後藤英雄の発言 (農林水産委員会)

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○後藤参考人 参考人の後藤でございます。私は、当委員会が農林年金制度の改善のために御努力を続けてこられたことに対して敬意を表したいと思います。
 御承知のように、農林年金制度は昭和三十四年に、農林漁業団体の健全な育成を図るという趣旨の施策の一つとして厚生年金から分離発足をして以来、当委員会初め関係各位の努力によって年金制度は充実をしてきました。この間に支給開始年齢の延伸等の改悪がなされ、一部充実を図らなければならない諸点はありますけれども、しかし、公的制度である農林年金についての信頼と期待は、組合員、受給者にとって強いものがあるというように考えているところです。
 しかしながら、今回政府が提案をしたこの法案は、特に組合員にとっては期待を大きくそがれ、制度存続に疑問を抱かせるほどの大改悪と言わなければならないと考えております。もしこのまま推移するならば、年金制度を通じて組合員が感じている国の権威に疑念を挟ませ、国に対する安心感を失わせる結果も引き起こしかねないというように私は考えているところであります。したがいまして、この法案審議は慎重に慎重を重ねて行われるように、特に冒頭お願いをしておきたいと思います。
 私ども農林年金中央共闘会議は七つの労働組合の組織で構成をしております。全国農業協同組合労働組合連合会、全国漁協労働組合協議会、全国農業会議所労働組合、全国森林組合労働組合協議会、全国農業共済協会労働組合、全国厚生連労働組合協議会、全国酪農業協同組合連合会労働組合。その構成人員はおよそ十二万人であります。
 現在審議されている法案の中身に立ち入る前に、年金制度に対する基本的な立場を明らかにしておきたいと思います。
 第一は、すべての公的年金制度は、労働を通してその産業の発展、ひいては国の発展に貢献をしてきたその労働者の老後の生活を保障するという社会保障としての位置づけを明確にすべきであって、したがいまして、この制度を充実させるためには、国あるいは産業の資本、企業の雇用主等々の負担によって充実を図るべきだという点が第一であります。
 第二は、以上のことからも、私は、さきの第百二国会で成立をされました厚生年金等の改悪についても今後改善を図るべきだという立場をとっていることを申し添えます。
 以上の立場から、また農林年金組合員の実態に立って、現在審議をされている法案に関連して、以下意見を申し述べたいと思います。
 私どもは厚生年金の改悪にも反対をしてきました。とりわけ共済年金問題については、昨年二月の「公的年金制度の改革について」、さらには昨年十月の「共済年金制度改革の方向」について、それぞれ発表された段階から重大な関心を寄せて、きょうまで第十八次に上る中央行動を組織いたしまして、それぞれ関係省庁あるいは議員の先生方、あるいは関係団体等に要請を行ってきているところであります。
 政府は、この間に、高齢化社会の到来、給付と負担の均衡あるいは適正化、官民格差の是正問題、婦人の年金権確立等々を大々的に宣伝をしまして、世論の誘導を図ろうとしてきたことは御承知のとおりであります。これらについて吟味してみると、次のような諸点があいまいにされたままでいるのではないかというように考えております。
 高齢化社会の到来問題についてでありますけれども、本来長生きをする、長寿というのは祝福されるべきものであろうと思います。しかるに、高齢化社会が大変な事態になるという風潮が現在世論の大筋になっているのではないか、また、それを誘導しているのではないか。政治家の方々や財界の方々の実力を持っておられる方は、そう年齢は若くはない。しかるに、その能力と実力を十分に発揮しておられる。それに比べて一般庶民、勤労市民の場合には年をとることが何か悪いことをしているような風潮が現在あるというところに大きな問題があるだろうと思います。
 同時に、高齢化社会問題を考えるときには、例えば生産力人口、生産者の数とそれから社会的に扶養される高齢者あるいは青少年の数との比率を見ていく必要があるだろうというように考えております。つまり従属人口というふうに一般的に言われているそれと、その従属人口を扶養する生産年齢人口、これの相対的な動きについて見ておく必要があるだろうと思います。
 私どもが国勢調査あるいは人口問題研究所の日本の将来人口推計、これらでつくられた試算を見ますと、一九五五年に生産年齢人口は五一・六%で従属人口、これは六十五歳以上と二十歳未満の青少年で四八・四%、一九八〇年には六〇・三%と三九・七%、将来二〇一〇年にはそれがおのおの五七二一%と四二・八%になるというふうに推計されているところであります。そうすると、八〇年と二〇一〇年を比較してみますと、従属人口はわずか三・一ポイントしか増加をしていないということになります。そうなりますと、扶養すべき青少年の扶養費を高齢者に向けるという移転が社会的に行われると、この問題については論理的には解決をするということがあろうかと思います。
 次に、給付と負担の均衡あるいは適正化という宣伝についてでありますけれども、これは既に政府が厚生年金問題についてこのように言っておるわけであります。四十年加入者の年金額は現役労働者賃金の八三%にも達する。つまり、現在働いている者の八三%にも達する年金をもらっているのだから、もっと下げてもいいのではないか、こういう宣伝でありますけれども、これにはまやかしがありまして、これは年収で比較をしますと標準月額プラス一時金、ボーナスが加算されますので、ボーナスを仮に五カ月分加算をしたとしてみますと、約五八%強、五八・七%、半分強にしかすぎないということであります。八三%に達するというのが、実はボーナスを加えた労働者の賃金に比較をすると五八・七%程度にしかならないという問題であります。
 次に負担の問題でありますけれども、御承知のように年金の負担は国庫負担、それから団体負担、企業主負担、そして組合員の負担、三つの負担によって成立をしているわけでありますが、これの適正化、適正化と言いますけれども、国庫負担は大変に削減される。時間がありませんので省略いたしますけれども、大変に削減される。農林年金ではまだ試算されていませんけれども、恐らく昭和百年ごろには国庫負担は現行制度と比較して四〇ないし五〇%ぐらい減るのではないかというように思われているところであります。結局のところ、負担については政府の負担を軽減することにしかならないと考えております。
 次に、官民格差問題でありますけれども、官民格差については、現在農林年金と厚生年金の受給者の年金額を比較してみますと、農林年金の方が低いという現実があるわけであります。それはさておきまして、官民格差というならば、低いところに合わせるのではなくて、むしろ高い水準に引き上げていくというのが国の制度として適切あるいは最もとらなければならない道ではないかというように考えております。
 婦人年金権の問題についても、言われるように五万円もらったからということで簡単には喜べない問題があります。これについても時間がありませんので、中身については省略いたします。
 したがいまして、私ども、政府がこの制度を改悪するために大宣伝してきたこういう一つ一つをとってみても、いろいろ疑問もあるし、もっと解明されていかなければならない問題が多いのではないかというように考えているところであります。
 さらに、国庫負担を大幅に削減する、支給開始年齢を六十五歳に延伸する、あるいは現在共済年金の経過措置として行われている年限を五年間短縮するという問題だとか、あるいは給付は二割から若い人では五割近くも減らされるという問題だとか、掛金が三倍程度にもはね上がるというような問題だとか、我々にとって現在審議されているこの法案をこのまま了承するわけにはいかないということを申し上げまして、時間が来ましたので、私の意見の陳述といたします。どうもありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 後藤英雄

speaker_id: 23701

日付: 1985-11-26

院: 衆議院

会議名: 農林水産委員会