中村俊夫の発言 (商工委員会、外務委員会、農林水産委員会、科学技術振興対策特別委員会連合審査会)

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○参考人(中村俊夫君) ただいま御紹介をいただきました日本自動車工業会の専務理事をいたしております中村俊夫でございます。
 諸先生には、平素から自動車産業に関しまして、高いお立場から格別の御指導と御高配をいただいておりまして、厚く御礼を申し上げます。
 本日は、国際経済摩擦問題についてというテーマで、自動車産業の立場から、私どもの考え方を申し述べ、先生方の御理解をいただきたいと存じます。
 私どもは、貿易摩擦問題が、今日、国の内外を問わず、重要な問題であることを十分認識いたしておりまして、この問題の解決のために最大限の努力を傾注する所存でございます。
 今日、自動車の輸出入に関しまして、政府間で交渉が行われてきております相手国といたしましては、主として米国、カナダ、それにEC諸国がございます。
 まず、米国の場合につきまして、私どもの見解を申し上げてみたいと存じます。
 御承知のように、第二次オイルショック以来、ここ三、四年の間、米国自動車産業は、経営の不振と失業の増大というきわめて困難な状況が続いております。米国のメーカー及び労働組合では、日本からの輸入車についてもこれを制限しようといたしております。このため、アメリカの議会でも保護主義的な法案が次々と提案されております。いわゆる貿易摩擦でございます。しかしながら、過去において日米間に数多く見られました貿易摩擦と自動車の場合とでは、若干事情が異なっております。
 と申しますのは、米国の自動車産業の困難が日本からの輸入車の増大によって生じたものではないという点でございます。日本車の対米輸出は、長年の間に徐々に増加はいたしましたけれども、いわゆる集中豪雨的な増加でもなく、またダンピングを伴ったような不公正な輸出でもないのであります。
 自動車の場合は、一九七五年のダンピング提訴でもシロの判定でございました。また一九八〇年のITCの審決におきましても、米国自動車産業の不振は日本車の輸出が主たる原因ではないとの、いわゆるシロの審決がなされたのであります。
 米国の自動車産業のここ数年の苦境は、石油危機に伴うガソリン価格の高騰によりまして、米国メーカーの主たる生産車でありました大型車の需要が、燃費が悪いという理由で急減いたしまして、しかも小型車生産への移行のための対応がおくれたということによるものであります。
 それに加えて、米国経済における高金利が自動車需要を大幅に減少させたからにほかならないのであります。
 したがいまして、日本車の輸出による貿易摩擦とは申しましても、それは日本車が米国の業界に被害を与えた結果というのではなくて、もっぱら米国側の事情によって生じているという点が従来の日米間の他の業種での輸出による貿易摩擦と異なっている点でございます。
 したがいまして、米国の主要な新聞論調あるいはまた有力な消費者団体、いずれも日本車を輸入制限することは、いたずらに米国の自動車価格の高騰をもたらすばかりでなくて、長期的に見まして米国自動車産業の競争力の強化にも役立たないということで一貫して反対してきているのでございます。
 まず、この点について御理解をいただきたいと存じます。
 もちろん、このような状況から脱却するために、米国の自動車業界も労働組合の協力を得て労賃を凍結するなどの措置を含む各種の合理化に努めつつ、小型車生産への転換のための多額の設備投資を行いまして、燃費のよい、安くて高品質の車の生産体制の確立に努めてまいっております。そして、その達成までの間、日本車との競争という面で時間的余裕を与えてほしいというのが米国側の偽らざる気持ちであります。
 一昨年五月に、日本政府が対米自動車輸出について自主規制措置を実施いたしましたのも、これに協力するためのものでありました。
 しかし、少なくとも昨年秋までは、米国自動車市場の回復は決してはかばかしくございませんでした。このため、アメリカのメーカーは、コストの低減を図るためにメキシコや日本などから安くて良質な部品を職人するなどの措置をとるに至っております。しかし、海外部品の購入ということは、米国におきます失業の改善にはならないということで、アメリカの自動車労働組合でありますUAWは、ローカルコンテント法案を議会に持ち込んできたのであります。これらのローカルコンテント法案を初めとする米国議会での各種の保護主義法案の成立は、アメリカにとどまらず、ECを初め、各国の保護主義の流れを助長するきわめて危険な存在と言わざるを得ません。
 EC諸国におきましても、オイルショック以来の長期の不況と、失業の増大によりまして、自動車産業も各国とも不振に陥っております。したがいまして、これらの国々でも日本車の輸入を制限しようという要求がありまして、現実に制限している国もございます。特にフランスの場合にはきわめて不公正かつ不明朗な手段によりまして、自動車市場の需要の三%に日本車を制限しております。これに対しまして日本側からは機会あるたびに抗議をいたしておりますが、フランス側は耳をかさないのであります。しかしながら、私どもはECに対しましても引き続き分別ある輸出姿勢を続けておりまして、最近におきましてはEC向けの輸出も減少しておりますので、先般の政府とECとの会議におきましても自動車に関しては具体的な数量規制といったような要求は出ていないわけでございます。しかし、自動車には限りませんけれども、ECは御承知のように、日本に対して市場開放を求めてきておりまして、もしこれに適切な措置をとらないならばガットに提訴するというようなことを申しております。御承知のように米国のダンフォースさんの出しております相互主義法案も同様な市場開放をねらったものでございます。しかしながら、自動車に関します限り、日本は全く市場は開放されております。日本の自動車市場は外国からの輸入や、外国自動車メーカーの生産流通に対する投資といった面でも、全く開放されております。しかも輸入関税は、一九七八年からゼロとされまして、日本は輸出車に対する関税を完全に撤廃した最初にして唯一の自動車生産国でございます。白勤車の完成車のみならず、その部品輸入に対しましても制限はもちろんございませんし、ほとんどの部品の関税はゼロでございます。もちろん安全や公害の面におきましては、各国ともそれぞれ別個の規制がありまして、日本におきましても、安全や公害に関する規制はございます。しかしながら、これも輸入車、国産車の差別はなくて、およそ日本で走っておりますすべての自動車に平等に適用されるのでございます。むしろ輸入車に対しましては三年間の猶予期間をさえ与えておるわけでございます。
 今日、日本の車は世界各国に輸出されておりますけれども、われわれ日本の自動車メーカーが初めて外国市場に入ろうといたしましたとき、各種の困難を経験いたしまして、その他域での特殊性は、われわれがそれとその要件に適応することによって克服する以外に、その市場での成功はおぼつかないということで大変な苦労をいたしましてきたのでございます。この努力に比べますとECやアメリカのメーカーの日本に対する輸出努力というのはいささか十分ではないのではないかと思われますが、しかし、私どもはEC及びアメリカの車が日本の市場に参入できるようにするため、むしろ私どもの販売網を活用いたしまして輸入車の販売に協力をさえしてまいりました。そうしたことによりまして、たとえば日本にはノン・タリフ・バリアがあるとか、日本市場が閉鎖されているとか、そういったような諸外国の言いわけを排除することがわれわれにとっても重要であると考えたからであります。
 私どもといたしましては、国内はもとよりのこと、全世界において自由貿易と自由競争が行われることが必要でありまして、これを推進すべきであると思っております。特に、自動車は国際商品でありまして、したがって日本の自動車産業は国内市場だけではなく、世界市場全体に立脚して今後も発展せざるを得ません。日本はもとより世界の経済の発展にとっても自由な貿易の維持が最大の利益をもたらすということはこれまでの歴史が証明しているところでございます。
 保護主義的な考え方や、そういった動きが新たに米国や他の欧州諸国に広がることを未然に防ぐことが、今後における最大の課題となっております。
 自動車業界といたしましては競争と協調、この二つを柱といたしまして、技術の面から文化に至るまで、あらゆる面で相互理解と交流を深め、自由な貿易の維持、発展に努める考えでございます。諸先生のこの方面での積極的な御支援をお願いいたしたいと存じます。
 最後に、もう一点御理解をいただきたい点がございます。と申しますのは、自動車産業は多くの関連産業の上に成り立つ非常にすそ野の広い産業でございますので、先進自動車生産国はもちろんのこと、まだ自動車の生産が未発達の国々におきましても、それぞれの国におきまして、きわめて重要な産業となっております。自動車産業の好不況がそのままその国の経済の好不況となって反映するからであります。このことは日本においても例外ではございません。日本の自動車産業は製造業といいますか、鉱工業の製造業の生産額の一割を占めております。あるいは雇用の面におきましても、総就業者数の約一割を占めております。国税、地方税を合わせましたわが国の総租税収入の一割近くを負担しており、輸出におきましては総輸出額の二割強を占めておりまして、石油輸入額の約五割以上の外貨を獲得しているのでございます。したがいまして、その消長は大きく日本経済の動向を左右するものと言うことができます。
 第一次オイルショック以後今日まで、他の先進国がインフレと不況と失業に苦しんでいた中で、日本が比較的順調な経済運営を続けられました陰には、常に日本経済を下支えしてきた自動車産業の貢献があったからと言っても過言ではないと存じます。
 しかしながら、昨年は米国及びヨーロッパ諸国による輸入制限に加えて、世界的不況の浸透から輸出が大幅に減少いたしました。そのため生産数量も約四%マイナスとなりました。本年も対米自主規制の継続もあり、生産の伸びは期待できないのでありまして、このことが日本経済の景気低迷をさらに長引かすのではないかと憂慮いたしております。
 自動車産業が不振になった場合の国民経済全般に与える影響は、現在の米国の状況をごらんになれば容易に御理解いただけるかと存じます。日本経済の中に占める自動車産業の重要性について深い御理解を賜りたいと存ずるわけでございます。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 中村俊夫

speaker_id: 9117

日付: 1983-02-23

院: 参議院

会議名: 商工委員会、外務委員会、農林水産委員会、科学技術振興対策特別委員会連合審査会