青木日出雄の発言 (安全保障特別委員会)

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○青木参考人 青木であります。
 いささか変な格好をしておりますが、実は首の手術の直後でありまして、まだ傷が治っていないのでネクタイが結べないのであります。ひとつ御勘弁を願います。
 きょうお話し申し上げる要旨は、ただいまコピーをつくっていただいておりますのでお手元に行くと思います。といいますのは、一番初めにちょっと細かい数を書いてありますので、これはコピーの方を御参照願いたいと思うのであります。
 申し上げたいことは、今世界には約五万個の核弾頭があると言われておりますが、現在世界で一番関心のある、一番我々が恐れなければならぬのは、核戦争の発生であり、核弾頭の使用であると思うのであります。
 御存じのように、今月からジュネーブで米ソ間の軍縮交渉が始まっております。確かに核軍縮の交渉は始まっておりますけれども、米ソ間の軍縮交渉というのは、第一は戦略核の問題でありまして、二番目が欧州の戦域核戦力、INFについての問題であります。ところが、これは後でプリントを見ていただければわかると思いますが、現在世界にあります核弾頭のうちで主とするものは、戦場用あるいは戦術用の小型の核弾頭であります。戦域核あるいは戦略核というのはそれほど大きな数ではない。現在、東西間といいますか地球上をある意味で支配しておるのは米ソの戦略核でありますから、この点では我々も十分な関心を持たなければいけないわけでありますが、極端な言い方をいたしますと、それは米ソ間だけの問題でありまして、日本人を含めまして世界じゅうの人間がもっと関心を持たなければならないのは、局地であるいは戦域で使われる戦術用の核弾頭ではないか。少なくともそれについては現在いかなる交渉も行われていないということを指摘したいのであります。
 二番目には、現在、戦略兵器、戦域兵器についての交渉は米ソ間で行われております。御存じのように、現在世界で核兵器を持っている国は五つであります。そのうちでこの会議に参加していないイギリス、これはアメリカと協議もし合意もしておりますが、そのほかのフランス、中国につきましては核軍縮の交渉もその動きも全くないということです。特に我々が関心を持たなければならぬと思いますのは、この二カ国は核拡散防止条約にも加入しておりません。中国につきましては幾らがその動きもあるようでありますが、少なくとも現在のところ、フランスも中国も核拡散防止条約には入っていない。
 それで、御存じのように、核拡散防止条約に伴いまして非核兵器国の安全保障に関する国連安保理事会の決議もございます。アメリカ、ソ連、イギリスの三国は、それに基づく宣言もしております。ところが、フランス及び中国の二国については、それらの行為が全く行われていない。少なくとも法的には、国際的にはこの二カ国については野放しになっている状態と考えていいわけです。
 現在交渉を行っておりますアメリカ、ソ連以外の三カ国、先ほどイギリスはアメリカと合意しておると申しましたが、少なくとも今、会議には入っておりませんので、この三カ国の持っておる核弾頭の量は一九六〇年代初期における米ソの持っている量とほとんど同じであります。ですから、国際的にはこれを規制する手段もなければ、言ってみれば使われる可能性もあるではないか。これらについて何らかの措置をとらなければ、現在、世界じゅうの人間が考えております核戦争の恐怖から逃れる手段はないと思います。特に一番先に申し上げました戦術核、あるいは戦場核と言ってもいいわけですが、これらの小さな核兵器について、現在我々の知っているところでは、アメリカもソ連も戦術核については通常兵器化が進んでおりまして、どこを移動する部隊にも、どこを走っております艦船にも搭載されていると考えております。
 そういたしますと、これが使用される可能性は一番大きいわけでありますし、また、その使用の規制について方法は極めて難しい。拡散しているだけ、それを規制する方法は難しくなります。どこかの偶発によってでもそれが使用されないとは限らないということです。
 ただ、小型の戦術核、戦場核と申しますが、その爆発力は、原子爆弾そのものの原理から言ってもそうなんですけれども、通常の原子爆弾をつくりますとほぼ自動的に二十キロトン程度の爆発力になってしまいます。二十キロトンより下げるためには、逆に何かの手段、方法が要るわけであります。二十キロトンというのは、概略でありますが、一九四五年に広島、長崎に投下されたと同じだけの爆発力であります。ですから、我々が広島、長崎の災厄を考えますと、現在の戦術核あるいは戦場核が使用されましても同じだけの被害を生ずるということです。それが膨大な数に上っているということは、それについての何らかの規制措置、安全保障措置、そして軍縮措置がとられなければならぬということを意味すると思います。
 二番目には、核拡散防止条約についてであります。
 日本を含めまして世界の多数の国が核拡散防止条約に署名し、批准をしております。核拡散防止条約を批准した核保有五カ国以外の国は、核兵器を持たないということを宣言したと同じであります。核を持たない国は核を持っている国に対しまして軍事的には明らかに不利になりますので、それについての幾つかの措置はとられております。
 ただ、核拡散防止条約を見ますと、核保有五カ国以外の国は核兵器で武装しないことを決めると同時に、その反対の条件といいますか対面する方式として、核を持っている五カ国については核軍備の縮小について努力することになっております。現在の米ソ間の交渉というのもその努力の一つと言えないことはないと思うのですが、とにかく努力することを決めていて、それで核拡散防止条約が成立いたしました一九七〇年以来現在に至るまで、世界の核兵器の保有量は一発も減っておりません、言い方はちょっと極端でありますが。それは月により年により幾らかの変動はございますが、全体の傾向としてはふえ続ける傾向にある。おかしい話であります。核拡散防止条約が成立をすると同時に、核保有国には核軍備の縮小の責任が課せられているのでありますから、核を保有していない国はそれを要求する権利を持っているわけであります。
 御存じのように、核拡散防止条約というのは五年ごとに見直すことになっております。ことしがその見直しの年であります。ここで内容をもう一度考え直しまして、少なくとも核を保有していない国は、現在世界じゅうが誠実に核を保有しないという約束を守っているわけでありますから、保有している国に対して核軍備を縮小するという約束を守るよう要求する権利が当然あるというふうに考えます。
 三番目は、では核拡散防止条約で核軍備を持たず、将来も核による軍備をしないという宣言をした国、国連では非核兵器国というふうに呼んでおりますが、この非核兵器国の安全保障についてであります。
 核拡散防止条約ができる直前、一九六八年に非核兵器国の安全保障に関する国連安保理事会の決議がございます。これによって、核拡散防止条約に加入をした非核兵器国は核兵器を保有している国から核による攻撃及び核による脅迫を受けないということを明記しております。現在、世界で非核兵器国の安全を保障している条項はこれ一つだったと記憶しております。
 巷間よく、日本が日米安全保障条約によってアメリカの核の傘のもとに入っているというふうに言われますが、安全保障条約そのものは、どこを読みましてもアメリカの核の傘が日本にかかっているとは書いていないわけであります。というよりも、核兵器の使用についてはアメリカ大統領の権限であります。また、アメリカの法律によりまして、アメリカが戦争をすることに対して承認するかどうかはアメリカ議会の決議によります。ですからどこの条約によっても、自動的にそこで参戦をし戦争を継続するんだということは決まっていないわけです。ましてそこで起こり得ますのは、非常に大きな災厄を伴います核戦争でありますから、安全保障条約によって核戦争が自動的に誘起されるということはあり得ないのではないかと思います。
 ですから、ヨーロッパ諸国でもそのあたりはいろいろ論議がございまして、NATO諸国は何とかしてアメリカの核兵器とリンクするように、もしヨーロッパで核戦争が勃発いたしましたら、それがすぐにアメリカの戦略核兵器の使用につながるという保証がないと、ヨーロッパの核戦争に対する抑止力、核戦争からの安全というのは保障されませんので、そこで何とかリンクするようにということを考えております。
 ただ、これはNATO諸国だけの問題でありまして、NATOに加入していない国も世界じゅうにはいっぱいございます。NATOに加入していない、同時にアメリカまたはソ連との二国間の安全保障条約も持っていないといういわゆる中立国、これに至っては何の保障もないはずだということであります。では、何の保障もない例えばスウェーデンとかスイスといった中立国は何によって核戦争の恐怖から逃れ得るかというと、これは一九六八年の国連安保理事会における決議しかないわけであります。ただこれは、お読みいただければわかると思うのですが、それ自体も今から十数年前にできたものでありますし、そのときの核の技術、核兵器の技術、戦争の技術等が現在に適用されるものかどうか、随分問題がございます。核兵器の状況も随分変わってきた。そこで、ことしが核拡散防止条約を見直す年であれば、それと同時に、国連の安保理事会決議というものはある意味で核拡散防止条約と一体化してできたものでありますから、これを見直すべきだ、そうでないと非核保有国の安全は保障されない、できるならばこれを国際条約にでもするべきだと考えます。
 また、安全保障理事会の決議と並んで出た核保有国の宣言、これは核拡散防止条約と安全保障理事会の決議を踏まえまして、それを誠実に履行するというような宣言をしているわけでありますが、この宣言をしたのはまたアメリカ、ソ連、イギリスの三国だけです。フランスと中国は抜けております。これも含めた何らかの措置をとらなければ世界じゅうの核を保有していない国の人間は常に核戦争の恐怖におびえなければならないということになります。また、逆の言い方をいたしますと、日本を含めまして現在の世界がかぶっております核戦争から逃れる傘というのは、不十分ながらこの安全保障理事会の決議によるものだと考えるべきではないかと思います。
 四番目には、ジュネーブにおきます米ソ間の戦略核兵器、戦域核戦力の交渉についてであります。
 現在進んでおります交渉の前提になっておりますのは、米ソ両外相による一月八日の共同声明であります。この共同声明の中には核兵器の廃絶を期待するというふうに書いてあります。実際に実現するかどうかは別として、核兵器の廃絶を目指す交渉というのはまことに結構なことであります。
 また、この交渉の中で、戦略核兵器につきましては、すぐ妥結するかどうかはわかりませんが、恐らく米ソは合意に達するのではないかというふうに考えております。これは、一九八三年のSTART、戦略核兵器削減交渉でありますが、これについての提案とか両国の反応とかを考えましても、ほぼ行き着く数というのは見えておりまして、交渉妥結の可。能性は極めて強いと考えます。また、ヨーロッパの戦域核戦力についての交渉で、一番の難点はイギリス及びフランスの持つ核兵器をどう数えるか、それを交渉の対象にするかという問題でありますけれども、微妙な言い方でありますが、イギリスは現在それを両国の計算の中に入れることについて合意をしているような形をとっております。ただ、フランスだけは絶対反対でありますが……。この交渉で、戦略核兵器と戦域核兵器とを並行して進めて、両方の交渉をリンクさせるというやり方をとっているのは極めて賢明な方法であります。前のヨーロッパのINF交渉でイギリス、フランスがアメリカに同調しなかった理由というのは、ヨーロッパの戦域核として数えられるのを非常に嫌ったという経緯がございますので、形の上では米ソの戦略核と同様に扱うという形をとりますと何とか交渉は妥結する可能性があるのではないか。あとはヨーロッパの中での核兵器のバランスをどうとるかという問題でありますから、このあたりについては交渉が進展する可能性というのも十分あると考えます。
 ところが、この交渉の中で非常に難しいのは、第三分科会にありますSDI、宇宙軍縮問題についての会議であります。これは現在まだ行われていない将来の問題を討議するわけでありますから、話としては非常にまとまりにくいであろう。まとまりにくいと同時に、それがほかの第一分科会、第二分科会の交渉に、リンクをさせると言っておりますので、影響して、今度の交渉では妥結点までに行くはずである戦略兵器交渉とかヨーロッパの戦域核兵器交渉まで紛糾する可能性がある、そちらの方まで逆にまとまらなくなる可能性があると思います。ですから、SDIについての交渉というのは相当注意して考えないと、米ソ間の核軍縮あるいはヨーロッパの核軍縮、またこれに附帯してアジアの核軍縮についても幾らかは話し合われる予定でございますので、これらの軍縮の方向に向かうはずのものを壊してしまう可能性がある。ですから、SDIについては相当慎重に扱う必要があるのではないかと考えるのであります。
 私、個人的には現在の軍備を宇宙まで拡張することは反対でありますが、それは別にいたしまして、今進んでおります交渉とか現在の世界における核軍縮の方向から考えても、SDIについては慎重に扱うべきだと考えております。ただ、これは誤解を避けるために特に申し上げておきますが、SDIがスターウォーズなどと呼ばれるように、これは一九九〇年代を目指している計画でありますから夢のような、絵そらごとととられることが多いのでありますが、そうではございません。現在アメリカが主唱しておりますSDIの各項目は、それぞれが既に技術的な基礎をある程度持っておりまして、ある程度の開発も行われているものであります。ですから、現在レーガン大統領が言うように、それがMADの戦略にかわるようなものであるかどうかということには非常に疑問があります。ただ、あれが全く絵そらごとで何の実現の可能性もないものと考えるのは間違いだと思います。一九九〇年代にはそれが何らかの形で使用可能なものになる。戦略兵器にはならなくても、あるいは戦術兵器になるかもしれない。宇宙に配置ができなくても、あるいは地上で使うことができるようなものになるかもしれないという可能性はございます。ただ、それがレーガン大統領が言われるように、現在の大量破壊によります相互実証破壊戦略、MAD戦略でありますが、これにかわり得るものになるかどうかという点では非常に疑問があります。
 技術的にもいろいろな問題があるのですが、一番大きい問題は、現在米ソ間にありますABM条約とSDIの構想とがどう考えても一致しないということであります。昨年以来レーガン大統領の記者会見では、常にSDIの構想とその研究がABM条約に違反しないということを言明しております。ことしの一月九日の記者会見では、記者から質問もされないのにレーガン大統領はそれを二回も言っております。これはどちらかといいますと、アメリカ政府も、SDIの構想がもし実現をいたしますとABM条約に触れるところが非常に大きいと考えている証拠だと思うのであります。確かにABM条約自体は米ソ間の条約でありますので、我々が関知をするところではないわけですけれども、またその附属書の中に新しいABMの研究についてはそれを制約しないという条項があるのだそうでありますが、少なくともABM条約の本文の中では、これを配置することは、全く違った形であってもミサイルに対抗する何かの手段を配置することはそれ自体がABM条約に違反をするだろう。二国間条約でありますから、それは二国間が合意をして条約を変えればいいのですけれども、少なくとも現在のところABM条約にこれが違反しないというのは、考え方としては少しおかしいのではないかと思います。特にそのSDIが、実現するかどうか、実際に配置できるかどうかは多大な疑問があるのですが、そのSDIがヨーロッパやアジアの同盟国に対する、というのはNATO諸国や日本に対する安全保障にも役に立つということを現在NATOの理事会でワインバーガー国防長官が言っておりますけれども、これについてはまことに大きな疑問がある。技術的に考えても、例えばソ連のSS20あるいはそれよりも射程の短い核ミサイルについてSDIが有効であるかどうかというような点で非常に大きな疑問があります。現在のNATOの理事会でワインバーガー国防長官が、同盟国でSDIの研究に参加するかどうか、また参加をするとすれば、何が得意な部門であるかを六十日以内に回答してほしいということを言明しておりますが、これは日本にも関連することでありますので、これについては大きな疑問があり、それをどう扱うべきなのかというのは慎重に当たる必要があると考えます。
 あと、いろいろ細かい点もあると思いますが、何をお話ししていいかわかりませんので、一番初めの御説明はこれだけにしておきます。

発言情報

speech_id: 110203818X00319850327_002

発言者: 青木日出雄

speaker_id: 7102

日付: 1985-03-27

院: 衆議院

会議名: 安全保障特別委員会