多賀谷真稔の発言 (社会労働委員会)
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○多賀谷議員 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、ただいま議題となりました職業安定法の一部を改正する法律案及び情報処理業務に係る労働者派遣事業の規制及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する臨時措置法案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
我が国の雇用構造は二重構造であると言われ、かつてOECDが日本の労働事情に関する調査団を我が国に派遣した際に、「日本にはセカンド・シチズン、第二市民がいる」という指摘がなされました。
我が国においても、戦後の当初は、中間搾取の排除を定めた労働基準法や、労働者供給事業の禁止を定めた職業安定法の制定等、労働関係の民主化が行なわれたため、工場内において下請労働者を見出すことはほとんどできませんでした。しかるに、一九五二年、昭和二十七年に職業安定法施行規則第四条が改正され、労働行政の指導方針が変更されたため、社外工という名の下請労働者が生まれ、次第に増大してまいりました。
こうした下請労働者の実態を見ますと、鉄鋼、化学、造船等の社外工の労働災害被災率は、本工労働者の二―三倍となっており、所得面では七割程度にすぎないなど、極めて劣悪な労働条件のもとで働いております。
ところで、欧米諸国においては、労働組合が職種別あるいは産業別に組織されており、同一労働、同一賃金の考え方に基づく職種別・職能別賃金体系が社会的に確立しております。しかしながら我が国においては、労働組合はほとんどが企業別に組織され、賃金体系も終身雇用を前提とする年功序列型が根強く、欧米諸国に見られるような職種別賃金体系とはなっておりません。このため我が国においては、下請負制度を通じて中間搾取的な要素が持ち込まれる余地が存在しているのであり、また実際、下請負制度が導入され、雇用の二重構造が拡大してきたのであります。
今日、労働者派遣的事業といわれるものが数多く存在しているのも、こうした事情と無関係ではありません。労働者派遣的事業と一口に言いましても、その実態を見ますと、その事業内容には一括作業請負型もあれば、単なる労働者派遣型もあり、労働者の雇用形態には常用雇用型もあれば、いわゆる登録型、つまり随時雇用型もあり、業務内容には単純業務型もあれば専門技術型ないし熟練業務型もあり、さらに、派遣先企業における派遣労働者の受け入れ方を見れば恒常業務型もあれば臨時業務型もあるというように、その実態は、実に多種多様であります。しかし、総じて言えることは、派遣的労働者を受け入れる企業においては、派遣労働者は、労働コストを引き下げるための手段、安上がり労働力として位置づけられているということであります。このため、派遣される労働者は、雇用の不安定性、賃金を初め労働条件の劣悪さ、使用者責任の不明確さ、さらには社会保険、労働保険の適用上の問題等、さまざまな問題を抱え込む結果となっております。
労働者派遣事業については、確かにEC諸国の中にも、これを認め、それに関する法律を制定している国がありますが、これらの国のほとんどは、受け入れ企業において一時的に労働者が欠けた場合の臨時的対応策としてのみ認めることとしており、かつ、派遣労働者の労働条件については、受け入れ企業における類似の労働者の賃金を下回ってはならないこととする等、同一待遇の原則が貫かれております。
そこで我が党は、派遣労働問題については、以上概略述べましたような派遣的労働者をめぐる状況を踏まえ、労働者の保護、権利保障の観点から、次のような措置を講ずる必要があると考えます。
その第一は、実態から見て労働者供給事業にほかならないようなものについては、職業安定法第四十四条の規定に基づき、これを厳格に禁止する必要があります。
第二は、核家族化、女性の社会的進出、高齢社会化等の社会的変化に伴う労働者の就業希望の多様化についてでありますが、こうした就業希望が増大しているにもかかわらず、それにこたえる責務がある公共職業安定機関は、その組織体制においても機能においても極めて不十分であるのは、まことに遺憾であります。そこにも、民間において違法な労働者派遣事業が生まれてくる要因があるのでありまして、この点は早急に改善する必要があります。また、同時に、このような就業希望に応じられるものとして、現行法でも労働大臣の許可のもとに、民営職業紹介所や労働組合による無料の労働者供給事業が認められているのでありますから、これらの役割、機能を積極的に活用することも考慮すべきであります。
第三は、今日、急速に進展する技術革新の影響についてであります。マイクロエレクトロニクスを中心とする技術革新の進展は、雇用及び労働態様に深刻な影響をもたらし、産業構造や就業構造を大きく変化させつつあります。ここで派遣労働問題と関連して、特に取り上げたいことは、各企業においてコンピューターシステムの導入が急速に進んでいることであります。
各企業においては、大型コンピューターを設置しただけでは、何の意味もなく、導入企業の事情や目的に応じたシステムの開発・設計やプログラミングが必要であって、その必要に応じられる、いわゆるソフトウエア労働者が欠かせません。しかしながら、システムやプログラムというものは、一たび開発・導入されれば、それは当分の間、基本的には維持されるという性格のものでありまして、そのため導入企業においてソフトウエア労働者を新たに常用雇用するには一定の困難さがあり、そうかといって、企業内で養成するには非常に時間がかかるという実情も、ある程度認めざるを得ません。
そうなりますと、導入企業は、ソフトウエア労働者を外部に求めることになります。ところが、システムやプログラムの設計や開発については、単なる建築物の場合と違って、現状では、その注文内容、仕様というものがはっきりせず、どうしてもソフトウエア労働者と協議しながら進めなければなりません。そのため、発注側の一定の指揮監督が避けられないという事情があります。
それに加えて、ソフトウエア労働者の絶対数が不足しております。
こうした特別の事情を考慮するならば、ソフトウエア労働者については、現に行われている労働者派遣を一律に否定し去るわけにもまいりません。
他方、ソフトウエア労働者の実情を見ますと、過長な労働時間等のため、三十歳定年とも三十五歳定年とも言われるように、劣悪な労働条件のもとに置かれていることも見逃せません。
したがって、我が党としては、いわゆる情報処理業務については、臨時的かつ特例として、労働者派遣事業を認めるとともに、ソフトウエア労働者の保護、権利保障の措置を講ずる必要があると考えます。
以上、申し述べたような理由から、二法案を提出した次第であります。
次に、両法案の内容について御説明申し上げます。
まず、職業安定法の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。
第一は、労働者供給事業と請負事業の区別の明確化に関する措置でありまして、労働者を提供して他人に使用させる事業は、その事業が請負の形式によるものであっても、その事業を行うものが、作業の完成について法律上の責任を負い、作業に従事する労働者を指揮監督する等、請負事業としての実質を有し、みずから雇用する労働者に対する使用者または雇用主としての責任を負う場合でなければ、労働者供給事業として禁止されることを法律的にはっきりさせることにいたしました。
第二は、労働大臣の許可のもとで認められている民間の職業紹介事業や労働組合の行う労働者供給事業等に関する規制緩和の措置であります。最近の経済社会情勢の変化に対応して、労働者の多様な就業希望に応じられるよう、その資格や許可の有効期間等に関する現行規制を緩和することにいたしました。
第三に、この改正法は、次に御説明申し上げます別途提案の臨時措置法と同時に施行することといたしております。
次に情報処理業務に係る労働者派遣事業の規制及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する臨時措置法案について御説明申し上げます。
第一に、この法律は、マイクロエレクトロニクスを中心とする技術革新の急速な進展に伴って生じている課題に対応する必要から制定するものの一つでありまして、したがって最近における情報処理業務に係る労働力の需給状況にかんがみ、臨時に、情報処理業務に係る労働者派遣事業について許可制その他の規制のもとにこれを行うことができることとするとともに、情報処理業務に係る派遣労働者の就業条件の整備等を図り、もって情報処理業務に係る派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進に資することを目的といたしております。
第二は、情報処理業務に係る労働者派遣事業の規制に関する措置であります。
その一として、労働者派遣事業は労働大臣の許可制によることといたしております。
その一として、労働者派遣事業を行う者についての欠格事由等を定め、事業停止命令等の措置を講ずることといたしております。
その三として、常時雇用する労働者以外の労働者の派遣を禁止することといたしております。
その四として、派遣労働者の労働条件が派遣先企業の同種の労働者と比べて著しく低劣であり、かつ、派遣先労働者の労働条件の維持改善を妨げるおそれがある場合には、労働大臣は、派遣先及び派遣元の事業主に対し、改善勧告ができることといたしております。
第三は、派遣労働者の就業条件の整備等に関する措置であります。
その一として、労働者派遣契約に派遣労働者の具体的な就業条件を定めることとするとともに、正当な組合活動を行ったこと等を理由とする労働者派遣契約の解除を禁ずること等の措置を講ずることといたしております。
その一として、派遣元事業主に、派遣労働者の教育訓練の機会の確保等のための努力、派遣労働者に対する就業条件の書面による交付等適正な雇用管理を行わせることといたしております。
その三として、派遣元事業主は、派遣労働者の請求があったときは、当該派遣労働者に係る労働者派遣の対価等について書面で明示しなければならないことといたしております。
その四として、派遣先に、派遣労働者についての苦情の的確な処理等の努力を行わせるため、派遣先責任者を選任させる等適正な就業管理を行わせることといたしております。さらに派遣労働者の派遣先における労働条件について、派遣労働者が加入する労働組合から交渉の申し入れがあれば応じなければならないことといたしました。
その五として、労働基準法等の使用者責任を明確化することとし、派遣労働者については、基本的には派遣元の事業主が使用者としての責任を負うという原則を維持しつつ、派遣先でなければ履行の確保が困難な労働時間の管理、労働者の安全衛生の確保等の事項については、派遣先の事業主に使用者責任を負わせることといたしております。
その他この法律を施行するために必要な指導、改善命令、立入検査、報告の徴収等の権限及び罰則規定等を定めることといたしております。
なお、この法律は、公布の日から一年を超えない範囲で政令で定める日から施行することとし、その施行日から五年以内に廃止するものといたしております。
以上、二法律案の提案理由及びその概要について御説明申し上げました。
何とぞ、御審議の上、御可決あらんことをお願い申し上げます。(拍手)