長谷川正安の発言 (外交・総合安全保障に関する調査特別委員会)

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○参考人(長谷川正安君) 私はもう少し今の政治家の方が憲法に固執していただきたいと思っているものですから言うのでありますけれども、確かに書法というのは大原則ですから小回りがきかない点はたくさんあると思うのですね。しかし、その書法に定められた原則をとことん追求していって、それが本当に現実離れをしたということが国民の目にはっきりしたならその憲法はもう不適合なんですから変えればいいので、ちゃんと改正の規定はあるんですから。それを改正にあるいは国民の多くが仮に反対しているとすれば、それはやはり国民がそういうふうに政治を見ていないのであって、いかに国会の多数の政治家の方々が自分たちは不適合だと思っても国民はそう思っていないとすれば、それをじゃどうするのかと。憲法にこだわりなしにやってもいいのだと。ちょうど私がさっき例を出しましたように、戦争中はもう、昭和十八年ごろから明治憲法の改正論というのは出ているんですね、特に軍部の中では、もうあの憲法ではできないという。しかし、きっとそのときに国民にもし――まあそういう状況じゃありませんけれども、明治憲法を改正するなんということを言ったら反対が多かっただろうと思うのですが、そこでギャップが出てくる点を考えますと、少なくても長い憲法の歴史の私のあれでは、ある特定の時期の政治家が、憲法が非常に自分の政策あるいは自分の政党の政策に合わないからといって、国民が納得しないような解釈の仕方をしたり運用の仕方をする、そのこと自体も問題ですけれども、今度は反対の立場から見てそれに対する批判が非常に大きくなって、そのこと自体をめぐって大変紛争が起こってくるわけですね。
 ですから、憲法九条の問題にしても、これも非常に私自身も問題だと思うのですが、憲法学会の圧倒的多数は今の政府の考え方とは全然違うのです。要するに、この憲法ができたときの政府の考え方、吉田内閣時代の考え方がいまだに憲法の学会ではもう八〇%ぐらいを占めているんじゃないでしょうか。そういう考え方なのに、現実に行われていることは、先ほど私が言いましたように、今の憲法のもとで軍備が持てて、しかもその軍備が今日のようなところまで拡張しているという事実があって、そうして、国民の世論調査を見ても、憲法九条、それにもかかわらず改正するのには反対だという意見の方が、どうでしょう、最近の新聞のあれでは七〇%を超えているんですね。しかし、自衛隊の現状は認めるというのがまた八〇%あるというふうに、ともかく、国論は完全に二分しているというか、あるいはもう矛盾しているというか、そういう状況が現状だと思うのですね。
 私は、まあ自分の勉強の結果から言うと、憲法を改正しない限り、現にある憲法を、その憲法の客観的な意義に従って、どんなに不自由であっても政治家は尊重して、その枠の中で政治をやらなければ、多くの国民は法律を守るなんという気持ちにはとてもなれない。その点で、都合がいいところだけは自分はそれを無視して、国のためとか国民のためと言ってやることができるのなら、国民の反対する人たちも、別に法律は守る必要はないのじゃないかという、そういう気持ちがどんどん広がっていくと思うので、これは大変答えることも難しいし、また、政治家の皆さんも大変深刻な問題だというふうに思われていると思うのですが、何とか矛盾しているのをすっきりさせる。もう今、私端的に言えば、憲法に従ってもう一度、憲法に矛盾するような、あるいは憲法違反だと言われるようなところはなくすか、それとも、あるいは憲法を改正して、安保なら安保だけでそれに全く合うような憲法をつくるかしない限りは、この問題というのは解決しないのじゃないかという気がしています。
 したがって、どっちが現実離れなのか。私が考えているような、学者の八〇%が考えているような解釈が現実離れなのか、国会の多数が現実離れしているのか。私は、ここへ来ると何か言うことをちょっとちゅうちょするくらい、どうも自分は現実離れしているんじゃないかという気がするんですけれどもね。皆さん、公法学会とか憲法学会にお出になってきましたら、もう全く自分は現実離れしているんじゃないか、きっとそういうふうに今度はお感じになると思うのです。だから、両方とも現実なので、それで、それを何とかしない限り、今度は一般の国民の方たちの感情というものは非常に複雑で、政治家に不信を持つか学者に不信を持つか、あるいは両方だめだということになるか、そういう状況ですから、きょうせっかくこの機会が与えられましたので、少なくても、みんなが理解しているような憲法の平和主義の原則に基づいて政策立案をやってもらわないと、仮定の議論に基づいて政策を立てられたのでは大変困るんじゃないかということを思ってお話ししたわけです。
 失礼いたしました。

発言情報

speech_id: 110113945X00319840222_026

発言者: 長谷川正安

speaker_id: 25043

日付: 1984-02-22

院: 参議院

会議名: 外交・総合安全保障に関する調査特別委員会