暉峻淑子の発言 (行政改革に関する特別委員会公聴会)

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○暉峻公述人 暉峻でございます。私は、国民生活を代表してこの委員会に国民の声をお伝えしたいと思って伺いました。
 この委員会が設けられましたときに、私どもは率直に言って、こんな委員会をつくって何をするんだろうというのが本当に率直な国民の声でございます。といいますのは、私どもは、財政再建、行政改革というのを一番最初に結びつけて政府側が国民に宣伝なさいましたので、行政改革をすれば財政再建もできる、それから増税もしなくてよいということを、正直な人間ほど真に受けて承ったわけでございます。ところが、財政再建のプランというのは、五十年代には赤字をなくすという約束は五十九年度というのがめどだったと思いますが、これはもろくも崩れてしまいました。その崩したものは国民の非協力ということではなくて、結局利権ですね、国の財政が利権のために使われているという、そのことが本当の理由であり続けていると思います。その幾つかの例は後でちょっと申し上げます。
 それで、財政再建というのをなさる気がおありになるならば、いま六十五年度までにやるとおっしゃるのですけれども、少なくとも項目別に、それは税収の問題とのかかわりもあると思いますが、この項目で削っていくのは、こことこことここを第一番目に削り、こういうふうにするという六十五年度までのその表を国民に示してほしいのですね。何の項目が削られて、それでつじつまがどうやって合っていくのか。
 それで、中曽根さんが総理大臣になられたときに行革の中曽根という言葉を大分売っていられましたので、国民はそれも信用して、今度は何とかなるかというふうに思った人が多いと思います。ところが、中曽根さんがいままでしてくださったことは、国防費をふやすことと、それから改憲への意思が何かちらちらと見えるということでして、行革の方はさっぱり進んでいないということですね。進んでいるのは、文教、福祉というものがどんどん削られていって私たちの周りにも困っている人がたくさんおりますが、そういうことだけです。
 それで、行政改革をなぜいまの政府ができないかというと、これはやはり政府と利権と官とが強く結びついているということで、やろうにもできない。もし利権と政府の結びつきを断つという気持ちがおありになるのならば、今度のロッキード事件に対してももっとちゃんとした姿勢を国民に示してくだされば、それだけでも私たちは、ああ、政財官の癒着が断てる、そういう気構えがあるのだなと安心するのですが、航特委もどうなったのかわからなくなってしまいましたし、将来の展望というのは、本当に国民からの期待はないわけです。ですから私は、ここに出席するときも、もう何を言ってもどっちみち同じなのだという無力感が先で、出てくる気持ちもなかったくらいなのです。
 それで、六十五年度までに赤字をなくすためのちゃんとしたプランが全く示されないで、このごろ、今度は行革と財政再建は切り離すという変な話になってきまして、行革は行革で別個に審議するというような形になってきました。そのことの国民への言いわけ、あるいは選挙対策というのがこの委員会の仕事ではないのだろうかと、邪推なのかもしれませんが、私たちはこれまでの流れの上でそういう結論に自然になってしまうのですね。第一、この法案で出されている総務庁の案でも、大臣の数はちっとも減らないのですね。これ一つからいっても、総務庁案というのが何のためにつくられるのかさっぱりわからないということです。
 私たちは素人ですから、かえってよけいな理屈でごまかされることになれないもので、大変率直にいろいろな疑問が浮かんでまいります。それで、こういう特別委員会をつくって何か審議したという形だけつくって、選挙の後は結局は間接税の大増税という形になってくるのではないかしらというのが、私たち特に主婦の間で非常に心配されていることです。
 実際に間接税が増税されなくても、すでに大蔵省が発表しておりますように、私たちサラリーマンの税金は二年間で二・四倍になっているのですね。六年前に比べると四兆六千億もの増税を私たちだけがしょっているのです。その十兆八千億という源泉所得税は法人税の九兆五千億を抜いてしまっているわけで、その中でも給与所得にかかってくる私たちの勤労所得税だけでほぼ八兆円、七兆九千億もあるわけですから、私たちは間接税の増税などされなくても、もうあっぷあっぷしているわけです。
 それから、私は東京都の家計調査の中から、私たちが現在どれだけ間接税を負担しているかということを細かく試算してみたのですが、各世帯で所得税とほぼ同額の間接税をすでに負担しております。これはお望みでしたら、「公共サービスと国民生活」という先月出しました本の中にその計算の基礎を書いておりますので、どうぞ後でごらんになってくださいませ。
 それで、私どもはそれだけ増税をされているのに、では増税された分だけ生活は少し楽になってきたのかというと、とんでもないことでして、御承知のように行革一括法案というのがありましたときに、法律補助金二千五百億円のうち何と二千四十億円の文教、福祉に関する予算が削られてしまったわけでございます。予算補助金も千六百三十六億円のうち九百十一億円は文教、福祉だったわけで、結局削るというときに、さっき言いました利権とのつながりは断たれないまま、政治献金をしていない私たちに全部しわ寄せが来ているわけなんですね。
 これはもう私たちにとっては、幾ら何かを言われましても削られていく、それから予算の伸び率を見ましても理屈抜きに数字で示されていることでして、行革というのはどっちを向けて流れていくかということは、本当に一番税金を納め、しかも一番弱い者にしわが寄せられて、これは行革じゃないですね。行政改革というと、国民にとって行政はサービスをするものですから、国民生活に一番寄与し得る形になるというのが行政改革だと私たちは思っていたのですね。ところが、全くその反対の形にいってしまっているということを本当に情けなく思っております。
 それで、実際私どもの方で今度の予算の編成を見てみましても、たとえば厚生省は、本当は何にもいまのサービスはふやさない、それで老人人口がふえたりして当然増になるのが九千億ありましたのに、たった二千億しか下さらないで七千億は削ってしまうというのは、これは大蔵省が言ったのじゃないですね、閣議で決めておしまいになったわけです。閣議がこれを決めておしまいになって、私たちはもうとても大変だといってみんな青くなっているわけですけれども、そうなると、今度選挙が近いということになってくるとこれでは選挙は勝てないといって、自民党の方からまたその七千億をどうにかしなければというふうになってきているわけですね。ということは、私たちから見るとこれは一つの演劇にすぎないので、七千億はやらないと言っておいて、何かある有力な議員のおかげでまたそれが復活したという目玉に使われるのではないか。一体国会は行革のことをどういうふうに考えていられるのだろうと思って、まじめに行革の行方を初めからずっと見ている私たちは本当に心配でなりません。
 しかも、八割給付になって浮く三百六十億円、入院の給食をもう給付しない、自己負担にする二百九十億円、それから国民健康保険の国庫負担千二百億円、そういうようなものは、私たちが新聞で報ぜられているものだけをざっと見ましても、たとえばむだな公共事業、そういうものが会計検査院で摘発されたものだけでも四兆もあるということ、これは公共事業が主たるものです。それから、たとえば福井港なんかで何千億円もかけて五年間でたった一隻しか船が入ってこなかったというような例が報告されましたり、本当に一体国民のことを何と思っていられるのでしょう。私たちは、削られればだれか家族がそれを補う。この間コラムニストが老人の奥さんの首を締めて殺した事件とか、老夫婦の心中事件というのが新聞に報ぜられない日はないくらいなんですね。それなのに一体行革というのは何を目指していられるのでしょうか。本当に暗たんたるものを感じます。
 それで、いま問題になっている例を一つだけ象徴的に言わせていただきますと、たとえば製薬メーカーとか営利的な医療の犠牲になっている富士見病院事件というのも、お金だけかかって国民には犠牲をかけたという例ですけれども、もう一つ、いま精神衛生実態調査というのが行われようとして、これは患者の人権、それから何よりも患者と医者の治療関係を破壊するという形で進められようとしているのですね。これはもう厚生省がやるやる、どうしてもやると強引に言っているのですが、私は統計調査を数多く扱いますので、ここで調べられる調査票を克明に見てみますと、これで調査される項目はみんなわかっているものばかりです。たとえば国の指定統計の国民健康調査、ここに今度調べようとするもののもっと詳細な調査があります。それから医療施設調査病院報告、これにも克明なものが載っております。それから患者調査、これも国の指定統計ですが、どうぞごらんください。第一、厚生省そのものが「我が国の精神衛生」といいまして、いま掲げましたこれらの調査から引用してここに載せているから、厚生省が知らないということはないんですね。
 今度の土光さんの臨調でも、統計の重複を避ける、このことによって費用のむだ遣いをやめるということをうたっていられるわけなんですが、そういうことがあっても、だれの判こもない、利権も結びつかない、こういう問題でさえ、幾ら私たちがこれはむだだ、むだどころか犠牲が多いということを説明しても、これは縄張りなんでしょうか、あるいはだれかの何か地位、ポストにかかっているんでしょうか、国民には関係のないところで、どうしてもやると言われているんですね。こういうばかばかしいことというのがあり過ぎるんです。これは、許認可事務の問題にしても何でもそうなんですね。
 ですから私たちは、今度の委員会がここに掲げてある幾つかの法案を審議されるということはもちろん結構ですけれども、もうどうしようもない利権との結びつきと縄張り根性を断つためには、もうわが国では政権交代ということでこれが是正されませんので、むしろ中央に集中している利権を断つために地方自治体に大幅に税源を委譲し、地方自治体の行政に対する住民参加の手続というものをはっきり定めて、行革の主体を国民に移してもらいたいんです。政治家にお任せしていても結局いままでお話ししたとおりですので、私たちがやります。ですから、そのためにはどうぞ地方自治体の方に主権を渡し、地方自治体に国民が、住民の私たちが参加できるような形でやってください。そしてそのためには、いま一番言われていない、先細りというかぽしょっと言葉でだけ言われた情報公開というのを、私たちが本当にできるようにしてください。そうしましたら、開かれた情報のもとに私たち住民が行政改革のイニシアチブをとりたい、こういうことです。
 そういう大きな視点を含めてこの委員会が審議をしてくださるならば、私たちはまだ期待をいたしますけれども、いま言ったような体質ですね、言われても言われても直らない。お砂糖に群がるアリのように、私たちの納めた税金を食い物にする、そういう体質が改められない限りは、この委員会には期待できないという感じを持っております。
 以上でございます。(拍手)

発言情報

speech_id: 110004279X00119831005_004

発言者: 暉峻淑子

speaker_id: 31236

日付: 1983-10-05

院: 衆議院

会議名: 行政改革に関する特別委員会公聴会