまして年々歳々この予算化を図っていくように努めたいと考えておりまするし、安保条約も地位協定も日米双方からこれを変えるというつもりは全然ないわけでございまして、日本が軍事国家に足を踏み出すというような御懸念は一切お持ちいただかないようにお願いしたいと思います。