目黒今朝次郎の発言 (社会労働委員会)

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○目黒今朝次郎君 ただいま議題となりました林業労働法案につきまして、日本社会党を代表して、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 わが国の森林は、国土面積の七〇%に当たる約二千五百万ヘクタールを占めておりますが、このうち人工林の面積は約一千万ヘクタールに及び、その蓄積は十億立方メートルと全森林蓄積の四割を超えるまでに達しております。
 この豊かな森林は、木材などを生産し、建設資材、家具、紙などの形で国民の生活必需物資の供給を担う等の経済的機能を果たしているほか、国土保全、水資源の涵養、大気の浄化、自然環境保全、保健休養等の多面的な公益的機能など、はかり知れない重要な役割りを果たしております。ことに、国土開発に伴う山地災害の多発化、水需要の増大さらには都市への人口集中などによる生活環境の悪化等から、森林の公益的機能の充実が一層重要となっております。
 しかしながら、森林、林業を取り巻く状況は近年非常に厳しく、危機的状態を強めております。すなわち、木材需要の七〇%に及ぶ外材輸入と住宅建設の大幅な落ち込み等による国産材需要の不振、山村の過疎化の進行による林業労働者の減少等により、森林資源の保全、管理機能は著しく低下しております。このため、造林の育成に不可欠の除伐、間伐の立ちおくれ、脆弱な森林の増加、さらには山地崩壊、水害などの国土災害の危険性の増大、水資源の不足といった状況を現出させておるのであります。
 二十一世紀へ向けて、人類が避けて通れない課題は資源と環境だと言われます。わが国においては、まさに林業こそが森林の育成を通してこの二つの課題にこたえ得るのであります。そして、この森林の育成に不可欠なのは、その生産の担い手である林業労働者の安定的維持と確保であります。
 ところで、林業労働者、とりわけ民間林業労働者に置かれている労働の実態はきわめて憂慮すべきものとなっております。すなわち、民間林業労働者は、季節的、短期的雇用が多いため不安定であり、健康保険、厚生年金等被用者保険の適用はごく少数であり、賃金は他産業に比べて低い上に、出来高払い制のため労働強化を強いられ、振動病の罹病者は毎年増加するという状況にあります。また、労働基準法さえ適用されないなど、まさに劣悪過酷な労働条件のもとで重筋労働に従事しております。
 このような民間林業労働者の労働環境のもとでは、新規学卒者や若年労働者の就労は皆無に等しく、労働力の高齢化・女子化が進んでおり、このまま推移するならば、わが国の森林、林業の危機的状況は一層深刻なものとなることは明白であります。
 世界的な森林の減少による環境変化が懸念されている中で、今後わが国が森林の管理を適正に実行し、国産材の供給能力を飛躍的に向上させ、国産材時代への展望を切り開いていくためには、何といっても、その生産労働力の確保対策が重要であります。
 しかるに、現行労働関係の諸法律やその運用のみでは、林業労働の特質からくる諸問題は解決し得ないところであります。したがって、民間林業労働者の雇用安定、労働条件の改善、安全衛生、福祉面での施策の整備充実等のためには、林業労働の特質を踏まえた新たな立法が必要であります。
 これが、日本社会党が林業労働法案を提案する理由であります。
 次に、法律案の主なる内容について御説明申し上げます。
 第一に、この法律は、林業労働者の雇用の安定、労働条件の改善、安全衛生の確保、福祉の増進等に関する施策を講ずることにより林業労働者の地位の向上を図るとともに、山村地域の振興に寄与することを目的としております。
 第二は、林業労働計画の策定であります。すなわち、労働大臣は、本法の目的を達成するための基本となるべき事項について、五年ごとに全国林業労働計画を策定し、都道府県知事は、全国林業労働計画に即して、毎年市町村長が策定した市町村林業労働計画に基づいて、都道府県林業労働計画を策定することとしております。市町村長が策定する市町村林業労働計画では、林業の事業の量、林業労働者の雇用の安定及び福祉の増進に関し必要な事項について規定し、山村経済の発展のための林業の振興及び林業労働者の雇用の開発について配慮することとしております。
 第三に、専業労働者とは常用労働者以外の林業労働者で、一年間に通常九十日以上雇用されるものをいい、兼業労働者とは常用労働者及び専業労働者以外の林業労働者で、時期を定めて一年間に通常三十日以上雇用されるものをいうこととしておりますが、公共職業安定所長は、林業労働者について、専業労働者及び兼業労働者別に林業労働者登録簿に登録するとともに、林業事業体の届け出に基づき、林業事業体登録簿を作成することとしております。また、林業事業体は、公共職業安定所の紹介を受けて雇い入れた者でなければ、林業労働者として林業の業務に使用してはならないものとしております。
 第四に、林業労働者に対して、一年間のうち最低限の雇用が確保されなかった場合及び本年度雇用実績が前年度雇用実績を下回った場合においては、雇用の安定を図るため雇用保障手当を支給することとしております。雇用保障手当の費用については、一定規模以上の森林所有者、林業事業体及び登録林業労働者から納付金を徴収するとともに、国が費用の三分の一を補助することとしております。
 第五に、振動機械を使用する登録林業労働者等について、定期及び特殊の健康診断を義務づけるとともに、振動障害を予防するため、出来高払い制の禁止、振動機械の操作時間の規制等を行うこととしております。また、振動障害者の福祉増進のため、国は療養施設等の設置、軽快者の雇用安定のための助成、援助、職業転換希望者に対する職業訓練等について、それぞれ適切な措置を講ずるよう努めなければならないこととしております。
 その他、政府は、労働保険及び社会保険制度について検討を加え、その結果に基づき、速やかに必要な措置を講ずるものとし、また、労働基準法の労働時間、休憩及び休日に関する規定を林業労働者にも適用するために、労働基準法の一部改正を行うことのほか、監督、罰則等について所要の規定を設けることとしております。
 以上が、この法律案の提案理由及び内容の概要であります。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決くださるようお願い申し上げます。

発言情報

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発言者: 目黒今朝次郎

speaker_id: 25445

日付: 1983-05-12

院: 参議院

会議名: 社会労働委員会