村田敬次郎の発言 (本会議)
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○村田敬次郎君 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となっております昭和五十八年度予算三案について、政府原案に賛成し、日本社会党・護憲共同提出の編成替えを求める動議に反対の討論を行います。(拍手)
御承知のとおり、今日多くの先進諸国は、二度にわたる石油危機を契機とする不況、戦後最高の失業率等に悩んでおりますが、その中で、わが国経済は、これらの国々との対比におきましては、著しく良好な回復過程をたどることができました。このことは、国民各位の英知、比類ない御努力と、わが国経済の柔軟な適応力のあらわれであり、また同時に、政府・自民党が一体となって、適時適切に機動的な経済運営に努めてきたことによるものであると考えます。
ただ、このように経済を下支えし、国民生活の安定を確保するために、財政は大きな負担を強いられてきました。経済が停滞し、税収の大きな伸びが期待できない中で、国債を財源として積極的な施策を展開してきた結果、財政事情が極度に悪化したのであります。そこで、昭和五十四年以来、五十九年度特例公債依存体質からの脱却を旗印に、財政再建を進めてきたわけであります。
これを歳出について見ますと、一般歳出の伸び率は、五十年代前半には前年度比平均一八%程度であったものが、五十五年度予算では五・一%となり、五十七年度一・八%、五十八年度予算ではマイナスとなり、歳出抑制の成果をおさめてきたわけであります。
第二次石油ショックが世界経済に与えた後遺症が予想を超えて大きなものであったため、五十九年度までに特例公債依存から脱却するという目標の達成は遺憾ながら困難となりましたが、これまで努力を重ねてきたことにより、歳出のぜい肉落としは相当進んでおり、次になされるべきことは、財政の構造にまで立ち入った改革であります。
政府は、この国会に、「今後の財政改革に当たっての基本的考え方」を提出しており、その中で歳出歳入構造の合理化、適正化に努めることを基本として、新たな時代に適合した財政とするようその改革を図り、もって特例公債依存体質からの脱却に努めるとの方針を示されていますが、時宜を得た適切なものと考えます。
このような財政改革の見地から昭和五十八年度予算を眺めてみますと、本予算は、歳出の構造的見直しに着手し、財政改革に向けて新たな一歩をしるした予算であると言うことができると考えます。私は、政府が中曽根総理の決断のもと、与党と一体となり、わが国の将来の発展のためにこのような予算の編成に踏み切ったことの歴史的な意義を強調したいのであります。
以下、私は本予算に賛成する理由を申し述べます。
第一は、行財政の徹底した合理化、効率化を進めるべきであるとの世論にこたえていることであります。すなわち、昭和五十八年度予算においては、財政の改革を強力に推進するため、臨時行政調査会の第一次及び第三次答申において指摘された歳出及び歳入構造の合理化につながる諸方策について、制度、施策の抜本的見直しを行い、極力その実現を図っております。
このような構造面にまで踏み込んだ歳出の見直し努力もあって、昭和五十八年度予算では、さきにも触れましたように、昭和三十年度以来二十八年ぶりに一般歳出を前年度比マイナスにするという、近年にない厳しい歳出の抑制が可能となったわけであります。
第二は、公債発行額の圧縮に最大限の努力を払っていることであります。昭和五十八年度については、極度に厳しい財源事情に加え、昭和五十六年度決算不足補てん繰り戻しという二兆二千五百二十五億円にも上る臨時的な支出があったにもかかわらず、増税に頼ることなく公債発行予定額を昭和五十七年度の補正後に比し一兆円減額し、財政の対応力回復への姿勢を明らかにしております。
第三は、全体として歳出規模を抑制し、いわゆる痛みをともに分かち合う予算となっている中で、中長期的観点から充実を図るべき施策や真に恵まれない人々に対する施策などについては、できる限りの配慮がなされていることであります。
まず、経済協力の問題であります。わが国が国際社会の中で力強い役割りを果たすための経済協力につきましては、昭和五十八年度予算でも七%の増加と、主要経費の中で最大の増加率となっております。
また、防衛費についても、合理化、効率化を進めながら、現下の国際環境に照らし、防衛力の着実な整備を図るために必要最小限の経費を計上しております。
次に、エネルギー対策につきましては、最近、石油情勢に改善の兆しが見られますが、資源の乏しいわが国においては、石油にかわるエネルギーの開発、原油の備蓄を着実に進めていく必要があり、適切な配慮がなされています。
さらに、社会保障については、諸施策の長期的有効性を確保するため、施策の合理化、適正化に努めておりますが、生活扶助基準の引き上げ、社会福祉施設入所者の生活費の引き上げ、在宅福祉対策の拡充等、特に配慮を必要とする分野については、きめ細かい財源配分がなされております。
また、文教及び科学技術の振興費については、予算規模を圧縮しつつも、真にわが国教育水準の維持向上に必要な施策を確保することといたしております。
中小企業の対策につきましても、その近代化、構造改善を促進するため、心のこもった措置が講じられております。
景気を浮揚し国民生活を向上するための重要な要因となる公共事業については、厳しい財政事情のもとで前年度同額を確保しているとともに、住宅対策としての住宅金融公庫の貸付限度額の引き上げ、住宅取得控除の拡充、農林関係、下水道など、国民生活に直接関連する事業には周到な措置がなされております。
なお、この予算案審議の中で、国民から強い要望のある所得減税について、自民党と各野党との間で連日真剣な討議と精力的な努力が積み上げられ、その結果、自民党から、財政事情困難な時期ではあるが、国民世論の動向にこたえ、景気浮揚に役立つ相当規模の減税を実施するための財源を確保し、所得税及び住民税の減税についての法律案を昭和五十八年中に国会に提出するとの確約をしたところであります。今後これに沿って減税財源を真剣に模索し、減税の実現が図られることを願ってやみません。
さて、今日、国民の間には現在の景気動向を憂える声も聞かれることはよく承知しておりますが、さきに申し上げたように、国際経済の中でのわが国の相対的力強さに加え、陰きわまりて陽生ずと申しますか、原油価格の値下がりなど、わが国経済を取り巻く環境の好転も期待されます。われわれはみずからの力に自信を持って道を進むべきであります。
同時に、政府におかれても、今後のわが国経済を安定的な成長路線に定着させていくためのみずからの役割りを、さらに厳しく問い直されるように要望いたします。
政府の役割りは、資源配分、所得と富の再分配、経済の安定化の三つであると言われますが、これについて元ハーバード大学教授で、現在米大統領経済諮問委員会委員長のマーチン・フェルドシュタインは、自由な市場を信頼するとともに、財政赤字によりクラウディングアウトが生じないよう財政の均衡に努めることが経済財政運営の基本であるとの見解を表明しております。まさに時宜に適した考え方であると考えます。
すなわち、今日までのわが国経済の発展が、基本的には国民各位の御努力により民間経済が自由で活力ある活動を展開してきた結果であることから見ましても、経済の安定的な発展を実現していくためには、自由な若々しい活力を維持していくことが何よりも必要であります。そのためには行政のあり方を全体として見直し、国として行うべき行財政分野について、極力合理化、効率化を図っていくことが必要であります。
内外の諸情勢は依然として厳しいものがありますが、私ども自由民主党は、政府と一体となって困難な諸問題に正面から立ち向かい、その一つ一つを着実に解決することにより、来るべき高齢化社会に備え、国民生活の一層の繁栄、安定と、わが国経済社会の二十一世紀への発展を実現し、国民各位の御期待にこたえるべく全力を尽くしてまいる決意であります。
以上、政府への要望も含めて申し述べました理由によりまして、私は、昭和五十八年度予算三案の政府原案に全面的に賛成いたします。
一方、日本社会党・護憲共同提出の編成替えを求める動議につきましては、各般の考え方に大きな隔たりがあり、とうてい容認できるものではありませんので、断固反対の意を表明いたします。
以上をもちまして、私の討論を終わります。(拍手)