黒羽亮一の発言 (文教委員会)

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○黒羽参考人 日本経済新聞の黒羽であります。
 この日本育英会法案に対して、私は、早期に成立を図るべきであるという立場から意見を申し上げます。
 総論として、なぜ早くできた方がよろしいかと申しますと、現在の財政状況と育英奨学事業の重要性という二点を加味いたしますと、育英奨学事業を拡充発展させるような法律になっているようでありまして、基本的な方向としては賛成であります。
 以下、若干具体的なその理由を申し上げます。
 まず第一点は、今回のこの改正は第二臨調の答申を踏まえたものであるというふうに言われております。確かに発端はそこにあったようでありますが、その後文部省内に育英奨学事業に関する調査研究会という組織が設けられまして、私もその末席に参加していた者であります。そこで諸外国の奨学事業の実情調査とか、それから関係団体からの意見聴取などをかなり詳細に行いました。期間は大体一年半くらいにわたったと思います。そして昨年、その報告を文部省に提出したわけでありますが、法案を拝見いたしますと、ほぼそのような線でできているようであります。それから、所要の予算措置も五十九年度予算政府案に盛り込まれておるわけでありまして、そういう意味からいけば、素人なりに一種の予算関連法案かと思考するわけであります。したがって、臨調答申の影響は受けてはいるが、それをそのまま実施したというものではなく、教育政策あるいは文教政策と言ってもよいかもしれませんが、その観点から十分にそしゃくされているものであるというふうに思うわけです。
 二、三例を申し上げますと、臨調答申では「外部資金の導入による有利子制度への転換」というようなことが言われておりまして、すべてを有利子制度に転換するというような答申であったようでありますが、文部省で開かれました調査会の報告では、無利子制度というものをやはり根幹として存続してそれを改善していくということをまず第一点として挙げまして、第二点として、しかしながら今日の財政事情のもとでは、育英奨学事業の規模拡大のためには外部資金を導入してそれを長期低利で貸し付けるという制度も入れる、両々相までは育英奨学事業が拡大するのではないかというふうな考え方に立ちました。
 もう一点は、臨調答申では返還免除制度というものの廃止を進めるというような表現がございますが、調査会の報告では、学校教育や学術研究のための人材確保という非常に重要な問題のためにこの制度は引き続き存続すべきものであるというような意見を取りまとめました。本法案もこの調査会の線に沿っているようであります。
 それから第三点といたしまして、この調査会では各国の奨学事業なども検討したわけでありますが、先進国と言われます欧米と比べまして、日本は奨学事業の規模においてもその内容においても、かなり見劣っております。ヨーロッパ、アメリカなどにおいては給与制度というようなものがかなり発展しております。もちろん今の育英会のような無利子貸与もありますし、ローンもあることはあるわけですが、しかし給与制度というようなものも相当に発展しております。それに対して、我が国で実質的給与になるのは返還免除のある教員に就職した場合とか学術研究者になった場合だけであります。そういうような違いがあります。それから金額的に見ましても、我が国の育英奨学事業は、民間の分を含めてもせいぜい千二百億円か千三百億円ぐらいでありますが、アメリカの場合は、いろいろな計算の仕方がありますけれども、日本円に直すと一兆五千億円ぐらいになるのではないか。西ドイツの場合は四千億円ぐらいになるのではないかというような試算もあるわけでありまして、こういうものとの比較もいたしました。
 そこで、我が国の育英奨学事業は、長期的に見ればこういう先進国を目標に拡大していかなければならないのではありますが、どうも現在の財政事情も大変深刻な状況であります。そこで、この深刻な財政事情のもとでも育英事業の拡大を図っていくためには、やはり一般会計に依存しているという形だけではかなり無理があるのではないかというような感じであります。
 その次に、最近の高等教育の拡大傾向というようなものを考えてみる必要があると思います。現在、大学、短大の学生数は二百万人を超しているわけでありまして、これは国民に経済的な余裕があるからこれだけ進学が伸びたとは思いますが、また一面、そういうような進学拡大ムードの中で学費が乏しくて困っている人も、全体の量がふえるのに伴って、それに比例してふえているわけであります。先般も、この法案がなかなか成立しないために各大学で困っている表情が新聞、テレビなどで一斉に報道されましたけれども、その後も、私も仕事柄大学の先生に会う機会が多いわけでありますが、似たような話をよく聞いておるわけでありまして、そういう面からいけば、恩恵を受ける学生の数でも金額でも拡充していく必要があるのではないかと思います。
 それで、新しく始まるこの有利子制度は金額にして六十億円分というようなことで、育英会の事業規模の一割にも満たない数でありますが、しかし、これも拡充のための新しい手段になるのではないかと思うわけであります。利子も、財投の利率はたしか七%以上と聞いておりますが、利子補給がありまして三%ということになっております。今日の消費者物価の上昇率その他を考えますと、三%の利子というのは、事実上は将来所得があるようになれば特に負担にはならない、毎年の経済規模の拡大ぐらいの数字なので、この程度でよろしいのではないかと思うわけであります。
 それから次に、先ほどもちょっと申しましたように、我が国の育英奨学事業が総額千二百億とか千三百億ぐらいの範囲の中で育英会の奨学事業の占めているウエートが千億を超しておりまして、非常に大きいわけです。多数の民間の育英奨学事業がありますけれども、それぞれ規模は非常に小さいものでありまして、その総額というのは三百億円あるかないかぐらいと承っております。この点が諸外国、特にアメリカのように企業あるいは財団あるいは個人というような民間の奨学事業の発展している国と我が国の違いであるわけです。これは、一つは学生に対する考え方の違い、文化に対する考え方の違いのようなものでありまして、ですから我が国が特に悪いというわけではありませんが、実態としてはそういうふうになっているということは認識しておかなければならない。つまり、日本育英会のウエートというものは非常に大きい。ですから、そこがしっかりしていないと日本の育英奨学事業というものがおかしくなってしまうというような感じであります。
 以上、総括いたしまして、奨学事業は人員、金額ともに拡充する必要があるというふうに私は思っております。そして、従来のように一般会計だけに依存するのでは今日の財政状況下においては充実が困難でありますので、財投資金導入による低利有利子制度の創設は、育英事業全体の拡充という観点から必要かと思っております。
 以上です。

発言情報

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発言者: 黒羽亮一

speaker_id: 31735

日付: 1984-06-27

院: 衆議院

会議名: 文教委員会