海原治の発言 (安全保障特別委員会)
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○参考人(海原治君) まず第一に申し上げたいことは、シーレーンの安全の確保とか海上交通の安全の確保という言葉がこの数年来いろいろと言われておりますが、一体、シーレーンの安全の確保とは何か、これが具体的にはっきりいたしておりません。それぞれの人々がそれぞれの立場でこのシーレーンの安全の確保ないしは海上交通の安全の確保という言葉の内容を自分なりに決めて、そうして議論が行われております。そこで、非常に混乱した状態が現に日本の国内にございます。
これをまず大きく分けますと、一つは、このシーレーンの安全の確保というのは、日本の防衛努力、それを象徴的にあらわすものとして、いわゆる政治的なスローガンとして使われている。それはそれなりの意味がございましょう。そういうものとして扱うのか。それとも、第二の、現実の具体的な事態に臨んで、何をどうすることによってどういう効果が現実的に具体的に入手できるか、そういう具体的な問題としての把握、これに分かれます。私は、もと防衛庁におりました。防衛庁におりましたときから、このシーレーンの安全の確保という言葉は明確にその内容を決めてかからないと幾ら議論をしても結論は出ないということを言い続けております。
もう一つの問題点は、防衛白書等にも出ておりますが、一体、それは平時の問題なのか、それともいわゆる有事——有事と言えば、これは、戦時ないしは紛争時、すなわち交戦状態を前提とする言葉だと私は思いますが、その場合の言葉か、これがわからぬわけであります。
これにつきまして整理しますと、この前の戦争が終わりまして以来、旧帝国海軍軍人さんのつくっておられますところの団体で平時における海上交通の安全の確保、これが絶対に必要だということを公に提唱しております。この考え方では、戦時ではございません。平時であります。平時になぜそういうことが必要か。それは、共産圏の国、「某国」と書いてありますが、この某国が日本を屈服させようと思った場合には、国籍不明の潜水艦を仕立てる。この国籍不明の潜水艦が日本に向かう貨物船、輸送船、こういうものを撃沈する。これによって日本は生きていけなくなるから屈服せざるを得ない。これが某国のとる日本を屈服させるための絶対的な方法である。そこで、海上自衛隊はこの国籍不明の潜水艦の発見と探知と掃討をやるべきである、これが旧帝国海軍軍人を中心とした主張であります。すなわち、これは平時の主張であります。しかし、こういう考え方は世界じゅうで日本しかございません。日本以外の国ではいわゆるシーレーン的なものの安全の確保はいわゆる有事の場合であります。この平時におけるいまの国籍不明の潜水艦、これを退治しろという思想に似た思想が現職の海上自衛隊の幹部学校長からも表明されたことがあります。それは、日本に対して武力攻撃をかける某国は、この四つの島に対しての武力攻撃の前に必ず海上交通破壊戦をやる、それが戦略の常道である。そこで、海上自衛隊としてはこの戦略の常道である日本に対しての武力攻撃の前の海上交通破壊戦に備えるべきである、これが海上自衛隊の幹部学校長がその在職中に発表した論文であります。以上は平時におけるシーレーンの安全の確保です。
これにつきまして、私は、そういうことはあり得ない事態であるということで従来言っておりますが、この平時か、戦時か、有事かを明確にしろということを言っておりましたら、現在の中曽根内閣になりましてこの点が明確になりました。すなわち、総理大臣の中曽根さん、さらには防衛庁の政府委員、これが今回の国会で言っておりますことは、有事の場合、航路帯を設けるならばということでいわゆるシーレーンの安全の確保を説明しております。私はこの政府の説明が理解できないのです。航路帯を設けるならばという仮定法で政府が説明をする。一体その航路帯とは何か。設けるのか設けないのか。いつそれは設けるんだ。それは船と飛行機とどういうものから成り立つのか。こういう具体的な質疑応答は、私の知る限り、今度の国会における論戦として新聞には報道されておりません。私はこれが非常におかしいと思うんです。もう一度申しますが、シーレーンの安全の確保とは、何を、いつ、どうすることによって、どういう効果が期待できるのか、この論議の対象を明確にすることが必要だと思います。
これにつきましてひとつ、最近NHKが出しました「シーレーン・海の防衛線」という本がございます。ここではこれを読んでもよろしいんですかな、使っても。