安全保障特別委員会

1985-03-27 衆議院 全56発言

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会議録情報#0
昭和六十年三月二十七日(水曜日)
    午前十時三十一分開議
出席委員
  委員長 森下 元晴君
   理事 小渕 恵三君 理事 椎名 素夫君
   理事 三原 朝雄君 理事 上田  哲君
   理事 前川  旦君 理事 渡部 一郎君
   理事 吉田 之久君
      石原慎太郎君    海部 俊樹君
      箕輪  登君    森   清君
      天野  等君    奥野 一雄君
      左近 正男君    神崎 武法君
      山田 英介君    藤原哲太郎君
      東中 光雄君
 委員外の出席者
        参  考  人
        (軍事評論家) 青木日出雄君
        参  考  人
        (外交評論家) 田久保忠衛君
        特別委員会第三
        調査室長    鎌田  昇君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 国の安全保障に関する件(核軍縮問題)
     ――――◇―――――
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森下元晴#1
○森下委員長 これより会議を開きます。
 国の安全保障に関する件について調査を進めます。
 本日は、参考人といたしまして軍事評論家の青木日出雄君及び外交評論家の田久保忠衛君に御出席を願っております。
 この際、委員会を代表いたしまして、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 両参考人には、御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。当委員会におきましては、国の安全保障に関する件について調査を行っておりますが、本日は、特に核軍縮問題について、それぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
 なお、御意見は初めにそれぞれ三十分程度お述べいただきまして、次に、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。また、発言は着席のままで結構でございますから、よろしくお願いいたします。
 それでは、順次御意見をお述べいただきたいと思います。まず、青木参考人からお願いいたします。
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青木日出雄#2
○青木参考人 青木であります。
 いささか変な格好をしておりますが、実は首の手術の直後でありまして、まだ傷が治っていないのでネクタイが結べないのであります。ひとつ御勘弁を願います。
 きょうお話し申し上げる要旨は、ただいまコピーをつくっていただいておりますのでお手元に行くと思います。といいますのは、一番初めにちょっと細かい数を書いてありますので、これはコピーの方を御参照願いたいと思うのであります。
 申し上げたいことは、今世界には約五万個の核弾頭があると言われておりますが、現在世界で一番関心のある、一番我々が恐れなければならぬのは、核戦争の発生であり、核弾頭の使用であると思うのであります。
 御存じのように、今月からジュネーブで米ソ間の軍縮交渉が始まっております。確かに核軍縮の交渉は始まっておりますけれども、米ソ間の軍縮交渉というのは、第一は戦略核の問題でありまして、二番目が欧州の戦域核戦力、INFについての問題であります。ところが、これは後でプリントを見ていただければわかると思いますが、現在世界にあります核弾頭のうちで主とするものは、戦場用あるいは戦術用の小型の核弾頭であります。戦域核あるいは戦略核というのはそれほど大きな数ではない。現在、東西間といいますか地球上をある意味で支配しておるのは米ソの戦略核でありますから、この点では我々も十分な関心を持たなければいけないわけでありますが、極端な言い方をいたしますと、それは米ソ間だけの問題でありまして、日本人を含めまして世界じゅうの人間がもっと関心を持たなければならないのは、局地であるいは戦域で使われる戦術用の核弾頭ではないか。少なくともそれについては現在いかなる交渉も行われていないということを指摘したいのであります。
 二番目には、現在、戦略兵器、戦域兵器についての交渉は米ソ間で行われております。御存じのように、現在世界で核兵器を持っている国は五つであります。そのうちでこの会議に参加していないイギリス、これはアメリカと協議もし合意もしておりますが、そのほかのフランス、中国につきましては核軍縮の交渉もその動きも全くないということです。特に我々が関心を持たなければならぬと思いますのは、この二カ国は核拡散防止条約にも加入しておりません。中国につきましては幾らがその動きもあるようでありますが、少なくとも現在のところ、フランスも中国も核拡散防止条約には入っていない。
 それで、御存じのように、核拡散防止条約に伴いまして非核兵器国の安全保障に関する国連安保理事会の決議もございます。アメリカ、ソ連、イギリスの三国は、それに基づく宣言もしております。ところが、フランス及び中国の二国については、それらの行為が全く行われていない。少なくとも法的には、国際的にはこの二カ国については野放しになっている状態と考えていいわけです。
 現在交渉を行っておりますアメリカ、ソ連以外の三カ国、先ほどイギリスはアメリカと合意しておると申しましたが、少なくとも今、会議には入っておりませんので、この三カ国の持っておる核弾頭の量は一九六〇年代初期における米ソの持っている量とほとんど同じであります。ですから、国際的にはこれを規制する手段もなければ、言ってみれば使われる可能性もあるではないか。これらについて何らかの措置をとらなければ、現在、世界じゅうの人間が考えております核戦争の恐怖から逃れる手段はないと思います。特に一番先に申し上げました戦術核、あるいは戦場核と言ってもいいわけですが、これらの小さな核兵器について、現在我々の知っているところでは、アメリカもソ連も戦術核については通常兵器化が進んでおりまして、どこを移動する部隊にも、どこを走っております艦船にも搭載されていると考えております。
 そういたしますと、これが使用される可能性は一番大きいわけでありますし、また、その使用の規制について方法は極めて難しい。拡散しているだけ、それを規制する方法は難しくなります。どこかの偶発によってでもそれが使用されないとは限らないということです。
 ただ、小型の戦術核、戦場核と申しますが、その爆発力は、原子爆弾そのものの原理から言ってもそうなんですけれども、通常の原子爆弾をつくりますとほぼ自動的に二十キロトン程度の爆発力になってしまいます。二十キロトンより下げるためには、逆に何かの手段、方法が要るわけであります。二十キロトンというのは、概略でありますが、一九四五年に広島、長崎に投下されたと同じだけの爆発力であります。ですから、我々が広島、長崎の災厄を考えますと、現在の戦術核あるいは戦場核が使用されましても同じだけの被害を生ずるということです。それが膨大な数に上っているということは、それについての何らかの規制措置、安全保障措置、そして軍縮措置がとられなければならぬということを意味すると思います。
 二番目には、核拡散防止条約についてであります。
 日本を含めまして世界の多数の国が核拡散防止条約に署名し、批准をしております。核拡散防止条約を批准した核保有五カ国以外の国は、核兵器を持たないということを宣言したと同じであります。核を持たない国は核を持っている国に対しまして軍事的には明らかに不利になりますので、それについての幾つかの措置はとられております。
 ただ、核拡散防止条約を見ますと、核保有五カ国以外の国は核兵器で武装しないことを決めると同時に、その反対の条件といいますか対面する方式として、核を持っている五カ国については核軍備の縮小について努力することになっております。現在の米ソ間の交渉というのもその努力の一つと言えないことはないと思うのですが、とにかく努力することを決めていて、それで核拡散防止条約が成立いたしました一九七〇年以来現在に至るまで、世界の核兵器の保有量は一発も減っておりません、言い方はちょっと極端でありますが。それは月により年により幾らかの変動はございますが、全体の傾向としてはふえ続ける傾向にある。おかしい話であります。核拡散防止条約が成立をすると同時に、核保有国には核軍備の縮小の責任が課せられているのでありますから、核を保有していない国はそれを要求する権利を持っているわけであります。
 御存じのように、核拡散防止条約というのは五年ごとに見直すことになっております。ことしがその見直しの年であります。ここで内容をもう一度考え直しまして、少なくとも核を保有していない国は、現在世界じゅうが誠実に核を保有しないという約束を守っているわけでありますから、保有している国に対して核軍備を縮小するという約束を守るよう要求する権利が当然あるというふうに考えます。
 三番目は、では核拡散防止条約で核軍備を持たず、将来も核による軍備をしないという宣言をした国、国連では非核兵器国というふうに呼んでおりますが、この非核兵器国の安全保障についてであります。
 核拡散防止条約ができる直前、一九六八年に非核兵器国の安全保障に関する国連安保理事会の決議がございます。これによって、核拡散防止条約に加入をした非核兵器国は核兵器を保有している国から核による攻撃及び核による脅迫を受けないということを明記しております。現在、世界で非核兵器国の安全を保障している条項はこれ一つだったと記憶しております。
 巷間よく、日本が日米安全保障条約によってアメリカの核の傘のもとに入っているというふうに言われますが、安全保障条約そのものは、どこを読みましてもアメリカの核の傘が日本にかかっているとは書いていないわけであります。というよりも、核兵器の使用についてはアメリカ大統領の権限であります。また、アメリカの法律によりまして、アメリカが戦争をすることに対して承認するかどうかはアメリカ議会の決議によります。ですからどこの条約によっても、自動的にそこで参戦をし戦争を継続するんだということは決まっていないわけです。ましてそこで起こり得ますのは、非常に大きな災厄を伴います核戦争でありますから、安全保障条約によって核戦争が自動的に誘起されるということはあり得ないのではないかと思います。
 ですから、ヨーロッパ諸国でもそのあたりはいろいろ論議がございまして、NATO諸国は何とかしてアメリカの核兵器とリンクするように、もしヨーロッパで核戦争が勃発いたしましたら、それがすぐにアメリカの戦略核兵器の使用につながるという保証がないと、ヨーロッパの核戦争に対する抑止力、核戦争からの安全というのは保障されませんので、そこで何とかリンクするようにということを考えております。
 ただ、これはNATO諸国だけの問題でありまして、NATOに加入していない国も世界じゅうにはいっぱいございます。NATOに加入していない、同時にアメリカまたはソ連との二国間の安全保障条約も持っていないといういわゆる中立国、これに至っては何の保障もないはずだということであります。では、何の保障もない例えばスウェーデンとかスイスといった中立国は何によって核戦争の恐怖から逃れ得るかというと、これは一九六八年の国連安保理事会における決議しかないわけであります。ただこれは、お読みいただければわかると思うのですが、それ自体も今から十数年前にできたものでありますし、そのときの核の技術、核兵器の技術、戦争の技術等が現在に適用されるものかどうか、随分問題がございます。核兵器の状況も随分変わってきた。そこで、ことしが核拡散防止条約を見直す年であれば、それと同時に、国連の安保理事会決議というものはある意味で核拡散防止条約と一体化してできたものでありますから、これを見直すべきだ、そうでないと非核保有国の安全は保障されない、できるならばこれを国際条約にでもするべきだと考えます。
 また、安全保障理事会の決議と並んで出た核保有国の宣言、これは核拡散防止条約と安全保障理事会の決議を踏まえまして、それを誠実に履行するというような宣言をしているわけでありますが、この宣言をしたのはまたアメリカ、ソ連、イギリスの三国だけです。フランスと中国は抜けております。これも含めた何らかの措置をとらなければ世界じゅうの核を保有していない国の人間は常に核戦争の恐怖におびえなければならないということになります。また、逆の言い方をいたしますと、日本を含めまして現在の世界がかぶっております核戦争から逃れる傘というのは、不十分ながらこの安全保障理事会の決議によるものだと考えるべきではないかと思います。
 四番目には、ジュネーブにおきます米ソ間の戦略核兵器、戦域核戦力の交渉についてであります。
 現在進んでおります交渉の前提になっておりますのは、米ソ両外相による一月八日の共同声明であります。この共同声明の中には核兵器の廃絶を期待するというふうに書いてあります。実際に実現するかどうかは別として、核兵器の廃絶を目指す交渉というのはまことに結構なことであります。
 また、この交渉の中で、戦略核兵器につきましては、すぐ妥結するかどうかはわかりませんが、恐らく米ソは合意に達するのではないかというふうに考えております。これは、一九八三年のSTART、戦略核兵器削減交渉でありますが、これについての提案とか両国の反応とかを考えましても、ほぼ行き着く数というのは見えておりまして、交渉妥結の可。能性は極めて強いと考えます。また、ヨーロッパの戦域核戦力についての交渉で、一番の難点はイギリス及びフランスの持つ核兵器をどう数えるか、それを交渉の対象にするかという問題でありますけれども、微妙な言い方でありますが、イギリスは現在それを両国の計算の中に入れることについて合意をしているような形をとっております。ただ、フランスだけは絶対反対でありますが……。この交渉で、戦略核兵器と戦域核兵器とを並行して進めて、両方の交渉をリンクさせるというやり方をとっているのは極めて賢明な方法であります。前のヨーロッパのINF交渉でイギリス、フランスがアメリカに同調しなかった理由というのは、ヨーロッパの戦域核として数えられるのを非常に嫌ったという経緯がございますので、形の上では米ソの戦略核と同様に扱うという形をとりますと何とか交渉は妥結する可能性があるのではないか。あとはヨーロッパの中での核兵器のバランスをどうとるかという問題でありますから、このあたりについては交渉が進展する可能性というのも十分あると考えます。
 ところが、この交渉の中で非常に難しいのは、第三分科会にありますSDI、宇宙軍縮問題についての会議であります。これは現在まだ行われていない将来の問題を討議するわけでありますから、話としては非常にまとまりにくいであろう。まとまりにくいと同時に、それがほかの第一分科会、第二分科会の交渉に、リンクをさせると言っておりますので、影響して、今度の交渉では妥結点までに行くはずである戦略兵器交渉とかヨーロッパの戦域核兵器交渉まで紛糾する可能性がある、そちらの方まで逆にまとまらなくなる可能性があると思います。ですから、SDIについての交渉というのは相当注意して考えないと、米ソ間の核軍縮あるいはヨーロッパの核軍縮、またこれに附帯してアジアの核軍縮についても幾らかは話し合われる予定でございますので、これらの軍縮の方向に向かうはずのものを壊してしまう可能性がある。ですから、SDIについては相当慎重に扱う必要があるのではないかと考えるのであります。
 私、個人的には現在の軍備を宇宙まで拡張することは反対でありますが、それは別にいたしまして、今進んでおります交渉とか現在の世界における核軍縮の方向から考えても、SDIについては慎重に扱うべきだと考えております。ただ、これは誤解を避けるために特に申し上げておきますが、SDIがスターウォーズなどと呼ばれるように、これは一九九〇年代を目指している計画でありますから夢のような、絵そらごとととられることが多いのでありますが、そうではございません。現在アメリカが主唱しておりますSDIの各項目は、それぞれが既に技術的な基礎をある程度持っておりまして、ある程度の開発も行われているものであります。ですから、現在レーガン大統領が言うように、それがMADの戦略にかわるようなものであるかどうかということには非常に疑問があります。ただ、あれが全く絵そらごとで何の実現の可能性もないものと考えるのは間違いだと思います。一九九〇年代にはそれが何らかの形で使用可能なものになる。戦略兵器にはならなくても、あるいは戦術兵器になるかもしれない。宇宙に配置ができなくても、あるいは地上で使うことができるようなものになるかもしれないという可能性はございます。ただ、それがレーガン大統領が言われるように、現在の大量破壊によります相互実証破壊戦略、MAD戦略でありますが、これにかわり得るものになるかどうかという点では非常に疑問があります。
 技術的にもいろいろな問題があるのですが、一番大きい問題は、現在米ソ間にありますABM条約とSDIの構想とがどう考えても一致しないということであります。昨年以来レーガン大統領の記者会見では、常にSDIの構想とその研究がABM条約に違反しないということを言明しております。ことしの一月九日の記者会見では、記者から質問もされないのにレーガン大統領はそれを二回も言っております。これはどちらかといいますと、アメリカ政府も、SDIの構想がもし実現をいたしますとABM条約に触れるところが非常に大きいと考えている証拠だと思うのであります。確かにABM条約自体は米ソ間の条約でありますので、我々が関知をするところではないわけですけれども、またその附属書の中に新しいABMの研究についてはそれを制約しないという条項があるのだそうでありますが、少なくともABM条約の本文の中では、これを配置することは、全く違った形であってもミサイルに対抗する何かの手段を配置することはそれ自体がABM条約に違反をするだろう。二国間条約でありますから、それは二国間が合意をして条約を変えればいいのですけれども、少なくとも現在のところABM条約にこれが違反しないというのは、考え方としては少しおかしいのではないかと思います。特にそのSDIが、実現するかどうか、実際に配置できるかどうかは多大な疑問があるのですが、そのSDIがヨーロッパやアジアの同盟国に対する、というのはNATO諸国や日本に対する安全保障にも役に立つということを現在NATOの理事会でワインバーガー国防長官が言っておりますけれども、これについてはまことに大きな疑問がある。技術的に考えても、例えばソ連のSS20あるいはそれよりも射程の短い核ミサイルについてSDIが有効であるかどうかというような点で非常に大きな疑問があります。現在のNATOの理事会でワインバーガー国防長官が、同盟国でSDIの研究に参加するかどうか、また参加をするとすれば、何が得意な部門であるかを六十日以内に回答してほしいということを言明しておりますが、これは日本にも関連することでありますので、これについては大きな疑問があり、それをどう扱うべきなのかというのは慎重に当たる必要があると考えます。
 あと、いろいろ細かい点もあると思いますが、何をお話ししていいかわかりませんので、一番初めの御説明はこれだけにしておきます。
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森下元晴#3
○森下委員長 どうもありがとうございました。
 次に、田久保参考人にお願いいたします。
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田久保忠衛#4
○田久保参考人 田久保でございます。
 事務の方から核軍縮に関して自由にしゃべるようにというお話がございましたのですが、どういうふうに私の意見を申し上げるか大変困ったわけでございます。
 私の申し上げたいことは、まず当面のジュネーブにおける米ソの包括軍縮交渉がどうして再開されるに至ったかということ、次にこの軍縮交渉から私がどういう教訓を得たかということを申し上げてみたい、三番目に日本とのかかわり合い、我々はこれをどういうふうに解釈して日本としてどうしたらいいかというようなことに最後に触れてみたい、こう思うのであります。
 まず、ジュネーブの軍縮交渉でございますが、私、外交問題を専門にしておりまして、特に米ソ関係を調べているわけでございます。
 細かいことは省きますけれども、まずレーガン大統領でございますが、第一期の任期四年の三年間は、一般的な言葉で申しますと大変タカ派的な色彩が目立ったと思うのでございます。ところが、去年の一月でございますけれども、一月から今日に至るまでがらっと彼は態度が変わってしまった。つまり、俗な言葉で申しますと鬼のレーガンから仏のレーガンに変わったのではないかということなのでございます。
 レーガン大統領がホワイトハウス入りいたしましたのは八一年一月二十日であります。大統領になりましてから初の記者会見が一月二十九日に行われた。そのときにはソ連に向かって、裏切り者、うそつきという大変ひどい言葉を使ったわけであります。八三年には悪魔の帝国という表現を使った。このレーガンの口から去年の一月以降こういう激しい言葉はふっつり出てこなくなったということでございます。これは後ほど申し上げます。力を背景にしたレーガンの対ソ政策というのは変わっていないわけでありますけれども、アプローチの仕方ががらりと変わったということでございます。
 まず、去年の一月十六日でございます。十七日が米ソ外相会談。この一日前に全国向けテレビ放送でレーガン大統領はソ連に、ジュネーブの交渉のテーブルに戻ってきてくれということを言うわけであります。START交渉、INF、もう一つMBFR、中部欧州相互均衡兵力削減交渉、これはウィーン交渉でありますけれども、三つの交渉をソ連がボイコットした。これに対してレーガンが交渉のテーブルに戻ってこいというふうに呼びかけたわけであります。翌日の米ソ外務大臣会議の雰囲気をよくするためにという政治的ねらいもございましたでしょうし、これはかなり真剣な提案であったというふうに私は判断するわけであります。
 それから、去年の二月の九日でございますが、アンドロポフが亡くなりました。二月の十四日にブッシュ副大統領が今回と何様にレーガン大統領のかわりとして葬儀に出席するわけであります。そのときにチェルネンコ書記長と会った。このときのブッシュとチェルネンコの会談は大変和やかな会談であった。その内容に触れることは避けますけれども、チェルネンコの方からなかなかやわらかい提案が二つばかりあったようでございます。
 その後でございますけれども、例のロンドン・サミットの少し前でありますが、六月四日、レーガン大統領がナンシー夫人を伴いましてアイルランドに行ってダブリンの国会で演説をした。これも対ソ呼びかけ、交渉のテーブルに戻ってこいという呼びかけでございます。
 ロンドン・サミットでは、例の東西関係と軍備管理に関する声明が出ております。これも西側七カ国首脳の署名入りの対ソ呼びかけ、交渉再開の呼びかけであります。
 それから、まだ細かいことを言うとたくさんございますが、九月二十四日の国連におけるレーガンの演説であります。これは一般に言われておりますアンブレラ方式の提案であります。レーガンはトウェンティーイヤーズ、二十年間ということを言っております。かなり長期にこの交渉を見ているんだろうと思います。二十年間かかってロードマップ、道路地図のようなものを米ソ間でつくるんだというようなことを提案した。これはソ連にとって大変魅力のある提案だったんではないかと私は思うのであります。
 御案内のように、九月二十九日、グロムイコ外務大臣がニューヨークからワシントンに参りまして、ホワイトハウスでレーガン・グロムイコ会談が開かれる。その後、ことしの一月のジュネーブ交渉再開、三月十二日からまた交渉が続いたという大きな流れがここでセットされたと思うのであります。
 以上申しましたように、レーガンのピースオフェンシブと言ってもいいと思いますが、ソ連に大変柔軟な路線を続けているということははっきり言えると思うのであります。ただし、この背景でありますけれども、私は幾つかの理由があってそういうことができるようになったというふうに判断するわけであります。どういうことか。
 まず第一でございますけれども、昨年の十一月六日レーガン大統領が再選された。これは大変大きな要因ではないかというふうに思うのであります。現在に至るまででございますけれども、レーガン大統領が軍事費をふやしたのではなくて、七九年十二月のアフガニスタン事件をきっかけに前の民主党のカーター大統領が軍事費を大幅にふやした、それをレーガン大統領が継承するような感じで現在に至っているということだと思うのであります。そこで、八〇年度と八五年度のアメリカの軍事費でありますけれども、インフレ率を差し引いて三二%の増になっている。これは見逃してはならぬと思うのであります。具体的に申しますと、M1戦車二千三百六十両、海空ジェット戦闘機八百四機、戦闘艦四十六隻、B1、これは今開発中の戦略爆撃機であります。それからMX、これもレーガンはゴーサインを出した。ただし、これは現在米議会で審議中であります。こういったような、つまりインフレ率を差し引いて三二%と申し上げたのですが、八〇年の十一月は二けたのインフレ率でございますから、ただならぬ軍事費の増を計上している、こういうことが背景になっていると思うのであります。これではソ連も交渉の場に出てこざるを得ないだろうというふうに私は判断するわけであります。
 二番目でございますけれども、欧州にアメリカの中距離核ミサイルを予定どおり配備したということでございます。八三年の十二月から西ドイツ、イギリス、イタリア、最近はベルギーが配備を決定いたしました。ベルギーでは決定の数時間後に搬入されたということでございます。パーシングⅡ・巡航ミサイル、これは確かな数字は持っておりませんが、去年の十一月の末でございます。NATOの発表で百基以上がもう展開されているということでございます。
 このパーシングⅡと巡航ミサイルでございますけれども、これを配備する前と後でかなりアメリカの交渉の立場が違うのではないかなというふうに思うのであります。私が例えばソ連の共産党書記長である、それで日本に対して恫喝と言ってはおかしいのですけれども、背景に、例えばシベリアに百三十五基のSS20がある、ゼロ対百三十五、これは私はよほどしっかりした精神の持ち主でないとソ連の前で無力化すると思うのであります。これに対しまして、私は西側諸国の首脳は数字の持つマジックというのをよく知っているのではないかと思うのであります。百三十五基のSS20を百基に減らしてやるから、例えば三沢のF16の基地はやめろと言われた場合に、向こうが三十五譲歩した、よって日本も何らかの譲歩をしなければならぬというふうに考えてしまうのではないかと思うのであります。極端な例でございますけれども、百三十五全部廃止してやる、したがっておまえたちは日米安保条約を廃棄しろと言われた場合に我々はどういうメンタリティーになるか。欧州に中距離ミサイルを配備してしまった、これは私は大変なことだと思うのであります。今百基以上展開されているわけでありますが、このスピードを若干緩めるということも大きなカードになるであろう。凍結は大変なカードになる。減らす、これも大変なカードになる。あるいは全廃というか展開以前の状態に戻す、よってSS20は全廃しろ、こういう要求もできるようになるのではないか。よって、パーシングⅡ・巡航ミサイルの配備を開始する前後、これは劇的な交渉の立場の相違ではないかというふうに考えます。
 三番目でございますが、これはSDIでございます。これはただいま青木先生がいろいろこのSDIにお触れになったわけであります。私はSDIは後からちょっと触れてみたいと思うのでありますが、SDIがソ連を交渉の場に引き出す一つのカードになった、これが西側の大変有力な意見でございます。これがなかった場合に果たしてソ連が交渉の場に出てきたかどうか、この中距離ミサイルの配備を計画どおりにやったにせよ、私は大変疑問だと思うのであります。レーガン大統領がSDI計画を公表いたしましたのは、御存じのように、八三年三月二十二日であります。これが具体的にどういうことになるか、技術的に非常に難しい点もございますので私は確たることは申し上げられません。これは賛否両論がアメリカにもある状況であります。ただし、これに対するソ連の反応をじっと見ておりますと、大変気にしておる、これは確実に言えると思うのであります。気にしている以上は交渉の場に出てくる。気にしているからこそ交渉の場に出てくるんだということではないかと私は思うのであります。このSDIが三番目の大きな切り札になったということを私は言っていいと思うのであります。
 四番目でございますけれども、これは大きな切り札ではない。大きな切り札ではないけれども、極東においては大変重要なファクターというのが米中関係でございます。一九八二年の九月一日でございますけれども、胡耀邦主席が中国外交は独立自主の路線をとると第十二回党大会で明言したわけであります。従来アメリカと接近していた、これを少し離す、ソ連との距離を縮めるという意味合いを持っていたと私は思うのでありますけれども、事実上はそういうことになっているのかどうかということでございます。過去一年ちょっとの間の米中並びに中ソの接触を見ておりますと、どうも軍事的な面の接触が米中間に大変頻繁に行われ始めだということが言えるのではないかと思うのであります。
 これはいろいろ申し上げたいのでありますが、一九八三年でございますか、冬、二月にアメリカのシュルツ国務長官が訪中した。夏にはボルドリッジ商務長官が訪中した。それから秋でございますが、ワインバーガー国防長官が訪中しております。去年の一月、超紫陽首相が訪米した。四月にはレーガン大統領が訪中した。それから六月でございますけれども、張愛萍中国国防大臣が訪米しております。それから七月にはアメリカのレーマン海軍長官が訪中している。それから去る一月の十二日から十九日でございますが、ベッシー統合参謀本部議長、クロウ太平洋司令官、その他制服の幹部とともに訪中している。中国人民解放海軍にアメリカの武器を提供する話がついた模様でございます。それから四月には上海にアメリカの駆逐艦三隻が入港する、こういうことになっておる。
 私が、日本は直接かかわり合いはございませんが、アメリカの対ソ戦略を見る場合、あるいは中国の対ソ戦略を見る場合に、中米間の軍人同士の接触、こういう接触が中ソ間にあるかどうか、これも眺めてみる必要があるのではないか、かように思うわけでございます。
 そういたしますと、今まで申し上げた三つのカードのような大きな力はないかもしれないけれども、アメリカは明らかに中国の軍事力、あるいは中国はアメリカの軍事力、これを利用しようとしている。これは歴然たることだろう、こう思うのであります。
 以上、いろいろなカードがございまして、アメリカはソ連をジュネーブの交渉に引き戻したということは言えると思うのであります。
 ソ連側はソ連側で内部の事情がたくさんございましょう。経済がうまくいかない。それから指導者が当時チェルネンコ書記長でありますけれども、病弱であった。それから汚職。これも大変なことである。それからアル中も無視できない状態になってきている。石油の生産がピークに達してしまった、天井をついてしまったということでございますか。それから農産物、六年間の不作である。それから労働人口の不足が目立ち始めた。それから対外的にはアンゴラ、エチオピア、つまり今まで影響力を伸ばしたところがどうもうまくいかない。今回もキューバのカストロ首相がモスクワに行かなかった。何かあるのではないかという憶測が行われている、こういうことでございます。以上から、ソ連はどうしても軍縮交渉の場に出ざるを得なかったのではないかというふうに私は考えているわけであります。
 次に、このジュネーブ交渉再開までのプロセスを考えておりまして、私が感じている、これは参考にしなければいかぬなということを二、三申し上げてみたいのであります。
 第一は、抑止と均衡でございます。
 現在の国際情勢、いろいろな分析の仕方があるわけでありますが、私はどうもこの抑止と均衡というものをきちっと頭に入れておかないと理解できないのではないかなというふうに考えております。つまり、今申し上げました幾つかのカード、これは西側のやはり力の強さでございます。これがあるからこそ、ソ連は交渉の場に出てきたのではないかというふうに思うのであります。
 私は大変おもしろいなと思いましたのは、二月二十日にサッチャー英首相がアメリカに参りまして、上下両院で演説をふった。そのとき彼女がソ連がジュネーブの交渉の場に出てきたのは我々の善意によるためではない、我々の力によるためだ、これは民主党を含めた上下両院議員の盛んな拍手を受けたわけであります。恐らくチャーチル以後上下両院で演説したイギリスの首相はサッチャーさんが初めてだと思うのであります。このサッチャーの演説には、実に二十四回の拍手が鳴った。二十四回の拍手で遮られたとAP通信はワシントンから打電しているわけであります。私はサッチャーの考え方、これはやはりジュネーブ軍縮交渉を再開させたその理由を雄弁に物語るものではないかなというふうに思うのであります。
 二番目に、SDIについて我々も真剣に考える時期が来ているのではないかなということでございます。
 ただいま青木参考人、大変御専門でございまして、詳細な説明があったわけでございますが、アメリカでも賛否両論がございます。例えばフォーリン・アフェアーズなんかには、詳しい賛成論と反対論が載っているわけでございます。それから民主党、共和党の間にも意見の相違があるであろう。これは海のものとも山のものとも本当の内容はわからぬと私は思うのであります。ただし、私は最近読みました論文でございますが、今の米ソ交渉の首席代表であるカンベルマンとブレジンスキー、前のカーター政権の大統領補佐官であります。それからロバート・ジャストローというダートマス大学の教授であります。ジャストローはゴダード宇宙研究所の創設者であります。この三人は、申し上げるまでもなく、民主党系の人物であります。この三人がニューヨーク・タイムズ・マガジン、一九八五年一月二十七日号に書いた「宇宙防衛の新時代へ」という論文がございます。これは内調、時事通信の内外情勢調査会で全訳したものを私は手に入れたわけでございます。原文でも読んでみましたけれども、どうも私の主観でございますから、これはお聞き流しいただきたいのでありますけれども、これがどうも賛否両論の中の決定版のような気がするわけであります。
 SDI賛成、反対を言う前に、今のMADがこれでいいかどうか、この核抑止の理論でございます、相互確証破壊の理論でございますけれども、現在の均衡した状態でどんどん精度がよくなっていく。こういう状況でしかも検証不能な部分が大変多い。これを放置しておいていいのかどうかというところから、この発想は始まっているわけであります。つまりSDIは今の抑止を高めるものだということをここで盛んに言っておりまして、これがとにかく軍縮のきっかけになりはしないか、軍縮のきっかけとする重要な材料になりはしないかというところから、この考え方が始まっているわけであります。
 いろいろ研究、開発、展開と三つに分けまして、研究の段階でございますけれども、これに対して公に反対している国はだんだんなくなってきているように私は観察するわけであります。もっとも最近イギリスのハウ外務大臣が反対表明した、これは反対を表明したのではなくて問題点を指摘したわけでありますが、なぜか報道によりますと反対した、こういうふうになってしまっている。それからゲンシャー西独外相も若干トーンが変わっているわけでありますが、私はここにゲンシャーの発言の原文を持ってきているわけであります。つまりSDIに対する問題点はかなり多い、ただし研究に反対する理由はないではないかということでございます。
 サッチャー首相が、去年の十二月二十二日だったと思うのでありますが、キャンプ・デービッドでレーガン大統領と会談した。その後アンドリュース空港で記者団に配ったステートメントがございます。これはレーガンに伝えたものでありますけれども、研究は支持するということでございます。ただし四点ぐらい縛りをつけている。特に最も重要なのは、展開についてはソ連と十分な協議をしなければいけないのではないか、これは私も大変真っ当な意見だと思うのであります。研究でございますけれども、これはABM条約に違反しないと私は思っているわけであります。
 それからもう一つ。ソ連でございますけれども、ソ連はABM条約の違反あるいはアメリカでも報告書が出ているのでありますけれども、これは新聞報道でありますから信憑性は余りないと思うのでありますけれども、イギリスのオブザーバー、これは三月四日付、大変詳しく、ソ連がどういうところで何をやっているか、このレーダーも単なるABMのレーダーではないのじゃないかというようなことが書いてあるわけであります。
 いずれにいたしましても、SDIに反対するには、ソ連の方に何か文句を言わないでアメリカにだけ言っていいのであろうかという、ここのところも私は非常に疑問に思うということでございます、私は中曽根首相が理解という表現をお使いになった。これは支持でもよかったのではないかなというふうに考えているわけでございます。サッチャー首相が支持、それからコール首相、これは二月のミュンヘンの会議ではっきり支持を打ち出したわけであります。それからイタリアのクラクシ首相でありますが、彼がつい最近訪米いたしまして研究支持ということを言っております。問題はフランスでありますけれども、建前は大変強いことを言っているわけでございますが、フランスも内心は支持の方にかなり近寄ってきている。これはイギリスの新聞あるいはアメリカの新聞の新聞報道でございますが、かなり初めとは態度が変わってきている。そういたしますと、日本といたしましても西側の一員として研究に反対するというような態度はとれないのではないかなというふうに私は考えるわけであります。
 それから、三番目の交渉に至るプロセスを見ておりましたときの私の教訓でございますが、抑止力、これはかなり、具体的に言ってソ連に真意をわからせるというようなことが大変必要なのではないかなというふうに思うのであります。これはロジャーズNATO司令官なんかがしばしば言っていることでございます。こういうシナリオがわかる。これは別に戦争をしようというのではなくて、ウォー・ファイティング・ケーパビリティー、これを相手に知らせることによって残念ながら緊張の中でつかの間の――つかの間と言うのはおかしいのでありますが、平和を求めざるを得ない、こういうふうに考えなければいけないのではないかと私は思うのであります。
 時間がございませんのではしょって申し上げますが、最後に日本のアプローチでございます。これは自由民主主義国、最近西側の一員という表現をお使いにならないというようになったわけでありますが、どういういきさつがあったかは存じませんが、自由民主主義国の一員としての自覚というものは大変必要なのではないかと私は思うのであります。広島、長崎の感傷は大変我々は大切にしなければならないのですが、現実の国際政治で日本が何をしているか、X軸、Y軸の中のどの点に我々が位置しているかということをはっきり認識しないと、アメリカそれからソ連、両方の全然外側で評論家――私も評論家でありますが、アンパイア面よろしく右も悪いが左も悪いと言っている勝手な態度に受け取られかねないというふうに思うのであります。民主主義諸国の一員としての自覚が必要ではないかなと私はつくづく思うわけであります。
 私、七九年から八〇年までアメリカのウッドロー・ウィルソン研究所におりましたときに、後で私は知ったわけでありますが、たまたま私のすぐそばの研究室にエドワード・ローニー将軍、今のSTART交渉の、ちょっと前まで首席代表であったわけでありますが、彼は浪人中でございまして、私その研究所に一緒におったわけであります。ローニー将軍がしょっちゅう言うのは、米ソ、ソ連側とアメリカの側で野球の試合をしている、アメリカが往年の球威は薄れたが主戦投手、ただピッチャー、キャッチャー、バッテリーをアメリカ側がやっておるので、往年の球威が薄れたので凡フライ、凡ゴロが飛ぶかもしれないけれども、そのときに内外野、友好国、同盟諸国に手伝ってもらわなければいけないということを言っていたわけであります。そのときにたしかローニー将軍は、日本はショートストップだ、ただしこのショートストップはなかなかうまくやってくれないのだ、バッターがバッターボックスに入ってきそうになるとどうもグラブをとって寝たふりをしたがる、その寝たふりをしたがる日本を見てみると筋肉隆々として色つやがいい、ポケットかられがはみ出している、パーキャピタで申し上げますとGNPはアメリカに匹敵するじゃないか、それなのにやはりショートストップの役割を果たしていただけない、大変残念だというようなことを彼が言っていたわけであります。私は、核軍縮に関しましても日本が少なくともピッチャーの足を引っ張らないという努力が必要ではないか、要するに、このポジションをぴしゃっと決めておかないといかぬのではないかなというふうに思うのであります。
 それから、第二の私の考え方でありますが、核の全面禁止あるいは廃絶、これは言うことは大変いいと私は思うのであります。大変いいと思うのでありますが、ただし、この軍事力全体の中で核兵器と通常兵力を画然と分けて核だけ全廃した場合に後に何が残るか、マイナスした場合に何が残るか。ピストルをお互いにやめようといったときに、やめた相手は日本刀を持っておる、おれはナイフっきり持っていなかったということになりはしないかなというふうに思うのであります。議論を単純化いたしましてまことに恐縮でございますけれども、例えばミリタリー・バランス、IISSが出しておりますミリタリー・バランスであります。アメリカが今総兵員数二百十三万、ソ連が五百十一万、核以外の陸上兵力でございますが、師団数アメリカ十六、ソ連が百九十三、兵員数アメリカが七十八万人、ソ連が百八十四万人、戦車数アメリカは一万二千二十三、ソ連約五万一千、こういうことになっておる。海上兵力も、主要水上艦数アメリカが二百六隻、ソ連が二百九十三隻、これはもう申し上げるまでもないわけでありますが、つまり戦力、核だけを取り去った場合の通常兵力の比較になりますと、アメリカと日本、イギリス、それからドイツ、イタリー、こういうところを全部合わせてもソ連に劣るということになってしまいはしないか。そういうところで、これは理想を言うのは大変結構でございますけれども、その結果を少し考えないといけないのではないかなというふうに思うのであります。
 これに関連いたしますけれども、核をなくす、この検証はどうか。検証は可能なのかどうか。日本には例えば衛星から写真を撮る技術があるのかどうか、私はよくわかりません。在野の一評論家でございますからよくわかりませんが、この技術があるかどうか、写真を撮った場合にそれをきちっと分析する専門家がいるのか、いればだれなのかというようなことをきちっと詰めた上で主張をすべきではないかなというふうに思うのであります。
 それからもう一つ、二つ、急いで申し上げます。
 ジュネーブの交渉が始まってからでございますが、どうも日本のマスコミ、これは週刊誌、月刊誌などがこれまで盛んに防衛論争に関心を示していたのですが、こういういわゆる〝デタント〟という言葉でありますが、どうもデタントムードを反映して防衛論争が下火になってきてしまった。注意しなければいけないのは、ジュネーブ交渉というのは宇宙兵器と戦略核と戦域核の三つでございまして、通常兵力に関しては何ら交渉のテーマにもなっていない。そこで、日本は自衛の努力を怠っていいのかなというところに大変大きな疑問を抱いておるということを申し上げたいわけであります。
 それからもう一つでございますが、このデタントと何らかの関係があるのかもしれませんが、どうもソ連に対する日本のアプローチがおかしいのではないかなというふうに思うのであります。これは政府批判になるかもしれませんが、私は去年の十月に日ソ円卓会議に行ったわけでございますが、日本から言うことは、グロムイコさん来てください、来てくださいのこればっかりであります。秋の国連総会の場でも安倍外務大臣からグロムイコ外相に、東京においでくださいという招待を持ちかけている。それから、ガンジー・インド首相の葬儀のときにも中曽根首相が、チーホノフ首相でございますか、お会いになって、そのときもこういうことを言っておられる。今回のチェルネンコの葬儀にも中曽根総理がゴルバチョフと会ってこの問題を持ち出しておる。来てください、来てくださいと言うことは、だんだんだんだん、向こうからいたしますと、行ってやろうか、じゃこれをやれという条件をつけられるのではないか。私は、対ソ・アプローチというものは自然体でいいのではないか。私は、何もソ連をけしからぬ、ソ連を目のかたきにしているわけではございませんが、外交の本質というものは、みずから値を下げるということはいかがなものかなということを考えておるわけであります。
 それから、核軍縮に関しまして、ニュージーランドについても少し申し上げたいわけでございますが、時間を超過したので、後の質疑応答のときに私の意見を述べさせていただきたいというふうに思っております。
 大変乱暴なことも申し上げましたけれども、御勘弁願いたいと思います。以上で、私の発言を終わらせていただきます。
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森下元晴#5
○森下委員長 どうもありがとうございました。
 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
 午後零時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前十一時三十分休憩
     ――――◇―――――
    午後零時三十一分開議
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森下元晴#6
○森下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑は自席から御自由に行っていただくことといたしますが、議事整理のため、委員長の許可を得てお答えを願う参考人を指名してから御発言をお願いいたします。
 なお、発言時間につきましては、答弁を含めまして一回十分程度にお願いいたします。
 また、念のために申し上げますが、参考人からは委員に対する質問はできないことになっておりますので、お含みおき願いたいと思います。
 それでは、発言希望のある方は挙手を願いたいと思いますが、私から一応御指名をさせていただきたいと思います。まず、上田哲委員からお願いいたします。
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上田哲#7
○上田(哲)委員 両参考人には、お忙しいところどうもありがとうございます。
 簡単に一つ御意見を伺うことにいたしますが、非常に素朴に、核戦争というものが一体起きるのか。ここまで年間の軍事費が特に核を中心にして八千億ドルともあるいは一兆ドルとも言われるような状態の中では、かえってそのことがくびきとなって実際にはボタンが押せないのではないかという見方というものも一種の自然律とでも言いましょうか、そういうメカニズムというのがあるようにも私は思うのですが、そういう議論では議論になりません。お伺いする形としては、もし核戦争があり得るとすればどういう場合にあり得るのか。青木さんのお話で、言うなれば核競争というのは二つの超大国の戦いである。これは、お話では戦術核と戦域核、戦略核の区分として出たのでありますけれども、私なりに翻訳をすればそういう言い方もあるのではないかと思いますが、そういうふうに限定した場合に、少なくとも第三国、超大国でないところが引き金を引く要素となることは余り考えられないわけですから、その意味ではどういう場合に核戦争というのが起き得るのか、要因と背景という立場でひとつお伺いしたい。これが一点でございます。
 それから、問題のSDIでありますが、これは田久保さんの御指摘のように最初に出てきたのが八三年三月ですから、今回急に出てきたという話ではないわけですね。結局、日本のかかわり合いとしては、この一月のロン・ヤス会談で中曽根さんの発言が出てきたところからにわかに脚光を浴びたということになると思うのですが、そういう意味では、どうしてこの二年の間こういう経過であったものがにわかに脚光を浴びるようになったのか。それは技術論的にSDIというものがそれなりの研究が進んで、実用性とか可能性というものが出てきたというよりも、もっとそれ以上の政治的な背景、要因といいましょうか、そういうものであるようにも思えるわけです。先ほどお二人から、SDIの研究の可能性というものはスターウォーズという名前で言われているよりももう少し実質的なものがあるというような御指摘があったように思うのですけれども、では、それほど確たるものになっていないという現状と巨大な費用がかかるんだという感覚からすれば、今そんなに具体化すべきものではないように思うわけです。
 したがって、繰り返すようですけれども、どうしてここへ来てこんなに注目されねばならなくなったのか。裏返して言えば、それは中曽根発言あるいは日米関係というようなものが他の国々の反応と違って強調されているからであるのかなとなど、その辺御整理いただければありがたいと思います。
 最後に、これは田久保参考人にお尋ねしたいのであります。今までのは御両所からお答えいただければありがたいと思いますが、田久保参考人にお伺いしたいのは、サッチャーさんがゴルバチョフ氏に会ったときには、かなりこれについては否定的な見解を表明されたと思います。先ほどのお話で、アメリカに行かれたときの見解としては百八十度違ったような御発言だったというふうにお話があったと思うのですが、どの辺に真意があるのか、あるいは誤報であるのかあたりもお話ししていただければありがたいと思います。以上でございます。
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青木日出雄#8
○青木参考人 まず核戦争の可能性なんでありますが、歴史的に考えまして、大量殺人兵器とかあるいは残虐兵器の使用停止というものは、通常はその兵器ができて、使われて、結果がわかったときにすぐ行われているわけです。
 古くはダムダム弾の使用停止。これはまだイギリス植民地時代のインドのダムダムで使ったときに、直後に使用禁止の決議が行われている。それから毒ガスについても、第一次大戦でドイツが使いまして、これも直後、約一年で禁止決議ができたと思うのです。ところが、不思議なことに核兵器についてだけは、一九四五年に二発使われまして、その結果どこからも禁止の決議が行われなかった。それからもう四十年たっておりまして、その間禁止をするような協定も条約も何もないわけですね。ですから、今までの兵器の歴史からいいますと、こういう途中ではっきりした禁止決議のないものは使われる可能性があるものと考えでいいのではないか。
 その次は、毒ガスにつきましても第二次大戦の終末期ごろには相当の貯蔵量があったのですが、それに比べましても核兵器の貯蔵量は非常にふえておる。これだけふえたものが使われないで済むであろうか。これは数の上からいうと、どうも使われそうだということになると思うのです。
 三番目には、現在核兵器は使われない兵器になるのではないか。それは余りにも大きな被害を及ぼすので、もし米ソ間で核戦争が戦われれば両方とも共倒れになってしまう。
 確かにそうなんですが、そういう理屈で使われない兵器と言われるのは戦略核兵器でありまして、戦域核兵器とか戦術核兵器はそうではあるまい。どちらかといえば、アメリカもソ連もそうなのですけれども、通常兵器化をねらっておりますし、それから各部隊とも装備の中に核兵器は含まれてしまっている。例えば、アメリカ海兵隊の上陸作戦のマニュアルで核兵器の携行量をはっきり示してあるわけです。例えば、核砲弾が幾ら、核地雷を幾ら持っていくということをマニュアルの中で示してあるくらいです。これはアメリカのマニュアルを見たからアメリカの例を引くのですけれども、そのほかの国でも、核を持っている国は戦術核兵器についてはやはり同じ扱いをしているのじゃないか。そうしますと、局部的には使われる可能性というのはふえこそすれ減ってはいないと思うのです。
 それで、先ほど言いましたように米ソ間で全面核戦争が起こる確率というのは極めて少ないだろう。特に、その中でも核戦争が起こって一番耐えられない国はアメリカであります。核を保有していない国では恐らく日本だろうと思うのですけれども、アメリカが一番弱味がある。それだけに逆にソ連に対する優位を求めてそれを抑止力にしようとするわけですが、そういう状態からいうとアメリカとソ連の間の全面核戦争というのは起こらないかもしれない。ところが、両者の戦略核兵器と切り離された状態、今のヨーロッパで非常に心配しているのは、アメリカ、ソ連の本土には関係ないという状態で、地域的にとか前線にとかで使われる可能性というのは逆にふえているだろうと思うのです。
 小説とか映画を例に引くのは余り好ましくないのですが、「ザ・デイ・アフター」という映画があった。あの映画の中で、割に初めの方ですが、あれは西ドイツで核戦争が起きたときから始まるわけです。そのときにあの画面の中でテレビが出てまいりまして、テレビの解説者が、これが全面核戦争になることはないだろう、これは表現が余りよろしくないのですけれども、アメリカはハンブルクとシカゴを置きかえるつもりはない、そういう説明をしているのです。ですから、たとえハンブルクがあるいはフランクフルトが核兵器で壊滅をしても、それとリンクしてアメリカが立ち上がって、結果としてシカゴを壊滅させるつもりはないという言い方です。では、アメリカはどうしたかというと、いわゆるカウンターフォースという形なのですけれども、両方の核基地をたたき合うということであの映画は終わっているわけです。それは一般的な感情だと思います。そういうことで全面核戦争が起こる確率は非常に少ないけれども、局地あるいは前線での核使用というのは起こり得る可能性が高いだろう、それは特に米ソ両国とも、艦船にしろ部隊にしろ核兵器を分散し過ぎてしまっているということにあると思うのです。
 それから、次に起こり得ますのが今の核拡散防止条約に違反をしましてどこかの国が核兵器を持ったとき。よく例示として挙げられますのがイスラエルとか南アフリカであるわけですが、実際に疑いもあるわけですね。これも御存じだと思いますが、SDIが出ました一番初め、一九八二年にヘリテージ財団から出た「ハイフロンティア」という本であります。これに書いてあるのです。それから、八三年にフュージョン研究所から出ました「ビームディフェンス」という本にも出てくるのですが、その当時はまだSDIという言葉はございませんでバリスティック・ミサイル・ディフェンス、BMDという言葉だった。それをビーム兵器とか高エネルギー、高速度兵器を使ってディフェンスしなければならないのは、米ソ間の核戦争を考えているからではない、第三国から不正規に飛んでくる核ミサイルがあったときにそれをとめなければならないのだという書き方をしているわけです。これは米ソともに利益になることだという説明です。というので、一つは現在核防条約にも入っていないフランスとか中国の核が使われる可能性というのを少なくともアメリカ、ソ連は大分恐れているようです。
 それから、それ以外の国で核の敷居に達している入り口国というのが世界で九カ国とか十一カ国とかと言われますけれども、可能性のある国が随分ございますので、それが持ったとき、それが持って非常に不利府立場に追い詰められたとき。イスラエルとか南アフリカが例に出るのはそのためなのですが、このときに何かを使おうとするかもしれない。それも単に自分の生存を守るためというだけではなく、それを国際的に問題にするためで、本当はイスラエルや南アフリカにアメリカが核攻撃されるというのは理論的にはない、国際情勢からいってもないのですけれども、逆にそれを引き込むためにそういう核の使われ方をするかもしれないというのが「ハイフロンティア」や「ビームディフェンス」に書いてあることなのです。
 ですから、そういうことでいろいろな形で核兵器が使われる可能性は、現在もあるし逆にふえつつあるのではないかと考えます。
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田久保忠衛#9
○田久保参考人 二つございまして、第一点、米ソ絡みの核戦争が起こり得るか。これは非常に起こりにくいだろう、可能性は非常に小さいだろうと思います。ただいま青木先生のおっしゃったとおりだと私は思うのであります。その場合に、今の米ソの核がバランスしている、このバランスを崩すようなことはまずい、軍縮も相互にレベルを下げていく、片方だけを下げるのではなくて、両方バランスのとれた下げ方をしないといけないのではないかと思います。
 青木先生のおっしゃったもう一つの点なのでございますけれども、アメリカが非常に使いにくいというのは、民主主義国家と共産主義国家、全体主義国家の違いというものがあると思うのであります。アメリカが何かやろうとしても、フリープレス、自由な新聞、その他世論が見張っていて、例えば反核運動、実は非常におもしろいあれがあったのですけれども、後で申し上げます。
 今フランスでベストセラーズになっているのですが、これは英語にも訳されているジャン・フランソワ・レベルという政治評論家が書いた「民主主義はいかに消滅するか」という題の水なのですけれども、民主主義国家においては反核運動というものは非常に英雄視されて、こっちの方が声が大きく聞こえる。民主主義国家というのは、民主主義国家そのものを否定する勢力に関しても寛大である、したがって民主主義そのものを否定しようという勢力が行動に及ばない限りはこれを認めているわけでありますから大変不利な状態にあるのではないか。そういう意味から私は、民主主義国家と全体主義国家を比べますと、民主主義国家というのはかなり弱い点があるのではないか、核の問題もそこから現実的によく考えていかなければいけないのじゃないかなという気がいたします。
 二番目の米ソ絡みではない問題でございますけれども、さっきちょっと申し上げようと思ったのですが、去年の二月十四日アンドロポフ元書記長の葬儀のときにチェルネンコ前書記長がブッシュ副大統領に会ったときに、三十分会談したのでありますが、二点提案しているわけであります。
 そのうちの一点は、米ソ以外の国、例えばイスラエル、南アフリカ、パキスタン、ブラジル、アルゼンチン、具体的にこういった名前は挙げなかったようでありますが、この辺に核が拡散した場合に米ソがよく目配りをしなければならぬ、ここのところを非常に強調したようであります。中国が核戦争を求めているなどということは考えられないのですけれども、パキスタンが中国からノーハウをもらって核の開発に努めようとしていることは周知の事実であります。こういうところから、米ソのコントロールがきかないところでひょっとしたらひょっとした戦争が起こるのではないか、この懸念を私は非常に強く持っております。
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上田哲#10
○上田(哲)委員 SDI。
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田久保忠衛#11
○田久保参考人 私、先に申し上げてよろしいです小。
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上田哲#12
○上田(哲)委員 簡単でいいですから。
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田久保忠衛#13
○田久保参考人 それじゃ簡単に、続けて申し上げます。
 上田先生は、なぜSDIがにわかに脚光を浴びてきたか、そのとおりだと思うのであります。一月二日の中曽根・レーガンのロサンゼルス会談、ここでSDIの問題が出てきた。恐らく外務省、防衛庁なんかは前からやっていたと思うのでありますが、どうも日本は気づくのが遅過ぎるんじゃないかと私は思うのです。八三年の三月のレーガンの発表のときの新聞記事をよく見まして、全部チェックしてみたわけでありますが、なかなか問題の核心をついた記事はございません。政府その他でも、あるいは世論だけではなくて、国会も言論界も財界も官界も要するにわっとこれに飛びつけなかったのではないかというふうに思います。そういうところから考えますと、SDIに関してはもっともっと早くから気がついて研究に着手すべきだった。ただし、これは日本だけではございません。ドイツ、イタリア、フランス、イギリスその他も大変おくれをとっている。はっきり申しますと、これはアメリカのプレゼンテーションの仕方が非常にまずかったのではないか。つまりスターウォーズなどという表現をいつの間にか政府も否定しないで使い始めた。スターウォーズはSDIに反対する人々が使い始めた表現なんであります。レーガン大統領は、一月の九日だと思ったのですが、記者団の一人がスターウォーズ云々と言ったら、スターウォーズという使い方はやめてください、我々は初めからスターウォーズという言葉は使ったことがないんだということを言ったんでありますが、つまりレッテルの張り方が非常にまずい。それから、研究だけは、ABM条約に違反しないというんであれば、黙ってやればいいじゃないかと私は思うのです。それを何だか知らないけれども鐘や太鼓入りでわあわあ騒いで、恐らく内心しまったと思っているのがレーガン大統領じゃないかと思うわけです。
 私が申し上げたいのはいろいろあるのですが、もう一つつけ加えたいのは、軍事上の観点からではなくて、科学の進歩からいったらどういうことになるかなということを考えるのです。実はフランスとドイツの軍縮局長が相次いで日本に来られた。私ちょっとお会いしたんでありますが、そのときにそのお二方の片方の方が言っておられたんですけれども、欧州はハイテクに関しては日本とアメリカに完全におくれをとったと思っている、二十一世紀、科学の進歩は何が出てくるかわからない、その状況でSDIにつばをつけないとどんなことになるか、軍事以外の科学の進歩でまた決定的なおくれをとった場合にどうしようか、これが大変心配であるということを言っていたわけであります。私はSDIは別の科学的な見地から研究までを拒絶する理由はないんではないかというふうに思っております。
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上田哲#14
○上田(哲)委員 サッチャーさん……。
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田久保忠衛#15
○田久保参考人 サッチャー首相の件でございますけれども、事実関係から申しますと、サッチャーはアメリカに対して二回はっきりしたことを言っておるわけであります。一回は去年の十二月、二回目はことしの一月であります。それからゴルバチョフ書記長就任の際、チェルネンコの葬儀でありますが、これは三月の十三日であります。このときの会談では、サッチャー女史は前の表現を全部撤回したのではなくて、疑問点は確かにあるということをゴルバチョフとの間で話し合ったというふうに私は理解しておりますので、前の方針の変更ではないというふうに思っております。
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上田哲#16
○上田(哲)委員 最終的には賛成なんですか。
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田久保忠衛#17
○田久保参考人 賛成なんです。
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上田哲#18
○上田(哲)委員 ありがとうございました。
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神崎武法#19
○神崎委員 三点ほどお尋ねをいたします。
 一点は、先ほどの核戦争の可能性に関連いたしまして、アメリカでもカーター政権の時代からいわゆる核のハード面というものとソフトの面ですが、C3Iシステムについて、そういうテーマの研究、システムがどうということをやってきているという気がしますけれども、そういうことからいたしますと、先ほどのお話ですと、戦略核については使われない、そういう可能性があると言われるのですけれども、一応そういうソフト面を重視する動きというのがアメリカにおいてあるということは、むしろ戦略核を用いた核戦争の可能性というものを否定できないのじゃないだろうかというような気がするわけでありますけれども、特にアメリカにおいてそういうソフト面が重視されるに至った背景と申しましょうか、どういうふうにそれを見たらいいのかというのが第一点。
 第二点は、SDIの問題でございますけれども、レーガン大統領は非核兵器だということを言っておるわけでありますけれども、エックス線レーザーの核励起というのですかね、原爆なり水爆なりそれによって進めていくだろう。そういうシステムを考えられているようでありますが、今後の米ソの軍縮交渉の中にあって、このSDIなり宇宙兵器というものが核兵器として位置づけられるのかあるいは非核兵器として位置づけられるのか、その辺の見通しと核についての考え方。そういう兵器について、これは核兵器と考えるのか、あくまでもこれは非核兵器と考えるのか、それについてどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか。
 三点目は、ワインバーガー国防長官の発言に関連いたしまして、我が国が得意とする技術と申しましょうか米国が期待するであろう技術というのはどういう技術が考えられるのか、その技術協力に対して我が国として協力すべきかどうか、この点についてはお二方の御意見が分かれているように思われるわけでございますけれども、それについて簡単な理由をちょっとお示しください。
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青木日出雄#20
○青木参考人 まず、核戦争におけるC3I等の措置を重視する問題なのでありますが、これがはっきりした形であらわれましたのはレーガン大統領が大統領になりまして次の年、ですから八一年の国防報告に伴う演説であります。そのときから出てきたのですが、アメリカにいたしますと、あれだけの核装備を持ち、それから核戦略というのはアメリカの基本戦略でございますから、これがつかまれない形で維持をするということではできなかったろうと思う。ですから、実際に核戦争が行われた場合にアメリカで一番弱みがあるのは核爆発に伴うC3Iの途絶であるということで新しい防護措置等を進めることにいたしまして、それから戦略空軍の通信装置とかB52の通信装置とか、これについての核防護システムの予算をつけ始めたわけであります。ですから、アメリカにすれば核戦争が行われないという前提でやっているのではない、行われることがあるという前提でやっているということが事実だろうと思います。
 その次はSDIの問題で、先ほどの上田先生からの御質問にも関連するのですが、SDIは私どもが問題にし始めたのは一九八三年からだったのですが、これはちょっと言い方として極端に走るかもしれませんが、我々が当時から非常に疑問に思っていたことに日米の軍事技術協力の問題があったわけです。どうしてあの時期に軍事技術協力を言い出し、それからその後の日米間の話し合いを見ましてもさっぱり品目がはっきりしない。どちらかというと我々は民生用、一般用として開発をした技術について向こう側は言い出しているのではないかという疑問を持ちました。あの段階では実際に協力できるものがあるのだろうかという疑問があったわけです。ただ、先ほどから申し上げておりますように、今のSDIの基礎技術につきましてはずっと開発が行われておりまして、アメリカで、まだそのときはSDIではなくてBMDという名前をつけておりましたけれども、三軍を統合してこれの研究開発をやる予算がついたのが一九八四年予算からであります。ですから、この予算審議をやったのは八三年であります。ちょうどそのころに出たものではないかと思う。といいますのは、ことしの一月にレーガン・中曽根会談があった直後に、アメリカのSDIの開発担当者から日本に協力してもらいたい技術ということでぼろっと出たのがガリウム砒素と光通信だったわけです。どういうわけでこのときにもう一つ日本に要請してくるであろうマイクロ波の問題が抜けたのかなという疑問はございますが、とにかく例示として挙げましたのがガリウム砒素と光通信だった。先ほど田久保先生も言われましたように、実はこれらに関する高度技術がヨーロッパにはそれほどない。日本とアメリカにはいろいろな技術がありまして、その中で日本とアメリカで開発をしている技術で随分違っているものがある。その中でも大きく違っておりますのが光通信の技術ともう一つがスーパーコンピューターに関連をするガリウム砒素素子、それからジョセフソン接合素子、この二つについては日本が今トップレベルなのです。前から言ってきた防衛技術協力の中にやはりその項目があり、アメリカから調査団が来たときもその関連施設を見ておりますので。そうしますと、今までアメリカが開発してきたもので、開発を進めている段階で日本とアメリカで非常に技術的に相違があり、日本から欲しいという技術がある意味ではSDIに関連のあった技術だった。といいますのは、ガリウム砒素素子というのはほかの面にも随分使われるのですけれども、一番大きいのは、計算速度が速くて核爆発にも耐えられるということでこのあたりが一番ねらわれやすいわけです。御存じのようにガリウム砒素の結晶をつくる技術、その生産量も現在世界のシェアの六〇%は日本が占めておりますので{一番欲しい。それから同じガリウム砒素素子を使う技術も現在日本が世界一であります。ですから、そういう関連で言っているのじゃないかと思います。
 それから、どちらかと言えば一九九〇年代になって本当にSDIができるのかどうかわからないけれども、今基礎研究をやっておく、研究開発をやっておくというのは、それによっていろいろな利益ができるからだ。極端な言い方をしますと、アメリカの中で先端産業をやっているメーカーが日本との競争力をこれでまた押し上げることができるというようなある意味での下心があるのではないか。といいますのは、昨年参りましたアメリカからの防衛技術協力に関する調査団もヒューズの副社長が団長であります。ヒューズ社は御存じのようにアメリカでは軍事技術のトップメーカーであります。その中で、ヒューズ社でも足りなくて欲しいと言っているのが日本のスーパーコンピューターに関連する技術だったということから言うと、そのあたりにも関連があるのではないかと思います。
 それから、最後に核兵器かどうかの問題なんですが、それは、ヘリテージ財団から出ている「ハイフロンティア」でも推奨している兵器はKEW(運動エネルギー兵器)と言います高速射出体、レールガンと我々呼んでいますが、これは非核兵器です。爆発力もない、衝突で壊すというような兵器だ。もう一つ、今度はDEWという指向性エネルギー兵器というのがありますが、これがレーザーとか中性子とかを使うものなのです。八四年予算からアメリカでは予算配分をしておりますが、八四年、八五年と続きましておのおのの技術についてほとんど同じような金額の割り当てをしております。ただ、その中でも一番金額が大きいのがエックス線レーザーの兵器についてです。それから八三年に先ほどのフュージョン・エネルギー財団から出ました「ビームディフェンス」でも、これははっきりエックス線レーザーが究極のビーム兵器であって、これをやらなければいけないという書き方をしています。
 それから、レーガンが諮問委員会をつくりましてそれに諮問した結果では、二つの答えが出ました。一つの委員会ではエックス線レーザーを最良というふうに出しております。もう一つの委員会は、これはワインバーガー国防長官が議長になりました政府の各局間委員会というものですね。こちらの方はエックス線レーザーを抜いております。抜いたというのは、エックス線レーザーが一番効果があることはわかっておりますけれども、これを励起いたしますのは水爆しかございません。そういたしますと、エックス線レーザーは重量は非常に小さいものですから衛星搭載で回すことができるんですが、最小限度四十三個と言っておりますので、四十三個の水爆を地球の軌道に回すとすればやはり核兵器と認めざるを得ないだろうし、そうすると現在の宇宙天体条約にはっきりひっかかる、とするとだめだという、その配慮で各局間委員会では落としたんではないかと思うのです。
 ただ、先ほども申し上げましたように、現在でも予算はほとんど均等に配分されておりますけれども、その中でも多いのはエックス線レーザーの開発についてであります。それから、その中でも幾らか少ないのは中性子のビーム兵器でありまして、これは今までの開発の結果で収束するのは難しい。ですから、あるいは数年中に開発の目標がら除かれるのではないかと思います。ただ、今はわかりません。化学レーザー、それから中性子等の粒子兵器、パーティクルウエポン、それとエックス線レーザーと三つ並んでいて、そのうちのエックス線レーザーははっきり核兵器と認めるしかないだろうというのが現状であります。
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田久保忠衛#21
○田久保参考人 二つばかり申し上げたいと思います。
 私は科学技術の知識は非常に乏しゅうございましてお恥ずかしい次第でありますが、まず最初の日米の科学技術の協力でありますけれども、これは内容が今のところ漠としてわからないものではないか、である以上、日本としても欧米、特に欧州諸国の動向を見守る必要があるのではないかと思います。
 そこで、まず私が気になりますのは西ドイツであります。今のコール政権のもとに、実は去年の九月でございますが、総理府、恐らく首相直属だと思うのでありますが、ここにSDI関係の機関ができた。しっかりした機関ができまして、科学者、物理学者、それから戦略家、政治学者、その他たくさんまじっているわけでありますが、本格的な研究機関が政府として確立した。こういう機関をつくって日本もしっかりした検討を進めるべきではないか、こう思うわけであります。
 もう一つ、二月のミュンヘンの会議でございますが、コール首相がSDI関係についてアメリカとの共同研究に西ドイツは参加したい、こう言ったわけであります。ところが、相前後するのでありますが、リチャード・バート国務省国務次官補はほかの会議でこの発言に関連して、これは大いに結構だ、しかしこれをやっているうちに情報がソ連に漏れるおそれがあるというようなことをちょっと言ったわけであります。実際に共同研究に参加しても情報が漏れるかどうか、ここのところが非常に問題になってくるのではないかな、私は問題点として申し上げたいわけであります。ただ、科学技術の進歩でありますけれども、人類発生以来科学の進歩をとめられた例があるかどうか、私は大変疑問だと思うのであります。そこで、二十一世紀、これは単なる一視点から見るのではなくて、二十一世紀の大きな科学の進歩に我が国みずから鎖国をする必要はないのではないかなというふうに私は考えております。これが第一点であります。
 第二点、SDIが核兵器かどうか、これが米ソ交渉で問題になるのではないか、どういうふうに位置づけたらよろしいかという先生の御質問であります。
 青木先生がおっしゃったとおりと思われますが、私はこの交渉で問題になるのは、核兵器か核兵器でないかということではなくて、研究段階でこれを認めるかどうか。今アメリカ側はあくまでも研究、それ以上の何物でもないという言い方をしているわけであります。研究段階で、これが開発の段階になる。開発ができますと今度は展開になる。この真ん中の開発のところがアメリカもソ連側もイギリスを先頭にした欧州も何となくぼやけていて、研究と展開、ここのところが問題になっているようでありますが、開発の部分がむしろジュネーブ交渉では米ソ間で大きな問題になってくるのではないかなと思うのであります。研究に関しましてはソ連ももうやっているわけでありまして、どっち側も懐の中を見るわけにいかないけれども、検証不能でありますから、ただソ連側が一切研究をやっていなくてアメリカの研究だけを非難しているというふうには信じがたいというふうに思っております。したがって、ジュネーブの交渉の焦点は、核兵器かどうかという定義もさることながら、研究を一歩進めるのかどうか、その次の段階が米ソ間で大きな問題になるのじゃないかというふうに理解しております。
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藤原哲太郎#22
○藤原委員 青木先生、田久保先生、貴重な御意見を承りまして、どうもありがとうございました。
 私はずぶの素人でありまするが、素人なりに感じたことでひとつお教えをいただきたいというふうに思うわけであります。
 よく核を検証するということが言われるのでありますが、検証の仕方というのは衛星システムでやるような場合もあるし水中システムで核を検証するという場合もあると思うのですが、実際具体的にこういうことが可能かどうかということもちょっと素人なりに思うのですが、この辺のことについて御見解があればお示しをいただきたいと思うことが一つであります。
 それから、日本にとりまして、米ソがいわゆる雪解け時代と申しまするか、緊張緩和の一つの傾向があるということは大変望ましいことであるわけでありますが、そういう中にあって最大の関心事は、今ジュネーブ会議その他でようやくテーブルに着いているのですけれども、米ソの首脳会談というものが具体的に持たれるであろうか、あるいは持たれるとしたら両先生方のお見通しとしてはいつごろだろうというようなところまで、これは見通しの問題でございまするので、その辺の見解を伺いたいと思います。
 それから、これからは北極中心の米ソの戦略ということが大変新しい、私どもは余り知らない面というのが出てきておりまするけれども、こういうものに対してどのような、今どういう状況になっているのかということでございます。もしそういうことをお教えいただいたらありがたいと思います。
 それからもう一つは、いわゆる米ソ二大大国、世界の中がどちらかといえば真っ二つに分かれているような形なんですが、やはり今度のジュネーブ会議なりこういうテーブルに着くような段階になったということは、米国を中心としたいわゆるNATO勢力を初めとしたそういうものの軍事勢力というか、そういう勢力がやや強くなってきたというか、優位になってきたというか、そういう状況のもとでこういう会談が開かれるようなことになったのか、この辺のところも大変関心のあるところでございますので、ひとつ御見解があればお示しいただきたいと思います。
 以上の四点、恐れ入りますが、よろしくどうぞお願いします。
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青木日出雄#23
○青木参考人 まず核兵器の検証の問題でございますが、現在検証可能なのは前のSALTの、米ソ間の核兵器制限交渉以来の戦略核兵器の検証でございます。戦略核兵器の検証につきましては、条約条文上は技術的手段とだけ書いてありますが、技術的手段というのは両者の偵察衛星であります。ここの話し合いでまとまっておりますのは、両方とも今までの戦略核兵器はサイロに収納してあるので、あるいは潜水艦に搭載してあるので、サイロの数を数えることと潜水艦の数を数えること、ここまでは偵察衛星で可能なわけでございます。ただ、逆に最近それが問題になってまいりましたのは、移動可能なミサイルをどう数えるか。実は数える手段がないわけですよね。その辺で問題になっているのですが、とにかく今までの検証というのはそれだった。次が両者の行います、今地下核実験しか認めてませんが、地下核実験の回数であります。これによってどれぐらいのものを開発しているかが大体わかってくるということで、この二つしか検証――これは地震の測定器のようなものを使いまして地中波を測定することによって地下核実験を探知できるということ、この二点であります。それで、私どももこういういろいろな数字を書いたりしておりますが、一番やっておりますのがスウェーデンのSIPRI研究所でございまして、ここでやっております核兵器の推定というのは核兵器の材料の使用量からの推定であります。特にその中で核兵器の材料になるウラニウムやプルトニウムではございませんで、これの発火、着火に使うためのものでございます。これの使用量の推定によりまして核兵器の毎年の生産量を出すというようなことで推定しております。ただ、これは検証の方法がないのでそういう希少金属がどれぐらい移動しているかということで見るしかないというような現状でございます。
 それから二番目は、米ソの首脳会談ですね。実はジュネーブの会談にも非常に関係すると思うのですが、現在ソ連側が言っているジュネーブ会談の会期は八週であります。主要な会談は一週二回、今度は第三部会が始まりますので少し変わりますが、少なくとも戦略兵器に関する会談は一週二回でありますから、八週間で十六回、従来の交渉の経緯を見ますと、INF交渉にしろ前のSALTⅡの交渉にしろ非常に時間はかかっておりますが、第一会期の末に両方から提案を出し終わりまして、そこで第一会期が終わって休会になって、両方の代表がそれを持ち帰って、そこで、合意するものは合意する、話がまとまらないものはどうするかとも決めております。有名なジュネーブの森の中の合意というものがINF交渉でございますが、これもやはり第一会期から第二会期に入るときであります。ですから、今までの交渉は非常に長くかかっているように見えますけれども、割に大事なところは第一会期で提案は終わっておる。第二会期で両方がそれをどうするかという案を出し尽くし終わっておる。そうしますと、第一会期から後ろに休みがありまして第二会期が同じぐらいにあるとしますと、ことしの夏か秋には大体出尽くしているということです。そうしますと、やはりことしの九月ごろに、秋の国連総会というものが非常にいい機会でございまして、もしこれにソ連の共産党書記長が出席をいたしますと、そこで、はっきり話し合う材料はございますので、これは首脳会談になる可能性は非常に高いと思うのです。もしそれが行われますと、最終的な妥結はできるかどうかはわかりません、まだ手続上の問題は非常にいっぱいございますから妥結はできるかどうかわからないけれども、戦略兵器とか欧州の核戦力の問題についてはほぼ見通しが決まってしまうというふうに私は考えております。
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田久保忠衛#24
○田久保参考人 最初に検証の問題ですが、青木先生のおっしゃったことに余りつけ加えることはございませんが、例えば検証と言った場合に、米ソ両国の検証あるいは二番目は第三国が検証をするのかということでございます。米ソの場合もいろいろやっているようであります。ただ、地下核爆発実験、地下の実験でありますけれども、これもいろいろ問題があるのではないかと思うのです。岩盤の強さ、強弱によってなかなか判定が難しい、極めて難しい状態ではないか。米ソ以外の、例えば日本は、先ほど申し上げましたように、口では幾らでも言えるのですけれども、技術的に、写真を撮る技術があるのか、それを鑑定する技術があるのか大変難しいのではないかというふうに思います。軍縮にこの辺から手がかりをというのは大いに結構なんですけれども、これはもう少し詰めないと難しい問題ではないかなというふうに思います。
 それから二番目でございますが、首脳会談の問題であります。
 この首脳会談は、少し申し上げますと、去年の六月十四日にロンドン・サミットから帰ってきたレーガン大統領に、当時のベーカー上院院内総務、共和党であります、それから共和党のパーシー上院外交委員長の二人がホワイトハウスに駆けつけまして、どうも大統領、大変だ、民主党のモンデールが、前のカーター、フォード、ニクソンはすべてソ連の首脳と会談しているじゃないか、レーガンだけが会談をやらない唯一の人間だと言っているが、これは困ったことだ、あなたは何とかしないとと言ったら、さすがレーガンであります。翌日、十四日にホワイトハウスで全米向けテレビ放送の中継をさせて、いつでもいい、場所はどこでもいい、議題は何でもいい、無条件の首脳会談を提案したわけであります。これが去年の六月十四日です。ところが、その後ソ連からは余り色よい返事がなかったわけです。
 二度目は、今回の三月十三日の葬儀にブッシュ副大統領がレーガン大統領の親書を持っていったわけであります。これは異例な丁重な親書で、三ページにわたるものであった。首脳会談だったら一行でいいのじゃないかと私なんか思うのでありますが、非常に丁重なものであった。これは西側の首脳が全部葬儀に出席しているのに、レーガン大統領だけが欠席したわけであります。これはセキュリティーそれからロジスティックスなどいろいろな問題があったようでありますが、それで行かなかったのだろうと思うのであります。そのかわりに大変丁重な提案を出した。ゴルバチョフ書記長はフランスの招待は受けた、西ドイツの招待も受けた。ところがブッシュの招待だけは受けていない。これは拒絶したのではなくて、イエスともノーともまだ言っていないわけであります。
 そこで、この問題はどういうことになるのかということでございますけれども、先ほど私が申し上げましたように、ソ連はジュネーブ交渉に出ざるを得ない、そういう理由がたくさんあるわけであります。したがって、ジュネーブ交渉の中身が詰まろうと詰まるまいと、レーガンと会いたいとゴルバチョフは内心思っておるのではないかと私は考えているわけであります。
 そこで、首脳会談としてはいつがタイミングがいいかということでございますが、第一は五月説、第二は八月説、三番目は九月説なのであります。
 五月というのはどういうことかといいますと、五月の初めにボンでサミットが行われます。この後側のVEデー、ビクトリー・イン・ヨーロッパ・デー、第二次世界大戦で、日本はまだやっていたわけでありますけれども、欧州が勝った、この戦勝記念日、これがボン・サミットの直後に開かれるわけであります。ここに、第二次世界大戦をともに戦った米ソですから、ゴルバチョフを呼んではどうか、これが一つのチャンスになるぞという考え方があるわけであります。
 二番目の八月説というのはどうか。これは、全欧安保協力会議が閉幕したのがちょうど十年前であります。東西関係があの当時大変よくなったと言われたわけでありますが、ちょうど十周年で記念の行事が行われる。ここに東西関係のシンボルであるレーガンとゴルバチョフを出席させて首脳会談をやったらどうか、これが第二の案であります。
 三番目は、秋の国連総会でありますから、九月になりますね。これは、ゴルバチョフが書記長になりまして、まだ五十四歳でありますから、世界に顔見せする絶好のチャンスである。恐らくゴルバチョフが行くであろうと私は思うわけであります。そうすると、レーガンも、去年も行きましたから、行って、ちょうどいいチャンスになるのではないか。実は、おとといでありますけれども、リーガン大統領首席補佐官が記者会見でこの問題を聞かれまして、九月はいい機会だというようなことを言っておるわけであります。きのうはレーガン大統領が、九月がもしゴルバチョフ書記長にとって都合がよければ自分はこれを受け入れるのだというようなことを言っております。
 五月説、八月説、九月説の中で、私がたれが考えてもごく自然だなと思うのは九月説ということでございます。
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藤原哲太郎#25
○藤原委員 簡単で結構でございますが、先ほどのあと二点は、北極中心の米ソの戦略の問題と、例のいわゆる米ソの軍事バランス、この二つについてお聞かせいただきたいと思います。
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青木日出雄#26
○青木参考人 最近言われるようになったのですが、実際には米ソの対抗している場所は北極中心でありまして、両方とも、防衛網にしろ戦略ミサイルの攻撃基地にしろ北極を挟んでおります。ただ、従来幾らか違っておりましたのは、潜水艦発射の弾道ミサイルは北極を越えて飛ぶ能力がございませんでしたので、両方とも太平洋及び大西洋に展開していた。それが今また射程が延びてまいりましたので、北極中心あるいは北極に非常に近いところ、ソ連の場合はオホーツク海から、それからアメリカの場合にはワシントン州、一番北ですが、アメリカとカナダの国境になりますが、その付近の沿岸から発射できるようになった。それで全部の戦略体制が北極中心になったというのが現状でございます。
 二番目のバランスの問題なんですが、正直に言いまして、現在アメリカもソ連も事戦略核兵器についてはオーバーをしておりまして、必要量をはるかに超えてしまっているのです。これは、両方が競争をやった結果そうなったと思うのですが、今の戦略核兵器で注目していいと思いますのは、ソ連の方でいいますと、SS13それからSS11の両ミサイルでございます。その中でも特にSS13に至っては、配置をしてから既に二十年近くになっておりますが、その間わずか六十基を配置をしただけで一回も交換をしていない。要するに、これはもう余っている兵器ということなんですね。アメリカでいいますと、ICBMですが、現在一千三十七基あったと思いますが、そのうちの一千基がミニットマンでございます。ミニットマンは、これはいろいろ経緯がございますけれども、ミニットマンのⅡ型四百五十基、Ⅲ型万百五十基というのはここ十年間がわっていないわけでございます。八三年に弾頭をかえた新しいⅢ型を配置いたしました。そのときに古いⅢ型、同じⅢ型同士で交換をいたしまして、前からあるミニットマンⅡ型、これはずっと古いわけでございますが、これの四百五十基には手をつけなかった。要するにこれもジュネーブの米ソ間交渉で――いずれにしろレベルが下がることはわかっておりますので、それの削りしろだと思うのでございます。両方ともそういう削りしろを既に準備をしておりますから、それが一番初めに申し上げたジュネーブ交渉で、戦略核兵器交渉というのはまとまる公算が非常に高いだろうというのはそのためであります。
 こういう交渉、SALT、START、今度のジュネーブ交渉というふうに交渉が続いてまいりましたのも、両方ともあるバランスをとれる量というのは既に充足をいたしまして、その上の数というのは両方とも余った数だ、だから削減をする、縮小をするという交渉が成立しているのだというふうに考えます。
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東中光雄#27
○東中委員 共産党の東中でございます。
 青木参考人にお伺いしたいのですけれども、レーガン政権になって核戦力が非常に増強されてきた、そういう状態。特に戦域核、戦術核が増強され、配備が非常に進んでおりますが、日本との関係で言えば、F16の攻撃機の配備がいよいよ始まってまいります。カール・ビンソン、トマホークの配備がやられて、核積載可能艦がどんどん寄港してきている。こういう状態で日本の、アメリカの戦域核などの根拠地化が進んでいるということが言えると思うのです。そういう点で、アメリカの核戦力増強と日本の立場、特にF16なんかの配備の関係などについて、御造詣の深い参考人の方からお考えを聞かせていただきたい、こう思うわけであります。
 それから青木先生、田久保先生の両方にお伺いしたいのですが、SDIについて、今非核かどうかということについてお話を承ったわけでありますが、中曽根首相は、レーガン大統領から聞いたのだということで、三つのことを盛んに言われておるわけであります。非核の問題が一つと、それから防御兵器であるということ、もう一つは、核廃絶に向かって役立つものなんだ、こういう点でその研究に理解を示してきたのだ、こう言われておるわけでありますが、非核のことはお伺いしたわけですけれども、防御兵器というふうに言えるようなものなのかどうか、それから兵器の性格からいってそういうことがあるかどうかという問題もありますし、とりわけ廃絶に役立つ兵器というのは、どうも私たちはむしろ宇宙への核拡大というふうに見ざるを得ないわけなんですが、御意見をお聞かせ願いたいと思うわけであります。
 田久保先生にもう一つお聞きしたいのは、抑止と均衡論を言われたわけですが、私たちは抑止と均衡論というのはむしろ核軍拡競争をあおっていく、そういう論理だ、事実が示しているというふうに考えておるわけでありますが、それで国連事務総長だったワルトハイムの「核兵器の包括的研究」で言っているあの有名な見解、「抑止の過程を通じての世界の平和、安定、均衡の維持という概念は恐らく存在する最も危険な集団的誤謬である」という批判を最後のところでやっていますけれども、そういう見解についての御意見をお聞かせいただきたい、こう思うわけであります。
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青木日出雄#28
○青木参考人 アメリカの核戦略と日本との関係なんでございますが、非核三原則を持っている日本にアメリカが核兵器を陸上配置あるいは陸上に配置をする航空機に積載しようとするかどうか、これについては今のところ何とも言えないわけで、ただアメリカ軍が今まで公表しております範囲では、極東におけるアメリカの核戦力は海上配置であるということを言っておりますので、核を積載している艦船についての取り扱いはどうかということと、陸上に配置をされるF16の取り扱いはどうかということでは幾らか相違があるのではないか。
 それから、二番目は、これもまだはっきりした、公表されたことではございませんけれども、三沢にF16二個飛行隊参りますが、二個飛行隊のうちの二分の一個飛行隊を韓国の群山に移動させる、現在沖縄からF15の二分の一個飛行隊が韓国の鳥山に行っておりますが、それと同じ形でローテーションをさせて配置をするということを非公式にアメリカ軍側は言っております。そうしますと、三沢のF16というのは極東のアメリカの空軍戦略の一部として考える、そちらの方が強いのではないかと思うのです。ただ、場所が三沢でございますので、日本の中で、北海道を除きまして、本州から沿海州、それから南千島、樺太、この三沢の地域まで戦闘機が航続力を持てる限界は三沢であります。それよりも南側では戦闘機自体では航続力を持てない、そうすると、やはり北東アジアでのアメリカの戦力バランスを考えた配置というふうにも考えられるわけです。そのときの戦力バランスとなりますと、空軍の場合にはやはり核戦力が中心になりますので、そうすると三沢の陸上配置をしたものについても核を考える必要があるのかなという疑問も出てまいります。ただ、これについてはアメリカ側からは何の説明もない。
 両者に関連をいたしまして、午前中にお話をしたときにちょっと落としてしまったのですが、いわゆる安全保障理事会決議の中にあります非核兵器国について定義がはっきりしないのです。一九六八年に安保理事会で決議をした当時、海上配置の核兵器というのもほとんど空母に限られていたのです。ですから、空母だけを問題にすればよかったわけです。現在のように潜水艦にも駆逐艦にも巡洋艦にもというふうに非常に核兵器の配置数がふえた場合に、拡散していった場合に、外国軍隊の艦船が入港することが核兵器の持ち込みに当たるかどうか。それが持ち込みに当たるとすれば、ある意味では非核兵器国の権利なわけですね。核攻撃を受けない、核脅迫を受けないというのは権利なんですが、それが守られるのかどうかが、今は当時の決議を見ただけでは何とも言えないわけでございます。
 これは世界的にもいろいろな議論もございまして、ラテンアメリカのように非核地帯の条約がある場所は問題ないのですが、そのほかの場所では、例えばNATOの国の中でもデンマークとノルウェー、この二国は平時における外国軍隊の核兵器の持ち込み禁止であります。ですからアメリカも巡航ミサイルもこの二カ国には配置しようとしない。それから現在まで核を積載している艦船が入港しているという疑いを持たれたこともございません。それからANZUSの諸国、オーストラリア、ニュージーランドでは以前は核を陸上配置することだけを禁止していた、外国軍隊が陸上に配置することを禁止していたのです。根拠は、入港している艦船、特に当時は空母でしたから、空母が入港しているときはそこから飛行機が発進できませんので、核戦力を発揮することができない、だから問題ないんだというのが解釈だったわけです。それが現在のロンギ政権になりまして、今事情が変わってきて、例えば巡航ミサイルならば入港している艦船からも、発射することができる、そうしますと入港についても陸上配置と同様な核持ち込みになるということで入港も拒否をしたわけです。ですから、一番初めのもとは皆同じような考え方なんですが、現在の核兵器の配置とそれの状況に応じて各国の解釈がばらばらになってきたのです。
 そこで、ことしは五年ごとの見直しの時期なんで、非核兵器国、これは日本も広島、長崎の災害だとか非核三原則だという考え方を全然抜きにいたしまして、現在の非核兵器国が安全保障理事会の決議と核防条約を誠実に履行するという点からも、非核兵器国というのは何で、それは艦船の入港も非核兵器国の権利を失うもとになるのかならないのかというものをはっきりすべきだ、そのあたりがないと、現在でも世界じゅうで揺れております核の持ち込みについての解釈が統一できないというふうに私は考えております。
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田久保忠衛#29
○田久保参考人 簡単にお答えいたします。
 SDIは防御用の兵器かどうか、攻撃用の兵器なのではないか、これは実は海のものとも山のものとも本当にわからないのであります。少なくともレーガン政権から公式に発表されるものを読む限り、これを攻撃用兵器とは認めにくいのではないかというふうに思うのです。このことも釈迦に説法でございますけれども、ブーストの段階からねらっていく、要するに向こうで上げなければ、先制攻撃はもちろんできないわけでありまして、向こうの攻撃用の兵器に対してこれを防御するということでございますから、これが無限に軍拡をもたらすというふうには私はどうしても解釈できないわけでございます。これは先生とちょっと見解が違うかもしれません。
 それから、これはイギリスもそうでございます、西ドイツ、イタリア、フランスもそうでございますけれども、このSDIに対する不安は、SDIが攻撃用の兵器がではなくて、SDIがだんだんできていくとSDIをペネトレートつまり貫通していく、この兵器をソ連がつくり出していくのではないか、それに対してまた新しい兵器をつくるのではないか、ここで軍拡が起こる可能性がある。したがって、スタートのところでこれが攻撃用の兵器であるからという議論はちょっと西側では見当たらないのではないかなというふうに思っております。
 それから抑止と均衡の議論でございますが、これはやはり戦後アイク、ダレス時代のニュールックあたりから相互確証破壊の理論がずうっと続いてきて現在に至っているわけでありますが、現実の問題としてこれ以外にはどうも、今の国際情勢はこの理論をやめて成り立つような国際情勢ではないのじゃないかというふうに私は考えております。しからば今のMADはいいのか。このSDIはそこのところが今の相互確証破壊の理論の中で、どうもどんどん相手がいろいろな兵器をつくっていく、SALTのときにはローンチャーを制限した。その後すぐ多弾頭の兵器ができてしまった。これは抜け道であります。今どうもそこの抜け道をどんどんつくっていく。相手の兵器をカウントできない。それから移動する。これがどんどん続いていくと、やはりどうしても防御用のSDIの方向に世界の体制が徐々に向かっていくのはやむを得ないのではないかというふうに、最初の御質問の関連でございますが、そう思うのであります。
 それから、ソ連も実はSDIに真っ向から反対しているというふうには思わない。私は、ソ連もずっと続けていくであろうと思うのです。
 先ほどちょっと御紹介申し上げました、これは賛成論で恐縮なんでございますが、民主党の三人組なんでいいだろうと思うのですが、ニューヨーク・タイムズ・マガジンに出たカンベルマン、それから例のジャストロー、ブレジンスキー、三人の議論なんであります。彼がここで言っていることは、
  米国の戦略宇宙防衛が拡大すれば、攻撃力の規模を漸減することが現実的に可能となる。最初米国、そしてやがてはソ連にも訪れるこのような過渡期には、本当に防衛に専念した姿勢をとることになり、双方とも相手に第一撃を加える脅しをかけず、したがって安定した状態が生まれるだけでなく、もっと広範な軍縮協定を追求する上で最大の助けとなるだろう。何とか新しい軍縮の局面を、きっかけをつかもうということでこのSDIができたというふうに私は理解しておるところであります。抑止と均衡の議論に関連してちょっと申し上げました。
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