阿曽沼廣郷の発言 (安全保障特別委員会)
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○参考人(阿曽沼廣郷君) 御紹介にあずかりました阿曽沼でございます。
私の持論をひとつ中心に申し上げたいと思いますが、私はシーレーンの防衛という前に、シーレーンの安全保障という概念でこの問題を追求していくべきだと考えておるものであります。
まず、シーレーン防衛を考える場合に、世界の戦略環境というものを概括化をしてみる必要がある。現在の国際政治の政治学的、地政学的背景は、単に海と陸の対立、そんな単純な見方は当を得なくなっておりますけれども、しかし振り返ってみると、単純ではありますけれども、やっぱり陸と海の対立というのが基本的な問題として存在意義は持っておる。大陸国家群と海洋国家群の対立、こういう構図が地球儀を眺めてみた場合に現在の国際情勢を見る一つの物差しではないか、こういうふうに考えるわけであります。これは現在の米ソの双極体系を説明するのに役立つと思います。 このような考え方は、歴史、地理及び政治の接点、交会点を見出す概括化の作業でありますけれども、とかく作戦、戦術あるいは予算の問題に論点を集中するよりも、これを指導する国家の戦略という問題についてもっと考える必要がある。シーレーンの防衛についてもそうである、こういうふうに私は考えるわけです。一国の対外政策や国家戦略を微視的な知識や顕微鏡的な解釈で論ずるべきではない、シーレーンの防衛問題の解決も世界史的あるいは全球的な視野が必要だ、これが私が申し上げる一つの最初のポイントであります。
日本は海洋国家、ザ・シーパワーでありまして、決して大陸国家、ザ・ランドパワーでもない。またアウタルキーの経済の自給自足の島国でもない、こういうところが日本の国家戦略を決めるかぎである。したがって、わが国の立場に立てば、私は、海洋政治、オーシャノ・ポリティックスというものが政治の理念として確立されなきゃいかぬ、こういうふうに考えます。また、細かいことは後からも御質問があろうかと思いますが、日本とアメリカの同盟関係、NATOの同盟関係、これは言ってみれば海洋同盟システム、こういうとらえ方を私はしたいと思います。海洋国家日本の今日的な課題は、まさに海洋の自由で安全な利用を図る、こういうことが国家戦略の基本になければいけない、こういうふうに考えるわけです。日本の富と力は大部分を海から手に入れております。この海の安全な利用、それから日本の国民生活、国家経済を成り立たせております資源の循環、資源のサーキュレーションの中で致命的に大事な海上輸送、これは平時にあっては必要な資源の輸入であり、戦時にあっては軍隊の輸送等を含む海上の利用であろうと思います。
それから、シーレーンの防衛の必要条件と十分条件というものを十分に考えにゃいかぬ。この必要条件は何かといいますと、私は、要約してみまして、情報と知恵である。十分条件は、シーレーンの防衛にかかわりますハードウエア、船であり飛行機であり予算である。そういう問題が十分条件であろう、こういうふうに考えるわけですが、この情報は何を追求するか。一つだけ申し上げますと、これは海洋の安全な利用を脅かすリスクを考量する、カリキュレートする、そして分析をする、こういう作業を一つ代表的な問題として挙げることができると思います。
なお、もう一つは、海洋を安全に利用するための客体といいますか、船舶の情報、これも十分に把握していなければいけない。もちろん私は、シーレーンの安全保障ないし防衛に決め手はないと思います。決め手はないけれども、よい手はある。よい手というのは、将棋や碁で言いますように、その手を打ったがために後の情勢がきわめて有利に展開する手である。よい手は、私は、情報システムを十分に整備することだと、そうして海洋の安全を脅かすリスク、これは、平時においては経済的なリスクあるいは政治的なリスク、非常に多様でありますけれども、有事に限って申し上げますと、海洋の安全を脅かすものとして航空機があり、水上艦艇があり、潜水艦がある、そのうち最も厄介なものは潜水艦ということになろうかと思います。そうして、このリスクは、平時から未知のまま放置しておかないで、未知のリスクから既知のリスクにする努力を平時からやる必要がある。海上自衛隊がP3Cを持ち、水上艦艇を整備するのも、未知のリスクから既知のリスクに転換させるためのツールであるという認識もできると思います。このほかに、先ほど申し上げました守られるべき客体の船舶の情報をどうやって把握するかというシステム、これは、幸いなことに海上保安庁でも海洋情報システムというものをこれから整備されるそうでありますけれども、これが速やかに整備をされて、いわゆるトータルな情報システムを整備するという方向にこれから向かうべきであろう、こういうふうに思います。私は、情報システムはシーレーンの防衛を望ましい方向に持っていく基盤であると、こういうふうに考えます。
それから、知恵の方で言いますと、これはやはり、為政者が、日本が海洋国家であり、海の安全な利用についてこれをバイタルな問題として考えるという、いわゆるシーマインドフルネス、海洋に対する知覚が十分であるということがこの知恵であろうかと思います。いま、日本にシーレーンの防衛に関しましても、決断のシステムというのがない。これは後から質問があれば申し上げますが、いずれにしましても、安全保障について決断のシステムがないということはわれわれ非常に危惧するところであります。安全保障全般に現在の日本は非常に矛盾に富んでおります。矛盾の中でいろんなことを決断してやっておるわけでしょうけれども、この矛盾の根源は何にあるかということも十分考える必要がある。日本のシーレーンの安全にとって責任を負う行政機関というのは多々ございます。ただし、これの行政の成果が国としてどういうふうに統合されるかという面については非常にまだ疑義があるところであります。
たとえば、ことし答申が出ました海運の危機管理に関する作業にいたしましても、軍事的な脅威が顕在化して挑戦を受けるような事態というものについては、これは防衛政策、その他の問題、政策は中心になるので検討から外れるということになっておりまして、いずれはこの問題を国としてシーレーンの安全保障について総合的に考えるような施策が講ぜられなきゃいけないと思います。
時間も参りましたのでこの程度にさしていただきます。