板橋郁夫の発言 (文教委員会)
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○参考人(板橋郁夫君) 板橋でございます。
私は、通信教育を実施しております各大学が形成しております私立大学通信教育協会というのがございまして、その代表ということで本席に参ったわけであります。したがいまして、これから申し上げますことは、私どもが日ごろ協会内で話をしております放送大学関連の問題についてここで若干の私見を申し上げたい、こういうことで準備をしてまいったわけであります。それが多少なりとも本委員会の審議の御参考になれば幸いかと存じます。
まず、この放送大学関連の問題は、すでに御関係の皆様方御案内のごとく長い間問題になっておりまして、さきに放送教育開発センターの設置に関連する八十四国会、これは申すまでもなく五十三年であったわけですが、この五月の九日に当参議院の文教委員会で私どもの児玉三夫参考人が関連のお話を申し上げてあるわけであります。それからまた、本日の特殊法人放送大学学園法案に関連しまして、すでに五十三年十一月八日衆議院の文教委員会で私どもの協会の理事長であります高梨公之参考人がこの法案について御意見を申し上げてあるわけであります。したがいまして、それらはすでに当委員会等でも十分御理解を賜っておるものということで重ねては申し上げません。重複を避けるということでなるべくそれをのけまして、その他について若干の意見を申し述べてみたいと思うわけであります。もっとも重複をする部分はやはり重要な問題点であるということで出てまいるわけでありますから、その点も事前に御了承を賜りたいと思うわけであります。
問題は、この特殊法人放送大学学園、それからもう一つはその特殊法人が設置するところの放送大学というように二つに分かれていくのでありますから、当面はこの大学の方は俎上には上っておらないように思うわけでありますけれども、しかし設置する特殊法人は当然その設置するところの大学を予定しているわけでありますから、この際あわせて意見を申し述べたいと考えるわけであります。
そうして、この二つを見てまいりますと、法人の方では非常に役員の数が限られておりまして、先ほど新井参考人の方からも触れられておりましたですけれども、任命制になっておる。この任命制は国立の大学とかあるいは特殊法人というような場合には制度上はやむを得ない、そうなるだろうと思うわけでありますけれども、放送大学が全体として持っておりますキャラクターといいましょうか、大学の学問を公開するというたてまえからは、やはり各方面のエキスパートを役員の中に集約するという意味では、もう少し数を多くしてこの理事会も公開しているという姿勢がほしいわけであります。しばしば引用されますオープンユニバーシティーの理事会はかなり数が多くて、当初は三十七名でスタートし、それで後にスタッフの中からも理事を入れ、学生の中からも理事を入れ、現在はたしか五十人くらいの理事会の構成になっているように思うのであります。そういうところから見ますと、能率よくやるというようにも考えられるわけでありますけれども、中枢の人数が少なければどうしても考え方も限定されますので、その点はもう少しお考えおきいただいたらいかがかというように見ております。
それから大学の運営については、先ほど教授会がどうなっているかというお話がありましたから、これは私の方では触れずにおきます。
評議会で全体をやっていくというようなことでありますが、しかし放送大学の番組をつくるというような場合にはどうしても教授会の中で検討もされ、それからその中からコースチームのいわばチーフになる方が出てくるはずでありますから、その点はやはり教育機関としての放送大学を考えました場合には、教授会のメンバーが会議体を持つ。したがって、その学則の中に教授会の規定がある方がすっきりするのではないか、将来の運営についてスムーズにいくのではないかというように考えておるわけであります。
それから、一般に言われておるわけでありますけれども、放送大学を設置する意義とでも申しましょうか、仄聞するところによりますと、その理由と申しましょうか、一つには今後、昭和六十五年くらいになりますと大学入学志願者というものがふえるという見込みが一方にある。他方、無限に通学課程の大学をつくるというわけにはいかない、それはそうだろうと思うわけであります。だからその際、放送大学をつくっておけば一般国民の大学教育に対する要望というものがそこで消化されるはずだという議論があります。果たしてそうか、一部にはその役割りを確かに果たすことができましょうけれども、一体通学課程、普通の——普通の大学と言ってよろしいでしょうか、通信に対して私どもは通学課程と言っているわけですが、通学課程を志望する者が入れないから、それでは放送大学があるのでということにはにわかにはならない。すなわち進学希望の対象がまるで違うわけですね。でありますから、その点はどうも将来増大する大学入学志願者に対して放送大学がその役割りを果たすという点については、いささか議論が当を得ていないのではないかと思うわけであります。
それからもう一つは、通信教育に類似する放送大学というものをいきなりつくることの一つの積極意欲を大いに評価すると言えばそうでありますけれども、他方では一つの何といいましょうか、かなり冒険性を伴っているのではないかとも思うわけです。むしろ長い間の積み上げの上に放送大学をやっていくんなら、もっとスムーズに受け入れられる部分が多いのではないかと思うのでありますけれども、そういう意味では国立大学が幾つかの学校でまず通信教育の課程を置いてそれでやってみる、その実績の上に放送大学というものを考えてみるべきであったのではないかとも思うわけでありますけれども、しかし、これは現在の時点では時機におくれた考え方かもしれません。
なぜ、それでは通信教育の課程といきなり比較するのかという御疑問もあろうかと思いますけれども、放送大学が一般に受けている印象は、二百四十課目あるわけでありますけれども、ほとんどの課目を放送でやられるという印象があるからだと思います。しかし、実際問題として完成年度に至って、二百四十課目全部をテレビなりラジオなりでやるということはまず不可能であるはずです。そういたしますと、勢い放送でやる課目とそれから通信のプリント教材でやる課目に分けざるを得ないんですね。
その比率はどうかということになりますと、これはまたオープンユニバーシティーの例で恐縮でありますけれども、イギリスの制度でも六五%は実は通信教育に類するプリント印刷教材でやっておる。一五%が放送であるというようになっているわけです。しかも、一五%の比重の課目を放送するんだけれども、実際にそれでは在学生が視聴する率はどのくらいかということを聞いてみますと、公式の印刷物では一〇%とか一一%と出ておりますが、担当者にじかに聞いてみますとまあ五%ぐらいだろうと言っているわけです。恐らくそれは実情に近い数字だと思うわけです。そういう先例が現にあるわけでありますから、放送大学も、テレビ、ラジオで全部やるんだという印象、そういう前提で余り御議論をされますと、将来かなり食い違いが出てくるのではないかと思います。もちろんいままでの私どもが伺っております状況でも全部放送でやるとは文部省の御担当の方も言っておりません。通信の方式でやるということを私ども承知しております。でありますけれども、そういう話と一般受けのたとえば放送大学に期待する、お茶の間で大学卒をというようなキャッチフレーズは果たしてこの教育の場から申し上げるならばいかがか、実情に遠いことはなはだ開きがあるので、そういうキャッチフレーズはいかがかと思うわけであります。
それから第三に、この放送大学を設置するに関連して、従来私どもの経験では通信の制度は併設制といいましょうか、基礎学部がないと通信の課程はつくれないというのが設置基準になっております。でありますから、たとえば法学系の通信教育をやる場合には、その大学は法学部の通学課程を持っていないといけないんです。そういうことで、私ども各大学はいろんな意味での基礎学部の拘束、基礎学部の枠の中で通信教育をやってきたわけでありますけれども、放送大学はその点を外して、言うところの独立性の通信教育、放送大学ということになるわけですね。
それで、一体現行法ではできるのかという質問をしましたところが、いや、それは法律を変えるんだからということでありますから、ああそれはそうかということで私どもも納得をするわけでありますけれども、しかし現在は——現在はというのは、いままでは基礎学部がないと通信教育を置けなかったという意味で、いろんな拘束を伴いながら、三十年来私ども私立大学では通信教育をやってきたという実情はこの際御理解をいただきたいと思うわけであります。
そうして、私立大学でやっております通信教育の中で一番困難であり、将来も恐らくこの問題は通信教育制度発展のためにネックになるだろうと思うのはスクーリングの点でございます。このスクーリングは、わかりやすく申しますと、大学四年間在学のうちの一年分は学校に出なければならないんです。でありますから、通信教育というのは学校に行かなくて大学を卒業できるんだという一般の理解があるわけですけれども、実情はそうでない。そういうような通信教育基準になっているんです。そうでありますから、この点についても、放送大学ではスクーリングをもっと別な形に持っていっているわけであります。そういう点については、私どもが影響を受けるという部分の非常に重大な点でもあるので、今後これらの点については、私どもの立場でも十分スクーリングを含めた通信教育の体質強化ということをやっていこうというように考えておるわけであります。
なお、幾つかの点で申し上げたいのがあるわけでありますが、予定の時間を過ぎておりますので、また御質問に関連して触れていきたいと思っております。
以上でございます。