浜田卓二郎の発言 (本会議)

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○浜田卓二郎君 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりましたわが党提出の公職選挙法の一部を改正する法律案に対して、賛成の討論を行うものであります。(拍手)
 現行の参議院議員選挙制度が昭和二十二年新憲法のもとに創設されまして以来、すでに三十五年を経過いたしました。この間、参議院全国区制度につきましては、その発足の当初からさまざまな問題点が論議されてまいりました。選挙制度審議会におきましても、第五次以来第七次に至るまで、比例代表制案を初めとして幾つかの改正意見が出されてまいりました。わが党においては、このような過去の経緯を踏まえ、ここ十年近く党内において綿密に研究討議を重ねてまいった結果、ここにこの改正案を提出するに至ったものであります。
 私は、以下、現行全国区制についてその問題点を指摘するとともに、この法律案に対して各党から提起された諸問題並びにわが党がこの改正案を提出するに至った理由及びその内容について、順次明らかにしてまいりたいと思います。
 現行全国区制度は、国全体という広大な地域を選挙区とし、また八千二百万人の有権者が百人前後の候補者の中から一人を選び出すという世界にも類を見ない選挙制度であります。有権者にとりましては候補者の選択が著しく困難であると同時に、多くの候補者にとりましても莫大な費用と過酷な労力が必要とされているのが実情であります。候補者一人が選挙に費やす費用は数億円近くにも達すると言われており、また、過酷な労力を消耗する結果、選挙の後で何人かの方々が不幸にも病に倒れるという事態が毎回のように生じております。この結果、全国区制のもとで当選できる人はごく限られた一部の人ということになり、全国区制が開かれた選挙制度とはとうてい言いがたい実情にあると考えざるを得ません。
 以上の問題点とあわせて、参議院の機能と役割りという面からも考えなければなりません。
 参議院は、本来、第一院たる衆議院に対して、抑制と均衡の機能を果たす機関であります。したがって、専門的知識に基づく理の政治を行うことによって、衆議院に助言と警告を与える役割りを期待されているのであります。
 このような参議院の本来の機能を十二分に発揮せしめるためには、その構成員たる議員として、より有為の人材を得やすいようにしなければなりません。いわゆる出たい人より出したい人を良識の府たる参議院により多く送り込む工夫をしなければならないと考えるのであります。
 加えて、今日、政党が議会制民主主義において不可欠の要素となっており、また国民の政治的意思形成の媒体として重要な機能を果たしている現状を勘案いたしますとき、現在の全国区制度を個人本位の選挙制度から政党本位の選挙制度に改め、それにより、ただいま指摘してまいりました多くの問題点を解消しようとする今回の改正案は、まことに時宜を得たものと考えるのであります。
 次に、この法律案に対して各党から提起されてまいりました諸問題について意見を申し述べます。
 第一に、本案は多数政党に有利な選挙制度を実現するための党利党略ではないかという点であります。
 今回わが党が提案いたしております拘束名簿式比例代表制の特色としては、第一に、個人中心の選挙から政党中心の選挙に変えるため、候補者個人が莫大な資金を必要とする事態が避けられること、第二に、各政党の得票数に応じて議席が配分されるため、いわゆる死票が減少し、有権者の民意を正確に議席に反映させることができること、第三に、出たい人より出したい人、すなわち良識の府にふさわしいすぐれた人材を選び出しやすくなること、第四に、有権者による候補者の選択の困難性が解消されること、そして第五に、政党が政策本位で選挙を戦うため、政党のより一層の健全な発達が促されることなどの点にあると言われております。
 比例代表制は、本来、いかなる政党にもその得票数に応じて公正に議席を配分する制度であり、多数政党や特定政党にとって有利になるような制度ではありません。
 第二に、参議院に政党本位の選挙制度を導入することは、その政党化を促進し、参議院本来の趣旨に反するという批判であります。
 確かに、参議院全国区は、発足当初、政党の枠を離れた有識者登用の意味があったことは事実であります。しかし、当時は戦後間もない、政党が未成熟の時代であったのであります。その後、政党の成熟とともに、議会制民主主義の担い手として政党の果たす役割りと責任はますます増大しつつあるのであり、その現実を無視しては、今日の議会政治は語り得ないのであります。参議院の機能を十二分に発揮せしめるための方途とその政党化とは、決して相入れざるものではないはずであり、むしろそのためにこそ、政党本位の選挙によって、より有為な人材を確保することが必要であると考えるのであります。
 第三に、本改正案をめぐる憲法問題についてであります。衆参両院を通じて多くの憲法問題が論じられてまいりましたが、ここでは個人の立候補制限についてのみ触れたいと思います。
 すなわち、個人立候補の制限は、国民の重要な基本的人権の一つである選挙権、被選挙権を制限し、憲法第十四条、同第二十一条に違反するのではないかという点についてであります。
 選挙権、被選挙権が基本的人権の一つである参政権の重要な中身であることは言うまでもありませんが、それは決して自然権のように超法規的、超国家的なものではありません。国家が憲法の委任に基づいて選挙権、被選挙権の具体的内容を法律でどのように定めるかは立法政策上の問題であり、憲法第四十四条は、この点について「兩議院の議員及びその選擧人の資格は、法律でこれを定める。」と明文で規定いたしております。
 また、憲法第十四条の法のもとの平等に反しないかという点につきましては、個々の権利も、より大きな公益上の目的、すなわち、いわゆる公共の福祉のためにこれに制約を加えることは、その目的が合理的であると認められる限りにおいては許容されるものと考えます。個人本位の選挙制度を政党本位の選挙に改めることは、さきにも述べましたとおり、大きな公益上の利益を有しているのであり、その結果として個人の権利を制約するとしてもそれはやむを得ないものと考えるのであります。
 さらに、憲法第二十一条の結社の自由に反しないかという点についてでありますが、今回の改正案は、結社しなければ立候補できないということにすぎず、結社しないでいる自由は依然として保障されているのであります。(発言する者あり)
 最後に、今回の改正案について、衆参両院の公選法特別委員会において行われた審議の中で、改正案の具体的中身に関して交わされた主要な論議について言及しておきたいと思います。
 第一に、名簿届け出政党の要件についてでありますが、本法案における名簿届け出政党要件のうち、第一の所属の国会議員を五人以上有することは、政治資金規正法上の政党に関する規定から、また第二の参議院議員通常選挙において所属の候補者を十人以上有することは、公職選挙法上の確認団体に関する規定をそれぞれ参考として定めたものであり、さらに第三の直近の国政選挙において全有効投票の四%以上の得票を得たものであることとする要件は、すでに述べました第一及び第二の要件との均衡を勘案して定めたものであります。
 以上三つの要件に対して、その内容が少数政党に厳し過ぎるものであるとし、それぞれの条件を緩和すべきであるという意見が出されましたが、さきに述べましたとおり、公職選挙法や政治資金規正法上の規定との整合性を保つため、また政党本位の選挙である以上、政党らしい政党を選ぶという意味からも、わが党案における条件が適切であると考えるものであります。
 第二に、供託金の額は現行の二倍に引き上げるとともに、名簿登載者の数に応じた額を供託することといたしておりますが、これに対して、供託金は政党を単位として一律に課すべきであるという意見や、引き上げ幅を抑えるべきだとする意見が出されましたが、名簿登載者の過剰登載や売名行為を防止するためには、登載者の数に応じて課すことが妥当であり、また供託金の額については、前回の改正時からの貨幣価値の変動を勘案いたしますと、この程度の引き上げはやむを得ないものと考えるものであります。
 第三に、投票方式を自書式でなく記号式にせよという意見がありましたが、何分にも全く新しい制度であり、どの程度の数の政党が名簿を届け出るか予想のつかない現段階においては、これを記号式にすることはにわかには賛同しがたいものと考えます。
 第四に、当選人の決定方式について、ドント式を他の方式に改めよという意見がありましたが、できる限り一般国民にわかりやすい方式を採用するということからこの方式を採用したものであると考えます。
 第五に、本改正案では、比例代表選挙における政党の選挙運動としては、新聞広告、ラジオ、テレビの政見放送及び選挙公報による選挙運動のみを認めておりますが、これに対して、運動のできる方法と範囲をもっと拡大すべきであるという意見がありました。しかし、お金のかからない選挙を実現するため、選挙運動の方法と範囲をこの程度に限定することが適当と考えるものであります。
 以上のほか、本法案については、さまざまな観点から真剣なる審議が行われてまいりました。特に、本案の審議過程におきましては、この法案の重要性にかんがみ、慎重審議に徹するという基本方針をとるとともに、参議院における審議に見られなかった審議として、まず第一に地方公聴会を開催し、次には参考人として参議院全国区議員の御出席を願って貴重な体験的意見を聴取いたしましたほか、内閣総理大臣に対する質疑を行うなど、多角的な審議を行ってきた次第であります。
 以上のような慎重審議された本改正案は、過去における公職選挙法の改正の歴史の中でもきわめて画期的なものであり、その国政に資するところは大なるものがあると思います。
 議会政治の意義が改めて問われている今日、この改正によって参議院に新たなる活力が生まれ、真に国民の厳粛な信託にこたえ得る機能と権威が確立することを確信してやまないものであります。
 各党間における意見の相違は相違として、わが国の政党政治の着実なる前進のために、ともに努力してまいらなければならないと考えるのであります。
 以上をもちまして、私の本案に対する賛成討論を終わります。(拍手)

発言情報

speech_id: 109605254X03319820818_035

発言者: 浜田卓二郎

speaker_id: 11564

日付: 1982-08-18

院: 衆議院

会議名: 本会議