塩崎潤の発言 (物価等対策特別委員会)
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○国務大臣(塩崎潤君) わが国経済の当面する課題と経済運営の基本的な考え方につきましては、さきの経済演説において明らかにしたところでありますが、当委員会が開催されるに当たりまして、重ねて所信の一端を申し述べたいと存じます。
わが国経済は、二度にわたる石油危機の後にも、欧米諸国に比べて、高く、安定的な成長を遂げ、失業率、物価、国際収支のいずれの点においても、際立って良好なパフォーマンスを示してまいりました。しかし、このようなわが国経済も、世界同時不況の影響を受け、輸出の減少等により、景気の回復は緩慢となり、経済の現状は、厳しい状況にあります。
世界経済は、第二次石油危機後、その後遺症としての長期間にわたる激しいインフレに悩み、そのため、各国は、インフレ抑制に最重点を置いた政策努力を続けてまいりました。その結果、インフレはようやく鎮静化してきたのでありますが、反面、経済活動の停滞を招き、戦後最高の失業率を生むに至りました。しかも、これを背景として、保護貿易主義が高まっているのであります。
また、発展途上国も、先進国経済の停滞を反映して、輸出の減少、一次産品価格の低落等から経常収支が悪化し、債務累積の問題が顕在化するに至りました。
このような内外の経済動向を考えますと、財政上の困難など、政策手段の選択の幅はきわめて狭いのでありますが、私は、五十八年度の経済運営に当たって、次の三つの柱を打ち立て、これを具体化してまいりたいと考えております。
その第一の柱は、国内民間需要を中心とした経済の着実な成長の実現を図ることであります。
内需中心の経済の着実な成長は、いわゆる貿易
摩擦問題の解決のためにも、また、現在の最重点課題である行財政改革を円滑に進め、雇用の安定を図るためにも肝要であります。
このため、まず第一に、昭和五十八年度予算においても、この点を配慮いたしました。すなわち、きわめて厳しい財政事情の折から、他の五十八年度本来の歳出項目全体の伸びがマイナスであるにもかかわらず、公共事業関係費については、前年度同額の予算額を確保し、その配分に当たっては、経済効果の高い事業に重点を置くこととしております。
第二は、金利の低下傾向のもとで、中小企業の設備投資促進のための税制上の措置等の施策を推進することにより、民間投資の喚起を図ることであります。特に、先端技術の投資促進に努め、産業構造の一層の知識集約化、高度化を図り、経済の生産性の向上に役立てたいと考えるのであります。
第三は、税制上の住宅取得控除の引き上げ等を図るほか、増改築や住宅の質的向上に対する国民のニーズを取り入れて、引き続き、住宅建設を促進することであります。
第四は、基礎素材産業や農林水産業、中小企業については、構造政策的な観点を取り入れながら、活性化、経営の安定化を図るため、実情に応じた対策を実施することであります。
このような政府の諸施策の推進により、五十八年度のわが国経済は、実質で三・四%程度の成長を達成するものと見込んでおります。
第二の柱は、物価の安定基調を維持することであります。
物価の安定なくして、ゆとりのある安定した福祉社会の実現は期待できません。
このため、欧米諸国は、この二、三年、失業の大幅増加という大きな犠牲を払いながらも、物価の安定を目指して悪戦苦闘してまいりました。これに対し、わが国は、相対的に小さい犠牲のもとで物価の安定化に成功し、消費者物価は、最近では二%台という近年にない安定ぶりを示しております。また、為替相場は、一ころの円安が是正されており、石油価格も、現在、低下しております。こうした動きは、物価安定の見地から好ましいことであります。
政府としては、今後とも、物価の動向に細心の注意を払いながら、機動的な政策運営に努めることにより、引き続き物価の安定基調を維持することとしております。この結果、五十八年度は、卸売物価が一・一%程度、消費者物価が三・三%程度の上昇率になるものと見込んでおります。
さらに、国民生活の安定と向上を図るため、消費者行政を積極的に進めることも重要であります。商品・サービスの安全性の確保、取引形態の多様化、複雑化に対応した消費者取引契約の適正化等所要の施策を講ずることにより、消費者利益の擁護、増進に努めてまいりたいと存じます。
第三の柱は、わが国経済の孤立化を避けて国際協調を推進し、世界経済に貢献することであります。
政府としては、一昨年末以来、わが国市場の開放のための対策を講じてまいりました。さらに、今般、関税率の思い切った引き下げ、基準・認証制度等の全面的検討、OTOの機能強化等の一層の市場開放措置を決定いたしました。これらの措置は、最近の世界の保護貿易主義的傾向を阻止するためにも、わが国みずからが率先してとったものであります。今後、関係各国に対して、わが国のこのような努力について理解を得るとともに、相互の経済、社会についての認識のギャップをなくすよう一層の努力をしてまいる所存であります。
次に、中長期の経済運営の方向について申し上げます。
わが国経済社会は、現在、大きな転換期を迎えており、当面の諸課題を解決しながら、来るべき二十一世紀への備えを進めていくためには、これまで以上の長期的な視野に立って事態の変化に弾力的に対応し得るような経済社会の展望、経済運営の指針が求められております。
このため、新たに経済審議会に御検討をお願いしたところであり、今後、この検討の結果をよりどころとして、長期的な経済運営を行ってまいる所存であります。
以上、今後の経済運営の課題と方向について申し上げました。
外にあっては、五十年ぶりの世界同時不況、内にあっては、未曽有の財政困難の中で、景気の回復を図っていくことは決して容易ではありません。しかし、長期にわたった米国の高金利も是正される方向にあり、世界経済は今後は次第に回復に向かうとの見方が一般的であります。このような事情を受けて、国内においても、円相場や金利面で昨年とは違った明るい兆しがあらわれてまいりました。また、産油国による石油価格引き下げにつきましては、物価の安定、実質所得の向上等により、わが国及び世界経済に好影響があるものと期待しております。そして何よりも、わが国経済は、当面する諸困難を克服していく旺盛な活力を有しているのであります。
本委員会の皆様方の御理解と御協力を切にお願いいたします。