青木日出雄の発言 (安全保障特別委員会)

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○青木参考人 まず核戦争の可能性なんでありますが、歴史的に考えまして、大量殺人兵器とかあるいは残虐兵器の使用停止というものは、通常はその兵器ができて、使われて、結果がわかったときにすぐ行われているわけです。
 古くはダムダム弾の使用停止。これはまだイギリス植民地時代のインドのダムダムで使ったときに、直後に使用禁止の決議が行われている。それから毒ガスについても、第一次大戦でドイツが使いまして、これも直後、約一年で禁止決議ができたと思うのです。ところが、不思議なことに核兵器についてだけは、一九四五年に二発使われまして、その結果どこからも禁止の決議が行われなかった。それからもう四十年たっておりまして、その間禁止をするような協定も条約も何もないわけですね。ですから、今までの兵器の歴史からいいますと、こういう途中ではっきりした禁止決議のないものは使われる可能性があるものと考えでいいのではないか。
 その次は、毒ガスにつきましても第二次大戦の終末期ごろには相当の貯蔵量があったのですが、それに比べましても核兵器の貯蔵量は非常にふえておる。これだけふえたものが使われないで済むであろうか。これは数の上からいうと、どうも使われそうだということになると思うのです。
 三番目には、現在核兵器は使われない兵器になるのではないか。それは余りにも大きな被害を及ぼすので、もし米ソ間で核戦争が戦われれば両方とも共倒れになってしまう。
 確かにそうなんですが、そういう理屈で使われない兵器と言われるのは戦略核兵器でありまして、戦域核兵器とか戦術核兵器はそうではあるまい。どちらかといえば、アメリカもソ連もそうなのですけれども、通常兵器化をねらっておりますし、それから各部隊とも装備の中に核兵器は含まれてしまっている。例えば、アメリカ海兵隊の上陸作戦のマニュアルで核兵器の携行量をはっきり示してあるわけです。例えば、核砲弾が幾ら、核地雷を幾ら持っていくということをマニュアルの中で示してあるくらいです。これはアメリカのマニュアルを見たからアメリカの例を引くのですけれども、そのほかの国でも、核を持っている国は戦術核兵器についてはやはり同じ扱いをしているのじゃないか。そうしますと、局部的には使われる可能性というのはふえこそすれ減ってはいないと思うのです。
 それで、先ほど言いましたように米ソ間で全面核戦争が起こる確率というのは極めて少ないだろう。特に、その中でも核戦争が起こって一番耐えられない国はアメリカであります。核を保有していない国では恐らく日本だろうと思うのですけれども、アメリカが一番弱味がある。それだけに逆にソ連に対する優位を求めてそれを抑止力にしようとするわけですが、そういう状態からいうとアメリカとソ連の間の全面核戦争というのは起こらないかもしれない。ところが、両者の戦略核兵器と切り離された状態、今のヨーロッパで非常に心配しているのは、アメリカ、ソ連の本土には関係ないという状態で、地域的にとか前線にとかで使われる可能性というのは逆にふえているだろうと思うのです。
 小説とか映画を例に引くのは余り好ましくないのですが、「ザ・デイ・アフター」という映画があった。あの映画の中で、割に初めの方ですが、あれは西ドイツで核戦争が起きたときから始まるわけです。そのときにあの画面の中でテレビが出てまいりまして、テレビの解説者が、これが全面核戦争になることはないだろう、これは表現が余りよろしくないのですけれども、アメリカはハンブルクとシカゴを置きかえるつもりはない、そういう説明をしているのです。ですから、たとえハンブルクがあるいはフランクフルトが核兵器で壊滅をしても、それとリンクしてアメリカが立ち上がって、結果としてシカゴを壊滅させるつもりはないという言い方です。では、アメリカはどうしたかというと、いわゆるカウンターフォースという形なのですけれども、両方の核基地をたたき合うということであの映画は終わっているわけです。それは一般的な感情だと思います。そういうことで全面核戦争が起こる確率は非常に少ないけれども、局地あるいは前線での核使用というのは起こり得る可能性が高いだろう、それは特に米ソ両国とも、艦船にしろ部隊にしろ核兵器を分散し過ぎてしまっているということにあると思うのです。
 それから、次に起こり得ますのが今の核拡散防止条約に違反をしましてどこかの国が核兵器を持ったとき。よく例示として挙げられますのがイスラエルとか南アフリカであるわけですが、実際に疑いもあるわけですね。これも御存じだと思いますが、SDIが出ました一番初め、一九八二年にヘリテージ財団から出た「ハイフロンティア」という本であります。これに書いてあるのです。それから、八三年にフュージョン研究所から出ました「ビームディフェンス」という本にも出てくるのですが、その当時はまだSDIという言葉はございませんでバリスティック・ミサイル・ディフェンス、BMDという言葉だった。それをビーム兵器とか高エネルギー、高速度兵器を使ってディフェンスしなければならないのは、米ソ間の核戦争を考えているからではない、第三国から不正規に飛んでくる核ミサイルがあったときにそれをとめなければならないのだという書き方をしているわけです。これは米ソともに利益になることだという説明です。というので、一つは現在核防条約にも入っていないフランスとか中国の核が使われる可能性というのを少なくともアメリカ、ソ連は大分恐れているようです。
 それから、それ以外の国で核の敷居に達している入り口国というのが世界で九カ国とか十一カ国とかと言われますけれども、可能性のある国が随分ございますので、それが持ったとき、それが持って非常に不利府立場に追い詰められたとき。イスラエルとか南アフリカが例に出るのはそのためなのですが、このときに何かを使おうとするかもしれない。それも単に自分の生存を守るためというだけではなく、それを国際的に問題にするためで、本当はイスラエルや南アフリカにアメリカが核攻撃されるというのは理論的にはない、国際情勢からいってもないのですけれども、逆にそれを引き込むためにそういう核の使われ方をするかもしれないというのが「ハイフロンティア」や「ビームディフェンス」に書いてあることなのです。
 ですから、そういうことでいろいろな形で核兵器が使われる可能性は、現在もあるし逆にふえつつあるのではないかと考えます。

発言情報

speech_id: 110203818X00319850327_008

発言者: 青木日出雄

speaker_id: 7102

日付: 1985-03-27

院: 衆議院

会議名: 安全保障特別委員会