渡辺美智雄の発言 (大蔵委員会)
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○国務大臣(渡辺美智雄君) 今後における財政金融政策につきましては、先般の財政演説において申し述べたところでありますが、本委員会において重ねて所信の一端を申し述べ、委員各位の御理解と御協力をお願いする次第であります。
現在、欧米先進国の多くは、依然として二けたのインフレとそれに近い大量の失業に苦しむ等経済面できわめて困難な事態に直面しております。特に、失業の増大は治安の悪化を招き、国民生活を不安に陥れています。
一方、わが国の経済は、良好な実績を示しております。
すなわち、物価上昇率は四%程度と先進諸国の中で最も鎮静化し、失業率も二%台と最低となっております。
景気については、内需の回復の足取りは緩慢でありますが、今後は、次第に改善し、明るさが増してくるものと期待されます。
国際収支については、経常収支は昨年四月以降黒字傾向にあります。これを背景として、欧米諸国から貿易不均衡の是正を求める声も高まってきております。
このような内外経済情勢のもとにおいて、私は、特に次の点を基本的課題として今後の財政金融政策の運営に当たってまいりたいと考えております。
まず第一は、引き続き物価の安定を基本とし、国内民間需要を中心とした景気の着実な回復を促進することであります。
物価の安定は、国民生活安定の基本であり、今後とも、財政金融政策を通じ、物価の安定に努力してまいる所存であります。
景気については、その着実な回復を図るとの見地から、昭和五十七年度予算においては、厳しい財政事情のもとではありますが、住宅建設の促進を図るため、住宅金融公庫の融資枠の拡大、税制上の措置等の施策を講じております。公共投資につきましても、財源の効率的配分、地方単独事業の拡充、民間資金の活用等により事業量の確保に努めております。
また、金融政策においては、一昨年八月以降一連の金融緩和措置を講じてまいりました。昨年十二月には、第四次の公定歩合引き下げ措置がとられ、これを受けて預貯金金利を含む金利水準全般の引き下げを図ったところであります。
今後の金融政策の運営に当たりましては、物価、景気、海外経済情勢等経済の動向を総合的に判断して、引き続き適切かつ機動的に対処してまいりたいと存じます。
第二は、調和ある対外経済関係を促進し、世界経済の発展に貢献していくことであります。
世界経済の活力の源泉は、自由貿易にあり、わが国としても積極的にこれを推進することにより、世界経済の調和ある発展に貢献していかねばなりません。
かかる観点から、政府は、先般、対外経済対策を決定したところでありますが、特に関税につきましては、わが国市場の開放に資するとの見地からいち早く対応し、その引き下げを図ることを決定いたしました。すなわち、東京ラウンドの合意にのっとった関税の段階的引き下げ措置を来年度に予定した分に加え、さらに、一律に例外なく二年分繰り上げて実施する等の前向きの改正措置を講ずることといたしております。
また、原油代金の産油国への偏在が、世界経済をゆがめていることにかんがみ、世界貿易を円滑ならしめるため、オイルマネーの還流について、わが国は引き続き積極的にその役割りを果たしていくことが必要であります。
さらに、開発途上国の経済発展のための自助努力を支援することは、これらの国々の国民福祉の向上と民生の安定に寄与するのみならず、世界経済全体の均衡のとれた成長と安定を確保するためにも重要であります。このような観点から、経済協力については、着実に拡充を図ることとし、あわせて、その効率的実施に十分配意し、政府開発援助の中期目標の達成に引き続き努めることといたします。
世界経済の円滑な発展のためには、国際通貨の安定は欠くことのできないものであります。円相場は、わが国経済の良好な基礎的諸条件を反映して、基調としては、円高方向に動くことが期待されております。今後、関係諸国とも密接な連絡を保ちつつ、円相場の安定に努めていきたいと考えております。
次に、最も緊急かつ最大の課題であります財政再建について申し述べます。
わが国の公債発行残高は、昭和五十六年度末で八十三兆円、五十七年度末で九十三兆円程度の巨額に上り、その利払い等に要する経費も五十七年度予算においては、一般会計歳出の一六%程度を占めるに至りました。これは公共事業関係費をも上回り、防衛関係費の三倍程度にも相当いたします。
将来を展望いたしますと、わが国が世界有数の長寿国となったため、年金や医療の経費は、ますます増加が見込まれる一方、天災や、エネルギー問題等今後の経済情勢の変化にも財政は対応していかねばなりません。しかし、遺憾ながら現状のままでは、財政にはこのような課題を解決するために新たな施策を講ずる余力はありません。
また、公債発行残高の累増は、金利水準の引き下げの阻害要因になる等、金融政策の円滑な運営に大きな影響を及ぼすに至っております。さらに、大量の公債発行を続けることは、民間資金を圧迫し、経済にインフレ要因をもたらすことにもなりかねません。ことに、インフレは現に世界にその例を見るがごとく、景気を後退させ、失業の増大を招き、国民生活の安定そのものを損なうものであります。
したがって、できるだけ早く公債依存の体質から脱却する必要があります。
政府は、このような考え方に基づき、鋭意、公債発行の減額に努力しているところであります。昭和五十七年度予算に関しては、何よりも行財政の徹底した合理化、効率化によって財政再建を進めるべきであるとの世論がつとに高まっていることにかんがみ、行財政改革による歳出削減を中心として、予算編成を行うこととし、公債発行額を前年度当初予算より一兆八千三百億円減額いたしました。
財政再建の道のりは、険しく、また困難なものでありますが、すでに財政再建に向かって軌道の上を着実に歩んでおります。私は、昭和五十九年度特例公債脱却を目指し、引き続き財政の再建に全力を傾注する決意であります。
大蔵委員各位の御理解と御協力を切にお願いする次第であります。
昭和五十七年度予算につきましては、ただいま申し述べました考え方に立ち、経費の徹底した節減合理化によりその規模を厳しく抑制したところであります。特に、国債費及び地方交付税交付金以外の一般歳出を極力圧縮いたしました。
また、補助金等については、昨年八月に決定された「行財政改革に関する当面の基本方針」に定めるところにより、整理合理化を行いました。
さらに、国家公務員の定員については、新たに策定された第六次定員削減計画に基づいて、削減を着実に実施する一方、増員は、極力抑制いたしました。この結果、行政機関等職員については、一千四百三十四人に上る大幅な縮減を図ったのであります。
これらの結果、一般会計予算の規模は、前年度当初予算に比べて六・二%増の四十九兆六千八百八億円となっております。また、このうち、一般歳出の規模は、前年度当初予算に対し一・八%増の三十二兆六千二百億円であります。一般会計予算及び一般歳出の伸び率が、このように低い水準にとどまったのは、それぞれ昭和三十一年度及び昭和三十年度以来実に二十数年ぶりのことであります。
歳入面におきましては、経済情勢の変化等により、昭和五十七年度の自然増収が、ゼロシーリング決定の際参考とした「財政の中期展望」における自然増収より約七千億円不足することが見込まれましたので、経済の実態に即し、この不足分を補うため次の措置を講じました。
まず、税外収入において極力増収を図ることとしました。
次に、なお残る不足分を税制面の見直しにより措置することといたしました。すなわち、税負担の公平確保の重要性等に顧み、租税特別措置については、期限の到来するものを中心に整理合理化を図るとともに、交際費課税を強化することとしております。また、法人税については、貸し倒れ引当金の法定繰入率の引き下げ及び延納制度における延納割合の縮減等を図ることとしております。
なお、税の執行につきましては、国民の信頼と協力を得て、今後とも一層適正・公平な税務行政を実現するよう努力してまいる所存であります。
公債につきましては、さきに申し述べましたように、その発行予定額を前年度当初予算より一兆八千三百億円減額し、十兆四千四百億円といたしました。この減額の内訳は、特例公債一兆五千六百十億円、建設公債二千六百九十億円となっております。これにより、特例公債の発行予定額は三兆九千二百四十億円となり、建設公債の発行予定額は六兆五千百六十億円となります。
財政投融資計画につきましては、厳しい原資事情に顧み、民間資金の活用に努めるとともに、対象機関の事業内容、融資対象等を見直すことにより、規模の抑制を図り、政策的な必要性に即した重点的、効率的な資金配分となるよう努めたところであります。
この結果、昭和五十七年度の財政投融資計画の規模は、二十兆二千八百八十八億円となり、前年度当初計画に比べて四・一%の増加となっております。
以上、財政金融政策に関する私の所信の一端を申し述べました。
本国会に提出し御審議をお願いすることを予定しております大蔵省関係の法律案は、昭和五十六年度補正予算に関連するもの一件、昭和五十七年度予算に関連するもの七件、合計八件でありますが、このうち七件につきましては、本委員会において御審議をお願いすることになると存じます。それぞれの内容につきましては、逐次、御説明することとなりますが、何とぞよろしく御審議のほどお願いする次第でございます。